このところ、ロシアの軍事用ドローンがポーランドやルーマニアの領空侵犯をしている。また、読売新聞のサイトでの報道によるとエストニアにもミグ31が3機、12分間ほど領空侵犯をしたという(今回で数回目)。ここまで来るとやはり、ロシア側には何らかの意図がありそうだ。ただし、それはロシアがウクライナを支援する欧州北大西洋条約機構(NATO)諸国と戦争に踏み切るためではなく、特に、欧州NATO加盟諸国の主力国である英仏独の対露制裁とウクライナ支援による経済・財政状況の悪化による国内情勢の混乱に乗じて、欧州NATO加盟諸国の政権を崩壊させてフランスの国民連合、ドイツのドイツのための選択肢、英国のリフォームUKなど、国民生活重視・民衆擁護の右派勢力を政権に就かせるか、あるいは、これらの右派勢力を弾圧して独裁体制を築かせ、欧米文明が世界に誇る「民主主義」を解体させることを意図するものかのいずれかだろう。国際情勢解説者の田中宇氏によると、今後の国際社会の運営は米英諜報界を支配した多極化勢力のトランプ大統領とネタニヤフ首相、それに米国と歴史的な協力関係を築いたプーチン大統領が加わり、米露イスラエルが行うことになる。なお、来月の10月31日、11月1日には韓国南東部の慶州(古代三国時代の新羅の首都)でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で行われるが、同会議を利用してトランプ大統領と習近平国家主席が会談する見込みであり、米露イスラエルに中国を加えた多極化世界の構築が本格化する見込みだ。
ロシアによるポーランド、ルーマニア、エストニアの領空侵犯の真相
ポーランドの発表によると、ロシアの軍事ドローンが今月10日、ポーランドの領空を侵犯した。英国のBBCは「故意か偶然か……ロシア無人機によるポーランド領空侵犯 NATOにとっての試練に」と第する解説記事を投稿している(https://www.bbc.com/japanese/articles/cly1ek0064yo)。
ロシアの(軍事)ドローンが10日、ポーランドの領空に侵入したことを受け、同国政府は戦闘機を緊急発進させ、緊急会合を招集した。この事態は、ヨーロッパおよび北大西洋条約機構(NATO)のロシアに対する決意が、試練に耐えられるものではないかもしれないとの懸念を呼んでいる(注:欧州NATO加盟諸国がロシアとの本格開戦に耐えられるかどうか、ということだろう)。ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、同国の領空が19回にわたり侵犯され、少なくとも3機のドローンを戦闘機で撃墜したと述べた。撃墜には、オランダのF35戦闘機およびイタリアの早期警戒機の支援があったという。ロシア政府は、今回の侵入が意図的であったとの非難に反発している。ただし、自国のドローンがポーランドの主権領域を侵犯した事実については否定していない。ロシアは、「ポーランド領内のいかなる対象も攻撃の計画には含まれていなかった」と発表している。
しかしヨーロッパの当局者らは、今回の行為が偶発的だった可能性を強く否定している。ドイツのボリス・ピストリウス国防相は「これだけの数のドローンがこの経路で(中略)ポーランド領空を飛行したことが偶然だという証拠は一切ない」と述べた。イタリアのグイド・クロゼット国防相も一連の出来事について、「挑発と試行」という二重の目的を持った「意図的な攻撃」だったと語った。
ルーマニアに対しても14日、ロシアの軍事用ドローンが領空侵犯を行ったと報道されている(https://www.bbc.com/japanese/articles/c1jzx1jk849o)。
ルーマニア政府は14日、ロシア製の(軍事)ドローンが同国領空に侵入したと発表した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国によるロシア製ドローンの領空侵犯の報告は、これで2例目となる。ルーマニア国防省の声明によると、ルーマニア空軍の戦闘機が、ウクライナ南部国境付近で発生したロシアの攻撃を監視するため、13日に上空で警戒活動を行っていた際に、ドローンの動きを追跡したという。
さらには読売新聞のサイトによると19日、ロシアのミグ31戦闘機3機が12分間ほど、ルーマニアの領空侵犯を行ったという(https://news.yahoo.co.jp/articles/e2eb7d0e51721bcd332c5a62ae6f11a6428625ae)。
(バルト三国として知られる)エストニア外務省は19日、自国の領空をロシア軍のミグ31戦闘機3機が同日、約12分間にわたって侵犯したと発表した。露軍機は今年だけで複数回、領空侵犯しているが今回は「前例がないほど厚かましかった」としている。エストニアはロシアと隣接し、北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。
次の地図は、グローバル・ニュース・サイトによるものだ(https://globalnewsview.org/archives/12249)。
スプートニクはXと連動しているが、「ロシア国防省『ポーランド国境を「越えた」とされるロシアの無人機は、700km以上の飛行は不可能」としているほか、次のように伝えている(https://x.com/i/web/status/1965775694027186474)。
ロシア国防省は「ポーランド領内の攻撃目標は計画されていなかった。だが、この件に関してはポーランド国防省と協議を行う用意がある」と発表した。同省によれば、ロシア軍は9月10日にかけての深夜に長距離兵器と無人機を用いてウクライナの軍事産業施設に対して大規模な攻撃を行った。「攻撃に使用されたロシアの無人機がポーランドとの国境を『越えた』とされているが、その最大飛行距離は700キロメートルを超えない」
ポーランドのトゥスク首相は10日に表した声明で、ポーランド上空で「危険性を与える」ドローン数機が撃墜され、それは「ロシアの」ドローンだったと断定したが、その事実を裏付ける証拠は一切提示していない。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ポーランド指導部からの接触の要請がクレムリンに入ったか否かは把握していないと発表した。報道官はまた、EUとNATOはロシアが煽動を行ったという非難声明を毎日のように出しながら、その論拠を提示しようとはしないと指摘した。
NATOの条約は第五条で、次のように定められている(https://worldjpn.net/documents/texts/docs/19490404.T1J.html)。
締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがつて、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によつて認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する。
前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、直ちに(国連の)安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない
しかし、第三国による武力攻撃があったかどうかは、確認が必要な場合もある。そのために、第四条で「締約国は、いずれかの締約国の領土保全、政治的独立又は安全が脅かされているといずれかの締約国が認めたときはいつでも、協議する」と定められており、意図したか意図しなかったかにかかわらず、単なる領空侵犯が武力攻撃と断定し、第五条を発動するには、第四条に従って、NATO加盟諸国の首脳級クラスによる会議を開催することが必要になる。
これに関して、トランプ大統領は「ロシアの無人機によるポーランド領空侵犯は誤りだった可能性がある」と語ったが、ヤフー・ニュースではこの記事は削除されている(https://news.yahoo.co.jp/articles/ab09c4374f762da674b87f715c54111f16d85ab8)。ロイター通信は、ポーランドのトゥスク首相の反論記事を掲載している(https://jp.reuters.com/markets/commodities/2KHV24PSPNNI5O7OJPNMK3OKLY-2025-09-12/)。
ポーランドは12日、ロシアの無人機によるポーランド領空侵犯は誤りだった可能性があるとするトランプ米大統領の発言に反論した。ポーランドのトゥスク首相はXで「ポーランドへの無人機領空侵犯が間違いであったことを願う。しかし、それは間違いではなかった。われわれはそれを知っている」と述べた。ポーランドがトランプ大統領にこれほど直接的に反論するのは極めてまれ。トランプ大統領がロシア側の説明を受け入れていることに対する欧州の警戒感の表れとみられる。
ポーランドは欧州における米国の最も緊密な同盟国の一つで、ポーランドはトランプ大統領が欧州の軍事費増額を求めたことを称賛する一方、トランプ政権もポーランドが北大西洋条約機構(NATO)加盟国の防衛に多くの予算を割いていることを高く評価している。トランプ米大統領は11日、ロシアの無人機(ドローン)によるポーランドへの領空侵犯に不満を示し、間違いだったとの見方を示した。
なお、トゥスク首相はウクライナ支援派で、2025年6月1日に行われたポーランドの大統領選挙で、右派の保守野党「法と正義(PiS)」が擁立して当選した無所属のカロル・ナブロツキ大統領はポーランド支援によるポーランド経済や国民への負担を懸念しており、ウクライナ支援に消極か、または反対の立場だ(https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/331c182b3b8f0795.html)。
ナブロツキ氏は「ポーランド・ファースト」や「主権の回復」といったスローガンを選挙戦で掲げ、保守層やEU懐疑派の支持を集め、右派ポピュリズム(注意:人気取りという意味ではなく、政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、人民に訴えてその主張の実現を目指す運動)の波に乗るかたちで勝利を収めた。ドナルド・トゥスク首相率いる中道・親EU派の政権との間で、政治的なねじれ関係が維持されたままとなる。大統領には議会法案に対する拒否権があるため、司法改革や社会政策などの政府の主要政策が停滞する懸念が高まっている。連立政権内でも、移民政策や同性パートナーシップ、妊娠中絶の自由化などを巡って意見が対立しており、厳しい政権運営を迫られることになる(2025年2月27日付地域・分析レポート参照)。
さて、英仏独を中心とした欧州NATO加盟諸国がウクライナに対して多額の軍事・経済支援を行っていることから、ロシアは事実上、NATOと交戦しているものとみなしている(https://www.khb-tv.co.jp/news/16029942)。
ロシアのペスコフ大統領報道官は15日、「NATOは事実上、ロシアと戦争状態にある。これは明白で、証明の必要はない」と発言しました。ロシア国営・タス通信によりますと、ポーランドの外相が「NATOはロシアと戦争していない」と発言したことに対するもので、「NATOはウクライナへの直接的・間接的な支援を通じて、事実上この戦争に関与している」と主張しました。
ロシアの主張にもかかわらず、同国のポーランドやルーマニアに対する軍事ドローンの領空侵犯やエストニアへの数度にわたるミグ31戦闘機の領空侵犯は、意図したものであった可能性が強い。もっとも、直接の軍事攻撃を意図したものではなく、欧州NATO加盟諸国の主力国である英仏独を中心とした対露制裁とウクライナ支援による経済・財政状況の悪化による国内情勢の混乱に乗じて、欧州NATO加盟諸国の政権を崩壊させて国民生活重視・民衆擁護勢力の右派勢力を政権に就かせるか、あるいは、これらの右派勢力を弾圧して独裁体制を築かせ、欧州が世界に誇る「民主主義」体制を崩壊させることを意図したものかのいずれかだろうと思われる。
これについて、17日に「米露が欧州をいじめる」との解説記事を投稿・公開した田中宇氏は、次のように指摘している(https://tanakanews.com/250917drone.htm、無料記事)。
NATOの盟主である米国のトランプ大統領は、この事態(注:ロシア側の軍事ドローンによるポーランドの領空侵犯)に対して「ロシアが(ウクライナに飛ばす無人機をポーランドに逸らせてしまって)間違えただけじゃないか」と発言するなど、緊張感がなかった。ルビオ国務長官も「もっと情報を集めないと(露軍の意図的な侵攻かどうか)判断できない」と慎重姿勢で、欧州諸国は苛立った。(Trump Downplays Drone Incursion Into Poland As Likely 'Mistake', Angering NATO Allies)(US wants to gather more data about incident in Poland before drawing conclusions - Rubio)
ロシアとポーランドの間には、ベラルーシやウクライナがはさまっている。ロシアの無人機は、ロシアからウクライナとベラルーシを通ってポーランドに入ってきた。ベラルーシ政府は、侵入前の無人機がベラルーシ上空を通過中に、ポーランドとリトアニアの政府に対し、ロシア軍がウクライナに飛ばした無人機群の一部が、ウクライナ軍の電波妨害(ジャミング)によって統制不能になり、ベラルーシを通ってポーランドとリトアニアに入り込みそうだと通報していた。ポーランドで撃墜された無人機は爆弾が積んでおらず、兵器としての機能がなかった。無人機の中には、目くらまし用のおとり機と思われるものもあった。(2025 Russian drone incursion into Poland Wikipedia)(The Reported Russian Drone Incursions Into Poland Might Have Been Due To NATO Jamming)
無人機は、ロシアがポーランドを攻撃するために送り込んできたものでなく、ウクライナとの戦争で使われるはずの無人機群の一部が、ジャミングを受けて統制不能になった結果、予定の進路をそれてベラルーシからポーランドに迷い込んできた可能性がある。しかし、もし上記のような完全な間違いであるなら、無人機が逸脱し始めた段階でロシア政府がポーランドやNATO本部に連絡していれば、今回のような騒ぎにならなかった。ロシアは、それをやっていない。(Why’d Polish Officials Contradict Trump On The Reason Behind Russia’s Drone Incursion?)(European NATO members displeased with US reaction to ‘Russian drone incursion’)(中略)
9月15日には、ロシアとベラルーシが続けている合同軍事演習を見学するために、米国から2人の国防総省(戦争省)幹部がベラルーシにやってきた。トランプの米政府は8月下旬から、ロシアとの和解策の一環として、ロシアと最も親しい同盟国でこれまで米国が敵視してきたベラルーシと和解する動きを進めている。米軍幹部が(注:ロシア軍とベラルーシ軍との)合同軍事演習の見学のためにベラルーシを訪問したのも和解策の一つだった。(US Military Officers In 'Surprise Visit' To Belarus To Observe Joint Russian War Games)
(国防総省から)戦争省に改名された米軍は、もうロシアを敵とみなしていないのだから、ロシアの子分のベラルーシとの和解も当然だった。しかし、ロシアの無人機がベラルーシ経由でポーランドに侵入して、欧露が第三次世界大戦になるかと大騒ぎし、露ベラルーシが欧州との敵対を挑発するかのように軍事演習を開始した直後に、米軍幹部が演習見学のためにベラルーシを友好訪問するのは、トランプによる欧州いじめ以外の何物でもない。(Minsk aims to gradually improve relations with Washington, says Belarusian leader)(中略)
英欧の上層部には、勝てないウクライナ戦争を早くやめてロシアと和解した方が良いと合理的に考える勢力もいるはずだ。だが、合理論は勝てない。隠れ多極派は、絶対にロシアを勝たせてはダメだと強硬に主張する好戦派に英欧の上層部を乗っ取らせ、英欧が自滅するウクライナ戦争の構図を永続している。(L’Allemagne devance les États-Unis en matière de financement de l’aide militaire à Kiev)
英欧のエリート層は、諜報力も兵器も足りないまま、勝てない戦争に押し込められ、財政を使い果たし、いずれ選挙で政権を反エリートな極右の諸政党(独AfDや仏ルペン派や英ファラジ)に奪われる。これが、世界的な英国系(米単独覇権の運営体)の終焉となる。(Sergey Karaganov: Europe is fading. We must embrace a new elite for a new Russia)
トランプ政権は最近、ドイツのAfDの副党首(Beatrix von Storch)を大統領府に呼んで話し合いをした。トランプは、ドイツが英国系のエリート諸政党の政権から、親露で多極型世界を容認するAfDやBSWの反エリート政権に転換するのを待ち望み、AfDと話し合いを続けている。(Top AfD politician makes surprise visit to White House)(Conflict with Russia would be Germany's end - German politician)
要するに、今回のポーランド、ルーマニア、エストニアに対する軍事用ドローンや戦闘機の領空侵犯は、欧州NATO加盟諸国の主力国である英仏独の対露制裁とウクライナ支援による経済・財政状況の悪化による国内情勢の混乱に乗じて、欧州NATO加盟諸国の政権を崩壊させて民衆擁護勢力の右派勢力を政権に就かせるか、あるいは、これらの右派勢力を弾圧して独裁体制を築かせ、欧州が世界に誇る「民主主義」体制を崩壊させることを意図するものかのいずれかだろうと思われる。
トランプ大統領とプーチン大統領は8月15日のアラスカ州での首脳会談で、ウクライナ戦争の根本原因(旧い冷戦思考に基づいたNATOの東方拡大)で一致しており、欧州NATO加盟国を弱体化させるとともに、トランプ大統領が経済の基盤を築いている米州の一部(https://tanakanews.com/250914laam.htm)である北極圏での経済協力でも合意していることから、今後は米露主導の多極化文明世界になる。なお、この多極派の米露主導の世界体制に絡んでいるのが、右派リクード政権率いるイスラエルのネタニヤフ首相である。これについて田中氏は19日、「ウクライナ戦争は2022年の開戦時から、英国系を自滅させて世界を多極化するための策略だった観がある。開戦から3年半が過ぎた今、英国系の崩壊は予定通り進んでいる」をリード文とする「ウクライナ戦争の本質」と第する解説記事を投稿・公開している(https://tanakanews.com/250919europ.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)。
ウクライナ戦争の終わりが見えてきている。英仏独でロシア敵視のエリート政体が崩壊し、ロシアと和解したい草の根右派(極右。独AfDや仏ルペン派、英リフォーム)が政権を取ると、ウクライナを支援を失って対露和解して終戦せざるを得なくなる。米国は、トランプになってからウクライナ支援を大幅に減らしている。今ウクライナを支援しているのは英仏独EUだ。英仏独ではいずれも、ウクライナ戦争や移民受け入れを無理に進めてきたエリート政体(中道左右の二大勢力制)の不人気が増しており、来年あたり次々と政権交代しそうだ。そうなるとウクライナ戦争は終わる。(Macron is in a political death spiral)(AfD calls for ‘Germany first’ policy)
別の可能性として、英仏独のエリート政体が保身のため、ロシアとの対立を意図的に激化してポーランドやバルト3国やモルドバ・ルーマニアなど西欧に近いNATO圏に波及させ、ロシアの脅威が拡大したと騒いで有事体制を敷いて、極右が勝つ総選挙を延期してエリート独裁を敷くかもしれない。プーチンは、西欧が自慢の民主主義を自壊するこの展開もいいなと思っているだろう。先日のポーランドやルーマニアへの露軍無人機の侵入は、欧露対立を高めるための前哨戦かもしれない。だがこの場合でも、西欧の人々は、独裁化したエリート政体を倒す革命をやる。欧州はいずれ親露化し、ウクライナ戦争は終わる。(米露が戦争で欧州をいじめる)
この解説記事の中で、田中氏はネタニヤフ政権率いるイスラエルが絶大な権力・威力を誇る諜報界を完全把握するため、トランプ大統領率いる米国政権の国防費と称する軍事費を減少させずに、米国の金融バブルを維持させているとしている。これについてはトランプ政権が、①米国を経常赤字まみれにさせてきた貿易相手国に高関税政策と米国のソブリン・ファンド(注:政府が公的資金を運用する投資ファンドのことで、「政府系ファンド」や「国富ファンド」とも呼ばれる。ただし、公的資金ではなく、米国に大幅な経常赤字と世界最大の体外純債務をもたらしてきた米国の貿易相手国)となる対米投資政策を実行させており、AIによるゴールデン・ドームを構築するなど、第三次産業革命を遂行中である②トランプ大統領も、大統領任期終了後のの米国大統領をバンス副大統領に任せるため、特訓(注:カリスマ性を持たせるための特訓)を行っており、金融バブル崩壊は望んでいないと見られる③ユダヤ教を信奉するネタニヤフ首相とトランプ大統領が信仰しているキリスト教(福音派)のメシア(Messiah、メシヤ)思想が一致する可能性が小さくないーなどのことから、上海協力機構やBRICS加盟諸国が構築している第三次ブレトンウッズ体制が構築される可能性が小さくないのではないか。
開戦直後、ウクライナ戦争が世界を、金や資源類(債券金融システムの外側にある資産=アウトサイドマネー)の大半を持つ非米側と、債券金融商品(インサイドマネー)しか持っていない米国側に、決定的に分断していくことをいち早く指摘したのは、当時クレディスイスのアナリストをしていたゾルタン・ポズサー(Zoltan Pozsar)だった。ポズサーは、米国側の債券と、非米側の資源類との分裂が、最終的に債券類の金融バブル崩壊に至ると予測し、そのバブル崩壊より前の、今の債券金融システム中心の世界体制を「ブレトンウッズ2」と呼び、きたるべきバブル崩壊後の金や資源類が中心になる世界体制を「ブレトンウッズ3」と呼んだ。(米連銀はQEやめてない。それでもドル崩壊するのか)(Zoltan Pozsar - Wikipedia)
「ブレトンウッズ3」を構築できなければ、ネタニヤフ首相の横やりから生じる最終的な米国の金融バブル崩壊は、世界経済に巨大な悪影響を与える。
ウクライナの戦況と英仏独のリベラル左派政権の危機的状況
ウクライナの戦況は、軍事ブログの「航空万能論」が20日、「リマン方面の状況は急速に悪化し、ロシア軍はフリアイポレ方面でも前進」と題する記事を投稿・公開し、次のように述べている(https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/the-situation-in-the-liman-region-rapidly-deteriorated-and-russian-forces-advanced-towards-hryaipole/)。
DEEP STATEとRYBARは「ロシア軍が東部戦線の複数方向で前進した」と報告し、特にリマン方面はポクロウシク方面よりも状況悪化のテンポが早く、ロシア軍はフリアイポレ方面でもウスペニフカ~ポルタフカの東側面、フリアイポレやウスペニフカの背後に回り込む動きを見せている。
また、反トランプのForbesは「ロシアがポクロウシク攻略へ最終攻勢の構え ウクライナはドローン要に懸命の防戦」と題する記事を投稿・公開し、結局は欧州NATO軍のウクライナ支援がなければ事実上、ポクロウシクはロシア軍に制圧されるとの見方を示唆している(https://news.yahoo.co.jp/articles/0e94ac3cc1dc690dad0bbcad84a602aeba7b777e)。
ただし、ウクライナ側も補給不足によって圧迫されている。ロシア軍の精鋭ドローン部隊である「ルビコン」は、ポクロウシク─コスチャンティニウカ方面のウクライナ軍の兵站拠点を攻撃し、前線のドローン部隊への補給の遮断を進めている。あるウクライナ兵は英紙タイムズに「ポクロウシクでは兵站戦が繰り広げられている」と語っている。こうした圧力もあり、前線への補給任務でも無人車両を活用し、人間の輸送要員らのリスクを低減する必要性がますます高まっている。
ただし、英仏独を中心とするNATO加盟欧州諸国には対露経済制裁の跳ね返り(ロシアの安価な原油や天然ガスの輸入を禁止したため、エネルギー価格が高騰)とウクライナに対する軍事・経済支援で国内の経済が疲弊、国民生活が苦しくなっており、リベラル左派全体主義官僚独裁政権に対して、経済破綻を警告、国民生活重視を訴える右派民衆政党・勢力が攻勢をかけている。この点については、Youtubeチャンネル・「外交の真実」の最新動画の「ヨーロッパ政治崩壊寸前?ドイツで労働者が見捨てられる!(https://www.youtube.com/watch?v=kExT6g8sUwc&t=423s)」や「ゼレンスキーが軍事危機を認め、ロシアが各戦線で前進」(https://www.youtube.com/watch?v=Fa4h7YzsYjI)に詳しい。
また、田中氏は「イスラエルは米国を傘下に入れ、英国系が持っていた諜報界を居抜きで乗っ取っており、諜報力=軍事力がとても強い。中共(中国共産党が支配する中国政府)は、そんなイスラエルと対立したくない。イスラエルが過激にやるほど、習近平は困らされ、現実主義に動く。トランプやイスラエルと親しく、中共とも親しい両属的なロシアは、この新事態によって最も得をしている。プーチンは相変わらず含み笑いしている。ゼレンスキーはいずれモスクワに行く(注:ロシアに亡命するとの意味か)」と予想している(「中南米を右傾化させる」、https://tanakanews.com/250914laam.htm、無料記事)。
なお、欧州文明の凋落は、1517年のルターの宗教改革に始まったプロテスタントが宗教的情熱を失ってから久しいためである。英国はヘンリー8世が離婚・再婚問題でカトリックと断絶して、英国国教会を設立したが、欧州から英国に拡大したプロテスタント運動も弾圧し、その一派のピューリタニズムの信徒たちが米国に逃れて、当初は英国の植民地であったが1776年7月4日、英国から独立した。2026年はその250周年になるが、トランプ大統領は大リバイバル運動を企画している。キリスト教によって確立された基本的人権の根本をなす信教の自由を認めない国家は、いわば「独裁国家」として警告・制裁されることになる可能性が高い。
トランプ大統領、極左の「アンティファ(アンチ・ファシズム)」を解体へ、首謀者、資金提供者は投獄などの制裁を覚悟すべき
モルモン教の総本山があり、モルモン教徒の多い米国のユタ州、それも大学でMAGAの青年指導者であり、トランプ大統領とも深い親交のあったチャーリー・カーク氏が狙撃暗殺されたことから、トランプ大統領は「アンティファ(アンチ・ファシズム)」運動を展開する組織を極左過激派組織と認定し、徹底的に取り締まる大統領令に署名した。ロイター通信が伝えた「https://jp.reuters.com/world/us/IWVOOUYG6NINZBPYL6R3A7QF3I-2025-09-18/」。
トランプ米大統領は17日、保守系政治活動家のチャーリー・カーク氏が銃撃され死亡したことを受け、左派の反ファシスト運動「アンティファ」をテロ組織に指定すると発表した。
「アンティファに資金を提供している者を、最高水準の法的基準・慣行に従って徹底的に調査することも強く勧告する」と交流サイト(SNS)に書き込んだ。ただし、テロ組織指定にどの程度の法的効力があるのかは不明だ。専門家によると、アンティファは明確な指導部や階層を持たない、緩やかに組織化されたイデオロギー運動とされる。
引用文の最後はオールド・メディア特有の余計な文言で、トランプ大統領は国防総省=戦争省を最大限に使って、アンティファが解体するまで取り締まりを強化するだろう。田中宇氏は16日、「トランプの左翼退治」と第する解説記事を投稿・公開している(https://tanakanews.com/250916left.htm、無料記事)。アンティファをテロ組織としたのも、その一環だろう。トランプ大統領は、世界の左翼勢力を解体に追い込むことを狙っていると見られる。なお、ロシアなどはソ連時代の共産主義思想(スターリン主義)によって国家が崩壊したことにこりており、現在は市場経済原理を経済の根幹に置いた独特の政治体制を築いている。
余談だがこの点は、中国も同じである。中国のIT産業は高性能なスマートフォンを製造したり、iPhoneの委託生産や超小型のミニPCの製造を行って、世界に販売網を確立しつつある。また、ドローン技術でも世界第一とされる。「DJI(大疆創新科技有限公司)」がそうだが、世界一との市場からの評価を受けるには、スパイ活動などではできない。また、マスートフォンで世界第一位の販売台数を誇るAppleや第二位のSamsungに次ぐ世界第三位のXiaomi(シャオミ)は、打倒iPhone17を目指すため近く、Xiaomi 17製品を世界市場に投入する予定だ。なお、中国で書かれた科学・技術論文は世界一の引用数を持つ。
話がそれたが、アンティファは日本にもあり、日本共産党や社会民主党が支援している。今後は世界中の差は組織と関連団体が、トランプ大統領の警戒を受けることになる。
トランプは本質的に、米覇権放棄を進める隠れ多極派だ。トランプは覇権放棄の一環として、国防総省(戦争省)に中露敵視を放棄させたが、これだけだと米政府の防衛費は大幅に削ることになる。米国の防衛費削減はイスラエルが困る。防衛費の多くは、兵器開発のふりをした諜報活動の費用であり、その費用でイスラエルは貴重な諜報を得て、戦争に勝ったり国際政治を牛耳って強くなっている。イスラエルはトランプに防衛費を増やし続けろと命じ、トランプは米軍に「中露敵視を放棄する替わりに米州主義に基づいて米国内や中南米で戦争する」という軍事戦略(NDS)を立てさせた。防衛費は1兆ドルを超えて増え続けている。(Big, Beautiful trillion dollar war budget!)(トランプは金融システムをいじらない)
MAGAの指導者だったが、狙撃暗殺されたチャーリー・カーク氏=Wikipedia トランプが、米軍の主要任務を中露敵視から米国内の治安維持(という名の左翼退治)に替えたことと、カークの射殺を機に米国内の左右両極が対決していく流れの開始のタイミングの一致は、どうも偶然でない気がする。偶然でない感じは、同じタイミングで、トランプと喧嘩別れして出ていったイーロン・マスクが、極左と喧嘩する極右の活動家としてトランプ陣営に戻ってきたことからも漂っている。(イーロンマスクを激怒させた意味)
マスクは今年初め、トランプ政権に入り、覇権放棄策の一環として、米政府のUSAID潰しなど世界介入費の削減を挙行するDOGEを仕切っていたが、諜報界の維持のため防衛費や金融バブル維持費を削りたくないイスラエルの横やりが入り、トランプはDOGEの勧告を無視して米政府の財政削減を中止した。怒ったマスクはトランプと仲違いして政権を去った。だが、資金援助してくれてビジネス感覚も鋭く、喧嘩も得意なマスクは、トランプにとって使い勝手が良かった。マスク自身も喧嘩腰の政治を張るのが大好きなので、今回トランプが左翼との喧嘩芝居を本格化するに際し、マスクが呼ばれて政権の周辺に戻ってきた。(Musk calls left the ‘party of murder’ after Charlie Kirk’s shooting)(Elon Musk Commits $1 Million To Murals Of Iryna Zarutska Nationwide, Turning Public Spaces Into Culture War Battlegrounds)
マスクは米国だけでなく、英国の混乱に拍車をかける百万人(マスコ"ミ報道では10万人)の極右系の反政府・反移民デモ行進にも、動画で参加して介入している。
(Tommy Robinson 'Unite The Kingdom' Rally Attracts Massive Crowd In London)
これから、世界的に共産主義思想に端を発する極左の組織や団体、個人は受難の時代を迎える。反対勢力を政治弾圧する過激左派に属する韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領(注:参考https://www.sankei.com/article/20250604-RJA2IXFYJNLJPG3V3JWXS2FEOY/?outputType=theme_weekly-fuji)もそのひとりになるだろう。共産主義の根幹は、ウクライナ生まれのロシア人哲学者であり、マルクス主義者からキリスト教徒に回心ニコライ・ベルジャーエフが明らかにしたように「無神論」であることである。この無神論思想を捨てさり、ヘーゲル哲学への批判と別れ、普通に「頭で考え、足で歩く」ことが必要不可欠だ。
自民党フルスペックの総裁選ーカギ握る地方票
来る10月4日に自民党のフルスペック総裁選が行われるが、地方票が大きなカギを握りそうだ。第一回目の投票では国会議員295票に全国党員・党友票の295票を加えた590票の過半数を獲得した立候補者が新総裁に決まるが、立候補者多数でそうはならないだろう。最終的には第二回目の投票で、国会議員票295票に地方都道府県連の3票、合計141票を加えた436票のうち、より多くの票を獲得した候補者が新総裁に選出される。
前回のフルスペック総裁選では、第一回目の投票では得票数が高市早苗候補が最多だったが、第二回投票で岸田文雄首相(宏池会)が既に時代遅れで、リベラル左派の宏池会路線を継続させるため、国会議員に対して石破茂候補に投票するよう指示したため、高市候補は敗退し、石破候補が新総裁に選出された。Youtubeチャンネル「言論TV」を公開している政治評論家の桜井よしこ氏によると(https://www.youtube.com/watch?v=8yppf-MPQd8)、今回の総裁選でも岸田前首相は時代の要請に応えられなくなった宏池会路線にしがみつくため、「高市候補を新総裁にするな」と檄を飛ばしているようであり、このため、石破首相・総裁は地方の都道府県連幹部や有力党員・党友に対して、小泉進次郎候補に投票するように電話連絡しているという。
また、小泉進次郎候補の選挙対策委員長に緊縮財政の権化であり、旧安倍派の加藤勝信財務相が就いた。宏池会路線を継続し、宏池会系議員を守るためだ。このため、高市候補が新総裁に選出されるためには(注:ただし、上述のことからすれば、世界が米露イスラエルに中国を加えた多極化文明時代に突入していることを踏まえ、新首相は冷戦思考を乗り越え、米国が金融バブル崩壊を避けられるよう米国に協力して対米関係を基軸としつつも、ロシア、中国とのバランスの取れた外交政策を展開していかなければならない)、地方票を圧倒的に多く獲得しておく必要があるだろう。
全県民が「政治評論家」であり、リベラル派の多い高知県出身の吉田茂が切り開いた冷戦思考から脱却できない対米隷属主義の宏池会路線では、世界の多極化に対応できない。本来は、日本独自の文明をもとに多極化文明の推進に貢献すべき秋(とき)である。自民党の国会議員、党員・党友はこのことを肝に銘じ、新聞(サイト含む)・テレビなどのオールド・メディアの誘導的世論調査に惑わされずに(オールド・メディアの世論調査には誘導性と自己矛盾性が兼ね備わっている)、自らの意思で投票行動を展開すべきだろう。自民党総裁線のあとは、衆議院解散が行われる公算が大きい。余談だが、サイト管理者(筆者)は、参政党と同様、日本国憲法第7条解散には反対である。主権在民の理念が反映されにくくなるからだ。
衆院選、東京都議選、参院選では自民党の党員・党友の票が参政党や日本維新の会、日本保守党に回ったようだ。これらの票が、自民党に回帰するかが衆院選の勝負の分かれ目になる。なお、躍進中の右派政党の参政党の改憲草案には、キリスト教に基づく欧米文明の根本的かつ普遍的な価値観である「基本的人権」という言葉がない(https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/)。これでは、米国のトランプ政権と正常な外交が出来なくなるだろう。この点が、英国のリフォームUK、フランスの国民連合、ドイツのドイツの選択肢と異なるところだろう(https://xs986663.xsrv.jp/2020/08/16/historical-sociology-2/)。