露中首脳の「結束強調」は東アジア文明時代の到来の予兆ー欧米文明は「たそがれ」の時刻へ(内容強化)

露中と中央アジア4カ国、インドなどが加盟する上海協力機構(SCO)が15日から中央アジアはウズベキスタンのサマルカンドで開催されるのを前に、露中首脳がウクライナ事変勃発後、初めての首脳会談を行い、表向きながら経済面での「結束」を強調したことは、「基軸通貨」ドルを中心とした米側貿易等決済システム(SWIFT)で成り立っている米国一極覇権体制の終焉を示し、東アジア文明時代の到来を主軸にした多極化時代(世界諸国の個性を活かす時代)の到来を告げるものだ。

東アジア文明時代への歴史的転換期にいよいよ突入

上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization、英略称: SCO)は、中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8か国による多国間協力組織、もしくは国家連合で正式には2001年06月14日設立された。人口は狭い意味で35億5000万人程度だが、オブザーバー国(アフガニスタン、ベラルーシー、イラン、モンゴル)や対話パートナー国、加盟希望国(トルコ、アゼルバイジャン、アルメニア、カタール、サウジアラビア、クウェートなど)はどんどん増えつつあり、世界人口の大半をカバーする。特に、原油や天然ガスの最有力国産出国であるイランは本加盟に向けて着々と準備しつつある。中東産油国の盟主であるサウジアラビアが関わっていることも大きい。

ユーラシア大陸の中核を占める上海協力機構(Wikipediaより引用)

上海協力機構(SCO)の特徴は、表向きはG7首脳国を中心とした欧米文明諸国(いわゆる米側陣営・西側諸国)に依存しない国際貿易決済システム(米側陣営の国際医決済システムであるSWIFTに依存しない)の構築を通じた経済協力機構(システム)を構築することだが、裏面では軍事的な協力関係の構築も意識されてきているようだ。中東産油諸国の盟主であるサウジアラビアも参加(加盟)を希望していることから要するに、非米側陣営の中核的国家連合になると思われる。

その上海協力機構首脳会議開催を前にして、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が首脳会談を行い、欧米文明への対抗を軸にした「結束強化(と拡大)」を共同宣言として公表した意味は思い。朝日デジタルは「中ロ首脳、結束を強調 ウクライナ侵攻後、初会談」と題して次のように伝えている(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15417819.html?iref=pc_ss_date_article)。

プーチン氏は会談で、「一極の世界を作ろうとする最近の試みは、圧倒的多数の国にとって受け入れがたい」と米欧を念頭に批判。「ウクライナ危機で中国の友人がバランスの取れた立場であることを高く評価している」と述べた。

一方、中国外務省によると、習氏は「互いの核心的利益に関わる問題で強く支え合いたい」とプーチン氏に呼びかけた。プーチン氏が台湾問題で「『一つの中国』原則を厳守する」と述べると、習氏は「称賛する」と応じた(注:1972年の日中共同声明も台湾を中国の不可分の領土と認めている)。さらに、台湾への関与を深める米国を念頭に「いかなる国家も台湾問題で裁判官となる権利はない」と非難した(注:基本的には軍産が利益を得られるように武器を輸出するだけ)。

読売新聞も09月16日付で同じ報道を行っているが、両紙とも一定の事実関係を伝えたあとは、「ウクライナ侵攻に失敗したプーチン・ロシア政権の断末魔のあがき」といったたぐいの解説記事を垂れ流して、日本の国民をまどわしている。

ウズベキスタンのサマルカンドで開かれた上海協力会議首脳会議は、米国一極覇権体制の崩壊を念頭に、①イランの加盟を正式に承認した②国連安保理の正式な承認のない米側陣営の一方的な対露経済制裁に反対する③米国を盟主とするNATO諸国や表面的には対米隷属姿勢を続けている日本を念頭に置いて、「敵基地攻撃能力」もしくは「敵基地反撃能力」の確保と称して、一方的かつ無制限のグローバルな中長距離ミサイル防衛システムを構築することが、国際的な安全保障と安定に悪影響を与えている④加盟国間の貿易の相互決済に自国通貨を利用する(注:ドル基軸の国際貿易決済システム=SWIFT=に対抗できる国際貿易決済システムの構築に向けて注力する)ーなどのサマルカンド宣言を打ち出して閉幕した(https://mainichi.jp/articles/20220916/k00/00m/030/349000chttps://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000268688.htmlhttps://jp.reuters.com/article/uzbekistan-sco-payments-idJPKBN2QH1PWーなどによる)。

さて、米側陣営の意図的なマスコミ工作ではウクライナ北東部のハリコフ集でのロシア軍の撤退などを念頭に、「ウクライナではいよいよロシア側が劣勢に陥っている」との報道が繰り返される。しかし、ウクライナ事変で優位に立ち続けているのはロシアであって、ナチスに協力的だったウクライナのステパン・バンデラを開祖とするネオ・ナチストに支配された独裁政権のゼレンスキー大統領が支配しているかに見えるウクライナではない。ウクライナは、①ネオ・ナチズム政権に親和的で、カチンの森事件(注:第二次世界大戦中にソビエト連邦のスモレンスク近郊に位置するカティンの森で約2万2千人のポーランド軍将校、国境警備隊隊員、警官、一般官吏、聖職者が、ソビエト内務人民委員部によって虐殺された事件)以来、反ソ・反露的なポーランドが虎視眈々と狙っているウクライナ系ウクライナ国民が多数を占めるウクライナ②親露的なウクライナ系住民、親露的なロシア系ウクライナ国民ーとに分裂する公算が大きい。

ウクライナ北東部でのハリコフ州でのロシア軍の撤退は、国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が本日09月16日投稿の「ロシア敵視で進む多極化」(https://tanakanews.com/220916asia.htm、無料記事)で指摘しているようにだがよく見ると、露軍の撤退は、伸びた戦線を短くして戦争の負担を減らすための戦略的撤退と考えることができる。2月の開戦以来、露軍が負けそうだという米国側の報道は毎回この手の歪曲話である。ウクライナにおける露軍の優勢が今後も続く。 (Western Official: Too Early to Say Ukrainian Gains Are a Turning Point) (ロシアの優勢で一段落しているウクライナということだろう。

また、NHKはプーチン大統領が上海協力機構首脳会議で、「上海協力機構は世界最大の地域の枠組みであり、国際的な問題解決への役割が大きくなっている」と述べ、欧米への対抗軸として上海協力機構の勢力拡大を図りたい意向を強調したうえで、東部ドンバス地方の解放に向けて「引き続き特殊軍事作戦を継続する」ことを表明した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220917/k10013821981000.html)。「特殊軍事作戦」を長引かせて、多極化世界への転換を図る思惑があるものと見られる。

サマルカンド宣言を弱小国のあがきと捉えるのは時代遅れで、米国による一極覇権体制の打倒に向けてコモディティ、人口大国の非米側陣営が政治・経済・外交・安全保障で本格的な協力に乗り出したと捉えるべきだろう。なお、田中氏は非米側陣営の米国による一極覇権体制打倒の急速な動きを背後で支援しているのが他ならない米国の「隠れ多極主義勢力」であると捉えている(サイト管理者(筆者)による理解)。

経済面でも、ウクライナ事変が長期化すればするほどエネルギー資源や希少金属、穀物などコモディティ大国のロシア側が有利になるというのは既に、国際的な常識になっている。朝日デジタルも読売新聞も、ロシアが同国への強力な経済制裁によって重大な経済困難に直面しているとは記しておらず、むしろ、ロシアは米側陣営への輸出を阻止された分、中国を中心とした非米陣営側への輸出を増やしていると記している。例えば、朝日デジタルの時時刻刻の「苦戦ロシア、強まる依存 経済頼みの綱、中国支持鮮明」(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15417794.html?iref=pc_ss_date_article)では、次のように記している。

経済面でも中国の存在感は増す一方だ。経済制裁を受けたロシアでは、1千超の外国企業がロシア事業の停止や撤退を決定。中でもハイテク製品の入手は困難だ。だが、ロシア大統領府によると、1~7月の中ロの貿易は前年同期比で約25%伸びた。中国は米欧向け原油輸出が減少した分の受け皿になったほか、スマホや自動車などハイテク商品の輸入や投資誘致も中国頼みが強まる。

ウクライナ侵攻は長期戦が見込まれ、燃料高騰に苦しみながらウクライナに武器提供を続ける欧米の「支援疲れ」と、経済制裁に耐えるロシアとの「我慢比べ」の様相だ。ロシア経済を支える中国は間接的に侵攻を支援している構図で、プーチン氏は習氏との会談で結束を再確認したい考えだ。(中略)

中国は米欧の対ロ制裁に反対し、ロシアと経済協力を続ける。中国税関総署によると、1~8月のロシアからの輸入額は729億ドル(約10兆5千億円)で、前年比50・7%増えた。

そもそも、購買力平価(返答為替相場の収束レート)では既に中国が米国を追い抜いて世界一の経済大国であるし、科学・技術レベルでも同等以上だ。人口も二人政策に転換しており、人口問題がアキレス腱になる恐れはかつてよりも小さくなっている。その中国とロシアが貿易を通じて経済交流を深めるとなれば、ロシアが経済的に苦境に陥るとか破綻するとかなどのことはあり得ない。同記事によると、中国はロシアに対して軍事支援も強化する意向とのうわさを流しているとのことだが、中国から必要な製品を輸入できるとなれば、そんなに困らないのではないか。

なお、最も懸念されることは、ウクライナのゼレンスキー独裁大統領が欧米諸国と実質的に北大西洋条約機構(NATO)と同等の軍事同盟を築きたい意向を示していることで、これが実現すれば第三次世界大戦につながる。サイト管理者(筆者)を含む人類は愚かな歴史を繰り返してきたから、その可能性は皆無ではないが、米国とウクライナ傀儡政権に対露経済制裁を強要されて内政、経済ともに困っている欧州諸国としては、そんなことはお断りだというのがホンネだろう。「検討段階」ということで店晒(たなざら)しになる公算が大きい。

例えば、フランスの国会議員選挙ではマクロン政権側が左派(ジャン・メランション氏の「不屈のフランス」を中核とする左派連合)、右派(マリーヌ・ルペン氏の国民連合)の対米隷属ではない民衆的国民政党ーポピュリスト政党と呼ばれることもあるー勢力に大敗北を喫したが、欧州NATO加盟諸国がこれ以上対米隷属外交を続ければ、非対米隷属国民政党が躍進し、政治状況が劇的に変わるだろう。

フランス以外にもその予兆は既に表れている。強引にNATOに加盟し、永世中立国政策を放棄しようとしているスウェーデンでは、対米隷属政策を強要させられているために対露経済政策の跳ね返りで苦しんでいる民衆的国民側ー右派ポピュリストとも言われるーが現政権に反逆して、総選挙で過半数を制した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220915/k10013818771000.html)。

スウェーデンでは11日、総選挙が行われ、開票の結果、反移民を掲げるスウェーデン民主党などの右派勢力が過半数を獲得し、中道左派の与党 社会民主労働党などが、敗北することが確実になりました。(中略)一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、スウェーデンはNATO=北大西洋条約機構の加盟を申請していますが、新政権のもとでもこうした安全保障政策は継続されるものとみられます。

いつものパターンの報道の仕方だが、対露経済制裁の強要の副作用で生活苦にあえいでいる民衆の姿は視野に入れない記事である。欧州全体が対露経済政策の跳ね返りで、深刻な経済状況に置かれてきている。特に、ドイツがそうだ(「潰されていくドイツ」、https://tanakanews.com/220823europ.htm)。また、米国も深刻な経済のジレンマに立たされて久しい。同国で09月13日に労働省労働統計局から発表された08月の消費者物価(CPI)上昇率は8.3%と市場の期待を裏切る高水準で、インフレが沈静化していないことを市場に改めて示した。

さらに、食品とエネルギーを除いたコアCPIの伸びは前月比0.6%上昇と期待に反して前月から加速した。このため、株式市場は米国の金融政策当局(FRS)の利上げは今後も続くとの見方からダウ平均が急落した。日本のメディアの記事ではほとんど触れられることはないが、米国のインフレはコロナ禍による供給網の混乱に加え、強力な対露経済制裁措置の跳ね返りで資源・エネルギー価格が高騰しているコストプッシュ型インフレによるものだ。なお、米国民を「欲しがりません、勝つまでは」という気にさせるのは無理だろう。

コストプッシュ型インフレを金融政策(フェデラル・ファンドレートという政策金利の大幅な引き上げやQT(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)の本格化で対処することはできない。

解決の唯一の道は、ウクライナ事変が米国(のオバマ政権時代のビクトリア・ヌーランド国務次官補の指導によって)2014年02月のマイダン暴力革命をきっかけに起こったものであることを認め、対露経済制裁措置を速やかに止めることだ。しかし、それは過激で好戦的なネオコン派に牛耳られているバイデン政権ではできないことだ。田中史観の見方では、過激であれ温厚であれ米国を牛耳っている隠れ多極派は最早、米国が同国の一極覇権体制を続ける能力はないということで一致している。ただし、バイデン政権は過激で好戦的なネオコン派に牛耳られているから、NATO加盟の欧州諸国に過激で拙稚な政策を取らせて自滅させて、米国離れを起こしてもらうことになる。欧州諸国は自立して下さい、ということだ。

それでは、これからどうなるか。これについて、田中氏の見方はサイト管理者(筆者)と同じく、東アジア文明圏時代が到来するとにらんでいる。同氏は、先の投稿論文で次のように指摘している。

米多極派が日本を自滅させずに温存している理由は、プーチンが東方経済フォーラム(注:9月5-8日にロシア極東のウラジオストクで開かれた、ロシア政府主催の年次会合。プーチン大統領より米英ディープ・ステート(DS)による一極覇権体制が崩壊し、多極型の世界が訪れてくることが強調された。参考:時代遅れの一極集中モデルは、新しい世界秩序に取って代わられようとしているhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20220905/k10013803231000.html)の演説で、多極型になるこれからの世界経済の中心は東アジアだとぶち上げたのと同じものだ。ロシアが欧州と断絶してアジアの国になり、中露印など非米諸国がアジアを発展させて世界経済の中心にしていく。日本や韓国など表向きは米国側の諸国もそこに参加して実質的な非米諸国として振る舞う。日本など米国側のマスコミはこうした流れを無視し、報道上の表向き(実は妄想)は米国覇権体制が続いているが、実体として世界は多極型に転換し、中露など非米化した東アジアが世界経済の牽引役になり、日韓もそこに参加する状況になる。豪州など、今は中露を本気で敵視する諸国も、そのうち態度を変えて参加する。 (India Dashes US “Hopes” On Oil Price Cap: “We Will Buy From Russia, We’ll Buy From Wherever”

そのような多極化のシナリオのために、米国の多極派は、ウクライナを使ってロシアを挑発して開戦させ、欧州を巻き込んで強烈な対露制裁をやって世界を二分して露中に非米側を主導させ、世界の非米化と多極化を推進した。彼らは同時に日本を放任して、日本が中露との関係を維持して、非米化する東アジアの経済発展に貢献するように仕向けている。ほとんどの人が気づかないうちに日本は米国の差し金で非米化している。 (German Foreign Minister Says Support For Ukraine Will Continue “No Matter What Voters Think”

後段の見方は常識的には驚愕すべき内容だが、多分にその可能性も否定できない。岸田文雄政権の内部の動きを注視する必要がある。そうした東アジア共同体文明の時代に今後、突入していくのだろう。ただし、文明の根幹はマックス・ウェーバーによると、時代の転轍機(手)としての「世界宗教・思想」にある。

サイト管理者(筆者)はウェーバーの意味での「世界宗教」として文鮮明師が唱導した統一原理の解釈による聖書理解(キリスト教理解。異端とされるが歴史的には、宗教革命は異端から起こった)があると思っている。しかしいかんせん、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)と国際勝共連合が「論語読みの論語知らず」に陥っている気がしてならない。

けれども、東アジア文明時代の到来は朝鮮半島(韓半島)の平和統一に続く歴史の必然なのだろう。同連合がそれに気付いて、低次元の「滅共思想」(注:自民党との癒着はこの滅共思想が原因で、現実的には自民党の走狗になり、最終的には捨てられようとしていると思われる)を撲滅、世事(国際情勢)の最新の流れを社会科学的分析し、与野党を問わず指導層に政策提言できるようにすることが同連合の再生につながると思う。


この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう