馬渕睦夫氏の中国共産党崩壊説に重大な疑問ー昨年10月中国共産党大会は経済発展に向けての基盤固め(追記:安倍狙撃事件)

中国共産党崩壊説が中国通と自称する専門家・ジャーナリストの間で跡を絶たないが、独自の「ディープステート論」を展開しておられる著名な馬渕睦夫氏も、昨年11月に公刊された「馬渕睦夫が読み解く2023年世界の真実」で、昨年10月の第20回中国共産党大会で習近平総書記が再任され、同党政治局員を習近平派で固めることに成功したことで、いわゆる「習近平独裁体制」が確立されたことに対して、「(中国共産党の)終わりの始まり」と解説しておられる。しかし、同大会はゼロ・コロナ政策で同氏の指摘するグローバリスト(多国籍企業・国際金融資本に追随して富を拡大・蓄積しようとする勢力)を追い落とすことに成功したことから、彼らの政治権力を剥奪し、世界最大の経済大国を目指して発展するための基盤を固めた大会である。中国共産党をあなどってはいけない。

馬渕睦夫氏の中国共産党崩壊説に異論

馬渕氏は京都大学在学中に国家公務員上級試験に合格、同大学を中退して外務省に入省し、激動の時期にあった(今もそうだが)ウクライナ大使を歴任し、外務省を退いた後は独自の「ディープステート論」を展開している著名な国際情勢分析・評論家である。本サイトでも紹介させていただいた。

「馬渕睦夫が読み解く2023年世界の真実」は第3章「プーチンとネオコンが死闘」、第4章「中間選挙が物語る『民主国家』アメリカ」の崩壊」は、サイト管理者(筆者)のこれまでの理解を再確認するとともに、新たな情報を取得させていただくことができた内容だが、その他の章は物足りなく、特に、第3章「習近平体制は2025年まで生き残れるか?」は大いに疑問である。

馬渕氏は同章で、昨年2020年10月の第20回中国共産党大会について、「習近平が自己の権力を強化した結果ではなくむしろ独裁政権の『終わりの始まり』と言えると思います」と述べ、「フランスのユダヤ系の経済学者であるジャック・アタリは『2025年に中国共産党の一党独裁体制は終わる』と、時期を明示しました。アタリは欧州におけるディープステートの広告塔のような存在だから、その発言はディープステートの手によって中国共産党が崩壊させられるのではないかと思います」(58〜59頁)と、中国共産党崩壊論を明言されておられる。

しかし、この見方については三つの問題点がある。第一は、昨年の中国共産党第20回大会は、馬渕氏が批判するグローバリスト(新自由主義を広めてきたディープステートに庇護された多国籍企業・国際金融資本に追随して富を拡大・蓄積しようとする勢力、上海に生息)を中国の権力の座から追い落とすことに成功したことから、ゼロ・コロナ政策を止め、世界最大の経済大国になるための基盤を固めた大会だということだ。

馬渕氏と同じく外務省に入省し、国際情報局長、イラン大使、防衛大学教授を歴任され、東アジア共同体研究所(理事長・鳩山友紀夫元首相)所長も兼任されておられる孫崎享氏によると、第20回中国共産党大会では次のような経済政策と台湾政策を打ち出している(https://www.youtube.com/watch?v=9ezzcnXTv1o&t=1058shttps://www.youtube.com/watch?v=pSN4sqS2X7A)。

購買力平価で見た中国の国内総生産(GDP)は、米国のCIAの調査で中国が23.0兆ドルで米国の19.8兆ドルを追い抜いている。なお、購買力平価とは、例えば米中両国で同じ程度のマックハンバーガーの値段を比較して、その値段の比率から為替相場を決めるものだ。インフレ率が高いほど、購買力平価は安くなる。実際には、モノやサービスのバスケットを作成し、バスケット価格の比率から購買力平価を計算する。現実の為替相場は米中両国の輸出入の貿易量、中長期金利差の影響を受けるが、理論的には購買力平価に収束する。米国はコストプッシュ・インフレに苛まれているから、購買力平価ベースで見たGDPは中国の方がさらに大きくなっているだろう。

また、「公平な機会を促進し、低所得層の所得を増やすとともに、中間層を拡大、所得分配と富が蓄積するメカニズムを平準化する(注:経済政策の根本にする)」ことを経済政策の第一目標に挙げている。日本で言えば、池田勇人内閣での所得倍増路線による「昭和元禄」の時代を思い出す。ただし、第二に、「イノベーション主導の開発戦略」を二番目の経済政策の優先順位に挙げているが、中国は科学・技術論文の引用数で、米国に追いつき追い抜きつつある。特に、ファーウェイなどが取得している第5世代通信技術の特許では世界一の特許件数を誇る。

日本の昭和元禄の時代より先を行く、最先端科学・技術による世界第一の経済超大国を目指していると見てよいだろう。鄧小平の改革・開放路線は大きな成果を収めたが、江沢民、胡錦濤国家主席と続いた時代に、貧富の大格差が生じた。鳩山元首相によると、改革・開放路線の時代に米国の多国籍企業や金融資本らグローバリストと結託して蓄財した資産家達は、習近平総書記の再任以降、自国の中国から海外に脱出しているという。

これは、習近平「独裁体制」と言っても、東アジア諸国で実現した「開発独裁」を上回る高次元的な「開発独裁」を志向しているものと言えよう。馬渕氏は、国際情勢を「民主主義国家陣営対覇権主義国家陣営」の対立・相克と見てはいけない、「グローバリズムとナショナリズム」の対立・相克と見るべきだと随所で強調しておられるが、第三次習近平体制は、「ナショナリズム」を志向していると見てよいだろう。中国がゼロ・コロナから経済発展に充填を置いた政策を展開し始めたことについては、国際情勢開発者の田中宇(さかい)氏も、同様の見方をしている(「中国の興隆でどうする日本」無料記事、https://tanakanews.com/230115japan.htm)。

中国は今年からゼロコロナ策を放棄して経済成長を再開し、消費市場もしだいに活況になるが、対照的に欧州など米国側の多くの地域はひどい不況とインフレ再燃・金利上昇による経済難が続く。中国は、世界で最も経済が再活性化していく地域になる。中国は世界の実体経済の中心になっていく。米国側の企業は、旺盛な消費を再開する中国に製品を売りたいと希望する。中国側は歓迎だ。しかし、一つだけ条件がある。それは「中国を敵視する国からは買いません」ということだ。(注:リード文、中略)

日本のマスコミでも報道されたこの話をみて私が感じたのは「中共は、中国がコロナの集団免疫に達したことにしたいのでないか」ということだった。集団免疫に達すると感染が拡大しにくくなる道理があり、経済を自滅させるゼロコロナの超愚策を二度とやらなくて良いという話にできる。中共のゼロコロナ策は、習近平の独裁強化に反対する党内勢力を抑止するために行われ、昨秋の党大会で習近平の独裁が確立したのでゼロコロナも用済みになった。コロナ愚策を完全にやめ、14億人に旺盛な消費を再開させて、世界最大規模である中国の経済成長を全開に戻すため、中共は集団免疫を利用したいのでないか。 (都市閉鎖 vs 集団免疫) (永遠の都市閉鎖 vs 集団免疫

習近平は昨秋に独裁を確立した後、12月のサウジ訪問でアラブ産油諸国と人民元で石油ガスを買い占める話を進めたり、プーチンと話して中露の結束を強めるなど、大急ぎで非米型の国際経済体制を構築し始めている。中国は、アラブイラン印度・一帯一路やBRICSなど非米側を連ね、ドルの代わりに人民元などBRICSの諸通貨を決済に使う、既存の米国中心の経済体制(米経済覇権)から全く独立した国際経済システムを作ろうとしている。世界経済は、米国側と非米側の二重グローバル化の状態になる。 (China Using ‘Petroyuan’ in Oil Imports May Lead to New World Energy Order) (China Signals Surge In Oil Demand With 20% Increase In Refiner Oil Import Quotas

習近平は急いでいる。米国側がQTと連続利上げで金融大崩壊しそうだからだ。大崩壊の前に非米側の新世界秩序を構築しておけば、米国側が大崩壊しても世界全体が潰れることなく無秩序なしに推移できる。非米側の世界システムをある程度構築してから米国側が金融崩壊すると、米国側から非米側に移る国が急増し、非米システムを強化できる。非米側の準備が間に合わないと、ドル崩壊とともに決済通貨体制が無秩序化し、世界経済の混乱が長期化しかねない。習近平はサウジ訪問時、アラブ諸国に対し、3-5年間で石油ガスの人民元決済システムを確立すると提案した。非米システムの確立に3年以上かかることになる(サウジは通貨がまだドルに為替固定=ペッグしており、それを外すのにも時間がかかる)。 (Escobar: Why BRI Is Back With A Bang In 2023) (中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める

中国が経済成長を再び全開にすると、石油は1バレル140ドルに高騰すると予測されており、米欧のインフレは今年も続くからQTをやめられない。米連銀の以前の経緯を見ると、QTの開始から18か月で金融崩壊(金利高騰)した。連銀は今回、昨年9月にQTを本格化した。18か月後は2024年3月だ。米金融が3年間(2025年12月まで)もつのか心もとない。だから習近平は急いでおり、集団免疫を口実に、経済を阻害するコロナの愚策を完全終結したいのだろう(中国が早く経済成長を再開するほど石油ガスが早く高騰し、米欧のインフレが悪化してドル崩壊が早まるという悪循環もあるが)。Oil Prices Could Exceed $140 If China’s Economy Fully Reopens) (多極化の決定打になる中国とサウジの結託

習近平体制の中国が経済発展を加速する戦略を明確に打ち出したことで、ドイツなどは財界を代表してショルツ首相が中国詣でに走っている。加えて、田中氏の解説記事にあるように、中露はBRICSやサウジアラビを盟主とする中東諸国(注:サウジがBRICSに加盟する可能性も否定できない。昨年12月に習近平国家主席がサウジを訪問した際、同国はムハンマッド・ビン・サルムーン首相兼皇太子)らが大歓迎し、①人民元建てによる原油の決済②ファーウェイなど中国企業との連携による第5世代通信網の確立ーなどで合意した)、上海協力機構、本音では中国からの直接投資を受けて入れており、中国には反対しないASEAN諸国など、非米側陣営が「内政不干渉」の原則のもとに結束を固め、推進しつつある。

これに対して、米側陣営(米国を盟主とするG7諸国など)は対露経済制裁に伴う資源・エネルギー価格、穀物価格などコモディティ価格の供給価格が上昇して、コストプッシュ・インフレに陥っている。要するに、売り手市場であり、売り手が安くしてくれないと解決しない。つまり、QT(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)を強化しても、不況(デフレ)が加速するだけで、証券価格(債券価格や株式価格)が享楽して金融市場の混乱とスタグフレーションが加速するだけだ。

だから、一番困っているのは欧州諸国だ。このため、既に述べたようにドイツは財界の意向を受けて、ショルツ首相が昨年11月訪中して、習近平主席に中独貿易のさらなる活性化を訴えたが最悪の場合は、中国を通しロシアから原油・天然ガスの供給を受ける道が残されていないわけではない。

第二の問題は、中国が「米露のような超大国」になれない理由として、資源・エネルギーと食料を自給できないことを挙げていることだ(42頁)。もちろん、日本のようなカロリーベースで30%台という極端に食料自給率が低ければ問題だ。しかし、近現代に世界の覇権を握ってきた英国の食料自給率は低かった。それでも、近代資本主義システムを創出し、産業革命と植民地支配を行って、「沈むことのない大帝国」という世界最大の覇権国になった。中国は国連憲章に謳われている「内政不干渉」の原則をうまく使って、非米側陣営から支持を集めつつある。なお、中国は世界最大の金地金の産出大国であることも忘れてはいけない。「基軸ドル」には、中東産原油に裏付けられることによって信用を得てきた(ペトロ・ダラー)が、サウジが「ペトロ・ユアン」システムの構築に合意したことで、遠くない将来にドルの化けの皮は剥がれる。

金価格は、G7諸国の中央銀行群(総元締めはスイスのバーゼルに本部のある国際決済銀行)の信用取引操作(現物の金を借りて売却し、金価格が下がったところで金を買い戻して返却するなどの手口)によって一トロイオンス(約31グラム)=2000ドルを上回っていない(https://ecodb.net/commodity/gold.html)が、それでもこのところ再び金価格は上昇しており、ボックス圏内を抜け出る可能性もかなり指摘され始めている。

第三の問題は、「ディープステート」論だ。馬渕氏のディープステート論は、ディアスポラ(イエス・キリストの処刑後、古代イスラエルは国家を失うが、古代イスラエル人はディアスポラのユダヤ人として東欧を含む欧州や米国に散らばり、隠然たる力を持ってきた)のユダヤ人が組織化したものだというのが持論だ。これに加えて、スターリンに暗殺されたユダヤ人トロツキー(世界同時革命を主張し、世界統一政府の樹立を目指したとされる)を信奉する集団がネオコン(注:通常のネオコンとは、ネオ・コンサーバティブ=新保守主義=の略で、政治・軍事的には内政干渉と軍事力行使を行い、経済的には多国籍企業や金融資本に利益をもたらす新自由主義政策を採る)化して、軍産複合体・ネオコン・多国籍企業・金融資本が合体したものと見られる(83頁)。

いずれにしても、馬渕氏のディープステートの背後にはディアスポラのユダヤ人が存在する。しかし、そのユダヤ人の故郷である現代イスラエルでは、昨年11月の総選挙で右派連合が政権を獲得し、ネタニヤフ政権が誕生して以降、米国のバイデン民主党政権から離れ、ロシア(プーチン大統領)や中国に接近しつつあるという事態が生じた(田中氏、「対米離反と対露接近を加速するイスラエル」無料記事、https://tanakanews.com/230108israel.htm)。

イスラエルのネタニヤフ新政権が、米国からの離反とロシアへの接近を加速する外交姿勢をとっている。ネタニヤフは昨年11月の選挙に勝って1年半ぶりに政権に返り咲いた。年末に組閣して新政権が発足した直後の1月4日、新任のコーヘン外相がロシアのラブロフ外相と電話会談した。イスラエルとロシアの外相が話し合ったのは、昨年2月のウクライナ開戦後初めてのことだった。昨秋のイスラエル選挙直後の11月中旬には、国連のロシア制裁決議案の票決で、イスラエルは米国側諸国の中で唯一、棄権した。イスラエルは、その前からロシアと親しくしていたが、ウクライナ開戦後はウクライナを支持・支援する姿勢も見せていた。イスラエルはネタニヤフ新政権になって、それまでの中立姿勢を捨て、ウクライナや米国との関係が疎遠になっても構わずにロシア寄りの姿勢を強めている。 (Israel abstains on UN vote against Russia over Ukraine war) (Ukraine alleges Israeli FM’s call with Lavrov proves Israel changed stance on war)(中略)

ネタニヤフは1月4日、今後は国際社会からの圧力に従うことよりもイスラエルの国益を優先する外交政策をとる、と表明した。その意味するところは「パレスチナ問題で欧米から批判されても無視して、イスラエルの国益(注:バイデン政権はイスラエルの西岸占領を非難し、西岸に東エルサレムを首都とするパレスチナ国家を作る「2国式」にこだわっている=トランプ大統領は逆にパレスチナ問題の矮小化と、2国式の換骨奪胎につとめ、イスラエルを喜ばせた=のためにパレスチナに対する弾圧を続ける」という話のほかに「欧米からロシアを敵視しろと加圧されても拒否し、イスラエルはロシアと仲良くする。ロシアは、イスラエルの安全にとって重要なシリアの制空権を握っているから」という話でもある。 (Netanyahu announces foreign policy change) (New Israeli government challenges US on Ukraine, Palestinians

ネタニヤフは就任早々、イスラエル軍にシリアのダマスカス空港を空爆させている。シリアの空港などには、イスラエルの仇敵であるイランの民兵団が拠点を作って軍事物資を置いている。イランは、シリア内戦でずっとアサド政権を支援し、シーア派の民兵団をシリアに派兵してシリア政府軍を助けてきた。イランはアサド政権を守るためだけでなく、イスラエルと隣接するシリアに派兵することで、シリアからイスラエルを攻撃することも試みている。これはイスラエルにとって大きな脅威なので、イスラエル軍はシリア国内のイラン民兵団の拠点を探して空爆する先制攻撃をやり続けてきた。 (Israeli Strikes Shut Down Damascus Airport Days After Netanyahu Govt Sworn In

シリアの制空権はロシア軍が握っており、イスラエルはロシアの黙認を得ない限りシリアを空爆し続けられない。ロシアがその気になれば、シリア領空内に飛んできたイスラエルの爆撃機やミサイルを迎撃できる。だが、ロシアはそれをやっていない。ロシアは、イスラエルのシリア空爆を黙認することで、イスラエルが親露的な姿勢を強めるように仕向けている。シリア内戦は、米国がシリア国内のイスラム過激派(アルカイダIS同胞団)を軍事支援してけしかけてアサド政権を転覆しようとして2011年に始まったが、アサドを転覆するとシリアは永久に混乱した(リビアやアフガニスタンのような)失敗国家になってしまうので、混乱拡大を嫌った米オバマ政権が2015年、アサドへの軍事的なテコ入れをロシアに任せ、米国側(ISカイダ)の敗北を容認した(それ以前からイランはアサドを軍事支援していた)。 (シリアをロシアに任せる米国) (イスラエルが対立構造から解放される日)(中略)

パレスチナ問題はイスラエルにとって、米国だけでなくアラブやイスラム世界との関係改善の際にも大きな問題になってきた。だが最近は、サウジなどアラブ諸国が、パレスチナ問題の完璧な(2国式)解決をイスラエルとの和解に不可欠な条件にしない傾向になっている。米国のトランプ前大統領はイスラエルとアラブ諸国を和解させる「アブラハム協定」を提案し、これに沿って2020年にUAEやバーレーンなどがイスラエルと国交正常化した。アラブとイスラムの盟主であるサウジは、パレスチナ問題の未解決を理由に、アブラハム協定の話に乗ってイスラエル側と接触しつつも合意していない。だが、最近のサウジは態度を緩めている。 (イスラエルUAE外交樹立:中東和解の現実路線) (イランとサウジが和解。イスラエルは?

田中氏の国際情勢分析・解説のほうが、馬渕氏よりも一歩、時代認識が進んでいる。ディアスポラのユダヤ人たちも、祖国であるはずのイスラエルがロシア(と中東で覇権を拡大している中国)寄りになれば、ディアスポラのユダヤ人たちも勢いを失う。要するに、ディープステートは「黄昏」の時代に突入しているということだ。

既に、時代は欧米文明の大転換期に来ている。馬渕氏は、最後に「1549年にキリスト教(注:カトリック)がわが国に伝えられて以来今日まで解決されていない課題ーユダヤ・キリスト教文明を創り変えて受け入れるーの解決こそ、安倍総理の悲願であった「戦後レジームを脱却し、日本を取り戻す」ことに繋がるのです」(124頁)と述べておられるが、その根幹には天皇制への回帰という観点が読み取れる。しかし、天皇制への回帰や山本七平・小室直樹が分析した日本教では、ユダヤ・キリスト教文明を創り変えて受け入れることは不可能だろう。ユダヤ・キリスト・イスラム教の一神教は「善悪」を鋭く分ける。そうした徹底的な分別には、「なあなあ体質の」日本民族は対応できていないからだ。

ディープステートたそがれの今日、ユダヤ・キリスト・イスラム教文明内部からの自己改革(自己変革)が必要ではないだろうか。サイト管理者(筆者)はしばしば主張してきたように、キリスト教系とされる世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)がその役目を担っていると見るが、空気に逆らえない日本教の精神が充満する現在の日本社会の中で同連合は「村八分」に遭っている。

【追記】中国の「台湾侵攻論」について馬渕氏は、西安事件(注:孫文が主導した辛亥革命によって清を打倒して成立した中華民国で1936年12月12日に。西安で起きた張学良・楊虎城らによる蔣介石軍事委員長拉致監禁事件。 中国では西安事変と呼ばれる。 事件収束に至る真相の詳細はいまだ不明だが、この事件によって、その後の共同抗日と国共合作が促されたとされる)で毛沢東を支援したディープステートが中華人民共和国成立支援をしたと見ており、台湾への中国の軍事侵攻はないと見ているようだ。著書では44頁で「昨今、『台湾有事』が取り沙汰されています。安倍元首相が言われたように『台湾有事は日本有事』であることは確かですが、前著(『2020年の真実』)でも述べたように中国による台湾侵攻は基本的にはないと、私は考えています」と述べておられる。

中国も、米国バイデン民主党政権などが台湾の独立を軍事的・経済的にしない限り、できるだけ平和統一を望んでいる模様だ。台湾は、世界最大の半導体製造企業TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)など、最先端のIT製造業を有する。中国としても、これらの最先端製造業とは友好関係を持ちたいはずだ。孫崎享氏も、米紙ニューヨーク・タイムズの解説を引用しながら、そのことを強調している。

安倍晋三元首相暗殺事件の真相に迫る放射線防護センター代表の高田純氏の動画

広島大学大学院出身で、放射線防護センター代表の高田純氏が安倍晋三元首相の暗殺当時の動画を丹念に調べ、調査結果を公開した動画を発表された(https://www.youtube.com/watch?v=qiFlZCJ4Gqs)。

結論をまとめると、①山上徹也被告の発砲はおとりに過ぎない②警察は、大量出血を否定することはできないため「心臓」に傷なしと言っていた前言を翻し、山上容疑者の後方からの「狙撃」の衝撃で安倍元首相の心臓が「挫滅」の憂き目に遭ったことが安倍元首相の死因としているが、これは警察の作り話③安倍元首相の死因は後方から狙撃した山上容疑者の弾丸によるものではなく、高度な狙撃能力を持った真犯人の狙撃犯(スナイパー)が【02月09日追記:安倍元首相が左側から広報振り返った際に同首相を目掛けて】発射した弾丸が左右鎖骨下にある動脈を大幅に傷つけ、大量出血したことによる④安倍元首相を死に至らしめた弾丸【02月09日追記:左上腕部(左肩)から胸郭内に入り左側・右側の鎖骨下動脈を損傷し、大量出血を招いた球体の鉛の弾丸】は見つかっていないーことだと思れる。

【02月09日追記】週刊文春は02月09日発売の2月16日号で「安倍元首相暗殺徹底検証ー疑惑の銃弾」題する記事を掲載したが、致命傷にはならなかった「右前脛部を射入口とし、右上腕骨で止まった弾丸」に着目しすぎているようにも思われる。うがった見方をすれば、「狙撃犯(スナイパー)」説を「陰謀論」として否定することに力点を置いているようにも見える。ただし、致命傷になった左上腕部から胸骨内に入った弾丸が消えていることは紹介している。この点は、高田氏と同じだ。

安倍元首相の暗殺事件は、同元首相が最長の内閣総理大臣(首相)在籍日数を確保したことから、ケネディ大統領暗殺事件に匹敵するもの(馬渕睦夫氏の今回の著書でもそのように指摘しておられる)であり、岸田文雄総理は法治主義違反の国葬を行ってお茶を濁すよりも、狙撃暗殺政治テロ事件の真相を救命すべきだろう。


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