トランプ大統領はオランダのハーグ(日本との時差7時間)で開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の場を借りて午後16時ころ演説を行い、イスラエルとイランの「12日間戦争」は完全に終わった」と宣言、イランでの核兵器開発禁止に向けて、来週にも米国とイランとの高菅が交渉を再開すると宣言した。今回の12日間戦争はイランの制空権を掌握したイスラエルの圧勝、イランの大敗北で終わった。イスラエルは今後、革命防衛隊を使って国内の利権を維持する最高指導者ハメネイ師らのイスラム高位法学者の統治が終わりを迎え、イランの民衆レベルでのイスラム信仰共同体から選挙で選出された改革派(要するに、トランプ大統領と取引・交渉が出来ること)のペゼシュキアン大統領らが権力を掌握するようになり、核の利用は原子力発電など平和利用に限ることになるだろう。加えて、ハメネイ師らがはマスを通して実現に固執してきた「パレスチナ国家構想」の抹消を黙認することで、イスラエルとの外交関係の修復に取り組むことになるだろう。このことは、イスラエルとサウジアラビアやイランとの「拡大アブラハム合意」(トランプ大統領が推進したアブラハム合意の完成形態)とも呼ばれる外交協定が結ばれることになり、中東に真の和平がもたらされることになる。
最良の展開はイランの内部改革によるアブラハム合意の完成
オールド・メディアならどこでも報じているが、ハーグでのトランプ大統領の記者会見について、NHKの報道を紹介しておく(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250625/k10014844641000.html)。
「戦争は終わった 再び応酬しあうことはない」
この中でトランプ大統領はイスラエルとイランの停戦合意をめぐり「『12日間戦争』は終わったと考えている。彼らが再び応酬しあうことはないだろう」と述べました。また、アメリカ軍が特殊な爆弾、バンカーバスターなどを使ってイランの核施設に対して行った攻撃をめぐり「あの攻撃が戦争を終わらせた。実際、広島や長崎を見れば、あれによって戦争を終わらせたことがわかる。これは違った形で戦争を終わらせたがとても壊滅的だった」と主張しました。「来週 イランと話すことになる」
トランプ大統領は「われわれは来週、(注:イランでの核開発の禁止をめぐって)イランと話すことになる。合意に署名するかもしれない」と述べました。また「われわれがイランに求めるのは、これまでと同様、核を持たせないということだ」と述べました。「イランの核施設 完全に破壊」
また、アメリカ軍が攻撃したイランの核施設の状況について、「完全に破壊され、トンネルに入れないほどだ。全体が崩壊している。私はすべての核関連のものがその下に埋もれていると思う。われわれは非常に早く実行したため、彼らはわれわれが来ると聞いた時、動けなかった」と述べました。
今回のイスラエルとイランの「12日間戦争」は、イランの制空権を握り、「核施設(原子力発電関連施設かも知れない)」はもちろん、レーダー網やエネルギー施設のほか、革命防衛隊の司令官やイラン保守派高菅のほか、原子力科学者多数を殺害したイスラエルの圧勝だった。例えば、ロイター通信は、「イランのフォルドゥ核施設、『非常に重大な』損害予想=IAEA」と題する次のような報道を行っている(https://jp.reuters.com/markets/commodities/2UU7D7VBYRLZ3DVF6OORZD3VIA-2025-06-23/)。
[ウィーン 23日 ロイター] - 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は23日、米軍が22日に空爆したイラン中部フォルドゥのウラン濃縮施設について、地下部分に「非常に重大な」損害が発生したと予想されるが、「現時点ではIAEAも含め、誰も被害を完全に把握できる立場にない」と述べた。IAEAの緊急理事会で表明した。IAEAはイスラエルが6月13日にイラン核施設への軍事攻撃を開始して以来、イランで査察を実施できていない。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は23日、米軍が22日に空爆したイラン中部フォルドゥのウラン濃縮施設について、地下部分に「非常に重大な」損害が発生したと予想されるが、「現時点ではIAEAも含め、誰も被害を完全に把握できる立場にない」と述べた。フォルドゥの衛星写真、提供写真(2025年 ロイター/MAXAR TECHNOLOGIES) 同氏は「使用された爆発物の積載量と、遠心分離機が振動に極めて敏感な性質であることを考えると、非常に重大な損害が発生したと予想される」と述べた。IAEAによると、イランの高濃縮ウラン保有量は400キロを超え、濃縮度をさらに高めれば核爆弾9発分に相当するが、この濃縮ウランの備蓄が現在どのような状況にあるかが未解明の問題になっている。イランは核開発は平和利用目的だと主張している。
ロイター通信はまた、「フォルドゥ核施設に深刻な被害か、衛星画像 (ただし)確認は困難とも」と題する報道記事(https://jp.reuters.com/world/us/HPVXRNXHTZKJTAGEQZ44BVSB7A-2025-06-22/)で、専門家の見解を次のように述べている。
[ワシントン 22日 ロイター] - 米国が実施したイラン核施設への攻撃について、専門家は22日、商業衛星画像からフォルドゥの地下核施設と遠心分離機が深刻な被害を受け、破壊された可能性もあるとの見方を示す一方、確認はできていないと述べた。元国連核査察官のデービッド・オルブライト科学国際安全保障研究所所長は「大型貫通爆弾(MOP)で突き抜けた」とし、「施設はおそらく破壊されただろう」と述べた。
写真は米国による攻撃後のフォルドゥの地下核施設の衛星画像。22日撮影。MAXAR TECHNOLOGIES提供(2025年 ロイター) しかし、CNAコーポレーションの衛星画像専門準研究員デッカー・エベレス氏は、地下の破壊については確認できていないと指摘。数百台の遠心分離機が設置された空間は「あまりに深い場所にあるため、衛星画像を基に被害の程度を評価することはできない」と述べた。イランは今回のような攻撃から身を守るため、核施設の多くをフォルドウの山岳地帯を含む地下深くに埋設している。
衛星画像には地中貫通弾(バンカーバスター)が山を貫通したと思われる6つの穴が写っている。
また、ブルームバーグも「イランが核施設攻撃被害を初めて確認、米空爆で『ひどく損傷』」と題する記事を公開している(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-25/SYETSAT1UM0W00)。
米軍の空爆を受けた後のイラン・イスファハン核技術・研究センター(22日) Source: Satellite image ©2025 Maxar Technologies イラン外務省のバガイ報道官は25日、米軍による空爆で国内の核施設が「ひどく損傷」したと明らかにした。イランの核開発計画がどの程度打撃を受けるのかを巡り議論が高まる中、イランが初めて損傷に言及した。バガイ報道官はアルジャジーラTVとのインタビューで、「われわれの核施設はひどく損傷した。それは間違いない」と述べたが、それ以上の詳細には言及しなかった。当局が状況を引き続き調査中だという。また、米国の攻撃は、国際法とイランが加盟する核兵器不拡散条約(NPT)に対する「重大な打撃」だと付け加えた。
米軍は22日、イラン国内3カ所の核施設を標的に10発以上の「バンカーバスター(地中貫通爆弾、MOP)」を投下した。米国防総省は地下に設置された核開発プログラムの中核部分を空爆が無力化するには至らなかったとの報告をまとめたが、トランプ米大統領はこれを否定した。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、フォルドゥにある主要な核施設では「非常に深刻な損害が発生したと予想される」と述べた。
また、ロイター通信はイスラエルのイラン攻撃で負傷した革命防衛隊の司令官が結局、重体に陥り、死亡したと伝えた(https://jp.reuters.com/markets/commodities/ATUD7VH67JNQNJSJHLYZANBN6Q-2025-06-25/)。
[カイロ 25日 ロイター] - イラン国営メディアは25日、同国革命防衛隊のアリ・シャドマニ司令官がイスラエル軍の同国攻撃中に受けた傷が原因で死亡したと報じた。国営メディアによると、革命防衛隊司令部は同司令官の殺害に対し「厳しい復讐」を誓った。イスラエル軍は6月17日に、イランの戦時参謀総長で最高司令官でもあるシャドマニ氏を殺害したと発表していた。
イラン革命防衛隊のアリ・シャドマニ司令官=Wikipedia
当初はオールド・メディア(特に日本)も、米軍のB2によるバンカバスター(地下貫通弾)を使った「イラン核施設攻撃」は、事前にイランが核濃縮施設を別の場所に移動させていたため、大した打撃は与えられていないとする報道が多かったが、ここに来てイランが受けた打撃が非常に大きかったことを予想させる報道が多くなっている。国際情勢解説者の田中宇氏は、イランは核開発は行っていないとしている(原子力発電所のためのウラン濃縮との見立て)し、イラン側も核開発は行っていないとしているが、ウラン濃縮施設を地下奥深くに建設するというのは、やはり何かあるのではないかと疑いたくなる。
国際情勢アナリストの及川幸久氏はYoutubeのTHE Coreチャンネルで、米国の諜報機関のトップであるトゥルシー・ギャバード国家情報長官が次のように語っているとしている(https://www.youtube.com/watch?v=1s6ZlQVFSr8&t=737s)。イランが核弾頭の組み立てを最終決定すれば、数週間から数か月で製造できるとのことだ。ただし、それでも現時点でイランが核兵器を有していないことは確かだ。なお、核兵器を保有している国は、米国、ロシア、イギリス、フランス、中国の5常任理事国に加えて、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国。そして、イスラエルの人口は1千万人足らずで、イランの9千万人よりははるかに少ない。アイアンドームが核を搭載した短中距離ミサイルから自国を守れなければ、イランが脅威になることは確かだ。
こうした報道内容などからすると、イランのハメネイ師を頂点とするイラン・イスラム革命による共和政体の問題が問われてくる。その中でも問題なのは、ハメネイ師を筆頭とするイスラム教(シーア派)最高法学者(カトリックの枢機卿、仏教の高層に相当)がイランの統治能力を有していることと、彼らが支配し、利用する「革命防衛隊」だ。GoogleのAIは次のように説明している。
イラン革命防衛隊は、イランの最高指導者に直結する軍事組織であり、国内の治安維持や国境警備、対テロ作戦などを担当しています。また、関連企業を通じて経済活動にも深く関与し、エネルギーや建設分野などで利権を握っています。
詳細:
軍事組織としての役割:
革命防衛隊は、イランの正式な軍隊である「イラン・イスラム共和国軍」とは別に、独自の指揮系統を持つ組織です。
経済活動への関与:
革命防衛隊は、関連企業を通じて、エネルギー、建設、金融、鉱業、通信など、幅広い分野で経済活動を展開しています。
利権構造:
革命防衛隊は、これらの経済活動を通じて、莫大な利益を得ているとされています。特に、イランの経済を支える重要な分野で利権を握ることで、イランの経済政策にも影響力を行使していると見られています。
中東情勢への影響:
革命防衛隊は、周辺国の武装勢力に武器や資金を提供し、中東地域の不安定化に加担しているとされています。
国際社会からの批判:
革命防衛隊は、テロ組織への支援や、人権侵害に関与しているとして、国際社会から批判されています。イラン革命防衛隊の経済活動への関与は、イランの政治、経済、社会に大きな影響を与えています。その活動は、イラン国内だけでなく、中東地域全体の安定を揺るがす要因の一つとも言われています。
イラン・イスラム革命によるイスラム共和政体の内実とは、ハメネイ師を頂点とするイスラム教シーア派最高峰学者と革命防衛隊が癒着した利権構造なのだろう。イラン国民もこれに気づいているから、ヘリコプター事故で死亡した故イブラーヒーム・ライーシー大統領の後任を決める大統領選挙が2024年5月19日に行われたが、改革派(欧米諸国と協調路線を取る人物の意味だが、要するにトランプ大統領と交渉・取引ができる人物)のペゼシュキアン大統領(1,638万4,403票)が保守強硬派のジャリーリー候補(1,353万8,179票)を破り、イランの最高指導者の一翼を担う大統領に選出された(総投票数は3,053万157票で投票率は49.8%、https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/07/461e1ee639dca24f.html)。
今回、トランプ大統領が明言したイラン側との「核開発」をめぐる協議は、トランプ政権の高菅とペゼシュキアン大統領政権の高菅同士で行われるものと見られる。イラン・イスラム革命によるイスラム共和政体には国民の不満が鬱積しているようだ。CNNは、「崩れたイランの『無敵神話』、国内の締め付け強化に懸念」と題する次のような報道を行っている。
(CNN) イランの「無敵」のイメージは13日、ものの数時間で崩れ去った。イスラエルはイラン領の奥深くへ突如、前例のない攻撃を仕掛けてイランの安心感を打ち砕き、これまで慎重に築かれてきた強者のオーラをはぎ取った。12日間続いた衝突中、イランはイスラエルに繰り返し応戦。テルアビブのような主要都市に広範な被害を与え、28人を死亡させた。攻撃を受けながらも応戦した能力は国内で称賛され、CNNの取材に応じた政権に批判的な人からも評価する声が上がった。
イランの最高指導者・ハメネイ師。現在、行方知れず だが、多くのイラン国民が懸念するのは次の展開だ。政権は(注:モサドに協力したとの「濡れ衣」で)「イスラエルの協力者」とみなされる人物の摘発に動いており、改革派や変革を望む人への弾圧が近いとの懸念が強まっている。イラン国営系のファルス通信によると、当局は25日までに、「イスラエルの手先」の疑いで700人を拘束した。中東で最も長く指導的な地位にあるイランの最高指導者、ハメネイ師は地下壕(ごう)に身を潜めており、通信手段をほとんど利用できない状況とされる。24日にイスラエルとイランが停戦に達して以降、まだ公の場に姿を見せていない。ハメネイ師は35年あまり強権統治を敷き、少なくとも2005年から抗議活動を鎮圧してきた。
ハメネイ師は要するに、イラン国民から嫌われている。革命防衛隊を使ってイラン国内での政治・経済・社会的利権を墨守するのは、イラン国民が許さなくなるだろう。また、「米国とイスラエルに死を!」といった過激な言動では、今日の複雑な国際情勢に対応できない。イラン国内における権力構造が、民衆レベルの信仰共同体に移譲される日も遠くないのではないか。
さて、国際情勢解説者の田中宇氏が25日に投稿・公開した「イランとイスラエル 停戦の意味(https://tanakanews.com/250625israel.htm、無料記事)」によると今回、イスラエルがイランを攻撃したのは、本来ならイランの共和政体の破壊にあったと考えておかしくはなかったが、「ガザ(と西岸)」のパレスチナ問題のために、トランプ大統領の提案に従って「完全な停戦」でとどまったとしている。まず、イスラエルが拡大イスラエルを目指してきた歴史的経緯を振り返るとともに、ガザ問題の解決のための田中氏の持論を引用させていただきたい。
長期的な流れをみると、イスラエルは911テロ事件を起こした後の四半世紀で、中東でイスラエルにとって脅威になりそうな諸国を次々と潰している。2003年にはサダム・フセインのイラクを、イスラエル系のネオコンたちが政策担当に入り込んだブッシュ政権の米国に潰させた(注:イラクが大規模な破壊兵器を有しているというのは、日本などをさんかさせるためのウソ)。次のオバマ大統領は、イスラエル系に牛耳られた中東覇権運営を自分の手に取り戻そうとしたが、イスラエルが逆襲として「アラブの春」を起こし、カダフィのリビアを潰して恒久内戦の状態にした。
イスラエルは、アラブの春で、シリアのアサド政権も転覆しようとしたが、オバマはロシアとイランに頼んでアサドを守ってもらった。しかしこれも、オバマやバイデンの民主党が弱まり、イスラエルと連携して覇権の多極化を進めるためにトランプが大統領に返り咲く過程で昨秋、イスラエルがテコ入れしたアルカイダ系のHTSがアサド政権を倒し、シリアはイスラエルの隠然傀儡国となった。中東で、イスラエルに楯突く力を持っているのは、イランとトルコだけになった。サウジやエジプトなどアラブ諸国は、イスラエルに楯突くちからや気持ちがない。UAEやサウジは、イスラエルと組みたがっている。そのような流れを見ると、今回、イスラエルがイランのイスラム共和国体制を破壊するまでイランを攻撃しても不思議でない。(中略)
ガザ戦争は大事な点が全く不明だが、私の見立てでは、エジプトに出ていこうとするガザ市民をハマスが止めており(越境を試みる者を見せしめとして射殺するとか)、イスラエルが支援物資を入れないので市民が餓死しかけている。イスラエルは、ガザ市街を徹底破壊したらガザ市民のほとんどがエジプトに逃げ出すと考え、エジプトとガザの境界線であるフィラデルファイ回廊をイスラエルがエジプトから乗っ取って抜け穴を作った(私の推測)。
これまでにエジプト側に30万-50万人のガザ市民が越境したと推測される(開戦の数カ月後の記事にあった概算が25万人)。しかし、エジプトに入ったガザ市民がどこでどう暮らしているか全くわからない。エジプト側が隠している??。だとしたら、それはイスラエル側の希望でもある(エジプトはかなりイスラエルの言いなりなので=両国は1978年、イスラエルとアラブ諸国としては初めて平和条約を締結し、国交を樹立した=)。市民のほとんどがエジプトに逃げてガザが空っぽになったら、イスラエルはガザ抹消と戦争終結を宣言できる。しかし、まだかなりの市民がガザに残っているので、戦争が長引いている。ほとんどの市民は、パレスチナの大義より、餓死や爆死の回避を優先する。しかし、ハマスが止めているので越境できない。(中略)
すべて推測でしかないが、とにかくネタニヤフはガザ戦争を完遂できず困っている感じだ。ガザ市民のほとんどが餓死するのを待つぐらいしか、残っている手がない。ここで、効果があるのか不明だが、もともとハマスを長く支援してきたイランを引っ張り出し、ハマスに加圧してもらうという手法があり得る。イランは、イスラエルに負けてヒズボラもアサドも見捨てざるを得なかった。弱体化したイランの言うことを、いまさらハマスが聞くのかどうか不明だが。イスラエルは、イランを動かしてみてガザ抹消が完遂できたら、もしくはイランを動かしても効果がない場合、ガザ市民のほとんどが餓死して戦争が完遂したら、その後で再びイランを潰す策に戻るつもりかもしれない。
Wikipediaによると、フィラデルフィア回廊とは元々は「イスラエルが2005年にガザ地区から一方的に撤退した後、同国とエジプトとの間でフィラデルフィ協定が締結され、エジプトは750人の国境警備隊(英語版)をルートに沿って配備しエジプト側の国境を警備する権限を得た。パレスチナ側の境界は、2007年にハマースが占拠するまで、パレスチナ自治政府によって管理されていた。ラファ境界検問所の共同権限はパレスチナ自治政府とエジプトに移譲され、パレスチナの身分証明書所持者と例外的にその他の者の通行が制限された」(https://x.gd/Rkt9M)。
イスラエルがこのフィラデルフィア回廊をエジプトから奪って、ガザのパレスチナ人をエジプトに移そうとしている。トランプ大統領が、「ガザをリゾート開発する」と発言したのは、このことと関係がある。しかし、ハマス(スンニ派だが王政を否定するムスリム同胞団のパレスチナ支部)がガザのパレスチナ人のエジプトへの脱出を何としても止めているらしい。なお、エジプトはムスリム同胞団(20世紀初頭にエジプトで結成)を警戒しているので、ハマス支持のパレスチナ難民は受け入れないらしい。ガザやヨルダン川西岸のパレスチナ人の受け入れ先については、トランプ大統領もネタニヤフ首相に協力して探しているようで、「アフリカの角」と言われるソマリアから分離独立したソマリランド(首都はハルゲイサ)とも交渉しているようだ。
サイト管理者(筆者)が思うに結局のところ、イランのペゼシュキアン大統領らはイスラエルに再度攻撃され、シリアのようになるのを阻止するため、サウジアラビアと協力して「パレスチナ国家構想」の抹消を黙認し、イスラエル、サウジアラビア、新生イラン、トルコが主要国になる中東文明を形成するのではないか、と言うことである。「拡大アブラハム合意」の締結であり、アブラハム合意の完成である。
ただし、そのためには、イスラム教が出現した歴史社会学的意味と、その役割を知ることが必要である。そして、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、「信仰の父・アブラハム」を共通の祖先とする同一の唯一絶対神を信奉する兄弟宗教であることを各宗教の信徒が正しく理解することが重要だ。
これに関して関連情報を添えれば、旧約聖書に登場するアブラハムとその正妻・サラ、側室・ハガル、サラの嫡男イサク、ハガルの長男・イシマエルの関係は数のようになる。ユダの子孫から救い主であり、救世主とされるメシアであるイエス・キリストが誕生する。こうした内容は、日本人には知られていないが、欧米文明や中東文明では当然のこととされる。ただし、その真の意味は該当文明でも不明のようである。
下図は、唯一神がアブラハムに授けた「祝福」の図。アブラハムが広大な領土と領民を有する国の始祖になることを暗示している。
結局、世界の諸問題は宗教の謎が解明されなければ、真の解決は有り得ない。