参院選(またはダブル選挙)の最大の争点は消費税増税

参議院選挙の単独選挙が7月26日に予想されているが、過去に中曽根康弘自民党総裁(当時)の「寝た振り解散・総選挙」の事例もあるので、野党は両用の備えをしなければならない。ただし、国政選挙の最大の争点は10月からの消費税増税強行を許すか許さないかである。

「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義」の理念をかかげる日本国憲法が骨抜きされている中で、今更(さら)原則論を言っても始まらないが、第一条「天皇」に定められた、天皇の国事行為のひとつとして定められている「内閣の助言と承認」による「衆議院の解散」権限に基づいて、事実上、内閣総理大臣に解散権があるかのようにされているが、これはまやかしでしかない。

内閣総理大臣(首相)は与えられた4年間の任期に日本の発展に実績を積み重ねることに専念するべきで、党利党略の下に衆議院解散・総選挙を行うのは憲法の精神に反する。特に、日本国民が自信の手で勝ち取った議会制民主主義ではないため、諦めムードと「個人主義」と言う名の「利己主義」が蔓延し、国民の25%の支持の支持しかないにもかかわらず、与党が衆参両院で3分の2以上の議席を占めている現状ではなおさらである。

安倍晋三政権が、消費税増税のまたまたの延期、もしくは米中貿易戦争による米国の敗北、英国の手順なき欧州連合からの離脱による欧州経済の大混乱、これらによる日本の外需の景気後退への「大規模な寄与」が重なることなどに対処するため消費税減税を打ち出して、衆院解散・総選挙に持ち込めば、ダブル選挙は与党の圧勝になる。

財務省も、一番言うことを聞かなければならないのは米国政権だから、安倍首相が米国に上納外交を行い、それを強化すると言えば、容認するだろう。小生の知人は消費税の10%への引き上げは実現すると断言していたが、もう消費税の増税は国政選挙の争点にはなり得ないとの判断を示したのだろう。

しかし、上に述べたように、今の世界の内政、外交、国際貿易の不安定さの中で消費税増税を強行すれば、間違いなく日本経済は失墜する。日本経済が1997年にバブル崩壊の後遺症から立ち直ったのも束の間、政府の逆噴射政策(財政出動から財政引き締め・金融緩和への政策転換)によって、バブル形成とその崩壊の種を撒き、1990年代に入ってからのバブル大崩壊による長期大不況(失われた30年間)に陥った。

日本で最も優れた経済学者であり政治指導者であると評価されている植草一秀氏のメールマガジン2361号によると現状でも、「CIAのWorld Facebookが提示する購買力平価ベースのGDPは、中国が23兆ドル、米国が19兆ドル、日本が5兆ドルという現実を示す。

次世代モバイル通信規格の5Gの特許件数では中国のファーウェイが1529件で、ZTEなどの他の中国企業を含めると3400件、米国のインテル+クアルコム(スマートフォンのSoCであるSnapdragonの設計製造会社)が1337件、韓国のLG+サムスンが2040件。日本では唯一、シャープが特許件数取得数上位10位に入っているが、シャープはもはや純然たる日本の企業ではなく、台湾企業傘下の企業でしかない。

情報通信、AI、バイオテクノロジー、宇宙開発などの最先端科学技術分野で
日本は完全に後進国に転落してしまっているのだ。日本の技術力、産業競争力の衰退は目を覆うばかりなのである」

という状況である。これに消費税増税を強行すれば日本の失われた30年はさらに延長して経済社会の再建の見込みは立たなくなり、超少子・高齢化が日本の経済社会に与える巨大な衝撃も相まって、日本は先進国などの草刈り場になるだけだろう。

 

だから、今後の国政選挙の最大の焦点は、「れいわ新選組」などが打ち出している政策に加えて、次のような政策を打ち出すべきである。つまり、➀消費税の減税(3%程度に下げても良いし、期間を区切って0%にしてもよい)②最低賃金1500円の実施(10年間は所得税の累進性の強化と法人税)③効果がなく弊害ばかりの超金融緩和政策から財政出動政策へのポリシーミックスの大転換(財源は税制改革と海外に逃避する円資金を日本で有効に使うための国債発行)④原子力即時撤廃を中心とした新エネルギー政策の創出➄教育改革による有能で民主主義の精神を会得した人材の育成-などだ。


立憲民主党の枝野幸男代表は、金融庁審議会および金融庁の調査リポートを問題にすると言っているが、そんなことを国政選挙の争点にしても勝ち目はない。厚労相もその委託法人である日本年金機構でも、年金だけで老後を暮らせるとは一言も言っていない。東京新聞によれば、漫画しか読めなかった麻生太郎首相(当時)でさえ、公的年金制度に持続的可能性がないことは今や、国民誰もが知っていると寄稿・発言していたくらいであるから、「100年年金安全」の理解の仕方が誤っていたのは、マスコミの責任とやんわり交わすだけに終わるだろう。なお、日本年金機構によると、老後の生活の主力は公的年金であり、所得の65%程度を賄っていると主張している。

なお、枝野代表は立憲民主党を私物化しているようである。国民民主党の玉木雄一郎代表も少しずつ、「家計が第一」とする選挙公約を発表し、小沢一郎前自由党党首の提言を取り入れているようだが、甘さは否めない。れいわ新選組の政策を核に、立憲民主党と国民民主党の真性野党議員が結集し、これに日本共産党が近い将来、日本型社会民主主義政党に脱皮することを公約して合同すれば、真性野党ができる。これを、大多数の心ある日本国民が支援すれば良い。

※補注
本日6月21日付け朝日新聞の朝刊一面トップに、財政制度審議会(財務省の諮問機関)が麻生太郎財務相に提出した建議書(意見書)で、県議から「年金給付水準の低下が見込まれる」「(老後に備えて若い時代からの)自助努力を促すことが重要」などの文言が削除されたとの報道記事が掲載された。

事実とすれば、夏の国政選挙を踏まえ、安倍政権の意向を忖度したものであることは明らかであり、その場合は時の政権に諫言する各種審議会の存在意義が問われることになり、時の首相、政権の独裁化をもたらすものとして看過できない内容である。野党側は政権攻撃の重要な材料として活用すべきであることは言うまでもない。

しかしながら、こうした内容は昨年春の県議書にも同じ趣旨のことが盛り込まれており、国民の広く知るところである。ということで、財務省、金融庁、厚労省(日本年金機構)率いる内閣を攻め立てたところで、野党側が国政選挙で優位に立つとは思えない。

問題は、野党側が国民の年金制度に対する不安を払拭できるだけの政策体系、骨太の経済社会の構造改革案を提示できるかどうかが、真の焦点になる。

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