国際情勢解説者の田中宇氏の国際情勢分析・論考をサイト管理者なりに解釈すると、これまで、世界はディープステート(英米諜報界)に支配されていたが、ディープステート内で闘争が起き、ロックフェラー家などの大資本家(財閥)、シオニスト(イスラエルのネタニヤフ右派リクード政権)、トランプ次期大統領率いるMAGAらの「隠れ多国主義派」が英国系の軍産複合体や好戦的なネオコン系からなる「米国単独覇権派」との暗闘に勝利したと見られる。このことから今後は、世界は劇的に変わる。欧州を中心に、欧州連合(EU)のリベラル独裁主義や二酸化炭素による地球温暖化説、ウクライナ戦争でのロシア極悪説、中東での「パレスチナ国家創設構想」などを否定する右派勢力が台頭し、政権を握るようになるだろう。これは、世界の米側陣営の衰退(欧米文明の衰退=LGBTQの文化共産主義を克服できないアタナシウス派キリスト教の衰退=)と非米側陣営の興隆をもたらすが、イエス・キリストを唯一神の被造物と理解するアリウス派キリスト教を止揚して創造される世界的な高等宗教の勢力を基盤に、世界の諸高等宗教を根幹として成立した多様な高等文明の調和と統一の新文明創造の時代に移行することも夢ではない時に来たと言える。
トランプ革命の成否は「政府効率化省」の成否によるー過度な反中国の姿勢はサプライチェーン再構築に時間がかかり米国にマイナス
米国はトランプ前大統領が圧勝して、傘下のMAGA勢力による新たな米国の再生に取り掛かる。最も重要なのは、イーロン・マスク氏とビベック・ラマスワミ氏が担当する「政府効率化省(DOGE)」と同国における関税を利用した「産業再生」だ。DOGEはトランプ次期大統領によると、「政府の官僚主義を廃し、過度な規制を削減し、無駄な支出を減らし、連邦政府機関を再構築する」もので、米国の独立宣言から250年にあたる2026年7月4日までに、DOGEを解散すると述べている。DOGEは年間5000億ドル(現在の円・ドルレート換算で75兆ドル)に上る財政赤字を削減することを目標にしている。関税引き上げによる輸入削減は米国の産業の再生を目指すもので、米国経済の長年の宿痾である巨額の財政赤字と大幅な貿易赤字を抜本的に解消するためのものだ。
ただし、コトがすんなりと進むとは限らない。巨額の財政赤字の削減は言うべくして行うは難し、である。巨大な権限をもって「小さな政府」を実現したとしてもその分、政府歳出が削減されれば内需がカットされて、経済的には需要不足による景気下押し効果が表面化してしまう。これを避けるためには、世界に輸出できる産業を育成・興隆させることが必要だが、関税の多用だけでバブル経済の体質を改善して大規模な輸出振興をさせ、貿易赤字・経常赤字を削減することは容易ではない。米国の巨額の輸入は主として、身近な生活費需品からなっているが、これは「世界の工場」になっている中国及び同国企業が直接投資した東南アジアからのものである。
卑近な例で言えば、アップルのiPhoneとかGoogleのAndroidスマートフォンやパソコンなどは、中国製(Asusなど台湾製のものも含む)のものがほとんどだ。こうした日常必需製品に高税率の関税をかければ、国内で供給面からのインフレが再燃してしまう。また、サプライチェーンを一気呵成に変革することには困難が伴う。取りあえずは、貿易相手国に対米輸出製品の単価を引き下げてもらうか、迫るしかないだろう。輸出増に関して手っ取り早いのは、米国の高性能の軍事兵器やシェール・ガスという形での天然ガス、そして農産物の輸出だが、これは従来の輸出入(貿易)構造とあまり変わりがない。
なお、トランプ次期大統領はBRICS諸国がドル以外の通貨を国際決済に使用する場合は、関税を100%にすると脅している。これは、非米側陣営の結束を崩すのではないか、という疑問が当然出てくる。これに対して、田中氏は12月2日投稿・公開の「終わりゆくEUやユーロ」(https://tanakanews.com/241202europ.htm、無料記事)で、次のように展望している。
ウクライナ停戦してしまうと、非米側の結束が弱まり、プーチンの思惑から外れるのでないか??。それを考える際に、新たな動きとして、ドイツなど欧州各国で右派がリベラルエリートを蹴散らしていく過程が本格化していくことを加味すると。結論が違ってくる。欧州が崩壊して政治経済の強さを失っていくと、非米側は、たとえウクライナが停戦して露中と欧州との関係が改善しても、もう欧州が魅力的な取引相手でないので、非米側の結束が崩れなくなる。米国はトランプで、ドルの利用を忌避して米覇権を崩そうとする非米側に懲罰的な高関税をかけて制裁してやると息巻いている。ウクライナがどうなろうが、トランプと非米側(とくに中国)との関係は好転しない。(How Trump’s dump on de-dollarization affects BRICS)
要するに、トランプ次期政権は反中国路線だから、関税を利用しようがどのような外交政策を用いようが、関係改善は望めず、非米側陣営もそのことは熟知しているので、結束は崩れないというのが、田中氏の見立てだ。サイト管理者としては、あまりに中国を敵に回すと、サプライチェーンの改革は極めて困難なので、米国にとっては得るものよりも、失うものが多いと予想している。一部に、トランプ次期大統領は台湾の独立を承認するという過激な見方もあるが、これは米国にとっても利益にはならないだろう。なお、全くの余談だが、中国経済が今、苦しい時期を迎えているのは、「習近平国家主席が天中殺の時期を迎えていることと無関係ではない」との疫学的な考察もある。中国が崩壊するというのは、やはり、無理があるのではないか。
さて、MAGAの方向は正しいから、トランプ次期政権の時代に基盤を築いて、共和党政権を3期12年は続ける必要があるだろう。その間に、アイゼンハワー大統領が離任時に警告した軍産複合体や好戦的なネオコン系からなる「米国単独覇権派」の傘下にあった民主党は、様変わりしなければ米国民の支持を得られないし、体質を改善せざるを得ないだろう。民主党に所属し、任期絶大のオカシオ・コルテス氏なども、リベラル独裁主義や二酸化炭素による地球温暖化説、ウクライナ戦争でのロシア極悪説、中東での「パレスチナ国家創設構想」などは忘却の彼方に追いやる必要がある。併せて、米国のマス・メディアも、読者を失っていくから、体質(論調)を自己修正しなければならなくなるだろう。
米国におけるMAGA主義の推進で最も大きな打撃を被るのは、欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国だ。トランプ次期大統領のウクライナ戦争停戦ないし終戦案は、MAGA(アメリカ・ファースト(自国第一主義)のため、ウクライナの面倒は見られないということを前提にしているため、①ロシアが併合したウクライナ東南部の州はロシアに帰属させる②ウクライナのNATO加盟は当分見送る(ロシアの主張を入れ、未来永劫NATOに加盟させないこともあり得る)③ウクライナとロシアに併合された東南部地域との間には、欧州諸国のNATO軍を駐留させ、ウクライナの安全は欧州諸国に任せるーなどといったものらしい。
また、NATOの前事務総長のストルテンベルグ氏は、1日付のドイツメディア「テーブル・ブリーフィングス」とのインタビューで、ウクライナの領土割譲の可能性に言及したという(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024120201106&g=int#goog_rewarded)。
【ベルリン時事】北大西洋条約機構(NATO)前事務総長のストルテンベルグ氏は1日付のドイツメディア「テーブル・ブリーフィングス」とのインタビューで、ウクライナがロシアに占領された領土を一時的に割譲することは、早期の和平実現に向けた選択肢になるとの見方を示した。
その場合、NATO加盟などウクライナの将来の安全を保証することが前提になると説明した。ストルテンベルグ氏は「停戦ラインが、ロシアが全ての占領地を引き続き支配することを意味したとしても、永久にその領土を放棄しなければならないわけではない」と述べた。
ウクライナ側も、①ロシアが併合した東南部地方は外交交渉で返還してもらう②残りのウクライナ領土は即、NATOに加盟するーといった案を出している。しかしながら、ウクライナを懸命に支援してきたNHKでさえ、「ウクライナ NATO加盟へ手続き開始を呼びかけ ロシア側は反発」と題する報道記事で、「ウクライナのNATO加盟にはすべての加盟国の同意が必要で、関係者によりますと条件が整っていないとする声もあがっていることから、今回の会合(注:ウクライナ外相会合)で正式な手続きの開始が決まるのは難しい状況です」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241204/k10014657891000.html)としている。
実際、外交交渉で領土の「返還」を獲得することは事実上不可能であることは、我が国の「北方領土問題」をみても明らかである。要するに、ロシアが併合したウクライナ東南部の割譲は既に規定事実として扱われるのが当然のことになっており、割譲地域の返還とかNATO加盟とかは、ウクライナ戦争を止めさせるための建前の話でしかない。
崩壊する欧州のエスタブリッシュメント全体主義独裁政権
ウクライナ戦争がトランプ・プーチン両氏の間で取り決めたとされる条件で終結するとすると、最も苦しくなるのはNATO加盟の欧州諸国である。欧州の「大国」である英独仏のうち、既に独仏は政権崩壊が進んでいる。ジェトロによるとまず、ドイツでは、「11月6日に、オラフ・ショルツ首相による自由民主党(FDP)のクリスティアン・リントナー前財務相の罷免要求に端を発し、社会民主党(SPD)、緑の党、FDPの3党連立政権が崩壊した」。政権を再建するための信任投票は12月6日に行われるが、信任投票で少数与党になったショルツ首相が信認される見込みはなく、来年2月23日にドイツ連邦議会の総選挙が行われる見通しで、第一党にはキリスト教民主同盟(CDU)がなる見込みだという。
しかし、総選挙予測調査では、「CDUなどの『CDU/CSU(キリスト教社会同盟)』が33%となり、最大野党が前回10月18日発表の調査から2ポイント増で引き続き首位を獲得した一方、SPD(社会民主党)は前回と変わらず16%。このほか、ドイツのための選択(AfD)が18%、緑の党は12%、そしてFDPは3%となった」(https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/11/cae3360cff18cf4a.html)という。ここで重要なのは既に意義を失ったリベラル・メディアが極右と呼ぶ「ドイツのための選択肢(AfD)」に対して、18%の支持率が示されていることだ。
ジェトロのビジネス短信は11月14日のものだがその後、AfDは11月末に「11月末、ドイツがEUやユーロ、温暖化対策パリ協定から離脱し、対露制裁をやめてロシアから石油ガス資源類などの輸入を再開することなどを掲げた新公約を発表した。1月の党大会で正式決定し、来年2月の連邦議会選挙の公約にする。AfDは、これまでの公約でもEUを批判していたが、離脱を掲げたのは初めてだ。欧州最大の経済大国で、EUやユーロの中心であるドイツが離脱すると、EUもユーロも崩壊してしまう(on{}Germany's far-right AfD to campaign to leave EU, euro and Paris deal)(Germany's far-right AfD vows to part ways with EU, Paris deal, euro)」(https://tanakanews.com/241202europ.htm)。
ドイツでは、CDUやSPDなどの既成政党がもはや国民の支持を失ってきたおり、「AfDやBSW(ザーラワーゲンクネヒト同盟)は、エリート側の大間違いに気づいた有権者に支持され、議席を増やしている。エリート側がAfDを非合法化しようとするほど、有権者の間でAfDの人気が高まる。AfDは、人々の不満を汲み取って政策化しており、民主主義的だ。大間違いな策を強行するエリート側は、AfDなど反対派を弾圧する全体主義(注:独裁主義)に走ることで、権力にしがみつこうとしている(リベラル全体主義・リベ全の強まり)」(同)状態だという。特に、AfDは米国で世界的な右派勢力のトランプ次期政権の誕生も追い風にしており、新公約発表の前に18%の支持率を得ているということは、既成のエスタブリッシュメント全体主義独裁政権が少なくとも、少数与党連立政権にとどまる可能性が大きいということでもある。
次に、フランス。フランスはマクロン大統領による突然の下院解散戦略が失敗し、少数与党政権しか樹立できなかった。ブルームバーグによると、その少数与党内閣に内閣不信認案を提出され、本日12月4日(現地時間)、下院で内閣不信任案投票が議決されるという(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/1594510?display=1)。
フランス国民議会(下院)で4日、バルニエ内閣の不信任決議案の審議・採決が行われる。マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党・国民連合(RN)が左派連合「新人民戦線」と歩調を合わせ、不信任案が可決される可能性が高い。
一方、マクロン大統領は3日記者団に対し、内閣が不信任投票の瀬戸際を乗り切れると自信を示し、任期満了まで大統領職を退くつもりはないと語った。サウジアラビアの首都リヤドを訪問中のマクロン氏は、RNが不信任決議案に賛成すれば、「耐え難いほど皮肉な投票行動になるだろう。賛成するとは信じられない」と発言。国民議会の議員らに対し、個人的野心を捨て、内閣を打倒することで国を政治的混乱に陥れるような不信任決議案を否決するよう呼び掛けた。
バルニエ首相は2日、2025年度政府予算案のうち社会保障財源法案について、議会採決を経ずに成立させる憲法の特例条項を行使すると表明。野党側はこれに反発し、内閣不信任決議案を提出した。
憲法の特例条項を採用するとは言え、下院で予算案を採決しないということは議会制民主主義に反することでしかなく、こういう異常な措置に対しては国民連合、左派連合ともに議会制民主主義を守ることを大義名分に一致できるのではないか。予算案はいくつかの法案からなるが、その他の法案でも同様だろう。内閣不信任案が可決されれば、マクロン大統領下のバルニエ内閣は崩壊する。フランスはウクライナ支援で軍事的、経済的に危機に立たされており、このことが政府予算案の下院での可決にも影響している。とても、ウクライナ支援どころではない。
【追記:12月5日午後14時30分】バルニエ内閣、不信任案可決されるー窮地に追い込まれたマクロン大統領
結局、左派連合「人民戦線」に下院第一党のマリーヌ・ルペン氏(画像左)率いる国民戦線が協力し、中道連合だけで組閣された「バルニエ内閣」は不信任案を可決された(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR03EDM0T01C24A2000000/)。
フランスの国民議会(下院)は4日、バルニエ首相が提出した財政赤字削減に向けた予算案をめぐり、内閣不信任決議案を賛成多数で可決した。フランスはさらなる政治混乱に陥る。
不信任案は、定数577の下院で賛成331票により可決した。マリーヌ・ルペン氏が率いる極右の国民連合(RN)が左派連合に同調し、バルニエ氏の少数連立内閣を崩壊させた。
バルニエ内閣が強硬手段で社会保障財源法案を成立させようとしたことが、不信任案可決の直接の原因だが、その背景にはフランスの財政赤字が巨額のため、欧州連合(EU)の内閣に相当する欧州委員会の指令のもとで、超緊縮予算案を編成したことがある(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR03EDM0T01C24A2000000/)。
新予算案の審議・成立は年末までに間に合わない恐れがある。その場合は2024年度予算を当面踏襲する特別法で対応する。政治の混乱が続くなか、仏国債利回りは財政の悪化を織り込むかたちで上昇を続けている。首相退任で予算案審議の混乱が長引けば、仏国債に対する売り圧力がさらに強まりかねない。
仏国債の10年物債の金利は約3%近くまで上昇を続けている(https://jp.investing.com/rates-bonds/france-10-year-bond-yield)。その背景には、一般政府(中央政府、地方自治体、社会保障基金)レベルの純債務残高の大幅な増加という現実がある(https://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=WEO&d=GGXWDG&c1=FR)。
フランスの財政状況は年々悪化しているので、欧州連合(EU)の求めに応じて緊縮財政路線をひた走っているのだが、バルニエ内閣は2025年度予算案(2025年1月から12月)を年金支給年齢の段階的引き上げなどを含む超緊縮型に組んだものと思われる。しかし、緊縮財政が財政状況の好転をもたらすとは言えない。歳出の削減が国内総需要を抑制し、歳入の減少をもたらすこともあるからである。これは、フランス国民の生活を脅かし、財政状況のさらなる悪化をもたらす。
なお、英国がウクライナで搭載型長距離巡航ミサイルのストーム・シャドーによるロシア攻撃を行ったが、ストーム・シャドーはフランスと共同開発したものであり、フランス名は「スカルプ」という。フランスの経済・財政状況はウクライナに対してそのような軍事的支援を行う余裕はない。フランスの国民の生活を脅かすだけの事態になっている。
こうした状況は、国民連合を抑えるため、マクロン大統領の率いる中道連合と組んだ左派連合にとっては受け入れがたいものになるため、左派連合としてはバルニエ内閣に対する内閣不信任案決議を提出せざるをえなかったわけだが、これにポピュリズム政党(欧州連合の内閣に相当する欧州委員会=ウルズラ・フォンデアライエン委員長(画像右)=は実質的に米国のバイデン政権と同じリベラル左派に属してリベラル全体主義独裁政治を行っており、フランスの中道連合はその傘下にあるフランスのエスタブリッシュメント・エリート層だが、この政治体制をフランス国民の利益に反するものだとして批判し、国民に訴えてともに政治変革を目指す運動を展開している政党)の国民連合が協力したわけだ。
言葉の正しい意味でのポピュリズム政党である国民連合を率いるマリーヌ・ルペン氏が面白いことを言っている(https://jp.reuters.com/world/europe/2HLOKHO3AJIFLJ4GEOIICSCWMY-2024-12-04/)。「『国民連合(RN)』の指導者マリーヌ・ルペン氏はバルニエ内閣の崩壊を歓迎した上で『マクロン大統領の辞任を求めるつもりはない。大統領への圧力は日増しに強まるだろう。彼がその決断を下すことになる』と述べた」という。つまり、マクロン大統領は自らの判断で辞任し、早期に大統領選挙を行って政権を開け渡すべきだと述べているわけだ。
【追記終わり】
仏独では、リベラル左派全体主義独裁体制を築いているフォンデアライエン委員長らの欧州連合(EU)の政権の傘下にあるエスタブリッシュメント政権が崩壊の危機に直面しており、その間隙をぬって、リベラル全体独裁主義傘下のメディアは「極右」としか呼ばないが、真の意味でのポピュリズム(民衆擁護)政党が、国民の支持を次第に広げつつある。そして、ドイツのAfDやフランスの国民連合だけでなく、ロシアのプーチン大統領と親しいハンガリーのオルバン首相、中道左派政党スメルの党首だが、ウクライナ支援とロシア制裁への反対を表明して国内の親露派の支持を集め、スメルと中道左派政党の声・社会民主主義、右翼政党の人生・国民党(英語版)の3党連立政権を樹立したスロバキアのロベルト・フィツォ首相など、欧州各地で反全体主義独裁志向の基本的には右派政党が支持を拡大している。
最近は、ロシアの不法介入があったとして憲法裁判所が投票数の集計をやり直すように指示したルーマニアの大統領選挙は、第一回の投票が有効と認められ、右派で親ロシア派の無所属候補カリン・ジョルジェスク氏(画像左)と新欧州・中道派「ルーマニア救国同盟」のエレーナ・ラスコニ氏(画像右)が12月8日、決選投票をする。「1日に公表された世論調査によると、ジョルジェスク氏に投票すると答えた人の割合が57.8%と、ラスコニ氏の42.2%を(大幅に)上回っている。大統領選の結果次第で、親欧州連合(EU)でウクライナ支援を続けてきたルーマニアの外交方針が大きく転換する恐れがある」(https://jp.reuters.com/world/europe/FFAXI7HEXBJEHNEVG6PUSE4Q3Y-2024-12-03/)という。
【追記:12月7日午前9時】欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会(フォンデアライエン委員長)は5日、11月下旬のルーマニア大統領選の1回目投票を巡り、SNSを駆使した情報操作が行われた疑いがあるとして、Tiktok(ティックトック)に関連データの保全命令を出したと発表」。これを受けて、「EUは本格的にSNS上の不正行為に対する調査に乗り出す」(https://www.yomiuri.co.jp/world/20241206-OYT1T50066/)という。このため、ルーマニアの憲法裁判所は6日、11月24日に投票が行われた大統領選挙について、当初は有効と判断した決定を翻して、無効にする判断を下した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241206/k10014661031000.html)。
欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会(フォンデアライエン委員長)はリベラル左派全体主義独裁体制を志向する米国のバイデン政権と同様の体質を持ち、加盟国での右派勢力の台頭を抑圧しようとしている。ルーマニアの憲法裁判所は、欧州委員会のフォンデアライエン委員長らの政治的圧力に屈したものと思われる。ルーマニアの国民の反発が広範囲に広がり、欧州の政治的危機は一段と深まり、その凋落は避けられない。なお、ルーマニアの大統領選挙がどうなるのか、不明だ。【追記終わり】
NATO加盟の欧州諸国は、ウクライナ支援で軍事的・経済的に追い込まれており、また、合法的であれ非合法的であれ、EUが推奨する移民流入増加で経済・社会不安が募っていることもあり、新ロシア派で反EUの民衆政党・政治家の台頭が主流になってきている。欧州の将来について、田中氏は次のように展望している。
トランプは、ウクライナとロシアを仲裁して停戦するかもしれないが、同時に、欧州ではドイツもフランスも政権崩壊が進んでおり、欧州が米国と並ぶ世界の中心である状態から急速に遠ざかっている。ウクライナが停戦しても、米欧は世界の中心に戻らない。トランプが非米諸国を経済制裁するほど、非米側は「米国要らず」の世界体制を構築していく。その全体状況を見て、プーチンはトランプのウクライナ和平策に乗ることにしたのでないか。トランプは、ウクライナを停戦して停戦ラインをNATOの欧州諸国の軍勢が守る案を出している。だが、独仏が政権崩壊しているので、欧州諸国はウクライナに軍を出せる状況にない。
欧州のエリートは、ロシアを潰すまでウクライナを支援すると言ってきたが、その非現実な姿勢が国民の支持を失い、下野しつつある。エリートに替わって多数派になっていく右派政党は、対露和解して石油ガスの輸入を再開し、ゼレンスキーへの支援をやめる現実策を採っている。ウクライナは停戦しても不安定な状態が続く(Trump’s national security advisor pick reveals Ukraine peace vision)。
中東は単独覇権派の大御所・英国がたくらんだ「パレスチナ国家構想」破壊か
中東情勢は複雑だが、基本的には単独覇権派の大御所・英国がたくらんだ「パレスチナ国家構想」を破壊する方向の公算が大きい。ディープステートのうち、ロックフェラー家などの大手財閥=資本家、シオニスト=右派リクード党首のネタニヤフ政権がMAGAのトランプ前大統領に協力して、大統領選の圧勝に協力した公算が大きい。バイデン大統領が民主党の候補を降りた理由は、有力資本家やシオニストが資金援助を断ったためである。このため、トランプ次期大統領とネタニヤフ首相との間に、一定の連携関係が生じているというのが、国際情勢解説者の田中氏の分析である。
田中氏が12月3日に投稿・公開した「トランプが作る今後の世界」(https://tanakanews.com/241203trump.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)では、リード文で「今後の米国は、トランプとリクードが連立する、隠れ多極主義の政権だ。米民主党、英国、EU、NATO、G7、日米同盟、豪州カナダなどは諜報界の英国系の傘下にあった。諜報界の中心が英国系からがリクード系に移り、これらの勢力はお門違いな負け組になる」と総括している。
要するに、サウジアラビアやトルコは、大英帝国の時代に中東諸国を三枚舌で騙した単独覇権派の元祖である英国から離脱し、裏で中東の真の外交関係の改善・平和実現のためにイスラエルと手を組むだろうとの見方だ。これに、トランプ次期大統領とネタニヤフ首相が協力する。イスラエルが戦争犯罪とも言えるイラン系戦闘部隊を始め、ガザやヨルダン川西岸の住民を殺しているのは確かだが、右派リクードに属するイスラエル人にも良心はあるだろう。それは、近い将来の中東でのイスラエルとアラブ諸国との外交関係の回復、中東の平和確立という大義名分だろう。すべては、英国が第一次世界大戦中の大英帝国の時代に犯した三枚舌外交に由来する。
米側陣営と非米側陣営との対立から世界宗教を基盤とした諸文明の調和と共存、文明統一の時代へ
サイト管理者自身としては、世界が米側陣営と非米側陣営にデ・カップリングすることは効率的ではないし、好ましいことでも、望ましいことでもないと思う。日本の右派の人々は、共産主義を「悪鬼の頭」のように言う。しかし、共産主義というものの本質はその歴史館にあり、マックス・ウェーバー=大塚史学によれば、唯物史観(史的唯物論)とは、ユダヤ・キリスト教を根幹とした文明の中心地を、当時の辺境地に次から次へと移動させながら、継起的に発展させてきた辺境革命の歴史(https://www.it-ishin.com/2020/08/16/historical-sociology-2/)であり、その過程で市場経済原理を土台とした近代資本主義・現代資本主義を生み出した。しかしながら、戦後の世界の中心になった欧米文明は、ソ連を中心とした共産主義国家(社会主義国家)崩壊による「平和の配当」を生かし損ねて、「バブル経済」を築いてしまった。
その一方で、現在のロシアや中華人民共和国などは、共産主義思想の影響を受けていることは確かであるが、スターリン主義に象徴される共産主義の限界とその苦しみを身をもって体験している。このことから現在では、市場経済原理を根幹とした経済システムを運営しており、その土台のうえに。これらの国の歴史的伝統(キリスト教正教会、儒教などの歴史的伝統)を踏まえた国家体制を築いている。その意味では、キリスト教を擬似的にだが、体験はしていると言えよう。ユダヤ・キリスト教と共産主義はそれぞれ、有神論と無神論で対極の立場にあるが、歴史的な観点からは「兄弟」と言える。
また、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は同一の唯一神を持つ兄弟宗教である。世界の高等宗教としてはこのほかに仏教、儒教があり、ヒンズー教もインド中心だが、世界各国の高等文明創造に寄与してきた。サイト管理者としては本来なら、「文明の衝突」ではなく、「諸文明の調和と共存、そして統一」の時代に向かうのが、人類歴史の目標ではないかと考える。ただし、世界がキリスト教を根幹とした欧米文明によってひとつの統一文明圏へと導かれてきたことも確かである。サイト管理者は、そのキリスト教がアタナシウス派キリスト教を正統としてきたけれども、LGBTG問題を克服できないことなどから、限界に来ており、そのために欧米文明も凋落していると考える。
アタナシウス派キリスト教には、マリアの処女懐胎や父・子・聖霊は究極的には同じ唯一神であるとする三位一体論、再臨論など、難解な内容がある。やはり、唯一神とイエス・キリストは別の存在なのでははないか。そう考えるのが、異端とされたアリウス派キリスト教である。これは東回りに布教されたささやかな歴史がある。そこで、アリウス派キリスト教を高次元的に昇華し、アタナシウス派キリスト教を吸収する新たな世界的な宗教改革到来の時であると考える。
その世界宗教を根幹として、米側陣営と非米側陣営とのデ・カップリングもしくは対立を乗り越え、世界宗教を基盤とした諸文明の調和と共存、人類統一の時代へと進む新たな統一文明圏創造の時代に来ていると拝察している。その土台のうえに、新たな国際決済システムを構築、国際連合を抜本的に改革して、米側陣営と非米側陣営とのデ・カップリングもしくは対立を融合へと道を切り開いていく必要があると考える。なお、ロシアはBRICSのために、新たな国際経済決済システム・通貨構想の実現に意欲的だ(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/399b396ce7895687.html)。ブレトンウッズ会議にケインズが提案した「バンコール構想」も現代的視点から、再考されて良いと思う。
ロシア:SWIFT代替決済手段に期待、BRICS以外の利用も狙う
ロシアは、2024年1月からBRICSサミットの議長国になった。同年2月に、BRICS加盟国の財務副大臣と中央銀行総裁によるオンライン会議を開催。同月下旬には、G20財務相会合の前日に拡大BRICS財務相・中央銀行総裁会合を開催した。「BRICSブリッジ」と呼ばれるデジタル決済プラットフォームの創設を提唱したのも、ロシアだ。
BRICS議長国サイト(ロシア中央銀行サイト内)によると、BRICSブリッジは、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)や非現金資金、デジタル金融資産を使用して国境を越えた決済を実行するために、ISO20022規格を実装するプラットフォームを確立する」ものだ。また、同サイトによると、加盟各国の中央銀行は2024年4月、BRICSブリッジの創設に向け調整会議を開催。この会議では、(1) BRICSブリッジによる決済、(2)そのためのインフラ形成、(3)加盟各国の通貨準備メカニズム改善、(4)マクロ経済、(5)情報セキュリティー、(5)フィンテックなどを議論したという。またロシアのノーボスチ通信(2024年8月1日付)によると、ワレンチナ・マトヴィエンコ・ロシア連邦上院議長は「10月の(カザン)サミットで、BRICSブリッジ創設の決定を下すことになる」と自信を示した。
サイト管理者としては、暗号資産(仮想通貨)に過度の期待は禁物だと思う。日銀は暗号資産について、①不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる②電子的に記録され、移転できる③法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではないーとし、「暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された、法定通貨ではありません。また、裏付け資産を持っていないことなどから、利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要です。また、暗号資産に関する詐欺などの事例も数多く報告されていますので、注意が必要です」と評価している(https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/money/c27.htm)。