ウクライナ戦争から1周年ーウクライナは分割、欧米キリスト教文明圏から統一文明圏に向け文明の大転換期に(追記:米側の経済情勢)

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昨年2022年02月24日にウクライナ事変(ロシアのウクライナ侵攻)が勃発、ウクライナ戦争に転換してからほぼ一年を迎える。ロシアはウクライナの制空権を掌握しており、負けることはない。結局のところは、ウクライナは東南部とクリミア半島などロシア正教を信奉するロシア系ウクライナ人が支配している地域とカトリックを信奉しているウクライナ系(非ロシア系)に分割されることになる。そして、負けないロシアがウクライナ戦争を長期化させればさせるほど、欧州を中心に原油・天然ガスの不足で米側陣営の経済情勢は悪化して、対米従属路線を続けることが出来なくなり、非米側陣営入りを余儀なくさせられる。世界は欧米キリスト教文明圏が終焉する時期(トニー・ブレア元英首相)になるとともに、非米側陣営の興隆を容認せざるを得なくなる。そうして、統一文明圏への大転換期に入るだろう。

ウクライナ戦争の見通しーウクライナは分割へ

サイト管理者(筆者)が予測しているシナリオは、国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏の予測しているシナリオが的を射ていることによるが、これにマックス・ウェーバー=大塚久雄の歴史社会学的分析を加えたものだ。田中氏はさる02月13日に「ウクライナでゆるやかに敗けていく米欧」と題する論考を公開された(https://tanakanews.com/230213russia.htm、無料記事)がその中で、これまでの国際情勢予測を踏まえ、米側陣営が衰退し、非米側陣営が興隆することを明確に伝えている。

本投稿記事では最初に田中氏の論点を紹介し、その後で田中氏の分析を支持するパルト海のノルド・ストリーム(ロシアと欧州を結ぶ海底パイプライン)爆破事件の黒幕や世界最高のステルス戦闘機と言われる米国のF22(F35は日本を含む世界に輸出されているがF22は輸出されていない)による中国製気球の爆破事件について述べることにしたい。まず、「ウクライナでゆるやかに敗けていく米欧」の要点から紹介させていただきたい。

田中氏の視点は、世界の一極覇権体制を築いてきた米国の諜報界(注:サイト管理者=筆者=の理解では、軍産複合体と好戦的で新自由放任主義を経済政策の根幹とするネオ・リベラリズム=ネオコン=を中心とした米系多国籍企業の連合体)は今や、「隠れ多極主義者」に支配されており、隠れ多極主義者はロシアや中国とも通じており、欧州や日本など対米従属国家群を自滅の方向に追いやっているというものだ。なかなか理解し難い面があるが、米国(ならびに英国のアングロサクソン国家)は世界の一極覇権体制を維持する経済力がなくなったと判断してのことと理解すれば、理解可能になる。

要するに、米国としてはお荷物になる対米従属国家群を切り捨て、孤立主義の道を歩み始めているということだ。これは、サイト管理者(筆者)の見方によると、米国がキリスト教国家(基本的人権の尊重や人種差別の撤廃などを訴えるキリスト教の理念によって、多民族を国家として統合する)としての使命を果たせなかったことからくる。田中氏の論考のリード文は次の通りだ。

ロシア政府は、米国側の歪曲報道を放置している。露側は、ウクライナの制空権を握っているのはロシアだと繰り返し表明したりしない。RT(注:Russian Times)など露側マスコミも黙っている。露政府は、ウクライナ戦争での自国の優勢を隠し、この戦争が地上軍だけでゆっくり進み、一進一退っぽく延々と続くように仕向けている。この戦争が長引くほど、米国側とくに欧州がロシアからの石油ガス(注:天然ガス)など資源類の輸入を断って経済的に自滅していき、いずれ米欧の結束が崩れてNATOや米覇権体制が瓦解して多極化が進み、ロシアにとってうれしい世界体制に転換していく。

米国労働省が発表した今年2023年01月の同国の物価上昇率は、前年同月比の上昇率が6.4%となり7カ月連続で鈍化したが市場予想を上回った。また、「瞬間風速」を示す前月比は0.5%の上昇となり、極めて高い。日経新聞は次のように報道している(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13D9R0T10C23A2000000/)。

米労働省は10日の年次改定で過去のデータを修正した。2022年12月の物価上昇率は前月比マイナス0.1%から0.1%のプラスになった。伸びは10月の0.5%から2カ月連続で鈍っていたが、再び拡大に転じた。

FRBの高官らは2月に入り、高インフレの長期化を警戒する発言を繰り返している。パウエル議長は飲食や電気代、駐車場代など幅広いサービス価格のうち、家賃を除く部分で値上がりが続いている点に警鐘を鳴らした。10〜20年に1〜3%で推移していた前年同月比の上昇率は22年9月の8.2%から下がったものの23年1月も7.2%と高い水準だ。

米国の物価上昇率が急騰し始めたのは2021年に入ってのことだが、これは新型コロナウイルス対策のための物流網の混乱に加え、ウクライナ事変(ロシアのウクライナ侵攻)による強力な対露経済制裁措置を実施したことに伴う跳ね返り(資源・エネルギー、穀物価格などコモディティ価格の上昇)によるものだ。つまり、供給側の要因によるもので、財政・金融政策など内需のコントロール政策では対処できない。米国連邦準備精度理事会(FRB)はQT(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)に乗り出しているが、これはコストプッシュ・インフレとデマンドカット・デフレの共存、つまり物価高での不況というスタグフレーションを招くだけだ。

インフレ率が総合指数で経済成長と実質賃金上昇が同時に起きるとされる2%を大幅に上回る6%を超えている。日本貿易振興機構(ジェトロ)は今年2023年の米国経済見通しについて景気後退入りとの見方がエコノミストの間で大勢を占めているで、次のように展望している(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/51bc050e30be02ae.html)。

筆者は、今夏に執筆した2022年7月25日付地域・分析レポートで、米国の景気は、消費や生産が高インフレと高金利にどこまで耐えられるかがポイントになると述べた。そのうち、高インフレと高金利は予想どおり継続。その中でも、消費は堅調に推移してきた。これまでのところ、米国経済は持ちこたえていると評価できるだろう。

他方、高インフレと高金利は2023年以降も続くとみられる。そうなると、今後は成長を下支えしてきた消費が弱含みに推移する可能性が出てくる。その結果として、景気後退局面を迎えるという見方が大勢を占めるようになってきた。

米国の昨年第4四半期の実質経済成長率は年率換算で2.9%増だったが、米商務省が27日発表した2022年12月の個人消費支出(PCE)は前月比0.2%減と2カ月連続の減少傾向が続いている。個人消費支出を加味した「PCE価格指数(注:連邦準備制度理事会=FRB=が注目)は前月比0.1%上がり、上昇率は11月と同じだったが、12月の前年同月比伸び率は5.0%と、11月の5.5%から鈍化し、21年9月以来1年3カ月ぶりの低水準となった」(https://jp.reuters.com/article/usa-economy-spending-idJPKBN2U6151)が、米国の国内総生産の太宗を占める個人消費支出振るわなくなっていることを示している。

要するに、「先行きの景気後退懸念はなお強い」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24DVF0U3A120C2000000/)わけで、FRBの内需抑制のためのQTによる不況の深刻化と高インフレが併存するスタグフレーションが目に見える形になってきた。米側陣営諸国でQTと対露経済制裁が長引けば長引くほど、米側陣営に属する対米従属国家群では押しなべて、こうした不況下の物価高=スタグフレーション=に見舞われつつある。

これに加えて、新自由放任主義による大格差社会の出現やLGBTを求める大きなうねりなどキリスト教精神の喪失による結婚の意義が失われ、少子・高齢化がどんどん進み、人口構造が極めて歪(いびつ)な形になっている。さらに、経済成長・発展に必要な科学・技術の進歩は中国に追いつかれ、追い抜かれつつある。

そして、経済の要(かなめ)になるエネルギーは米国を除いて自給できない。また、米国自身も米側陣営の諸国に輸出するだけの生産力は持たない。こうしたことから、米国は財政収支、経常収支、対外累積債務で世界最大の「三つ子の赤字」を抱えている。ドルは紙くず寸前というのが偽らざる姿だ。そのドル建ての米国債を、日本は1兆2128億ドル=1ドル135円で163兆7千億円=と保有している。少しは売却しているが話にならないほどゆっくりしている。もっとも、「トモダチ」に貸した金は帰ってこないということわざがある。昨年に経験済みだが、円相場の暴落に見舞われた場合、取り敢えずの対策としてはドル建て米国債を売って円に換金すれば良いが、米国には逆らえないためそれができない。

なお、米国はサウジアラビアとの間で原油をドルで決済する「ペトロ・ダラー」体制を強要してなんとかドルの価値を維持してきた。しかし、昨年2022年12月、習近平国家主席(第3代中国共産党総書記)がサウジ訪問の際に、ムハンマッド・ビン・サルマーン皇太子兼首相と会談して人民元建てでサウジ産原油、引いては中東産原油を売買することで合意して、「ペトロ・ユアン」体制構築の基礎を固めた。

1971年のニクソンショックでドルは金との兌換性を絶たれたことと併せて、ドルは近い将来、単なる紙くずになるだろう。要するに、米側陣営は「老大国」に暗転しており、国際銀行間通信協会(SWIFT)のシステムも壁にぶち当たっていて、誰も食い止めることが出来ない情勢だ。これでは、米国が(同じアングロサクソン国家である英国とともに)世界一極覇権体制を維持することが困難であることは明らかだ。田中氏の持論である米国諜報界の「隠れ多極主義勢力」はこうした事態を十二分に熟知しているのではないか。

それはさておき、こうした中長期的に経済の厳しい中で、米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO)は、旧ソ連に対する約束違反である東方拡大を進め、その行き着く先としてバイデン民主党政権は2014年02月にマイダン暴力クーデターを引き起こして、ウクライナに傀儡政権を樹立させ、ウクライナをNATO加盟寸前まで導いた。これはロシア敵視政策によるものだ。森喜朗首相(当時)がG8に参加していたロシアのプーチン大統領に対して、「ロシアもNATOに加盟したらどうか」と尋ねたところ、同大統領は「それは米国が許さない」と語ったことがあり、米国の外交政策の根本にロシア敵視政策があることを如実に物語っている。

ウクライナ事変(ロシアによるウクライナ侵攻)は、その延長線上にある。こうした観点からすれば、ウクライナ事変(ロシアによるウクライナ侵攻)は、ロシアの自然権としての「正当防衛」策であることが分かる。ただし、田中氏はウクライナ事変は米国の「隠れ多極主義勢力」がロシアと結託して引き起こした軍事事変という見方をしている。ウクライナ事変はウクライナ戦争に暗転したが、今後のウクライナ戦争について田中氏は次のような分析をされている。

間もなく開戦から1年がすぎるウクライナ戦争で、軍事的に最も重要なことは、昨年2月末の開戦日以来、ウクライナ全土の上空の制空権をロシアが握っていることだ。ロシア軍は開戦日の数時間でウクライナの空軍や防空施設の大半を破壊して制空権を奪取した。ロシア政府はその日のうちにウクライナ上空を飛行禁止区域に設定してICAOに通告した。それ以来、外国の民間機はウクライナ上空を飛んでいない。欧米の政府高官らがキエフなどウクライナを訪問する際は、すべて列車を使っている。露軍はウクライナ国内の列車運行を認めており、列車が最も安全な移動手段になっている。ゼレンスキーも昨年末の訪米時、列車でポーランドに出国し、そこで飛行機に乗り換えた。 (The Fog Of War Descends, Don’t Expect This To Be Resolved Any Time Soon) (バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いた)(中略)

ロシア政府は、米国側の歪曲報道を放置している。露側は、ウクライナの制空権を握っているのはロシアだと繰り返し表明したりしない。RTなど露側のマスコミも黙っている。露政府は、ウクライナ戦争での自国の優勢を隠し、この戦争が地上軍だけでゆっくり進み、一進一退っぽく延々と続くように仕向けている。米欧が強い兵器を出してきたら、露軍が上空から空爆して間引き的に破壊し、露軍の隠然優勢下で一進一退を演出し続ける。この戦争が長引くほど、米国側とくに欧州がロシアからの石油ガスなど資源類の輸入を断って経済的に自滅していき、いずれ米欧の結束が崩れてNATOや米覇権体制が瓦解して多極化が進み、ロシアにとってうれしい世界体制に転換していくからだ。この戦争の決着は、ウクライナの戦場で軍事的に決まるのでなく、世界的な政治経済の大状況として地政学的に決まる。私はこれを「プーチンの偽悪戦略」と呼んでいるが、多くの人が「そんなわけない。ロシアは本当に負けているだけだ。だってロシアだぜ」といまだに思っている。 (Elon Musk: “Most Are Oblivious” To The Danger Of World War 3) (プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類

米国側は、制空権をロシアから奪還しない限り露軍の隠然優勢が続き、ウクライナ戦争で勝てない。制空権奪還のためにはロシアと米NATOとの直接交戦が必要だが、その場合核戦争や世界大戦を覚悟せねばならない。好戦的な勢力は「核戦争を覚悟しつつ米NATOがロシアと直接交戦し、ウクライナの制空権を奪還してロシアを打ち負かすべきだ」と主張するのが筋だ。だが、そのような主張はどこからも出てきていない。核戦争しようぜと提案するわけにいかない。ロシアを勝たせるわけにいかないと言っている人は多いが、勝つ方法が示されていない。米NATOは開戦直後に、ウクライナの制空権を奪還しないと宣言している。NATO側がウクライナに戦闘機を送る話は繰り返し出ているが、いつも話だけであり、決して具現化しない。ウクライナは勝利への道を閉ざされている。 (Macron Says Russia Cannot Win Against Ukraine) (すでに負けているウクライナを永久に軍事支援したがる米国

軍事的に、ウクライナ戦争はこの状態で膠着している。ロシアは膠着を望んでいるから、米国側が戦争を放棄しない限りこの状態がずっと続く。戦争が長引くほど、米国側が資源面から経済的に自滅していく。政治的にも、欧州で厭戦機運が強まって独仏などの政権が、従来の対米従属エリート支配から対米自立・非米的な右派ポピュリスト(注:民衆の生活が第一とする政治勢力)支配に替わっていく。イタリアはその流れの先進国だ。いずれ欧州はロシア敵視をやめて戦線離脱し、NATOが解体していく。 (So Much for Sanctions on Russia) (Popularity Of Italy’s PM Giorgia Meloni Is Rebuke To EU Bureaucrats And European MSM

米国も、ウクライナ支援に消極的な共和党が今年から議会下院の多数派になった。来年の米大統領選挙でトランプが勝つと、米国はウクライナを支援しなくなる可能性が高い(共和党の予備選は、最近の世論調査でトランプよりデサンティス(注:フロリダ州知事、共和党エスタブリッシュメント派を代表)が優勢だが、3番手に出てきたヘイリー(注:トランプ政権下で国連大使を務めた)がトランプの副大統領になることでトランプ陣営が勝てる。ヘイリーはデサンティス潰しのために立候補した)。軍事面でなく、政治経済の面で、米国側が敗北、というか戦争放棄していく。 (Rep. Matt Gaetz Leads Resolution Calling to End Support for Ukraine, Pushes for Peace) (ウクライナ戦争をやめたくてもやめられない米国側

上記が、ロシアがウクライナ戦争で勝つ理由だ。ニクソン大統領(当時)のもとで大統領補佐官を務めたキッシンジャー氏はかつて「ウクライナの分割」を訴えたことがあった(現在は諸般の事情から前言を翻している)が、ウクライナが勝つ見込みは短期的にも中長期的にもないから、結局はウクライナ分割ということになるだろう。

これについては、植草一秀氏もメールマガジン3416号「地球の滅亡導くNATO戦車供与」で、「ウクライナ国内には二つの国が同居する。ウクライナ語・ウクライナ人・カソリックのウクライナ国とロシア語・ロシア人・ロシア正教のロシア国である。キッシンジャー元国務長官が述べたのは、『この国でどちらか一方の勢力が他の一方の勢力を支配しようとすれば、必ず戦争か分裂になる』というもの。キッシンジャー氏の頭にある着地点はウクライナの分割である。ミンスク合意(注:2015年02月11日)はウクライナ分割案の一類型だ。ミンスク合意の原点に立ち帰り、ウクライナを分割して和平を確立することを基軸に終戦協議を行うべきだ」と主張しておられる。

国際情勢解説者の田中氏も次のように展望しておられる。

米諜報界の主流派はもともと、米国の覇権体制を強化・恒久化したい米覇権主義の勢力だった。彼らは、主流派を隠れ多極主義に乗っ取られた後も諜報界の勢力として残り、大統領や米議会を動かしてウクライナ戦争による米国覇権の崩壊を食い止めようとしている。最近は、米国からバーンズCIA長官がキエフを訪問してゼレンスキーに会い、ウクライナ戦争の今後について話し合っている。この会談で、ロシアが併合を宣言したウクライナ東部2州とクリミアをロシア領としてウクライナが認めることでロシアとウクライナが和解して停戦するという案がバーンズからゼレンスキーに示されたという報道が出ている。また、米議会下院の多数派を握った共和党が、ウクライナへの軍事支援を減らすためにウクライナ政府高官の汚職を問題にしつつあることにどう対処するかという話も出たらしい。ゼレンスキーは最近、側近たちを汚職容疑で次々と更迭しており、対応策がすでに始まっている観がある。 (Report: Biden Pushed Peace Plan that Recognized Russia’s Control Over 20% of Ukraine) (CIA director holds secret meeting with Zelensky on Russia’s next steps

ロシアが敗北するとの「報道」があまりにもはん濫しているので、しばらくは膠着状態が続くだろうが、米側陣営とくに米国の政治・経済情勢が悪化し、既に始まっている2024年の米大統領選挙戦でトランプ陣営が勝てば、ウクライナ分割という打開策が出てくるだろう。

ノルド・ストリーム爆破とF22による中国製気球の「撃墜」

こうした田中氏の見解を裏付ける内容が明らかにされた。第一は、「現代ビジネス」が報道した「『ノルドストリーム爆破』は米国の仕業だった…!? 新説急浮上でバイデン政権に噴出するいくつもの疑惑」(https://news.yahoo.co.jp/articles/b6b2cf32c6bcc2c400e3f0ceef60696649a47438?page=1)だ。この論考は、「米国の犯罪」を追及してきた現在85歳になるベテランジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏の報道を受けてのものだ。

「ノルドストリーム1」のパイプ2本、「ノルドストリーム2」のパイプ2本、合計4本の海底パイプラインのうち3本が破壊され、使用不能になった。西側からはロシアの犯行だろうとの見方が示される一方で、ロシア側からは西側、とりわけイギリスの工作を疑う声が上がっていた。こうした中で、バイデン政権内部の秘密工作に関わったとする筋からの情報として、ノルドストリーム爆破はアメリカ政府が行ったものだという新情報が出てきた。

今回それを発表したのは、現在85歳になるベテランジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏だ。ハーシュ氏はベトナム戦争のソンミ村の虐殺報道でピューリッツァー賞を受賞した。ウォーターゲート事件にCIAが関わっていたこと、イラク戦争時にイラク兵捕虜を収容したアブグレイブ刑務所で米軍による拷問が行われていることを暴露したことでも知られる。

ハーシュ氏は、計画に携わった匿名の関係者の話として、ノルドストリーム破壊工作の決定は、バイデン米大統領が、国家安全保障チームと9ヵ月以上にわたって秘密裏に協議した結果下したものだとしている。政権中枢ではサリバン国家安全保障担当大統領補佐官が深く関与し、米軍、CIA,国務省などの米政府機関に加え、ノルウェー政府とノルウェー軍も関わっていたという。

ハーシュ氏は高名なジャーナリストだが、情報源としては「隠れ多極主義者」である可能性が強い。要するに、ドイツとロシアとの関係を断たせる意味で、バイデン政権がバルト海の海底に敷いた原油のパイプラインであるノルド・ストリームを破壊したという趣旨である。田中氏の言う「隠れ多極主義者」は対米従属国を自滅させる政策を展開しているが、その傘下にあるバイデン政権がノルド・ストリームを破壊させたとしても不思議ではない。また、同解説記事では、バイデン大統領親子が中国で不正行為を行ってきたことも大々的に報じられている。「隠れ多極主義勢力」によって牛耳られている米国諜報界=ディープ・ステートにとって、バイデン民主党政権はもはや御用済みになったということだろう。

なお、バイデン親子の中国での不正活動については、習近平体制以前の貧富の格差をもたらした江沢民、胡錦濤体制時代のこと。習近平国家主席は毛沢東を重要視しているようだが、これは文化大革命で経済を破壊した毛沢東ではなく、貧富の格差をなくし、中間層の厚い経済社会に変革したということで歴史に名を残したいのだろう。

ところで、上記の解説記事では「米空軍航空機動軍団司令官のマイク・ミニハン大将が、台湾をめぐって2025年に中国と戦うことになるから、これに対して準備を進めよとの指示を部下に出していたことが明らかになった。ミニハン大将は、2024年の米大統領選挙の直後の選挙結果をめぐる混乱からアメリカが二分される事態に陥った中で、中国が動き出すというシナリオを描いているようだ」と述べている。しかし、世界の大勢は台湾を中国の不可分の領土として認めていて、台湾に独立運動を起こさせるのは国連憲章で定められた「内政不干渉」の根本原則に反する。

だから、習近平政権側から台湾有事を起こす理由はない。同政権としても、TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー )など超優良な企業が存在する台湾の武力制圧は望んでいないはずで、根底には「平和統一」志向だろう。しかし、米国が台湾独立運動を起こし、規模が大きくなれば話は変わる。その場合、米国は日本の在日米軍基地と自衛隊基地を使うことを大前提にしている(https://www.youtube.com/watch?v=IxPQUc1VRSg)。

そうなると、日本としては1972年9月の日中共同声明や1978年8月の日中平和友好条約を維持するか、または、憲法違反だが集団的自衛権を加味して解釈した「日米安保条約」を取るかの選択を迫られる。岸田文雄政権としては後者を前提として「防衛費」の増額などと言っているが、日中共同声明と日中平和友好条約を破棄した場合は、中国の習近平政権から外交・経済・軍事面で深刻な報復措置を被るだろう。ただし、「隠れ多極主義勢力」からすれば、日本を自滅の方向に持っていく狙いがあるから、そういうこともあり得る。岸田政権はそのことを覚悟しなければならない。

最新鋭ステルス戦闘機F22とF35

さて、第二に伝えておきたいことは、米国に飛来した中国製気球の最新鋭ステルス戦闘機F22による撃墜事件である。最新鋭の新幹線で電気自転車を追い越す、または、襲いかかるようなものだ。そもそも、中国の習近平政権が制御の極めて難しい気球で米国内の米軍基地を偵察するなどということは有り得ない。米軍基地の偵察を行うとすれば、静止衛星を使うというのが常識だ。田中氏は、「中国国内で警察など治安当局が、上空からの交通の監視や電波通信傍受用に飛ばしていた国内監視・治安維持用の気球だったのでないかというものだ。軍事と並び、国内治安維持や国民監視の分野も、システムを国家秘密にしておかねばならない。だから中国政府は、気球の正体を正確に発表できず、民間の気象観測気球だとウソを発表せざるを得なかった」https://tanakanews.com/index.html)としている。

結果としては、プリンケン国務長官の中国訪中(ウクライナ戦争の「勝利」のために実質的なロシア支持・支援を止めさせる狙いがあった)の延期という事態を招いた(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230217/k10013983071000.html)。

アメリカ本土の上空を飛行した中国の気球を巡っては、アメリカ側は偵察用だったとしてブリンケン国務長官が今月上旬に予定していた中国への訪問を延期したのに対し、中国側はアメリカ軍が気球を撃墜したことに強く反発するなど米中間で応酬が続いています。バイデン大統領は16日、演説し、気球を撃墜したことについて「主権の侵害は受け入れられない。謝罪するつもりはない」と述べ撃墜は正当だったと主張しました。

一方で、アメリカ軍が10日から3日連続で撃墜した飛行物体については「中国やそのほかの国の偵察活動であることを示すものは何もない」と述べ、民間による商用や研究の目的だった可能性が高いという見方を示しました。

中国は、「アメリカ軍が気球を撃墜したことに強く反発し『アメリカの気球が中国の領空を違法に飛行している』と主張」するなど強く反発している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230216/k10013982011000.html)。バイデン政権のブリンケン国務長官は、中国共産党で外交を統括する王毅政治局委員と17日から3日間の予定でドイツで開かれる国際会議(ミュンヘン安全保障会議)で接触するかどうかが注目されている。ただし、バイデン民主党政権の醜態であり、米中関係の悪化をもたらしたことは否めない。背景にはやはり、米国の「隠れ多極主義勢力」が存在する可能性がある。

【追記:2022年02月19日】ミュンヘン安全保障会議では、米国のハリス副大統領と中国で外交を統括する王毅政治局委員が互いに牽制し合う演説を行ったほか、プリンケン国務長官と王毅政治局委員が約1時間にわたって会談した模様だが、米国側は中国に対して事実上のロシア支援を断念させることはできなかったようだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230218/k10013984731000.htmlhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20230219/k10013984941000.html)。外相級会談での中国側の発表はNHKの報道では触れていない。

ドイツで開かれているミュンヘン安全保障会議では18日、アメリカのハリス副大統領と中国で外交を統括する王毅政治局委員がそれぞれ演説しました。この中でハリス副大統領はロシアによるウクライナ侵攻に関連して中国に言及し「戦争が始まって以降、中国がロシアと関係を深めていることを懸念している」と指摘しました。その上で「中国が今後、ロシアに軍事的な支援を行うようなことがあればルールに基づく秩序がさらに損なわれるだろう」とけん制しました。

これに対して王氏はアメリカ軍がアメリカ本土の上空を横断した中国の気球を撃墜したことについて発言し「常軌を逸脱した想像もできない行為だ」などと非難しました。その上で「アメリカが誠意を示して過ちを正し、今回の事態が両国関係に与えた損害を直視して解決するよう要求する」と述べました。

アメリカのブリンケン国務長官は18日夜、中国で外交を統括する王毅政治局委員と訪問先のドイツで会談し、中国の気球がアメリカ本土の上空を飛行したことについて「このような無責任な行為は2度と起こしてはならない」と改めて非難する一方、両国が対話を維持する重要性を強調しました。

本投稿記事の最後だが、米国一極覇権体制は完全に終焉している。今後は中露を中心としたBRICSや上海機構、中東産油国、中国からの直接投資を受け入れているASEAN諸国など非米側陣営が政治・経済・外交・軍事面で興隆していくだろう。その趨勢は避けられない。ただし、非米側陣営が欧米文明圏の発展の原因になったキリスト教がもたらした普遍的価値観を受け入れているとは言い難い。この面で、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)は重大な使命を担っているはずだ。同連合はそのことに気づく必要がある。


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