日本のオールドメディアの代表格であるNHKは、現地時間で10月8日、大統領を自認するゼレンスキー氏が(注:政府系)地元メディアに対して、「ロシア軍のことしの夏の攻勢は頓挫したとの見方を示す一方、ウクライナ軍は国産の巡航ミサイルを投入し、成果を上げているとアピール」したとの「報道」を行った。しかし、ロシア軍は日本時間で10月10日にかけて、ウクライナの首都キエフや東南部のザポリージャに対してミサイル30発以上と軍事ドローン460機以上で軍事工場や軍事インフラ、軍事に転用可能な社会インフラに対して激しい攻撃を行った。ゼレンスキー氏の主張以外に、ウクライナ軍が反転攻勢に転じたなどとする見方はない。日本のオールドメディアはすべて、ウクライナ寄りの報道を展開しているが、これらの報道を軽信することは、ウクライナ情勢を見誤るばかりか、ロシアとの北方領土問題解決を含む日露関係の正常化の大きな妨げになる。
米国は欧州経由でもトマホークを供与しない
NHKは日本時間で10日、「ゼレンスキー大統領 “ロシア軍のことし夏の攻勢は頓挫”」と題する一方的な報道を行った(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014946131000)。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍のことしの夏の攻勢は頓挫したとの見方を示す一方、ウクライナ軍は国産の巡航ミサイルを投入し、成果を上げているとアピールしました。ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、地元メディアなどの取材に応じました。それによりますと、この中でゼレンスキー大統領はウクライナ東部の制圧をねらったロシア軍のことしの夏の攻勢について、「ウクライナ軍の反転攻勢により、頓挫した」と述べました。その一方で、ウクライナ軍は国産の巡航ミサイル「ネプチューン」と「フラミンゴ」を実戦に投入し成果を上げているとアピールしたということです。
さらに、ゼレンスキー大統領はアメリカがウクライナへの供与を検討している巡航ミサイル「トマホーク」について、ロシアを停戦や和平に向けた交渉の席に着かせるための圧力になると強調したということです。
しかし、日本の同じ時間帯で「ロシア軍の大規模攻撃 各地のインフラが被害」と題する報道を行い、ロシア軍がウクライナの首都キエフや東南部のザポリージャに対してミサイル30発以上と軍事ドローン460機以上で軍事工場や軍事インフラ、軍事に転用可能な社会インフラに対して激しい攻撃を行ったとしている。
ウクライナ空軍の発表によりますと、10日朝にかけて(ウクライナに対する)ロシア軍のミサイル30発以上と無人機460機あまりによる攻撃があり、首都キーウや南部ザポリージャ州などで被害が出ました。(中略)
キーウ市のクリチコ市長は10日、SNSに「敵は止まらない」と投稿し、ロシア軍による新たな攻撃が予想されるとして水や食料を備蓄するよう呼びかけています。
ウクライナ戦争の戦況報道としては、上記の記事の方が正しいだろう。Youtubeチャンネル・「外交の真実」は11日、「ロシア最大規模の空爆がキーウを直撃 防空網崩壊と停電でエネルギー危機深刻化(注:今年の冬、ウクライナ国民には厳しい寒さが訪れる)」と題する動画を公開、欧米諸国が供与した防空システムのパトリオットがロシアの超音速地対空ミサイル・キンジャールなどでもはや、役に立たなくなっていることを報告している。
また、トマホークによるロシアのモスクワなどの攻撃経路の電子情報を入手し、実際に地上発射台から発射・攻撃するためには米国の軍事協力が必要だ。これは、トランプ政権が完全にキエフ政権寄りになり、ロシアと戦争をすることになることを意味する。これでは、今年8月15日に米国のアラスカ州アンカレッジ近郊の米軍基地で行われた米露首脳会談の成果が完全に消滅することになる。トランプ大統領に果たして、その覚悟があるかと言えば、ないと考えるのが本当の意味での常識だ。これに関して、テレ朝ニュースは7日、次のように報道している。
アメリカのトランプ大統領はウクライナに対する巡航ミサイル「トマホーク」の供与を巡って、「用途を知りたい」と述べました。「(トマホークの供与は)だいたい決めたようなものだ。ウクライナにトマホークをどう使うのか、どこに送るのか聞いてみたいし、聞かねばならない」。トランプ大統領は6日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」を供与するかどうかについて、「だいたい決めた」としながらも、ウクライナが「トマホーク」を使って何をするのか、用途を知りたいと強調しました。
また、事態の「エスカレーションは見たくない」と述べ、慎重な姿勢もにじませました。
さらに、ロイター通信が「トマホーク供与なら米ロ関係は破綻、プーチン氏が警告」と題して、次のように報道している(https://jp.reuters.com/world/ukraine/FE2NVDFF5FKCPAT7XGKZQIGFIU-2025-10-05/)。
ロシアのプーチン大統領は5日、トランプ米政権が巡航ミサイル「トマホーク」をウクライナに供与することを認めれば、米ロ関係の破綻につながると警告した。トランプ大統領は、8月にアラスカ州でプーチン氏と首脳会談した後もロシアがウクライナとの和平を一向に進めないことに失望感を表明。バンス副大統領は先月、首都モスクワを含むロシア領奥深くを攻撃できるトマホークを供与してほしいというウクライナの要請を米政府が検討中だと発言した。
こうした中でロシア国営テレビが伝えたところでは、プーチン氏は「トマホーク供与は米ロ関係、あるいは少なくとも両国関係に生じている前向きの動きを壊すことになるだろう」と述べた。トマホークは射程距離が2500キロに及び、ウクライナが入手すれば、モスクワだけでなくヨーロッパ・ロシア(ウラル山脈の西側)全体を攻撃できる。プーチン氏は2日にも、米軍の直接関与なしでトマホークは使用できない以上、ウクライナへの供与は「質的にエスカレーションの新たな段階を意味する」とけん制している。
ロシア側は米国からのトマホークの供与・使用について、ウクライナ戦争の本格的なエスカレーションにつながると再三再四、強い懸念の意を表明している。これらのことから、トマホークのウクライナへの欧州NATO加盟諸国を通じた供与はないと見るのが妥当だろう。時事通信は米国の政治サイト・アクシオスからの情報として、トランプ大統領とゼレンスキー氏が11日、電話会談したと伝え、ゼレンスキー氏が「良好かつ非常に生産的だった」と語ったと伝えているものの、「ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、モスクワが射程に入る米国製巡航ミサイル『トマホーク』を供与できるか否かを話し合ったと伝えた。決定がなされたかどうかには触れていない」と伝えている。
トランプ大統領は海千山千の取引王だから、「トマホーク供与説」は共和党内のウクライナ支援勢力向けの発言であって、実際のところ、トマホーク供与はウクライナ戦争を米露第三次世界大戦にまで引き上げる意味を持っているから、サイト管理者(筆者)としては、そういう悲劇まで冒してトランプ大統領がキエフ政権に対して欧州NATO加盟諸国経由で、トマホークを供与するなどのことは有り得ないだろう。
また、トランプ政権のトマホーク供与はいったん、英独仏など欧州NATO加盟諸国が購入してウクライナにローンで転売するという形になるが、ウクライナの返済能力はウクライナ戦争による経済、国土の崩壊で尽きており、欧州リベラル全体主義官僚独裁政権(欧州諸国国民の選挙を経ない欧州連合EUの欧州委員会とその傘下の官僚が欧州を支配している、実際はフォンデアライエン委員長独裁)も、①英仏独を中心に、対露経済制裁の跳ね返りによるエネルギー価格の高騰によるコスト・プッシュ・インフレで産業の競争力が著しく低下しており、国民も生活苦にあえいでいる②ウクライナに対する軍事・経済支援から財政が破綻しかけており、財政状況が極めて悪化している③無謀な移民受け入れで、国内の社会不安がただならない状況に陥っているーなどのことから、かつてのような「ウクライナ支援」一本槍でまとまり切れなくなっている。
つまり、欧州リベラル全体主義官僚独裁政権ももはや、ウクライナ支援が限界に来ているということだ。その最大の例は、フランスだ。フランスでは1958年にシャルル・ド=ゴール将軍がアルジェリア戦争を背景に第四共和政を事実上打倒し、強大な権限を持つ大統領が、下院で最大の議席を持つ政党の党首に組閣を命じ、大統領と内閣で国家を運営していくという第五共和制を新たに樹立した。しかし、フランスが上記の理由で財政状況が事実上破綻、国民に負担を強いる緊縮財政を強要しなければならなくなったことから、緊縮財政に強い不満を持つ国民の怒りを背景に、組閣ができなくなっている。
読売オン・ラインは、「(注:4度目の)組閣から一夜で辞表を提出した首相を再び任命…フランスの極右政党党首は『悪い冗談だ』」と題して、次のように報じている。
フランスのマクロン大統領は10日、辞表を提出したセバスチャン・ルコルニュ首相を新首相として再び任命した。ルコルニュ氏は改めて組閣作業に着手し、来年度予算の成立を目指す。辞任から再任まで異例の展開が続き、政治の混迷ぶりが浮き彫りになっている。(中略)
野党は不信任動議を提出する構えを見せる。極右の流れをくむ右派政党「国民連合」のジョルダン・バルデラ党首は、「悪い冗談だ」と首相の再任を批判した。
このため時事通信社によると、マクロン大統領に協力していた保守とされる共和党は、来春の地方選挙に備えて与党の中道連合との連立を解消すると発表した(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR113870R11C25A0000000/)。しかし、ルコルニュ首相の予算案には賛成するものの、「下院(定数577)での議席数は共和党が50、中道連合は161」で合計211票、過半数に当たる299票の獲得には、86票足りない。
小細工してもだめで、結局は、マクロン大統領辞任(10月の世論調査で支持率13%、不支持率79%)と大統領選挙実施説が支配的になっている。下院の総選挙も一応、考えられたが、かつて行ったマクロン大統領率いる中道右派と急進左派グループの連立内閣樹立には、フランス国民の51%が反対しているという(https://www.youtube.com/watch?v=q2qO9frQilU)。マクロン大統領が辞任決断を先送りにしていると、国債市場が待てなくなり、フランスの10年物国債金利は3%を超え、4%台に乗る。欧州諸国で最も10年物国債金利が高かったイタリアは、右派のジョルジャ・メローニ首相(女性)のもとでフランスより低くなってきている。
欧州リベラル全体主義官僚独裁政権はまず、フランスから崩壊し、次にドイツ、英国へと広がり、オールドメディアが極右としか伝えない右派勢力(注:実際は民衆のためのポピュリズム勢力=ポピュリズムとは政治変革を目指す勢力が既成の権力構造やエリート層を批判し、人民に訴えてその主張の実現を目指す民衆主義の思想潮流=フランス・国民戦線、ドイツ・ドイツのための選択肢、英国・リフォームUK)を中心に、右派勢力が結集して、米国のように政権を掌握する流れになるだろう。欧州リベラル全体主義官僚独裁政権崩壊の原因は、欧米諸国(米国はバイデン政権まで)が旧い冷戦思考を脱却できなかったためである。
こうした動きについて、国際情勢解説者の田中宇氏は10月8日に投稿・公開した「リベラル世界体制の終わり(https://tanakanews.com/251008liberal.htm、無料記事)」で、次のように指摘している。
戦後の英米覇権の根幹にあった「リベラル世界体制」が終わりつつある感じが強まっている。米国は、リベラルな民主党が(おそらく諜報界の謀略の結果として)極左化しており、極左をテロ組織として退治する極右のトランプが民主党を弱体化する流れが決定的だ。(トランプの左翼退治)
西欧の英仏独でも、リベラルエリート(中道左右)の政権が崩壊している。日本も極右な高市早苗が首相(注:首班指名選挙は20日月曜日が濃厚で、現在はまだ自民党新総裁の立場)になり、自民党のリベラル派は弱まった。中共も、トウ小平(鄧小平)が敷いた集団指導体制(党内リベラル)から習近平の個人独裁への転換が完了した。ロシアもウクライナ開戦後、欧米かぶれのリベラル派が急減し、プーチンの民族主義と非米化戦略が席巻している。印度も、ヒンドゥー民族主義(イスラム敵視な極右)のモディ(首相)が台頭し、リベラルな国民会議派は弱小に転落した。米国側も非米側もリベラル政体がどんどん弱まり、復権のメドがない。(続く英欧潰し)(中略)
米国の多極派(ロックフェラーなど)は、45年かけて冷戦を終わらせた。冷戦後、ソ連がなくなってロシアは低迷しつつリベラル化(英傀儡のオリガルヒが支配して自滅)し、中共(中国共産党が支配する中華人民共和国)もトウ小平(鄧小平)による親米化とリベラル標榜に転換した。世界中がリベラル化し、リベラルは世界支配の道具でなくなるかに見えたが、実はそうでなかった。多極派は、レーガンを動かしてドイツ再統合から欧州統合を演出し、EUを米国とは別の「極」に仕立てて世界の多極化を進め、米覇権を牛耳ってきた英国をドイツ主導のEUの中に「幽閉」して無力化しようとした。冷戦終結は、冷戦で英国支配下に置かれた多極派による英国系への反逆だった。
英国系はこれに対抗し、世界中の(英米傀儡以外の)諸国のリベラルになり切れない部分に「人権侵害」や「独裁」のレッテルを張り、米英EUが覇権勢力としてそれらの「諸悪」を経済制裁や政権転覆で退治していくリベラル覇権体制を構築しようとした。英国系は、東欧のユーゴスラビア解体に乗じ、旧ユーゴの中心で親露なセルビア(民族がロシアと同じスラブ系)が、国内のアルバニア系(コソボ人)や近隣のボスニャク人(なんちゃってムスリム)を弾圧していると敵視し、NATO(米軍)がセルビアを攻撃してコソボを助けるリベラル米覇権策を展開し、ドイツやEUが安保的に対米従属から出られないようにした。ドイツは英米の傀儡から出られず(米国も英傀儡なまま)、EUは英国系に支配され続けた。多極化は進まなかった。
米国の多極派は、次の策として、イスラエルの反リベラルなリクード系をテコ入れし、英国系の誘導でリベラル派のイスラエル労働党が進めていたパレスチナ国家創設(オスロ合意)を潰し、(労働党党首で首相の)ラビンを殺し、米欧がイスラム世界を敵にする新冷戦体制のテロ戦争の構図を構築した。リクード系は多極派の手引で米諜報界に入り込み(もともとユダヤ人は諜報界の元祖)、テロ戦争を勃発させる911テロ事件を引き起こし、イスラエルが英国系を押しのけて米覇権を牛耳る流れを作り出した。リクード系は、ネオコンなどとして米諜報界を牛耳った上で、意図的に準備不足なイラク侵攻など稚拙で過激な戦略を連発して米覇権を自滅させていった。(911と似たトランプの左翼テロ戦争)
リクード系(と多極派の連合体)は、英国系が目指していたリベラル覇権戦略を911で乗っ取って過激に稚拙にやって自滅させることで、英国系を無力化しようとした。その後、英国系のオバマが大統領(注:何も実績のないオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞した。ノーベル賞決定委員会は米英単独覇権派の傘下にあるのではないか)になってリクード系の米諜報支配を崩そうとしたが、ほとんどやれずに失敗した。そしてリクード系のトランプが登場した。リクード系と多極派は、英国系を自滅させるウクライナ戦争を起こすために2020年に民主党に不正選挙させてトランプを一回休みさせた。4年後にトランプが再選されて今年から帰り咲き、リベラル世界体制の破壊が一気に進んでいる。(Standoff)
田中氏の指摘する多極派と英米単独覇権派との戦いは、サイト管理者(筆者)の見方では、有神論に基づく国家と国民利益重視の伝統的保守右派と無神論に基づき、国家・国民の利益よりも自らの利益を最大化することを目的にするリベラル左派との戦いということになると思う。国際情勢は有神論が支配する展開になってきたと思われる。
AIに基づく第三次産業革命は米国か中国、それに東アジアで起きる
国際政治学者の藤井厳喜氏によると、アルビン・トフラーが「第三の波」で予告したAI技術に基づく本格的な第三次産業革命は米国から起きるという。その理由は、第一に米国は広大な国有地を保有しているが、その地中に石油や天然ガスの天然資源のほか、IT産業もしくはAI産業に必要なレアアースを含むレアメタル(最先端半導体製造に不可欠)が大量に埋蔵されており、民間企業に開放することなどで150兆ドル規模の資産を確保することができる(米国の連邦政府の債務残高は27兆ドル規模)。第二に、この巨額の新規資産を有効活用して、政府が管理・投資するソブリン・ウェルス・ファンドを第二の予算として新設し、①米国内の老朽した社会資本を大規模に最新鋭化する②AIを活用した地上・航空・宇宙からの米国防空システム(ゴールデン・ドーム)を政府主導で構築する③この過程で新たな技術・産業が米国内で生まれ、米国の産業社会を再活性化させるーなどの大構想を実現するーと見ているからである。
なお、サイト管理者(筆者)としてはAI産業のほか、①量子コンピューターの実用化(量子力学の原理を利用し、従来のコンピューターよりもはるかに高速な並列計算を可能にする次世代コンピューター)②核融合反応(原子核同士が合体する反応。 この際、非常に大きなエネルギーが発生する。 最も核融合反応を起こしやすいのは、 水素の一種である重水素=陽子1つと中性子1つで構成される水素の安定な同位体=と三重水素=陽子1個に中性子2個からなり、弱い放射線(ベータ線)を出す。自然界に広く存在し、水を構成する水素原子の代わりとなるため、水道水、雨水、体の中などにも含まれている=の反応と言われている)研究の進化と実用化に向けたスケジュールの形成ーなども今後の重要な課題と想定している。(
ただし、レアアースの埋蔵量は中国が世界第一で、中国の習近平国家主席はレアアースの輸出制限を行う予定だ(https://jp.reuters.com/markets/commodities/PL7WQREFUNJVTOOFTS543AO4O4-2025-10-09/)。このため、トランプ大統領は中国からの輸出品に100%の関税を課すと報復を予定している。
今後の産業発展で最も注目を浴びているのはAI産業であるが、その最先端半導体の製造技術は、ファブレス企業のAMDやApple(Mシリーズ、インテルのCPUから切り替えた)が生産を委託している台湾のTSMC(台湾積体電路製造股份有限公司)が保有しているが、副島貴彦氏の最新著作「中国はアメリカに戦わずして勝つ」(株式会社ビジネス社刊)によると、現在の最先端の半導体製造技術の主役は、①台湾のTSMC②GoogleのAndroidとは別のOSを搭載したスマートフォンを製造し、高度通信技術の特許を多数保有しているファーウェイ③AI用のグラフィック・プロセシング・ユニット(GPU)で大成長したNVIDIA(米国の会社だが、台湾人のジェンスン・ファン氏が社長・CEO)が保有し、ソフト技術ではオープン・ソースでAIソフトを開発した中国のDeepSeekという会社が非常に有力であるという。
なお、台湾は昔からASUSやMSI、GIGABYTE、ASROCKなどの会社がパソコンの基盤であるマザボードを政策・販売してきた実績があり、半導体記述には蓄積した技術がある。
トランプ大統領にとっては残念ながら、世界を席巻した米国のインテルはもはや最先端の半導体を製造する技術はないとのことだ。このことについては、Youtube・チャンネル登録者146万人の「パソコン博士TAIKI」チャンネルの「【大炎上】わずか1年前のインテル製CPU!サポート打ち切り宣言で大炎上」(https://www.youtube.com/watch?v=SWkTENnmMQU)に、初心者にも分かりやすく詳しく述べられている。インテルは相次ぐ高性能CPUの不祥事(CPUに書かれているマイクロコードの不具合により、CPUが壊れるという現象が世界的に起こった)のために経営が急激に悪化。加えて、NVIDIAがAI、ゲーム用に製造した外部GPU(グラフィック・コントロール・ユニット)を真似て製造したインテル製GPUも品質が悪く、市場に受け入れられなかった。このため、インテルは13万人いた従業員を取り敢えず、大量解雇して7万5000人まで減らしている。
要するに、世界最先端の半導体製造技術やAIソフト開発の技術は、中国と台湾が保有しているのである。ということで、中国・台湾の技術力・経済力は決してあなどれない。これに関連して、外務省出身でイラン大使を務め、防衛大学の教授もされたことのある孫崎享氏によると、科学・技術論文の引用件数が最も多い国は中国だという(注:参考サイトhttps://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20230818_n01/)。また、米国防省が「台湾有事」で米中戦争になった場合のシミュレーションを行い、すべて中国が勝ったことを認めたと指摘している。マクロ的にも購買力平価では中国は米国を抜いて世界第一位をキープしている。だから、反響右翼の人々の「中国崩壊論」を軽信してはならない。このため、副島氏は、「中国は台湾に(軍事)侵攻する気はない」。習近平政権は、台湾を攻めるのではなくて、平和に、静かに、台湾を自分の側に付ける。住民投票によって台湾省になる。中国は台湾をアメリカから取引で、即ち知能戦で奪い返す」と予測している。
なお、中国の習近平国家主席は重い病気にかかっているようで、副島氏は3期15年国家主席を務めた後は、政界第一線から退き、集団指導体制に入ると予測。そして、中国共産党内の中国共産主義青年団(共青団)系の勢力が大量に離党して、中国民主党という別の大政党を作り、「世界覇権大国であるための、デモクラシーの最低限の条件を満たすために、複数政党制となり、普通選挙を実施する」ようになると見ている。サイト管理者(筆者)としては、習近平国家主席はトランプ大統領やネタニヤフ首相、プーチン大統領とともに多極化勢力の要職を占めているのではないかと推測している。
【追記:10月12日午後16時30分】NVIDIAがインテルの救済に乗り出すことになっている。日経XTECHによると、トランプ政権に加えて、ファブレスメーカーのNVIDIAが製造工場を持つインテルの株式を4%取得(50億ド投資)し、データセンターやパソコン(PC)向けの半導体を共同開発することでも合意したという(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/11109/)。戦隊半導体製造分野で中国・台湾勢の代表格であるTSMCに遅れを取るのを回避したいという狙いがあるものと見られる。ただし、NVIDIAの社長・CEOは台湾人のジェンスン・ファン氏であるから、やはり、米中最先端半導体戦争では、中国・台湾勢が有利な位置を占めているように思われる。
米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は2025年9月18日、米Intel(インテル)に50億ドル(約7400億円)を出資することで合意したと発表した。データセンターやパソコン(PC)向けの半導体を共同開発することでも合意した。ソフトバンクグループ(SBG)や米政府に続き、エヌビディアがインテル救済に乗り出す。エヌビディアはインテルの普通株式を1株当たり23.28ドルで購入する。エヌビディアによるインテル株の保有比率は4%程度になると見られる。
経営不振にあるインテルを巡っては、SBG(ソフトバンク・グループ)が2025年8月19日、20億ドルを出資すると発表。同月22日にはインテルが米政府から89億ドルの出資を受けると発表した。インテルにとってエヌビディアはAI(人工知能)分野の競合だが、生き残りに向け手を組んだ。エヌビディアは米中対立を背景に中国事業に影響が出ており、半導体製造の国内回帰を打ち出すトランプ米政権への配慮が背景にあると見られる。
なお、最先端半導体製造をめぐっては、半導体製造装置(スマートフォンや家電などの基盤となる最先端半導体=コンピューター・ワークステーションでは、CPU=Central Processing Unit、中央演算処理装置=、GPU=Graphical Processing Unit、高速画像処理装置=、NPU=Neural Processing Unit、AI処理に特化した半導体=。スマートフォンではSoC=を、洗浄、成膜、回路パターンの転写(フォトリソグラフィ)、エッチング、検査、組み立てといった複雑な工程を経て製造するために使用される装置の総称)で、この分野では日本勢も東京エレクトロンのほか、アドバンテスト、SCREENホールディングス、ディスコなどが主要メーカーとして、国際的な競争力を持っており、強い。
このため、AI技術を含む最先端半導体製造競争では、米中に加え、日本(広くは東アジア)も絡んでくる。その中国はロシアと経済安保を中心とした中露同盟を結んでいる。ロシアはまた、北朝鮮とも露朝同盟を結んでいる。これまでの延長線上で、東アジア情勢について考察することはできない時代に入っている。
※米中対立は、台湾のTSMC争奪戦が中核であるから、中国が軍事力を使って台湾に侵攻し、台湾のTSMCを含む半導体製造関連メーカーを破壊するなどという「台湾有事」は有り得ない。
現在は、世界の多極化、多極化文明の時代に本格的に入っている。日本の新政権もその方向に動いて行かなければならない。高市早苗氏が首班に指名されればその期待はたしょうなりとも持てる(ただし、単なる反響右翼では日本の再生はできない)が、玉木雄一郎国民民主党が首班に指名されれば、結局のところ、財務省の言いなりになり、期待は持てない。
ただし、韓国の極左派の李在明政権は常軌を逸している。保守系キリスト教会の総裁クラスの責任者を投獄し、政敵を弾圧している。トランプ大統領は、李在明大統領に「(革命後の)粛清と弾圧を止め、信仰の事由を守る」よう強く要請したが、李在明大統領はトランプ大統領の要請を断った。韓国は法治国家ではなく、良く言っても情治国家、悪く言えば情動国家ということになってしまう。10月30日から11月1日にかけて韓国の慶州(古代朝鮮半島は三国時代の新羅の首都)で開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議=首脳会議で、日韓米中の首脳がどういう外交戦略を繰り広げるか、注視していかなければならない。