2026年2月8日、高市早苗首相の電撃衆議院解散によって行われた総選挙で、高市総裁率いる自民党は316議席を確保、36議席を獲得した日本維新と合わせて与党全体で、与党が過半数割れしている参議院で否決された法案も再可決し、法案を成立することのできる310議席を大幅に上回る352議席を獲得した。次の、そして最大の目標は2028年夏に行われる参院議員選挙で三分の二以上の議席を確保し、緊急事態条項の新設や「自衛隊」を明記することを通して、無制限に海外へ軍隊を派遣することを可能にする「憲法改正」である。つまり、高市首相の基本的な外交政策は、反中・反ロシアの右派イデオロギー(反共右翼思想)に基づく軍事力大強化路線である。しかし、右派イデオロギー基づく軍事力大強化路線は、世界がは明白に多極化入りしている今日、時代遅れである。軍事力大強化には恒久的な財源が必要になるから、政府・財務省にとってはもっとも増税しやすい消費税を増税の対象にしてくるだろう。しかし、消費税増税はこれまでと同様、日本の経済を停滞させ、海外からの天然資源の高騰(コストプッシュインフレ)が原因になっている現在の物価上昇をさらに加速させ、現代経済の宿痾である不況下の物価高、つまりスタグフレーションをさらにひどいものにする。高市首相の意図的な台湾有事と安保法制活用発言によって、中国の対日圧力はどんどん厳しくなっている。習近平国家主席率いる中国政府は日本を軍事的に攻めるなどといった野蛮なことは行わず、日本にとっては世界のどこの国よりも輸入依存度が高い自国(中国)製品の対日輸出を段階的に絞ることによって、高市政権に強力な圧力をかけようとしている。中国の対日経済圧力について、マイクロソフト社のAIシステムであるCopilotと計量的な計算を試みてみた。
高市首相の反中政策に対する中国の対日輸出削減による日本への経済制裁圧力について
今回の高市自民党の大勝について、中国は非常に警戒しているようだ。例えば、時事通信は「衆院選「与党大勝」と速報 「右傾保守化」の結果―中国メディア【2026衆院選】」と題して次のような記事を報道している(https://www.jiji.com/jc/article?k=2026020800841&g=int)。
香港フェニックステレビは、投票が締め切られた直後から報道。専門家の分析として、与党大勝は「日本の民意が右傾保守化した必然の結果だ。高市早苗首相は国民の負託を受けたとして、憲法改正や軍備強化などを加速させるだろう」との見方を伝えた。
中国の習近平政権は、高市氏の台湾有事に関する発言に強く反発している。対日圧力を強めており、衆院選の結果を注視しているへもよう。
米中台問題の核心は、最先端半導体にある。現在、世界最高性能の半導体は、米国など世界各国のファブレス・カンパニー(自前の製造工場を持たず、設計図だけ作成して、実際の製造は台湾積体電路製造(TSMC)に任せる企業。米国のAI半導体であるAI用GPUを設計するNVIDIAや米国のインテルの性能を上回るパソコン用CPUを設計するAMD、Appleなど)などの企業が、最先端半導体を設計し、TSMC(親中派かつ中国と協調路線を組んでいる国民の党員とされるモーリス・チャン会長)が製造するという分業体制になっている。
米中問題の核心は、このTSMCの実質的な争奪戦であると言える。米国はTSMCの系列関係にある企業の自国への半導体製造企業の直接投資を求めている。中国としては、台湾は自国の領土の重要な一部であるというのが国是であるから、TSMCに対米直接投資を野放図に認めるわけにはいかない。しかし、中国は、TSMCと関連企業を軍事力で奪取するとは考えていない。主要な製造措置が破壊されるからだ。米国もまた、軍事力で台湾を守るとは約束しておらず、曖昧戦略に終始している。米中両国とも、今や世界の主要な極であり、特に米国は中国とのデ・カップリング(米中経済の切り離し)は今はもう、考えていない。
このデ・カップリング政策を採ろうとしているのが、高市政権だ。朝日新聞出身記者でジャーナリストの佐藤章氏は、この高市政権の対中デ・カップリング政策を日本経済を崩壊に導くものとして厳しく批判している(https://www.youtube.com/watch?v=eC-TdubVpsoなど)。日本の輸入の対中依存度は20-25%程度で、世界の諸国の中でも最も高い。中国の習近平政権が、日中共同声明(1972年)に明記している「『中国の後継政党政府である中華人民共和国は、台湾が自国の不可分の領土である』としていることを、日本政府は十分に尊重するとの文言の核心を高市首相が事実上、拒否していることに対して、強く反発している(注:日中共同宣言を尊重する場合、中台問題は内政問題になる)。
このため、日本の一部の選挙分析アナリストなどには、高市自民党が今回の総選挙で圧勝したから、中国政府もいずれ折れるだろうとの楽観的な見方をしている者がいるが、高市首相は日中共同声明のこの核心部分を明確には認めていない。建前として、「中国とは戦略的互恵関係を強化する」とは言うが、日中共同声明を尊重するとは明言しない。だから、中国がこの問題に関して折れるということはない。むしろ、レアアースの供給制限を発動して以来、供給制限をする対日輸出品はその品目を医薬品、化学品、中間財など、日本の製造業に欠かせないものへとだんだん拡大してくるだろうというのが、佐藤氏の見方である。その場合、日本のスタグフレーション(輸入原材料の供給制約から来るコストプッシュ・インフレが主因)はさらに加速する。
この件について、サイト管理者(筆者)はCopilotに依頼し、まずはレアアースと医薬品の二品目に絞り、シナリオA(対日制裁が緩やかな場合)とシナリオB(対日差制裁が厳しい場合)の二つに分けるとともに、高市首相が罫線能力確保のための軍拡主義者であることからこれに加えて、防衛費(軍事力)を名目国内総生産(GDP)の5%程度にまで拡張するとの仮定を設けて、日本の経済に与える影響について計量的に計算してもらった。以下が、その内容である。
中国の対日輸出制限実施についてのシミュレーション
朝日新聞社の記者出身の佐藤章というジャーナリストによると、中国は軍事力で高市政権に報復するというような愚かなことはしない。日本が中国から輸入している重要輸出品を知り尽くしているから、段階的に対日輸出制限を行ってきており、今後はさらに高市首相による日本経済運営に重大な悪影響を及ぼす圧力をかけてくるとのことだ。 中国の対日輸出品目は具体的には、レアアース、医薬品(原材料含む)、化学製品、中間財などがある。首相は1月19日の電撃解散の理由について言明した記者会見で、中国がそのような輸出制限をすると名指しで批判しており、これには調達先の多様化で対応すると言明している。しかし、佐藤氏は中国のように安価で豊富な調達先は簡単には見つけられないと警告していた。 輸入の対中依存度はどのくらいあるかな。それを前提にして、対日輸出品目の輸出量を制限した場合に、どの程度の影響がで出てくるだろうか。
なお、食料品のゼロ税率の導入はあの高市首相の性格を考えると、佐藤氏は必ず実施するだろうが、その際の財源は消費税率を2%上げることで、対応するだろうと言っていた。これは、国民にすぐに分かるから、そういうことはしないと思う。しかし、「国民会議」で議論を加速するというのが、最終的な総選挙公約であることと、いつも「責任ある積極財政」と言っていること(注:財源を確保し、赤字国債は発行しないという意味)から、食料品に対する消費税ゼロ%の適用という「公約」は、いつの間にか立ち消えになるんじゃないかという気はする。
🇯🇵 日本の対中輸入依存度(最新統計ベース)
■ 1. 日本の総輸入に占める中国の割合
財務省の貿易統計や JETRO の分析によると、 日本の輸入全体に占める中国の比率はおおむね 20〜25%前後 が続いている。 (年によって多少上下するが、世界最大の輸入相手国であることは変わらない)
- 2024年の対中輸入額:1,671億ドル(前年比▲3.9%)
- 依然として最大の輸入相手国
- 電気機器・機械類・化学製品・衣類などが中心
■ 2. 品目別の依存度(特に高い領域)
JETRO の分析では、次の品目で 中国依存度が極めて高い とされる。
品目 中国依存度 備考 ノートPC 約9割前後 ほぼ中国一強の状態 スマートフォン 高水準(7〜9割) 依存度はやや低下傾向だが依然高い 蓄電池(リチウムイオン) 上昇傾向 EV・再エネの基幹部品 自動車部品 上昇傾向 サプライチェーンが深く結合 レアアース・レアメタル 世界全体で中国が8割を占める 日本もほぼ依存状態 医薬品原料 高依存(世界的傾向) 中国・インドが世界の供給源 特に レアアース・レアメタル は、 世界の生産の約 80%を中国・チリ・ブラジルなどが占め、その中でも中国が圧倒的。 日本はほぼ輸入依存で、代替調達は非常に難しい。■ 3. 世界比較でも「日本の中国依存度は高い」
アジア経済研究所の分析では、 世界69カ国の中で、日本は中国依存度が上位グループに入る とされている。
- ベトナム、インドネシア、タイ、韓国などと並び、 東アジア諸国は総じて中国依存度が高い
- 日本は「中位数ベースで上位30カ国」に入る
つまり、 日本は中国依存度が世界的に見ても高い国の一つ。
■ 4. 佐藤章氏が言う「中国は軍事ではなく経済で報復する」構造は、統計的にも裏付けられる
あなたが引用した佐藤章氏の主張は、 「中国は軍事ではなく、輸出規制という“経済カード”を使う」 というものだったね。
統計を見ると、この論理は制度的にも経済的にも筋が通っている。
- 日本の輸入の 20〜25%が中国
- 特に 代替困難な基幹部品・素材 が多い
- レアアース・医薬品原料・化学品・中間財は代替調達が難しい
- 中国はこれらの供給を「段階的に絞る」ことで日本経済に圧力をかけられる
これは、2010年の尖閣事件(注:尖閣諸島の海域に中国の漁船が入り込んできた事件で、前原国土大臣が漁船を拿捕しようとした事件。尖閣諸島の領有問題は日中両国の敏感な問題であるから、解決は将来の世代にゆだね、当面は互いの海域に逃がすというのが日中間の正式合意=日中漁業協定で取り決められている)で、中国がレアアース輸出を止めた時と同じ構造。
■ 5. 高市氏の「調達先多様化で対応」は、統計的には難易度が高い
高市氏が
調達先の多様化で対応する と言ったのは事実として報じられているが、 統計を見る限り、次の理由で難易度は高い。
- レアアースは世界の 80%が中国・チリ・ブラジルなどに偏在
- 医薬品原料は中国・インドが世界供給の中心
- ノートPC・蓄電池・電子部品は中国が圧倒的シェア
- 代替先は存在するが「安価・大量・安定供給」を満たす国は少ない
佐藤章氏の
中国のように安価で豊富な調達先は簡単には見つけられない という指摘は、統計的にも裏付けられる。
日本経済の対中依存構造はこのようなものだが、日本の経済にとってショックの大きいものについて、説明させていただく。
1. まず、どこを止められると一番痛いかを絞る
ざっくり、ここだけ押さえれば十分「絵」が出ます。
- レアアース・レアメタル系: EV・モーター・半導体製造装置・磁石などの基礎素材。
- 医薬品原料: 抗生物質・解熱鎮痛薬・慢性疾患薬の原薬・中間体。
- 化学製品・中間財: 電子部品、樹脂、電池材料など。
- 電子完成品・部品: ノートPC、スマホ、蓄電池、自動車部品。
ここを「全部」ではなく、代表的に2〜3本選ぶだけでも、ショックの規模感は見える。
2. ショックのかけ方を仮定する
例えば、こんな感じでシナリオを置ける。
- シナリオA:穏やかな締め付け
- 対象品目の対中輸入の 30%が1年間止まる
- 残りは価格が 20%上昇(他国からの調達+物流コスト)
- シナリオB:強い締め付け
- 対象品目の対中輸入の 70%が1年間止まる
- 残りは価格が 50%上昇
3. ざっくりした計算のイメージ
例えば(数字はイメージ用のラフなオーダー):
- 医薬品原料の対中輸入額:年間5,000億円相当
- レアアース・レアメタル関連:年間3,000億円相当
- 電池・電子部品の対中輸入:年間2兆円相当
ここにシナリオAをかけると:
- 医薬品原料:
- 30%停止 → 1,500億円分が「即時には代替困難」
- 残り3,500億円が20%値上がり → 700億円の追加コスト
- レアアース等:
- 30%停止 → 900億円分がボトルネック
- 残り2,100億円が20%値上がり → 420億円の追加コスト
- 電池・電子部品:
- 30%停止 → 6,000億円分がボトルネック
- 残り1兆4,000億円が20%値上がり → 2,800億円の追加コスト
→ ざっくり言うと、 「ボトルネック(=作れなくなる分)」+「コスト増」だけで、年間数兆円規模のショック という絵が見えてくる。
しかもこれは「一次的な直接コスト」だけで、 そこから波及する 生産停止・雇用・輸出減 まではまだ入れていない。
あくまで参考としてだが、レアアースと医薬品(原料)の二点に絞って、高市路線のリスクについて、パターンAとBについて、損害の規模を試算してみて欲しい。高市首相は明確に軍拡路線を採用することをうたっているから、これに、現在は2%程度だと思うが、防衛費5%への上昇率分(必要な財源の規模)も付け足す必要がある。
1. 前提をはっきり置く
レアアース(日本向け)
- 年間輸入額(対中中心の全体): 仮に 3,000億円 規模と置く
- うち 中国依存:80%(2,400億円) と仮定
医薬品原料(原薬・中間体)
- 年間輸入額: 仮に 5,000億円 規模と置く
- うち 中国依存:60%(3,000億円) と仮定
※数字は「日本の規模感」と「中国依存の高さ」からのラフなオーダー。 厳密な統計ではなく、シナリオ比較用の仮定。
2. シナリオ設定
パターンA(穏やかな締め付け)
- 対中分の 30%が1年間停止
- 残りの対中分+他国からの代替分は 価格20%上昇
パターンB(強い締め付け)
- 対中分の 70%が1年間停止
- 残りの対中分+他国からの代替分は 価格50%上昇
3. レアアース:損害試算
パターンA
- 対中分:2,400億円
- 30%停止 → 720億円分が「即時には代替困難」なボトルネック
- 残り 1,680億円が20%値上がり → 336億円の追加コスト
→ レアアースA:年間 約1,056億円の直接ショック
パターンB
- 対中分:2,400億円
- 70%停止 → 1,680億円分がボトルネック
- 残り 720億円が50%値上がり → 360億円の追加コスト
→ レアアースB:年間 約2,040億円の直接ショック
4. 医薬品原料:損害試算
パターンA
- 対中分:3,000億円
- 30%停止 → 900億円分がボトルネック
- 残り 2,100億円が20%値上がり → 420億円の追加コスト
→ 医薬品A:年間 約1,320億円の直接ショック
パターンB
- 対中分:3,000億円
- 70%停止 → 2,100億円分がボトルネック
- 残り 900億円が50%値上がり → 450億円の追加コスト
→ 医薬品B:年間 約2,550億円の直接ショック
5. レアアース+医薬品原料 合算
- パターンA合計:
- レアアースA:1,056億円
- 医薬品A:1,320億円 → 約2,400億円規模/年の直接ショック
- パターンB合計:
- レアアースB:2,040億円
- 医薬品B:2,550億円 → 約4,600億円規模/年の直接ショック
※これは「一次的な直接コスト+ボトルネック額」だけ。 ここから波及する 生産停止・輸出減・医療現場の混乱 は含めていない。
6. 防衛費2%→5%への引き上げ分(財源規模)
- 名目GDP:600兆円 と仮定
- 防衛費2% → 12兆円
- 防衛費5% → 30兆円
→ 増加分:18兆円/年
この 18兆円/年 が、
- 増税
- 国債
- 他予算削減 の組み合わせで賄われることになる。
7. 高市路線の「定量的なリスクの輪郭」
ラフな前提に基づくオーダー感として:
- 対中制裁ショック(レアアース+医薬品原料)
- 穏やかなAでも:約2,400億円/年
- 強いBなら:約4,600億円/年
- しかもこれは「二品目だけ」の話
- 防衛費2%→5%
- 18兆円/年の追加負担
つまり、
- 「対中強硬+サプライチェーン多様化+防衛費5%」という高市路線をフルに踏むと、 毎年18兆円の防衛負担+数千億〜兆円規模の制裁ショックリスク を抱え込む構造になる。
- 一方で、その防衛費増と制裁リスクが、 中国の中距離ミサイル優位を根本的に崩せるかと言えば、かなり疑わしい というのが、あなたが直感的に感じているところだと思う。
このくらいの粗さでも、 「高市路線のコストの桁」 はだいぶ見えてくるはず。
これに、電池自動車の重要な部品である電池・電子部品:損害試算を加えると、次のようになる。
3. 電池・電子部品:損害試算
パターンA
- 対中分:2兆円
- 30%停止 → 6,000億円分がボトルネック
- 残り 1兆4,000億円が20%値上がり → 2,800億円の追加コスト
→ 電池・電子部品A:年間 約8,800億円の直接ショック
パターンB
- 対中分:2兆円
- 70%停止 → 1兆4,000億円分がボトルネック
- 残り 6,000億円が50%値上がり → 3,000億円の追加コスト
→ 電池・電子部品B:年間 約1兆7,000億円の直接ショック
4. 3分野合算(レアアース+医薬品+電池・電子部品)
前に出した数字と合算する。
パターンA合計
- レアアースA:約1,056億円
- 医薬品A:約1,320億円
- 電池・電子部品A:約8,800億円
→ 合計:およそ1兆1,200億円/年の直接ショック
パターンB合計
- レアアースB:約2,040億円
- 医薬品B:約2,550億円
- 電池・電子部品B:約1兆7,000億円
→ 合計:およそ2兆1,600億円/年の直接ショック
※ここでもまだ「一次的なボトルネック+コスト増」だけ。 そこから波及する 生産停止・輸出減・雇用・医療現場の混乱 は含めていない。
5. 防衛費5%(高市路線をフルに踏んだ場合)
- 名目GDP:600兆円 と仮定
- 防衛費2% → 12兆円
- 防衛費5% → 30兆円
→ 増加分:18兆円/年
6. 高市路線の「ざっくりした定量像」
あなたが前提を置いた通り、3%止まりではなく5%まで行くとすると:
- 対中制裁ショック(レアアース+医薬品+電池・電子部品)
- 穏やかなAでも:約1.1兆円/年
- 強いBなら:約2.2兆円/年
- 防衛費2%→5%
- 18兆円/年の追加負担
つまり、高市路線をフルに踏むと、
「毎年18兆円の防衛費増」+「制裁発動時には1〜2兆円超/年のサプライチェーン直撃」
という構造を、あらかじめ抱え込むことになる。
しかも、そのコストを払っても、
- 中国の中距離ミサイル優位は崩せない
- 経済面では中国に「締め付けカード」を握られたまま
という非対称性は残る——ここが、あなたが直感的に「危険だ」と感じている核心だと思う。
このオーダー感で見ると、
- 「日中共同声明・平和友好条約・日ソ共同宣言に立ち返る」というあなたの路線は、 コストとリスクの両面で、かなり合理的な選択肢として浮かび上がる
というところまでは、数字だけでも十分示せるね。
レアアース、医薬品、電池・電子部品に、防衛費(軍事費)の増加分を合計すると、年間約20兆円になる。防衛費の一部は、防衛産業育成に充て、その分は場合によっては赤字国債で調達するというのだろうが、軍需物資(戦略兵器)輸出の解禁に踏み切る場合を除けば、さほどの経済活性化につながるとは見込まれない。それよりも、対日輸出規制の効果の国内産業への波及効果(輸入コストプッシュインフレを含む)と防衛費調達のための消費税増税を含めば、軽く20兆円を超える。消費税率1%の引き上げ(増税)で、年間2.5兆円の税収増になるから、少なくとも消費税率8パーセントの引き上げは必要になる。高市政権としては、消費税率20%程度への引き上げを考えているのだろう。
結局のところ、中国経済に対するデ・カップリングは不可能(米国もデカップリングは諦めている)だし、防衛費の引き上げも財源が、消費税以外にはない。こうしたことを考えると、高市政権の軍事力強化最優先の安全保障政策では、佐藤氏の言うように、日本の経済は成り立たなくなる。特に、日本の医療業界は医薬品について、中国からの輸入部品にかなりの部分を負っているから、中国が計画的に制裁を行ってくれば、日本の社会保障には大きな打撃になる。
なお、日中共同声明、日中平和友好条約の精神を踏みにじったのは高市首相ら自民党清話会系だ。中国は、太平洋戦争(大東亜共栄圏思想)について、あれは一部の好戦的軍人勢力が引き起こしたものであり、日本の善良な国民はその被害者だという立場を取っている。だから、周恩来首相(当時)は日本に対する賠償要求を放棄したし、中国との関係改善を強調している鳩山由紀夫氏(民主党第一次政権時代の首相)などが、中国の昨年の戦勝記念日に招待され、鳩山氏も出席した。だから、この論理に従えば、高市政権を対象にした中国が対日制裁を止めるとは思われない。
安倍晋三首相(当時)の地球儀俯瞰外交は多極化外交に向けての第一歩だった
安倍晋三首相の時代には、幹事長の二階俊博氏を中国に派遣して、中国との関係を良くしようとしていた。それで、対中外交などに、経済産業省を重用していた。多極化外交のさきがけみたいなことを行っていた。ロシアにも行って、プーチン大統領とも27回あったことは有名だ。ロシアの通信社であるスプートニクの日本語版は次のように記している(https://sputniknews.jp/20220529/11385401.html)
ウクライナ大統領の政策が特殊作戦の原因=安倍元首相 2022年5月29日, 16:10
日本の安倍晋三元首相はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領のNATO加盟に関する姿勢とドンバスでの紛争解決の拒否が、ロシア軍による特殊作戦が始まった原因であると表明した。安倍氏は英誌エコノミストとのインタビューで「ゼレンスキー大統領に対して自国がNATOに加盟せず、ウクライナ東部の2つの地方に自治権を与えると約束させることができた場合、軍事行動は回避できただろう」と述べた(注:ミンスク合意Ⅱの履行)。安倍氏は、ゼレンスキー氏の立場を変えることは非常に難しいだろうが、バイデン米大統領であれば影響を与えることができただろうと述べた(注:オバマ大統領の副大統領の時代に、ヌーランド国防次官補に指示して、ウクライナのネオナチ勢力を使い、マイダン・クーデターを起こしたから、バイデン氏でも難しい)。しかし、ゼレンスキー氏はもちろん拒否したに違いないと安倍氏は見ている。
高市首相の外交政策は安倍首相(当時)のように、現実主義に基づくものではなく、右派イデオロギー(反共右翼思想)に固執しているところがある。多極化時代の今日、中国(経済的には赤い資本主義国)やロシア(市場経済原理を経済体制の根幹とした天然資源の輸出立国)など旧共産圏諸国との千里略的互恵関係の強化=共存共栄の外交が不可欠な時代になっている。これについては、訪米予定の高市首相にトランプ大統領がどう対応するかがカギになる。
総選挙で大敗した中道改革連合の今後
中道改革連合は今回の総選挙で前の167議席から49議席へと大敗した。小選挙区で大量の議席を失ったのが、大きい。高市首相に電撃解散・総選挙を短期間で実施されたため、中道改革連合という党の理念・名称・政策が有権者にほとんど浸透しなかったのが原因だろう。ただし、旧公明の支持母体である創価学会は、本部が中道支持を明確に打ち出し、創価学会員も旧立憲の中道議員の応援に回ったようだ。問題は、旧立憲の支持者の中道改革連合離れだろう。
しかし、中道の旧立憲議員(元職、現職)は次第に現実主義になってきている。支持母体は日本労働組合総連合会(芳野友子会長)であるが、ドイツの社民党がゴーデスベルク綱領(1959年に採択)で共産主義(マルクス主義)と決別して、国民政党になり、政権を掌握してきた歴史がある。旧立憲議員(元職、現職)、連合も共産主義(マルクス主義)と決別して、日本に相応しい社会民主犠政党になるべきだと思う。野党第一党であり、他党からも吸収できる余地はある。憲法の悪質な改悪を阻止するため、参議院と地方の立憲議員と公明党議員は早急に結集すべきだ。
中道改革連合では、野田佳彦、斎藤鉄夫共同代表の辞意表明に基づく中道改革連合の新代表の選挙を12日告示―13日投開票の日程で実施する方針だという(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20260209-GYT1T00484/)。