枝野立憲民主党代表辞任表明ー立民は代表選と共に野党共闘派と連合依存派の分離分党も視野に

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立憲民主党の枝野幸男代表は11月2日火曜日、遅ればせながら代表を辞任することを表明した。枝野代表の辞任は当然だが、立民の今回の総選挙での惨敗は立民が「野党共闘」に加わったことにあるのではなく、立民、日本共産党、れいわ新選組、社民党との「野党共闘」を反故にし、連合に依存したことにある。代表選を行っても、立民内部の真正野党共闘派と連合依存派(自公補完勢力派)の対立は解消されない。立民は最終的には真正野党共闘派と連合依存派(自公補完勢力派)に分離分党すべきだ。

この提言は、優れた政治経済評論家で政治活動家でもある植草一秀氏のメールマガジン第3069号「野党共闘への恐怖が際立つ皮肉」を参考にしたものだ。まことに恐縮だが、同メールマガジンの主要部分を引用させていただきたい。

(前略)私は今回総選挙での立憲民主敗北を予想してきた。最大の理由は立憲民主が野党共闘に背を向け続けたこと。10月22日発売の『月刊日本2021年11月号』(https://amzn.to/3CMxr0p)に「抜本改革不可欠は野党」と題する論考を寄せている。立憲民主の惨敗を予想した。この論考では総選挙後に岸田首相が自民党幹事長と外相を交代させる可能性についても言及している。岸田氏は総選挙後に林芳正氏を外相に起用する案を保持していたと考えられる。総選挙後に幹事長を交代させて岸田体制を構築することも予め想定していたと考えられる。

立憲の枝野氏は岸田首相を選ぶか枝野首相を選ぶかの選挙であるとの主張を展開したが、日本の主権者が選択したのは岸田首相だった。岸田氏と枝野氏の選択を迫られれば多くの主権者が岸田氏を選択するのは順当だ。今回選挙の最大の特徴は枝野立憲が忌避されたこと。比例代表選挙の立憲得票率(絶対得票率=全有権者に占める得票の比率))は11.2%。国民民主投票率を合わせて13.7%だった。2017年選挙における立憲民主と国民民主の得票率合計は20.0%。6.3%ポイントも得票率を下げた。全体投票率が53.7%から55.9%に上昇したのに、得票率が20.0%から13.7%に低下した。

枝野立憲が支持されなかった最大の理由は枝野幸男氏が野党共闘に背を向けたことにある。私はこの点を再三指摘し続けた。その上で、多くの主権者が立憲民主支持から手を引くことを予想した。枝野幸男氏が野党共闘に背を向けたことを受けて、多数の主権者が立憲民主への投票をやめた。これが真実だ。ところが、メディアは立憲民主が野党共闘に進んだために立憲民主が議席を減らしたとの真逆の報道を展開している。このような情報誘導も想定の範囲内。日本政治支配を維持しようとする勢力にとっての天敵は「野党共闘」なのだ。

2009年に鳩山政権が誕生した影の主役が「野党共闘」だった。共産党の候補者取り下げの協力なくして2009年の政権交代実現の偉業を語れない。民主党の小沢一郎氏が主導して野党共闘の素地を固めた。今回の総選挙直前に枝野幸男氏は記者に対してこう述べた。「「野党共闘」というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。共産党さんとは(共産、社民、れいわの3党と一致した政策に)限定した範囲で閣外から協力を頂く。」

枝野氏は、共闘の対象は国民民主と連合であって、共産、社民、れいわとは共闘しないことを宣言した。10月23日に都内で行われた市民団体のイベントでは、立憲民主党の枝野幸男代表が共産党の志位和夫委員長との記念写真撮影を拒絶した。枝野氏は野党共闘を推進したのではなく、野党共闘に背を向ける対応を示し続けた。この事実に触れず、立憲民主が野党共闘にまい進したとの報道は完全な誤報。意図的誤報である。

これが立憲民主党の比例代表選挙での惨敗をもたらす主因になった。枝野幸男氏は総選挙大惨敗の責任を取って辞任するしかない。その上で、立憲民主党は「野党共闘推進派」と「野党共闘否定派」に分離するべきだ。「野党共闘否定派」は国民民主と合流し、「野党共闘推進派」は「れいわ」、「社民」と合流するのが適切だろう。主権者の視点に立って野党再編を断行することが求められる。

今回総選挙では自公の絶対得票率(全有権者に占める得票の比率)が26.3%に達した。維新の絶対得票率は7.8%。自公プラス維新の得票率は34.1%に達した。政治刷新勢力の危機と言える。反自公勢力の絶対得票率は21.8%に低下した。2017年選挙では自公の得票率が24.6%、反自公の得票率が25.2%だった。情勢激変の主因は枝野立憲が主権者の支持を失う一方で、維新が支持を高めたこと。維新は自民よりも右に位置する政党。若年層を中心に右傾化が進んでいることがうかがわれる。他方、立憲が支持を失ったのは、立憲が政党発足の原点からかけ離れたことにある。(中略)

私は旧民主党=旧民進党の分離を主張し続けた。日本政治刷新を求める「革新勢力」と対米隷属政治の維持を目指す「守旧勢力」が同居した状態が野党の混迷を招く主因になっている。旧民主党=旧民進党が「革新勢力」と「守旧勢力」に分離して初めて、本当の意味の野党勢力の結集が可能になると主張してきた。立憲民主党は「革新勢力」の分離体として主権者の支持を集めた。したがって、立憲民主党には、日本政治刷新を求める勢力の連帯としての「野党共闘」を牽引する役割が期待された。ところが、その立憲民主党が迷走を続けた。挙句の果てに、枝野幸男氏は野党共闘を否定する方向に突き進んだ。

共産党の絶対得票率は2017年選挙が4.2%であったのに対して今回選挙は4.1%。得票率に変化は生じていない。多くの重要選挙区で野党共闘が威力を発揮した。東京8区では立憲民主党の吉田晴美氏が圧勝して自民党の石原伸晃氏が落選した。神奈川13区では立憲民主党の太栄志氏が小選挙区で勝利し、自民党の甘利明氏が小選挙区で落選した。これらの選挙区で野党共闘が実現していなければ立憲民主候補勝利は実現しなかっただろう。

しかし、立憲民主党への支持は全体として急激に細った。その最大理由は枝野氏の野党共闘否定スタンスにあった。共産党の支援を得ながら共産党を共闘の対象にしないとの発言は、枝野幸男氏の人間性に対する不信を呼び起こす原因にもなった。(中略)

「立憲民主が野党共闘に進んだから支持を失った」との言説は野党共闘を恐れる勢力のプロパガンダ。野党共闘が脅威であるから、何とかして野党共闘を潰したいとの念願の表れ。野党共闘を否定する者は結集して野党共闘から離れればよい。他方、「野党共闘なくして政治刷新なし」と判断する主権者が多数存在する。この主権者が多数存在する以上、その考えを共有する者が大同団結することが重要になる。立憲民主党は「野党共闘推進派」と「野党共闘否定派」に分離するのが適切だ。


 

引用が長くなり申し訳ないが、上記引用は真実だ。サイト管理者(筆者)としては現実的にはれいわ新選組の山本太郎代表と近い馬淵澄夫衆院議員(奈良一区)が立民の新たな代表になり立民と日本共産党、れいわ、社民党の4野党が統一会派を形成すれば良いと考える。幹事長辞任を表明した福山哲郎氏を挙げる声もあるが、福山氏は参院議員(京都選挙区)だ。しかし、立民の衆院議員で香川一区を制した小川淳也氏は代表選への立候補を表明しているが、以前は日本共産党との共闘(民共共闘)に極めて積極的だったが、最近では積極財政に否定的な見解を示したり、維新の主張するベーシックインカムの導入に積極的だったり、解雇規制の緩和による雇用の流動化に賛成し、驚くべきことに維新との連携に積極的な姿勢を表明するなど、弱肉強食主義の新自由(放任)主義的傾向が強まっている。立民のみならず、日本にとって危険な政治家だ。

立民内部にこうした考え方の持ち主は少なくないだろう。れいわの山本代表と近い馬渕衆院議員も代表戦への立候補を表明している。また、幹事長辞任を表明し、れいわの山本代表と太いパイプを築き、結果的に今回の総選挙で東京8区問題を丸く収め、「風」が吹いた原因になったとされているとされる福山哲郎氏を代表に押す声もある。馬淵氏と福山氏が立民の新代表になれば、「野党共闘」体制が維持される可能性がある。サイト管理者(筆者)もその道が現実的な道と考えて入る。なお、大手マスコミが煽っているように「野党共闘体制」が崩壊すれば、来夏の参院選で野党側は壊滅する。

しかし、小川氏と馬淵氏、福山氏のいずれが代表選を制するにしても、立憲民主党は反新自由主義的傾向の議員(日本共産党やれいわ新選組、社民党との真正野党共闘派)と新自由主義的傾向(連合依存派、維新との連携派)の議員との同居体(水と油の混合体)になり、はっきりしない性格の政党になる。これでは有権者の支持を得られない。最後の策は、立民衆参両院議員内部で話し合い、反新自由主義派と新自由主義派(連合を通じた自公補完勢力、維新との提携勢力)に分離分党するということだ。

なお、日本共産党は現実的には欧州で政権を担った実績のある社会民主主義路線に移行している。このことを踏まえ、「立憲共産党」とあらぬ反共攻撃を受けることがないよう、党名を変更すべきだとの識者も多い。しかし、日本共産党の綱領の基礎になっている講座派の日本資本主義論、引いては講座派流の史的唯物論はマックス・ウェーバー=大塚史学の研究成果を踏まえれば一定の意味・意義を持つ。現時点で党名を変更するとなれば、日本共産党内に大混乱が起きる。

だから、そのことを前提として「日本共産党」という党名でも共闘するという真正野党が望ましい。反新自由主義の立場に立つ立民衆参両議員やれいわ新選組、社民党などはそうした政党だろう。本来なら理念的に相容れない自民党と創価学会を支持母体とする公明党の野合こそ、「仏滅政党連合」と批判されなければならない。「政官業政電」の先峰になりはてて、主権者国民に真実を伝えない電波・新聞メディアの論調を真に受けてはならない。


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