従軍慰安婦問題はなお、未解決ー露呈された安倍首相の外交音痴

韓国の康京和外相が、同国内の不満の強い2015年12月28日の「日韓合意」について、1月9日、新たな見解を発表した。これについて、安倍晋三首相は「合意は国と国との約束で、これを守ることは国際的かつ普遍的な原則だ。韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、まったく受け入れることはできない」と述べたが、自らの外交音痴ぶりをさらけ出すことになった。今後、東アジア時代の到来が確実にやってくる。これを棒がしているのが、欧米の軍産複合体で、その走狗として動いているのが安倍晋三首相だ。

このことを明快に指摘した元外務完了の孫崎享氏の記事が好評だ。2015年12月28日の「日韓合意」は、正式文書として残されていない。当時の日韓外相が「かってに」述べただけで、米国のトランプ大統領がTPP合意を破棄したように、政権が変われば簡単に破棄できることは常識だ。しかも、「合意文書」さえ、存在しない。

韓国の康京和外相の要点をまとめてみると、

①韓国政府は慰安婦被害者の方々の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けてあらゆる努力を尽くす。

②この過程で、被害者や関係団体、国民の意見を幅広く反映しながら、被害者中心の措置を模索する。日本政府が拠出した「和解・癒やし財団」への基金10億円については韓国政府の予算で充当し、この基金の今後の処理方法は日本政府と協議する。財団の今後の運営に関しては、当該省庁で被害者や関連団体、国民の意見を幅広く反映しながら、後続措置を用意する。

③被害当事者たちの意思をきちんと反映していない15年の合意では、慰安婦問題を本当に解決することはできない。

④2015年の合意が両国間の公式合意だったという事実は否定できない。韓国政府は合意に関して日本政府に再交渉は求めない。ただ、日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する。被害者の女性が一様に願うのは、自発的で心がこもった謝罪である。

⑤韓国政府は、真実と原則に立脚して歴史問題を扱っていく。歴史問題を賢明に解決するための努力を傾けると同時に、両国間の未来志向的な協力のために努力していく。

この談話も意味不明で、韓国内で批判の嵐が荒れ狂っているのは当然だ。それは、それとして、この談話をよく読むと、日本側に真相究明と新たな措置を求めているのは明らかだ。従って、2015年12月の岸田外相談話の中の、「③日本政府は上記を表明するとともに、上記の措置(基金拠出など)を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」は無意味になった。

従軍慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」されたわけではないのである。最大の問題は日本政府が撤去を求めている韓国日本大使館前の従軍慰安婦少女像の撤去であるが、これについて当時の韓国外相は、「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、空間の安寧、 威厳の維持といった観点から懸念しているという点を認知し、韓国政府として も可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう 努力する」と韓国国民の感情に配慮して抽象的な発言に終始し、「従軍慰安婦少女像の撤去」と明確には語っていない。

要するに、日韓両国にとって最も重要な問題が曖昧模糊にされた形だけの「日韓合意」だったのであり、無価値である。だから、従軍慰安婦問題はなお、「最終的かつ不可逆的」に解決されてはいない。これについてはやはり、日韓両国の近現代史、外交関係史を詳細に調べ上げることが必要である。

そういう努力をしないで、韓国側の対応を非難することこそ、安倍首相の外交音痴をさらけだしたことになる。ただし、さらに言えば、安倍首相としては間近にせまっている東アジア時代の実現を何としても妨げようとしている、欧米の軍産複合体の走狗に過ぎなくなっている「確信犯」であろう。

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