岸田政権、財政・金融政策行き詰まるー狭い道は米側陣営と非米側陣営の融和努力だけ(追記:米国共和党の議会支配と内部対立)

日銀が長期金利の上昇容認という金融政策のスタンスを早々と変更して、インフレ高進の阻止や為替の円安是正など通貨価値の安定という中央銀行としての最大の任務を放棄して、再び量的金融緩和の復活を表明した。長期金利の上昇を容認すると、日銀や政府系金融機関が保有している証券価格が急落・暴落するためだ。一方、岸田文雄首相は米国民主党バイデン大統領に呼びつけられ、実質的に防衛費の増額を命じられた。ただし、財源は不明である。もっとも、「国際情勢激変税」などと称して、庶民に負担を求める公算が大きい。日銀も政府と緊密な連携を行いつつ金融政策を行うわけだから、総体としての政府の財政金融政策は破綻している。現在の米側陣営のインフレの原因は要するにコストプッシュ・インフレだから、需要をコントロールする財政金融政策では根本的な効き目はない。ジェトロでは今年2023年、米国は高インフレ率の中で不況入りするとの展望を示しており、スタグフレーション入りを見込んでいる。加えて、QT(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)を継続すると見られることから、資源・人口小国の米側陣営で金融危機が引き起こされる公算が大きい。

黒田東彦日本銀行のダッチロール

日本銀行は今月01月18日の金融政策決定会合で、従来からの大規模金融緩和を維持することを表明した。読売新聞は表明に先立って次のように報道している(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230118-OYT1T50111/

日本銀行は18日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和を継続することを決めた。緩和策は修正しなかった。2022年度の物価上昇率見通しは3%に達したが、原材料高が主因だとして、金融緩和で消費や投資を下支えする。昨年12月に見直した長期金利の上限は「0・5%」のままとし、低金利を維持するために大規模に国債を買い入れる方針も続ける。日銀は、国債の大量買い入れに伴う対応の見直しも発表した。日銀が保有する国債が増え、市場の金利がゆがむ副作用が出ている。日銀が民間金融機関に対して国債などを担保に貸し出している金利や期間を柔軟化する。金利を下げやすくする狙いがある。

日銀は昨年12月の決定会合で、金融緩和を続けるため、市場金利のゆがみを修正する目的で、長期金利の変動幅をプラスマイナス「0・25%」から「0・5%」に拡大した。ただ、市場では、追加修正観測から長期金利が一時0・5%を超えるなど、日銀が金利を抑え込む副作用が出ていた。

長期金利は、日銀が昨年12月の金融政策決定会合で長期金利の上昇幅を0.25%から0.5%へと引き上げ、金融引き締めのスタンスを示したが、これに伴い長期金利は上限の0.5%を上回る金融情勢になった。長期金利が上昇すれば、株式価格や債券価格など日銀や政府系金融機関、民間金融機関が保有する証券価格が下落ないし急落する。付け加えると、金融資産の保有者は国民だから、金利上昇は総体として見れば国民に恩恵を与える。日銀はこのことを重視するよりも、大規模金融緩和=量的金融緩和(QE)が金融危機を引き起こす公算が大きいと見ており、なりふり構わず「金融政策」なるものを元に戻したわけだ。その決定は、物価上昇率(インフレ率)の上昇に行きつく。

折しも、QEの継続表明後の本日20日、消費者物価上昇率(インフレ率)が前年同月比で41年ぶりに4.0%に達した(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230120-OYT1T50052/)。

総務省が20日発表した昨年12月の全国消費者物価指数(2020年=100)によると、値動きの大きい生鮮食品を除く総合は104・1と、前年同月より4・0%上昇した。伸び率は1981年12月(4・0%)以来、41年ぶりの大きさとなった。22年通年の上昇率は前年比2・3%で、消費税率が引き上げられた14年(2・6%)以来、8年ぶりの伸びとなった。

ただし、総務省統計局の発表(https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html)を見ると、総合指数は値動きの大きい生鮮食品を含めても104.1で前年同月比4.1パーセント上昇しているが、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コア指数)は102.1で、資源・エネルギー価格の上昇が物価上昇率(インフレーション率)高騰の主要な原因になっていることが分かる。

読売の速報報道は、資源・エネルギー価格の上昇が物価上昇率(インフレーション率)高騰の主要な原因になっていることについては、触れていない。要するに、米英アングロサクソン国家が主導する対露経済制裁措置の跳ね返りが、戦後の日本現代史にしては激しいインフレーションをもたらしている。このインフレーションは、生産側の要因(生産の大幅な減少もしくは制裁国に対する高値売却=制裁国に対しては原油や天然ガスを安くは売ってあげませんよ=)に起因するコストプッシュ型インフレだから、需要を調整する財政・金融政策ではどうにもならない。むしろ、日本はロシアが主導する液化天然ガスの生産に協力(米国バイデン政権のお目こぼしで、日本の企業が対露経済制裁に反する行為であるサハリンⅠ、サハリンⅡにも出資)しても、この有様であるだけに、憂慮すべきである。

こうして、国内のインフレが急騰する中、ウクライナ戦争や中国による尖閣諸島占拠、台湾海峡有事の公算が大きくなってきたとして、岸田自公政権は、岸田首相の米国訪米時に「敵基地反撃能力(当初は敵基地攻撃能力と言っていたが、まずい言葉遣いと分かって変更した)の大増強」をバイデン民主党政権に約束してきた。表向きは岸田首相の決意表明でバイデン大統領が首相の決意を歓迎し、高く評価したという形だが、実質的にはバイデン民主党政権に命ぜられたと見たほうが正しい。

ただし、これには致命的な事実関係の誤認がある。ウクライナ戦争勃発の主因は米英アングロサクソン国家が北大西洋条約機構諸国(NATO)の東方不拡大の約束を破ったことにある。これについては、国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が昨日01月19日に投稿した「バイデンの機密文書放置事件はクーデター未遂?」で次のように指摘している(https://tanakanews.com/230119biden.php

今回発見された機密文書には、ウクライナやイラン核問題などに関する情報が載っていたと報じられている。今回の機密文書群が作られた2013年から16年には、米諜報界がウクライナの市民運動を支援煽動して親露的なヤヌコビッチ政権を追い出し、今のゼレンスキーにつながる米傀儡の極右政権を設置した「マイダン革命」があった。当時のバイデン副大統領はウクライナの担当で、息子のハンター・バイデンをウクライナ政府に食い込ませ、ウクライナの極右新政権が米国で効率的にロビー活動できるようにしてやった。ハンター・バイデンは、父親の代理人としてウクライナ側から贈賄されていた。Hunter Biden, China, classified documents: Mystery swirls around Penn Biden Center) (Republicans Call Out ‘Double Standard’ Over Biden Classified Docs Hypocrisy

余談だが、オバマ元大統領らは、ウクライナ戦争などで中露を結束させて米覇権を自滅させているバイデン政権の続投を阻みたい。バイデン政権内でオバマの息がかかった勢力が、機密文書の放置を公式な話にしてしまう政治的な失策をわざとやり、スキャンダルを起こしてバイデン政権を危機に陥れ、共和党にバイデン弾劾劇をやらせたり、民主党内でバイデンを続投させない動きを広げようとしたのでないか。そんな見方が米政界で出ている。しかし、この件が報道され始めてから10日経ったが、スキャンダルは大きくならず、むしろ沈静化しているとのことだ。バイデン政権を支配している軍産とネオコン派が阻止したようにも見える。ただし、国勢調査権を持つ下院を制した共和党側がバイデン大統領を攻撃してくる可能性は強く残されている。

さて次に、中国による尖閣諸島領有懸念については民主党政権時代に、時の前原誠司国土交通相が日中漁業協定(尖閣諸島周辺の漁業については日中両国は自国の漁船のみ取り締まるという内容)を破って、海上保安庁に中国漁船を拿捕させて起こった事件から来ている。そもそも尖閣諸島問題については、日中双方が将来、友好関係を深めた際に平和的に解決するという共通の理解があった。政府系の報道機関である読売新聞でさえ、この解決方法の妥当性を社説で強く主張したほどだ。

台湾海峡有事問題については、まず、日本が田中角栄首相(当時)が1982年に訪中して日中共同声明を公表した際、①中華人民共和国が中国の唯一の合法政府②台湾は中国(=中華人民共和国)の不可分の領土である(両国は事実上、ポツダム宣言に記載されているカイロ宣言を引用して、主張している)ーことを大前提として理解しなければならない。世界の大勢もそうした認識だ。従って、中国や日本に台湾海峡有事事変を引き起こす動機はない。

ただし、米国は上記①については公式に認めたものの、②については公式的には、中国政府がそのように発言していることは認識していると言っているだけだ(最近、バイデン政権は②も認めているかのような発言をしているようだが)。だから、台湾海峡有事事変が発生することがあるとすればそれは、ウクライナ戦争のようにバイデン民主党政権が台湾独立派に経済・軍事援助を行って、台湾独立を画策した場合に限る。

これら全てのことからすれば、日本には「敵基地反撃能力確保」などといって大軍事増強を行う必要はない。仮にそんなことをすれば、福島第一原発事故に際して「特別復興税」が課せられたように、「国際情勢激変対応特別税」が庶民に課せられる公算が大きくなる(Youtubeで作家の佐藤優氏が語った)。最悪の場合は、「国家の村立にかかわる安全保障の確保は社会福祉の大前提」などといって消費税を大増税する可能性も考えておかなければならない。軍事兵器は消費財、投資財、生産財を破壊するたんなる消費財であって、国民経済の真の発展につながらない。むしろ、逆だ。

こうなると、日本経済は不況の塗炭にあえぐことになり、その中を40年ぶりの急激なインフレが襲うことになる。要するに、本格的なスタグフレーション入りする。これに加えて、QE(Quantitative Easing=量的金融緩和政策=)はいつまでも続けることができないから、いずれ、黒田東彦総裁が事実上、日銀総裁を更迭された際に、QT(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)に転換せざるを得なくなり、金融危機を招来する公算が大きい。

それで、中国と戦争を行って日本が勝てるかというと、米国が参戦すれば勝てるとの報道がなされた。しかし、これは絵空事だ。台湾に武器を売って設けるのが、軍産とネオコンの狙いだからだ。加えて、米国が参戦することはまずない。参戦権は米議会が握っており、予算編成権と国勢調査権は下院が握っているが、その下院は郵便投票の不正選挙に遭いながらも、共和党が222議席(民主党は213議席)を確保して、下院を掌握した。軍産とネオコンから攻撃されているトランプ前大統領の影響がなお強い共和党が、バイデン政権の要請を素直に聞くとは思えない。東アジア共同体研究所の孫崎享氏によると、共和党下院議員の半数以上がウクライナへの軍事支援の継続に反対しているという。また、ウクライナが今年中に戦闘要員不足から戦争継続が極めて困難な状況に陥るという米国紙ウォール・ストリート・ジャーナルの論説を紹介している(https://www.youtube.com/watch?v=prpt5oFiyhM)。

ただし、米メディアではトランプ前大統領が共和党内で孤立しているとの報道が繰り返しなされる。また、共和党内には反トランプ派のエスタブリッシュメントが存在することは確かで、彼ら反トランプ派とトランプ派との闘いも続いている。下院議長には15回目の投票という大混乱の末に、2016年アメリカ合衆国大統領選挙の共和党予備選挙では早い段階からドナルド・トランプ候補への支持を表明したものの、2021年米国議会議事堂襲撃事件に際して当時のトランプ大統領に電話で襲撃を止めるよう説得することを求めたカリフォルニア選出のケビン・マッカーシー議員が選出された。

米国下院議長ケビン・マッカーシー氏

マッカーシー氏はトランプ支持の議員の要求(①共和党の政策課題の優先順位決定権を、彼ら強硬保守派=トランプ支持派にゆだねる②政府支出の大幅削減推進に同意する③トランプ派議員による議長解任動議を提案しやすくすることを認める=参考:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64329390、東アジア共同体研究所のUIチャンネル:https://www.youtube.com/watch?v=prpt5oFiyhM=)に応じる形でやっと下院議長に選出された。

田中氏は共和党内部の対立についても詳しいが、それはともかくとして、「中国の興隆でどうする日本」で次のように論考されておられる(https://tanakanews.com/230115japan.htm、無料記事)。まず、リード文は次の内容だ。

日本の権力を握る自民党は、米中両属の隠然体制を作った安倍晋三が米諜報界に殺された後も、米中両属の姿勢を保ち、米国や反中世論の圧力を受けてやむを得ず中国敵視するという領域を越えて主体的に中国と敵対するつもりはない。だが、今後もこの状態を続けられるか不明だ。中国敵視を強めた政治家の人気が増すプロパガンダ体制が構築されて久しい。加えて米国からの圧力が強まると、日本の権力中枢を本気の中国敵視勢力が席巻し、安倍晋三が作った両属体制が壊れ、日本は欧州みたいな自滅の道に入り込む。そのために米諜報界が安倍晋三を殺したと考えられる。

サイト管理者(筆者)は安倍元首相の内政は全く評価していない。また、日米両属体制を築いたということも、慎重に判断しなければならないと思う。日米両属体制というのは、極めて不安定な(持続性と発展性が困難な)外交政策でもある。その中で、安倍首相(当時)が二階俊博幹事長とともに新型コロナウイルス出現前後に、中国との友好関係を強化しようとしていたことは確かだ。そのことを前提として、田中氏の見解を尊重させていただいた上で、論を進めてみたい。

安倍元首相の日米両属体制をある意味で強化、発展させることは重要だろう。ただし、自民党政権(自公政権)には対米隷属体制を脱出するだけの理念と腹がないから、「日米両属体制」を安定的に維持・発展させることは不可能だ。最終的には、宗主国の米国に従わなければならなくなる。「敵基地攻撃能力の確保」がその代表的例だ。今回の岸田首相訪米でそのことが明らかになった。

田中氏の本文の論考の紹介を続けさせていただく。

習近平は昨秋に独裁を確立した後、12月のサウジ訪問でアラブ産油諸国と人民元で石油ガスを買い占める話を進めたり、プーチンと話して中露の結束を強めるなど、大急ぎで非米型の国際経済体制を構築し始めている。中国は、アラブイラン印度・一帯一路やBRICSなど非米側を連ね、ドルの代わりに人民元などBRICSの諸通貨を決済に使う、既存の米国中心の経済体制(米経済覇権)から全く独立した国際経済システムを作ろうとしている。世界経済は、米国側と非米側の二重グローバル化の状態になる。 (China Using ‘Petroyuan’ in Oil Imports May Lead to New World Energy Order) (China Signals Surge In Oil Demand With 20% Increase In Refiner Oil Import Quotas

習近平は急いでいる。米国側がQTと連続利上げで金融大崩壊しそうだからだ。大崩壊の前に非米側の新世界秩序を構築しておけば、米国側が大崩壊しても世界全体が潰れることなく無秩序なしに推移できる。非米側の世界システムをある程度構築してから米国側が金融崩壊すると、米国側から非米側に移る国が急増し、非米システムを強化できる。非米側の準備が間に合わないと、ドル崩壊とともに決済通貨体制が無秩序化し、世界経済の混乱が長期化しかねない。習近平はサウジ訪問時、アラブ諸国に対し、3-5年間で石油ガスの人民元決済システムを確立すると提案した。非米システムの確立に3年以上かかることになる(サウジは通貨がまだドルに為替固定=ペッグしており、それを外すのにも時間がかかる)。 (Escobar: Why BRI Is Back With A Bang In 2023) (中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める

中国が経済成長を再び全開(注:習近平国家主席は昨年の中国共産党大会で胡錦濤全国家主席を追放したことに象徴されるように、反習近平派=米国の君産複合体と新自由放任主義で好戦的なネオ・リベラリズム(ネオコン)派の一掃に成功したから、彼らを制圧するためのゼロ・コロナウイルス対策は必要なくなり、ゼロ・コロナ政策を止めることを明確にし、BRICSや中東産油諸国、上海協力機構と協力関係を強化し、ロシアとともに新秩序確立を急いで勧めている)にすると、石油は1バレル140ドルに高騰すると予測されており、米欧のインフレは今年も続くからQTをやめられない。米連銀の以前の経緯を見ると、QTの開始から18か月で金融崩壊(金利高騰)した。連銀は今回、昨年9月にQTを本格化した。18か月後は2024年3月だ。米金融が3年間(2025年12月まで)もつのか心もとない。だから習近平は急いでおり、集団免疫を口実に、経済を阻害するコロナの愚策を完全終結したいのだろう(中国が早く経済成長を再開するほど石油ガスが早く高騰し、米欧のインフレが悪化してドル崩壊が早まるという悪循環もあるが)。 (Oil Prices Could Exceed $140 If China’s Economy Fully Reopens) (多極化の決定打になる中国とサウジの結託

また、ウクライナ戦争が先行き不透明なことも、習近平が急いでいる理由だろう。中露は、ウクライナ戦争による対露制裁で米国側がロシアの石油ガス購入を全面停止し、その関連でアラブなど非米側の資源埋蔵諸国がこぞって非米・中露側についてくれている間に、それらを束ねてドル不使用の非米システムを新設・確立したい。米国はロシアが負けるまでウクライナ戦争を続けると言っており、ロシアは負けないので戦争がずっと続く見通しだが、欧州はすでに自滅的な対露制裁に疲弊し、対露和解したいと思っている。欧米間に温度差がある。欧州は、安保を米国に依存しているので対米従属でロシア敵視を続けているが、今後しだいにロシア敵視の継続がおぼつかなくなる。万が一、欧州が米国から離れて対露和解すると、鋭く分裂していた世界経済の二重構造が崩れ出し、中露が目指す非米側のグローバル体制作りが崩壊しかねない。習近平は、ウクライナ戦争が終わる前に、非米側の経済システムをある程度構築する必要がある。 (Why We Shouldn’t Underestimate China’s Petro-Yuan Ambitions) (米諜報界が中国のために作る世界政府

国際情勢の真相は田中氏の指摘するような内容であり、現実的にもその方向に向かうだろう。その場合の日本は現状だと、次のような末路をたどることになる。

日本はこれから自滅の道に入るのか。それとも、両属体制を何とか隠然と維持しているうちに米国の覇権崩壊が進み、日本は自滅を免れるのか(米金融の崩壊に連動して日本も金融崩壊して破滅という道もあるが、長期的には金融が崩壊しても製造業を立て直していけるので何とかなる。金融バブルは崩壊した方が良い)。米国は、自分の覇権が崩壊寸前だから、日本の隠然離反を許さない傾向を強めているとも言える。 (US may lose control of world finance due to conflict in Ukraine

隣の韓国は、日本に比べて中国からの影響が強いので、日本よりも顕在的に米中両属の姿勢をとっている。韓国は顕然両属、日本は隠然両属である。北朝鮮の問題を解決できるとしたら、それは北を破壊したがる米国でなく、北を存続させつつ南と和解させようとする中露であり、韓国がこれから中国敵視を強めて米国側に寄っていくことはなさそうだ。そこから類推すると、隠然両属の日本(自民党)も、中国敵視を強めろと叫ぶ(間抜け)勢力からの加圧をかわしつつ、きたるべき米崩壊まで両属性をこっそり保持するのでないかと思える。そうならず、韓国が親中国を保つ一方、日本が中国敵視を強めて米覇権とともに自滅していくと、世界の転換後、韓国は日本より強い国になり、日本と朝鮮半島は豊臣秀吉以前(というか、皇室が渡来してこられたころ=皇室は高句麗・百済・新羅時代の朝鮮半島南端に位置していた伽耶諸国から日本にトライして来られたようだ。「任那の日本府」とは伽耶諸国のうちの一角との見方が有力=)の力関係に戻る。 (War and Currency Statecraft – Zoltan Pozsar) (中露主導の朝鮮半島和平への道筋をつけるロシア

隠然両属の日本はこのままで行くと、英米アングロサクソン国家によって自滅させられる。そういうことを知ってか知らずか、日本のメディアは中国敵視論者を英雄視し、日本を平和憲法違反の戦争国家にするよう煽る始末だ。これを打開するには、極めて狭い道だが、米側陣営と非米側陣営の仲を取り持つ以外にない。

本来、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会=統一教会)は、共産主義はもちろん資本主義にも限界があるとし、未来の地球の姿を示した統一思想・頭翼思想(左翼と右翼を包含し、頭を有した鳥のように空を自由に飛び回るとの意味で名付けられたと推察される)を社会科学のレベルまで彫塑し、本来の運動を展開すべきであったが、勝共理論という名の単なる「反共思想」運動に堕し、結局は自民、公明、維新、立憲の反共陣営に捨てられた。本来の理念に立ち返り、組織改革しつつ運動論を再構築し、朝鮮半島の平和統一に貢献するなどの実績を出す以外に立ち直る道はないと思われる。

米国のインフレ率の沈静化報道についてー一時的な現象

最近、米国のインフレ率が労働局、商務省が発表する消費者物価指数でもPCE物価指数でも前年同月比低下しつつあるから、今後、インフレは沈静化し、連邦準備制度理事会(FRB)は利上げのスピードを緩めていくとの楽観的な報道が目立つようになった。例えば、ジェトロは労働局が発表した昨年12月の消費者物価上昇率について次のように伝えている(https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/2382f8c1c7cf3e06.html)。

米国労働省が1月12日に発表した12月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比6.5%上昇となり、前月の7.1%から大幅に減速し、民間予想の6.5%と一致した(添付資料図参照)。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数も同5.7%上昇で前月の6.0%から鈍化、これも民間予想と一致した。前月比でCPIは0.1%低下(前月0.1%上昇)、コア指数は0.3%上昇(0.2%上昇)し、ともに民間予想と一致した。(中略)

CPIの前年同月比上昇率の鈍化は6カ月連続で、前月に引き続きエネルギーと財価格が鈍化する一方で、サービス価格、特にウエートの高い住居費の伸びが引き続き加速し、前者を相殺する構造は変わっていないが、12月は特にエネルギーの下げ幅が大きくなり、前月比では11月以上の下落幅だった。今後は、2023年内の上昇率鈍化が期待される住宅費と、賃金上昇の影響を受けやすく鈍化の見通しがついていない住宅費以外のサービス価格の動向が焦点となりそうだ(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)。

また、商務省が発表している国内総生産の家計需要を踏まえて発表されるPCE消費者物価指数についても、ロイター通信は次のように伝えている。

11月のPCE価格指数は前月比0.1%上昇。10月は0.4%上昇していた。11月の前年同月比伸び率は5.5%と、10月の6.1%から鈍化し、2021年10月以来の小幅な伸びとなった。

一応、両ベースでのインフレ率の沈静化を前提としても、一般的に経済成長に妥当なインフレ率は2%程度だとされており、これからすると、インフレ率はもっと沈静化する必要がある。こうした中で、ジェトロは米国は今年2023年、景気後退入りするとのリポートを発表した。

インフレと金融引き締めから成長ペースが鈍化

新型コロナウイルスの流行に伴って一時落ち込んだ景気も、2021年には堅調に回復した。しかし、2022年に入り消費の回復が腰折れし、住宅投資が低迷した。インフレが加速し、金融引き締めの影響が顕在化したことが原因だ。これにより、マイナス成長に転じてしまった。

直近の7~9月期では、実質GDP成長率が年率換算で前期比2.9%。3期ぶりにプラス成長した(図1参照)。このこと自体は朗報だ。しかし、GDPの約7割を占める消費が落ち込んでいる(前期比マイナス0.3ポイント)。同時に、輸入が縮小に転じた(マイナス7.3ポイント)。すなわち、当期の成長は外需に支えられた結果ということになる。輸入は外需(純輸出)の控除項目というだけでなく、その減少は国内消費の先行指標でもある。景気の下振れリスクがさらに高まってきたと考えられる。

昨年の7ー9月期は消費需要を主体とする内需が落ち込んだため輸入が減少し、結果として輸出から輸入を差し引いた外需が増加して景気を底支えしたとの分析だ。このパターンは景気後退期入りの直前のケースとしてよく見られる。このため、ジェトロは「景気の下振れリスクがさらに高まってきたと考えられる」と判断したのだろう。しかし、現在でも適正とされるインフレ率を大幅に上回っていることは確かで、FRBがインフレ抑制のためと称して行ってきた金融引締め(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)を止めるとは考えにくい。米国も日本と同じように、物価高の不況、つまりスタグフレーションに直撃されるようになるだろう。

既に引用させていただいたが、田中氏も次のように指摘しておられる。

中国が経済成長を再び全開にすると、石油は1バレル140ドルに高騰すると予測されており、米欧のインフレは今年も続くからQTをやめられない。米連銀の以前の経緯を見ると、QTの開始から18か月で金融崩壊(金利高騰)した。連銀は今回、昨年9月にQTを本格化した。18か月後は2024年3月だ。米金融が3年間(2025年12月まで)もつのか心もとない。だから習近平は急いでおり、集団免疫を口実に、経済を阻害するコロナの愚策を完全終結したいのだろう(中国が早く経済成長を再開するほど石油ガスが早く高騰し、米欧のインフレが悪化してドル崩壊が早まるという悪循環もあるが)。Oil Prices Could Exceed $140 If China’s Economy Fully Reopens) (多極化の決定打になる中国とサウジの結託

G7諸国を中心とする米側陣営がインフレ急騰に悩まされてきたのは、日銀(の黒田総裁)も分析するように資源エネルギー価格の高騰のためだ。ウクライナ戦争が集結しないうちの楽観論は禁物だ。加えて、田中氏によると、イスラエルで昨年11月に成立したネタニヤフ政権は米国離れを進め、中露に接近しているようだ。01月08日に公開した「対米離反と対露接近を加速するイスラエル」で次のように指摘されている(https://tanakanews.com/230108israel.htm、無料記事)

イスラエルのネタニヤフ新政権が、米国からの離反とロシアへの接近を加速する外交姿勢をとっている。ネタニヤフは昨年11月の選挙に勝って1年半ぶりに政権に返り咲いた。年末に組閣して新政権が発足した直後の1月4日、新任のコーヘン外相がロシアのラブロフ外相と電話会談した。イスラエルとロシアの外相が話し合ったのは、昨年2月のウクライナ開戦後初めてのことだった。昨秋のイスラエル選挙直後の11月中旬には、国連のロシア制裁決議案の票決で、イスラエルは米国側諸国の中で唯一、棄権した。イスラエルは、その前からロシアと親しくしていたが、ウクライナ開戦後はウクライナを支持・支援する姿勢も見せていた。イスラエルはネタニヤフ新政権になって、それまでの中立姿勢を捨て、ウクライナや米国との関係が疎遠になっても構わずにロシア寄りの姿勢を強めている。 (Israel abstains on UN vote against Russia over Ukraine war) (Ukraine alleges Israeli FM’s call with Lavrov proves Israel changed stance on war)(中略)

サウジもイスラエルも中露もトランプも、2国式は「なんちゃって」の方が好みだ。完璧な2国式に拘泥する感じを演出してイスラエルに圧力をかけているのは民主党の米国だけだ。左傾化した米民主党は、米諜報界(隠れ多極派)に牛耳られ、非現実的でイスラエルを苛立たせるだけの2国式の加圧を続け、イスラエルを米国から離反させてロシア非米側に押しやる動きにうっかり拍車をかけている。 (Criticizing or Whitewashing Israel: Netanyahu’s New Government Accentuates West’s Hypocrisy) (Bibi is back and providing fresh political land mines for US

極右たちの連立であるネタニヤフ政権は、イスラエルを、オルバンのハンガリーみたいな右派ポピュリズムの国にしていくと予測されている。オルバンのハンガリーは、エリート覇権主義の米英EUから敵視され、プーチンのロシアや、右派ポピュリズムのトランプの米共和党と相性が良い。エリート覇権主義の米英EUは、ウクライナ戦争やコロナ愚策やインチキ温暖化対策で自滅していく。極右連立は、多極化に呼応したイスラエルの生き残り戦略なのかもしれない。 (Will Biden stand up to Israel’s new far right government?) (Netanyahu’s right-wing coalition could upend Israeli democracy @BenCaspit

イスラエルの対米離反・対露接近は、ドルの基軸性を含む米国の覇権低下が決定的であることを示している。金融筋のプロパガンダを軽信して「ドルや米国中心の債券金融システムは今後もずっと強い」と思っている人がけっこういて、そういう人々から私の分析に対する「違和感表明」のメールがときどき届く。だが、国際金融やマスコミ(情報操作力)を握るユダヤ人たちが作った国であるイスラエルが、国家存続のために米国との親密性を放棄して露中にすり寄っている。それを見ると、もうドルや米覇権が再び隆々と世界を席巻することはなく、米覇権がまだまだ強そうに見えるのは作られた幻影なのだと感じられる。多極化の決定打になる中国とサウジの結託) (債券金融システムの終わり

マックス・ウェーバーが「古代ユダヤ教」などを含む宗教社会学論文集(「世界宗教の経済倫理」論文集、未完)で示したように、宗教(思想または理念)と経済は乗用車の車輪の両輪のように相互に作用しあって、乗用車を走らせる。宗教と経済を媒介するものは、政治だ。経済分析を行う上で、いわゆるエコノミストの経済データ主義には限界がある。


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