トランプ次期政権の国際情勢の展望−米経済の再建が最終目標、巨大ナショナリズム政権の誕生で欧日の左翼政権は破綻

共和党大会最終日の7月18日、トランプ氏が共和党大統領候補に選出され、同氏が指名受諾演説を行って次期米政権の政権構想を明らかにした。民主党ではペロシー元下院議長(84)やオバマ元大統領ら重鎮がバイデン現職大統領では勝てず、民主党候補を断念するとの見通しを示すなど、内紛が激化していることから、想像を絶することが起きない限り、11月5日の米国大統領選挙では、トランプ氏が大統領に返り咲くことになるだろう。金融・資本・為替市場も既に、トランプ氏の口先介入で大きく変動している。各種情報を総合してサイト管理者なりにまとめてみると、トランプ次期政権の最大の課題・目標は米国経済の再建であり、そのために、①ディープステート(旧軍産複合体)を解体して軍事費を削減し、ウクライナ戦争を終わらせるとともに、パレスチナ国家構想を否定してイスラエルとアラブ世界の対立を克服する➁地球温暖化説を否定して化石燃料を重視し、コストプッシュ・インフレを主因としたインフレを終わらせる③大型減税による内需拡大とともに、輸入関税を引き上げて自国産業を保護・育成する④メキシコなどからの不法移民が犯罪や雇用の喪失、貧困の温床になっていることから、不法移民を徹底的に排斥する−など、ナショナリズム路線に大転換することになる。欧日のバイデン政権追随の左翼政権ははしごを外されて崩壊、ナショナリズム政権が誕生することになるだろう。

本論に入る前の第一に、認知症で合理的な思考とそれに基づく大統領としての決断が見られなくなったとされているバイデン大統領が、数日以内に出馬強硬か否かの重大な判断を迫られるとの報道が拡散していることを伝えておく。第二に、国際情勢解説者・田中宇氏が、現地時間で7月13日の土曜日に起こったトランプ狙撃暗殺未遂事件の黒幕が、バイデン民主党政権だったと指摘していることを紹介しておかなければならない(「トランプと今後の世界」、https://tanakanews.com/240717trump.htm=無料記事=)。

7月13日の銃撃で、トランプ演説会場を警備していた地元の警察のチームが、犯人のクルックスの不審な動きに気づき、銃撃の30分前に上官に無線で連絡したが、何の対応策も指示されずに放置されたことが、地元新聞の報道で判明した。地元警察は、クルックスが登った建物の中にも陣取っていた。クルックスが銃撃を挙行する前に、連邦政府のシークレットサービス(USSS)の狙撃要員も、その建物にやってきて、クルックスを見下ろせる場所に陣取った。Exclusive: County Officer Warned Of Seeing Man With Rangefinder Before Trump Was Shot

クルックスが銃撃を挙行すると、数秒以内に狙撃要員がクルックスを狙撃して射殺した。複数の狙撃要員が、いくつかの場所から同時にクルックスを狙撃して殺したという目撃談も出てきた。USSSと、その母体である本土安保省は、クルックスを誘導してトランプを銃撃させ、その直後にクルックスを口封じのために殺すシナリオを実行したのだろう。銃弾がトランプの頭蓋をわずかに外れたことだけが「予定外」だった。Expert view: This one thing about Trump shooting is very suspicious

本土安保省は責任逃れのため、失敗を地元警察のせいにするリークをマスコミに流しており、これに対抗して地元警察がUSSSのおかしな動きをリークした。マスコミは、意図的な間違い報道も流しているが、長くなるので今は書かない。Snipers Were INSIDE Building Used By Trump Failed Assassin; Reported Him Using Range Finder, Took Pictures, And Command Did Nothing

バイデン傘下の米当局がトランプを殺そうとしていたことが露呈し、民主党側への非難と、トランプ支持が強まっている。トランプが勝ち組になったとみるや、いろんなセレブや大金持ちたちが相次いでトランプ支持を表明している(注:テスラと人工衛星会社、X=旧ツイッター=などを所有するイーロン・マスク氏もその一人)。President Trump receives flood of surprising endorsements after shooting - one group is particularly interesting

容疑者クルックスの「単独犯行説」はデマ情報である。クルックスは射撃訓練は受けていたが、スナイパー(プロの狙撃犯で一般的に1キロメートル以内の人物なら狙撃暗殺できる)ではなかったため、トランプ氏が不法移民のデータに顔を向けたことに対応できず、暗殺に失敗した。トランプ氏は指名受諾演説で、クルックスの8発の銃弾で死亡した一人の消防士に哀悼の意を表明するとともに家族をいたわり、重傷を負った他の二人を見舞わった。

さて、トランプ次期政権の政策だが、大統領候補指名受諾演説で一部が語られた。ただし、世界的な左翼メディアの中で多くの諸国民が真実を知らない状況であり、かつまた、選挙戦の最中であるため、ホンネのところはまだまだ語られていない。取り敢えず、NHKの報道から主要点を引用し、サイト管理者の観点で批判する(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240719/k10014516061000.html)。

アメリカ大統領選挙に向けた野党・共和党の全国党大会で、トランプ前大統領が党の大統領候補への指名を受諾する演説を行いました。みずからが銃撃された事件に触れ、国民の団結を呼びかけた一方、演説の多くの時間を割いてバイデン政権を批判しました。

「不法移民危機を終わらせる」
トランプ氏は演説の中で移民政策について「われわれは不法移民危機も抱えている。南部の国境における大規模な侵略は不幸や犯罪、貧困、病気、そして破壊を国中にまん延させている」と述べました。そのうえで「私は国境を封鎖し、私がほぼ完了させていた、国境の壁の建設を完成させ、不法移民による危機を終わらせる」と訴えました。さらに「史上最大の侵略がわれわれの国で起きている。南アメリカだけでなく、アフリカやアジア、中東とあらゆるところから来ている」として対策を進める必要性を訴えました。

「インフレ危機を終わらせる」
トランプ氏は経済状況について「インフレ危機によって生活は苦しくなり、労働者や低所得者層の所得を激減させ、アメリカ国民をかつてないほど疲弊させている」と述べました。その上で「私は、この壊滅的なインフレ危機を速やかに終わらせ、金利を引き下げ、エネルギーコストを引き下げる。『掘って掘って掘りまくれ』だ」と述べ、国内の石油や天然ガスの生産を増やすことでエネルギー価格を低下させ、インフレの抑制につなげると強調しました。また「われわれは減税を行うつもりだ。それが大きな経済成長につながるだろう。この国の成長を望んでいる。それによって債務を減らすのだ」と述べて、減税によって経済成長を後押しし、財政赤字を減らすとの考えを示しました。ただ、経済の専門家からは①大規模な減税を行えば財政が悪化するという指摘や➁党の政策綱領に盛り込まれている追加の関税によってインフレ率が上昇する可能性があると指摘されています。

さらにEV=電気自動車について「電気自動車の義務化を大統領就任の初日に終わらせる。それによってアメリカの自動車産業を完全な崩壊から救い、消費者は1台あたり数千ドルも節約することができる」と述べました。この発言はバイデン政権が気候変動対策として進める自動車の排ガス規制などが念頭にあると見られますが有力紙ニューヨーク・タイムズは、「電気自動車の義務化というものはない」として誤解を招く表現だと指摘しています。

「ウクライナ侵攻など終わらせる」
トランプ氏は国際情勢をめぐり「われわれの地球は第3次世界大戦の瀬戸際に立たされている」と述べた上で「私が大統領だったら決して起こらなかったであろうロシアとウクライナとの恐ろしい戦争やイスラエルへの攻撃によって引き起こされた戦闘など、いまの政権が作り出した国際的な危機を、私はひとつ残らず終わらせる」と述べ、ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘を終わらせると強調しました。

さらに、「ブッシュ大統領の政権時代に、ロシアはジョージアに侵攻した。オバマ大統領の政権時代に、ロシアはクリミアを併合した。現政権下ではロシアはウクライナ全土を狙っている。トランプ政権のときはロシアは何もとらなかった」と述べ、自身が大統領だった間にはロシアによる侵攻が起きなかったと主張しました。また、北朝鮮について「私はキム・ジョンウン総書記とうまくやり、私たちは北朝鮮からのミサイル発射を止めた」と主張したうえで「いま、北朝鮮は再び、暴れている。私が戻れば、彼とうまくやる。彼も私の復帰を望んでいる」と述べました。

そして、トランプ氏は演説で自身の政権時代を振り返り「世界史上最高の経済だった。われわれは誰も見たことがないほど飛躍し、中国を含むすべての国を打ち負かしていた」と主張しました。そのうえで自動車産業を念頭に「われわれは長年にわたり多くの雇用を失ってきた。20年、25年にわたり、中国やメキシコに雇用が奪われている。われわれはそれらをすべて取り戻すつもりだ」と述べました。

「バイデン大統領の損害大」
トランプ氏は演説の中でバイデン大統領について「アメリカの歴代の大統領の中で史上最悪だった10人が与えた損害を足し合わせたとしても、バイデン大統領ほどの損害を与えていない。バイデンの名前を使うのはこの一度だけにする」と述べました。また、民主党の重鎮のペロシ元下院議長について「クレイジーなナンシー・ペロシ」と表現してやゆしました。また、バイデン政権のもとでの気候変動対策を念頭に「『緑の新たな詐欺』に何兆ドルも費やし、エネルギーコストに加えてインフレへの圧力も引き起こした。まだ使われていない何兆ドルものお金は道路やダムなどの重要なプロジェクトに振り向け無意味な『緑の新たな詐欺(注:グリーン・ニューディール政策)』に使われることを許さない」と述べました。

これらの内容を総合すると、冒頭で述べたように、トランプ次期政権の最大の課題・目標は米国経済の再建である。そのため第一に、メキシコなどからの不法移民が犯罪や雇用の喪失、貧困の温床になっていることから、不法移民を徹底的に排斥する。第二に、地球温暖化説とそれに基づくグリーン・ニューディール政策を否定して、化石燃料を改めて最重要視し、対露経済政策の跳ね返りにもよるコストプッシュ・インフレを主因とした米国のインフレを終わらせる。第三に、大型減税による内需拡大とともに、輸入関税を引き上げて自国産業を保護・育成する。

第四に、ディープステート(注:かつては軍産複合体とも呼ばれ、既成の民主・共和党を牛耳っていた。ベトナム戦争に反対していたケネディ大統領の暗殺は軍産複合体によるものとの見方が一般的で、ベトナム戦争の敗戦で米国の凋落が始まった)を解体して軍事費を削減し、ウクライナ戦争を終わらせるとともに、パレスチナ国家構想を否定してイスラエルとアラブ世界の対立を解消する、ことなどが挙げられる。要するに、ナショナリズム路線に大転換することになる。

米国のこの大転換は、欧州でのイタリアのメローニ右派政権やフランスの国民連合、ドイツのAfD(Agence Française de Développement、国民のための選択肢)を勢いづかせることになる。既成のエスタブリッシュメント左翼政権(欧州連合=EU=含む)は、バイデン政権に従属して、同政権に従ってきた。しかし、トランプ次期政権がバイデン左派政権からナショナリズム路線に大転換することで、欧日の左翼政権ははしごを外されて、崩壊することになるだろう。その過程は進行中だ。

一般的には、バイデン米政権に追随したため、対露経済制裁の帰り血を浴び、国民がコストプッシュ・インフレを主因としたインフレに苦しんでいるというのが真の姿で、このため、欧州各国で既成のエスタブリッシュメント政党に反乱を起こしている。まず、イタリアでは右翼のメローニ政権が誕生した。フランスでは、マクロン政権の電撃解散が裏目に出て、マリーヌ・ルペン率いる国民連合が下院に相当する国民議会選挙で議席を倍増させ、大躍進した。最も議席を増やしたのは、左翼の新人民戦線(最大の勢力は極左の「不服従のフランス」)だが、新人民戦線内部で混乱が生じていることや、年金の受給年齢の引き下げなどマクロン大統領が率いる中道左派政党「再生」との政策に相違がありすぎるため、首相の選出を始めとした組閣が困難になっている。

まもなくパリで、オリンピック・パラリンピックが開催されるが、政治混乱の中で強行される。次に、ドイツのショルツ政権は左翼社会民主党政権だが、AfDを「右翼」だと言っては弾圧しようと躍起になっている。英国は野党・労働党が予想されていたように、209議席を増やして411議席を獲得、地滑り的な勝利を収め、14年ぶりに政権を奪還した。バイデン政権に追随した保守党は、インフレから国民生活を守ることができなかったために歴史的な敗北を喫しており、現職閣僚や元首相らが次々と落選、再建は極めて困難になっている。ただし、スターマー労働党政権も政策を大転換しなければ、保守党と同じように苦境に立たされるだろう。

欧州では、英独仏(英仏は国連安保理常任理事国)の左翼政権が、トランプ政権からNATO(北大西洋条約機構)がらみで「軍事費」が足りないといやがらせを受けるようになる。いずれは欧州にも右派政権が樹立されるようになるだろう。さて、ウクライナ戦争だが、田中宇氏の「対露和解を望み始めたゼレンスキー」(https://tanakanews.com/240706ukrain.htm)によると、ゼレンスキー大統領から終戦交渉を依頼されたハンガリーのオルバン首相が既に、同大統領とプーチン大統領、習近平国家主席、それに、トランプ氏を回り、終戦活動を行っている。なお、日本の左派経済紙でディープステートの傘下にあると思われる「日本経済新聞」は「ウクライナ和平を乱すハンガリーの独断外交」と題する社説で、オルバン首相を批判=https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK164IF0W4A710C2000000/=)した。

話はそれるが、ゼレンスキー大統領は未だに欧米諸国と日本の負担で、「武器をくれ」と叫び続けているが、2015年2月のミンスク合意Ⅱ(注:弾圧を続けてきたロシア系国民の多い東部2地区に高度な自主権を与えることが主眼。このため、ウクライナは事実上、NATOに加盟できなくなる)を守らず、バイデン政権からロシアの特別軍事作戦が始まる前に対戦車砲、対ヘリコプター砲などを始めとした各種の軍事兵器(後には、ドローンほ改造した無人攻撃機)の供与を受け(https://www.youtube.com/watch?v=iBinQI-4nE0)、ロシアの「特別軍事作戦」を自ら招いた。ウクライナ戦争の原因は、バイデン政権と同政権に追随したウクライナのゼレンスキー政権にある。

バイデン政権の軍事兵器供与の原資は、財政であり、通常は米国民の税金だが、米国の財政赤字の大きさから実質的には連邦準備銀行がドル紙幣を刷って賄っている(軍産複合体から買って、ゼレンスキー政権に渡している。ただし、ウクライナでは賄賂が横行している)。このため、終局的には日本の戦時経済のように、過剰流動性を誘導する(ヘリコプター・マネー)。対露経済制裁の返り値を浴びたコストプッシュ・インフレを主因とした世界的なインフレの中で、財政赤字・経常赤字・累積対外純債務残高で世界一の米国の経済が耐えられるはずはない。米国経済の実態はスタグフレーションだ。NHKは、次のように伝えている。

アメリカの商務省によりますと、小売業の売上高はことし3月は、前の月よりプラスとなり市場予想を上回りましたが、4月はマイナスに転じました。5月は0.1%の増加でしたが、市場予想を下回りました。5月は、コロナ禍からの景気回復で好調が続いていた外食が0.4%のマイナスとなったことが個人消費の変調を表していると指摘されています。

また、ミシガン大学の調査では、アメリカの消費者の景気の見方を示す指数は今月は前の月より2.2ポイント下がって8か月ぶりの低水準となりました。ミシガン大学は消費者の半数近くがインフレに苦しんでいると指摘しています。

だから、トランプ氏は、軍事費の削減を主張しているものと思われる。トランプ氏にとっては、軍産複合体に利益を供与するよりも、国民経済の再建の方が重要なのである(注:トランプ氏はディープステートに属さない。だから、ディープステートを解体すると言っている。米側陣営のメディアは、陰謀論だと言って、その存在を隠す)。副大統領候補に指名されたJ・D・バンス上院議員(39)は、ウクライナへの軍事兵器供与に強く反対している。

話を元に戻すと、ただし、大統領としての任期は切れているゼレンスキー氏は俳優出身である。芝居は特異だ。表向き、バイデン政権とその追随欧日諸国に武器をくれと叫んで、供与武器の使用制限を解除して欲しいと訴えまくっているが、これは終戦条件を有利にするためと思われる。その一方で、バイデン政権と欧州諸国に裏では輪番制で欧州理事会(欧州連合の最高意思決定機関)の議長国に就任したハンガリーのオルバン首相に終戦交渉を依頼し、これが、トランプ氏にも届いているのだろう。日経新聞は、ゼレンスキー大統領とトランプ氏の直接会談が実現すると報じた(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR200LB0Q4A720C2000000/)。ただし、米側陣営の諸国民は、「巨悪は一方的に侵攻したロシア」と思わされているから、双方ともある程度の芝居を打つのではないか。

次に、イスラエルとハマス、ヒズボラとの戦闘の件だが、トランプ氏は自身が大統領時代に成立に大きく寄与したアブラハム合意(注:2020年8月13日にアラブ首長国連邦とイスラエルの間で締結された国交正常化のための外交合意で、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教が、モリヤ山で長男イサクを献祭しようとしたアブラハム=旧約聖書の「創世記」22章1節から19節=を共通の信仰の父とすることから、「アブラハム合意」と名付けられた)の延長線上で、イスラエルとアラブ諸国の和解を図るものと見られる。

モリヤ山に行くアブラハムとその長男イサク

きっすいのイスラエル支持者として知られるトランプ氏は、英国が三枚舌(注:オスマン帝国が支配していた土地をイスラエル建国のための領土にすると「約束」する一方で、アラブ民族の領土にもすると二股をかけた)を使って打ち出した「パレスチナ国家構想」にはあまり乗り気でないことが知られている。本サイトでも記したが、ガザ南部のラファへの120万人の難民はどこに行ったのか。米側陣営の左派メディアでは、イスラエルとハマスの停戦交渉状況を報道するだけで、ラファ難民がどこに行ったのかについては報道しない。田中氏によれば、既にエジプトに脱出しているとのことだ(「ガザ市民の行方」、https://tanakanews.com/240526gaza.htm=無料記事=)。

報道では、ラファから逃げ出した人数が、5月13日の30万人から、5月14日の36万人、5月16日の50万人、5月21日の80万人へと増えている。だが、どこに逃げたのかは書いてない。発表されている死者数は3.5万人のままなので、殺されたわけではない。エジプトに越境する検問所は閉まったままで、エジプトへの流入は市民が切望しているが(建前的には)無理だ。逃げた先は「ガザの他の各地」と考えるのが「常識」的だが、ガザの他の場所は瓦礫の山であり逃げ場にならない。80万人がどこに逃げたのか謎だが、私が見る限り、その謎を解こうとするメディアもない。Netanyahu Says Rafah Op To Take 'Weeks, Not Months' As EU Warns Of Damaged TiesUN Clarifies That Death Toll Of 35,000 In Gaza Hasn’t Changed

ラファにいた避難民の大半がすでに他の場所に移ったことは、イスラエル当局も指摘している。5月24日、国連の国際司法裁判所(ICJ)からラファ攻撃停止を命じられたイスラエルは即座に拒否したが、拒否する際に言った理由の一つが「ラファに避難した市民の多くがすでに他の場所に逃げ出し、ラファに残っている市民が少ないので、市民の犠牲が少ない。だから攻撃を続けても問題ない」というものだった。イスラエル当局も、避難民がラファからどこに移ったのかは言っていない。Israel unlikely to heed ICJ on Rafah halt, prepares for diplomatic fallout

避難民はラファからどこに行ったのか。私は、こっそりエジプトに越境したのでないかと勘ぐっている。「こっそり」と言っても、イスラエルもエジプトも、当局は、避難民の移動を事前に協議してお膳立てし、80万人のガザ市民が当局ぐるみで隠然と越境したのでないか。ラファの越境検問所は閉まったままだ。だが、イスラエルとエジプトがその気になれば、検問所以外の国境線のどこかを通行可能にして、ガザ市民をエジプトに流出させられる。イスラエルは、ガザ市民を全員エジプトに追い出してガザとパレスチナを消滅させることが目標だから、国境線に穴を開けてエジプト流出を誘発しても不思議でない。Cementing its military footprint, Israel is transforming Gaza’s geography

ハマスはムスリム同胞団パレスチナ支部であり、軍事組織だけでなく政治・経済・社会組織を有している。スンニ派系のムスリム同胞団はイスラム復古主義を掲げ、王政を否定する軍事・政治・経済・社会組織であり、1928年にエジプトで結成された。パレスチナでも圧倒的にパレスチナ難民の支持が強い。例えば、「2006年1月のパレスチナ立法評議会選挙では、前回選挙をボイコットしたイスラム組織のハマスが参加し、大勝した。ハマスが定数132議席のうち74議席を獲得して第一党となる一方、アッバス大統領率いるファタハは第二党(45議席)に後退した。イスラエルに対して強硬な姿勢をみせるハマス主導内閣が誕生したことにより、イスラエルとの関係が悪化し、パレスチナではファタハとハマスの抗争が激化した」(https://kotobank.jp/word/%E3%83%91%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%8A%E8%87%AA%E6%B2%BB%E9%81%B8%E6%8C%99-1580992)という歴史がある。

とすれば、パレスチナ難民にとっても、ムスリム同胞団の傘下でエジプトやヨルダン、レバノンに定着し、安定的な社会生活基盤を確保しつつ、イスラエルと和解・平和共存した方が良いのではないか。トランプ氏としては、軍事費を削減して財政状況を好転させるためにも、アブラハム合意を念頭にイスラエルとアラブ諸国の和解・平和共存を目指しているが、同合意の発展のひとつのキーワードとして、ムスリム同胞団の存在が表面化してくるのではないか。

そして、残るは北朝鮮問題だ。米側陣営の諸国民はディープステートのメディアの報道・解説内容を軽信させられているため、「悪魔の国」と想定するしかない。しかし、ロシアと北朝鮮が6月19日、「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240619/k10014485041000.html)。この条約は軍事協力だけではなく、経済協力も含む。

プーチン大統領は、北朝鮮側と署名した包括的戦略パートナーシップ条約について「どちらかの国が攻撃を受けた際にもう一方の国が支援することを規定している」と述べ、第三国からの攻撃があった場合には、相互に支援を行うことが盛り込まれていることを明らかにしました。また「われわれは、西側諸国が政治や経済、その他の分野で覇権を維持するために使ってきた制裁の締めつけに対し、抵抗し続ける」と述べ、北朝鮮とともに欧米側の制裁に対抗していく考えを示しました。

そして「北朝鮮は、ウクライナに関する問題について客観的でバランスのとれた立場をとっていて、危機の根本を理解している」と述べ、ウクライナ侵攻を続けるロシアを支持しているとして北朝鮮の姿勢を高く評価しました。さらに「アメリカやその同盟国によってもたらされた北朝鮮に対する国連の安全保障理事会の無制限の制裁は見直すべきであると指摘する」と述べ、国連の安保理決議による北朝鮮に対する制裁に反対する考えを強調しました。(中略)

北朝鮮のキム・ジョンウン総書記は、今回署名した条約について「こんにちだけでなく未来に備えて、戦略的な意義を持つ政治的な事変を成し遂げたと自負しており、とても光栄なことだ」と強調しました。そのうえで「両国関係は政治や経済、文化、軍事などさまざまな範囲で相互の協力拡大によってより展望的な発展の軌道に乗ることになった」として、軍事分野も含めた関係強化を誇示しました。

中国が「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」を懸念しているとも伝えられるが、これは、ディープステート側のメディアによる情報操作だろう。中露の結束は強い。今後は、中露朝が結束していくことになる。北朝鮮が内部崩壊して、韓国が吸収合併し、日本が北朝鮮に対して、第二次大戦の賠償金で経済支援を行うという形でのシナリオは破綻した。そして、大統領在任中に北朝鮮との国交正常化を行おうとしたトランプ大統領は、軍産複合体に妨害されてそれができなかったとも言われる。「南北統一」との言葉は消えかかっているが、朝鮮民族としては、韓国国民も北朝鮮国民も同一の民族である。民族統一は悲願であり、新たな「南北統一」の道が必要だろう。そのために、トランプ氏は共和党大会で北朝鮮のキム・ジョンウン総書記との関係改善を明言したものと思われる。

新たな「南北統一」には、行うべき韓国・北朝鮮・ロシア・中国・米国・日本の6者会談の制度化(組織化)が必要になる。バイデン政権に追随してきた日本の岸田文雄政権が、トランプ次期政権に対応できるかと言えば、サイト管理者としては極めて難しいと考える。自民党総裁選は「もしトラ」旋風が吹き荒れ、翻弄されてしまい、今のところは誰が新総裁に選出されるか不明だ。日本も、安倍晋三元首相暗殺の真相(注:外務省出身の孫崎享氏が指摘するように、山上哲也被告の位置からは安倍元首相を狙撃できず、バイデン政権を黒幕とするスナイパーが別にいたはずである)を突き止める必要がある。安倍元首相は、「地球俯瞰外交」と称して、トルコのエルドアン大統領式の外交=バイデン政権のご機嫌を伺いながら、非米側陣営と巧みに協力してきた外交。米国政権に追随する面が多く、上手ではなかった=を展開しようとしていた。日本は、与野党問わず新しい時代に対応できる体制を早急に構築せねばならない。

トルコのエルドアン大統領と生前の安倍晋三首相

さて、トランプ新政権が打ち出す経済政策には、中国敵視論がある。しかし、中国は金融・資本・為替市場の動向に左右されない購買力平価で世界第一の経済大国であり、世界最高レベルの科学技術水準を背景にした強力な産業を持つ(注:世界最大のドローン・メーカーは中国のDJI=広東省深圳市南山区高新南四道18号=)とともに、超高度な軍事力を保有していることを踏まえなければならない。

特に、中距離核戦略全敗条約(INF)に参加していなかったことから、優秀な中距離ミサイル技術を保有しており、米国のペンタゴンの戦争シミュレーションによると、台湾有事の際には中国が米台(加えて、日本の在日米軍基地)連合軍に全戦全勝するとのシミュレーション結果を公表していることに留意が必要だ(https://www.youtube.com/watch?v=iK1zovQTsGA=外務省出身・防衛大学教授を歴任された孫崎享氏の動画=)。経済面では、中国からの輸入製品の関税を大幅に引き上げれば、新たなインフレ要因になる。実際、米国や日本のパソコン、スマートフォン(Android, iPhone)は中国で生産し、各国が輸入している。米国の国民はスマートフォンを前提とした生活が出来なくなる。

なお、基軸通貨とされているドルについては、①米国の利下げを予測して、ドルの点滴である金地金の相場が最高値を更新し続けており、サウジアラビアが原油の人民元建て決済を認めたことでドル原油本位性が崩壊した現在、ドル基軸通貨体制に重大なほころびが生じている➁田中氏の指摘によると、米国の連邦準備制度理事会(FRB)・連邦準備銀行は、不正な金融政策=簿外(QE外)でドルを刷って金融システムに注入している=で、ドル建ての国債や株式などの有価証券高を演出して「ドル基軸通貨体制」を維持しようとしているところがある③米側陣営のG7はドル資産凍結の動きを見せているが、これは非米側陣営にとってドル保有の魅力がなくなることを意味し、少し長い目で見れば、ドルの弱体化につながるーなどの看過できない問題が生じている。これらの動きが、ドルに対する信認を弱体化させ、米国経済の衰退を早めることは必至だ。

米国の経常赤字対策を立案するうえでは、貿易による経済発展論を基礎づけた赤松要(あかまつ・かなめ、1896年8月7日 - 1974年12月20日)は、日本の経済学者。一橋大学名誉教授。日本における経済政策学の第一人者)の雁行形態論(のち小島清や山澤逸平らにより発展)が参考になる。雁行形態論とは、1930年代に赤松要氏が日本での羊毛産業や綿工業の発展を統計的に観察して作り出した経済発展理論である。 製品輸入から始まった産業で、当該製品の生産が行われるようになり、やがては輸入国の労働賃金の安さを主因として輸出が行われるようになる、という後発国がたどるキャッチアップ型の経済発展論である。非欧米諸国の経済発展は、日本を始めとして雁行形態論で説明できる。

先進国は後進国のキャッチアップによって産業が衰退してしまうが、これに対しては小島の弟子の小島清の「合意的国際分業論」という基礎理論がある。サイト管理者としては、この合意的国際分業論を深めて、各国が特異な産業に特化して水平分業を高度化していくという内容を政策論として展開していく必要があると思われる。いずれにしても、よほどのことが起きない限り、次期米国大統領には、ディープステートには属さないトランプ氏が大統領になり、大改革を行っていくだろう。これに関連して田中氏は、既に紹介した「トランプの今後の政策」(https://tanakanews.com/240717trump.htm)で次のように警告しておられる。

トランプは、安全保障策の一環として、米経済を中国から完全隔離する縁切り策を打ち出している。これで米国の製造業を復活させると言っているが、実際には逆で、中国と縁切りすると米経済の不況やインフレがひどくなる。トランプはインフレを止めると言っているが、これも無理だ。米中の経済分離策は、中国の非米化を加速する隠れ多極主義の策である。トランプは安保面で好戦的な米国の世界支配・破壊を終わらせる英雄だが、経済面では米国の自滅を加速する。米国側が自滅する米中分離

トランプは、ドルの基軸性を維持するとも言っている。米国の偉大さを維持したいトランプが、ドルの基軸性を維持したがるの当然だ。だが、中国との経済的な縁切り、ドル防衛に貢献してきた欧州など同盟諸国の切り捨ては、むしろドル基軸性の地政学的な基盤を破壊する。地政学的な基盤が壊れても、米連銀(FRB)が簿外(QE外)でドルを作って金融システムに注入している限り、見かけ上のドル基軸が維持され、株も債券も高値が維持される。だが、ドル基軸を支えるちからは、ウソに立脚する薄っぺらなものになっていく。トランプは1期目から、米連銀の金融バブル延命策を積極的に支持してきた。Donald Trump is going to win - America isn’t

トランプが銃撃を乗り越え、政権に返り咲く可能性が急に高まった後、金相場が上昇して史上最高値を更新した。金相場の上昇は、ドルの基軸性がこれから危うくなることを示唆している。今後、トランプが当選や就任に近づくと、金相場が上がる傾向が続く。Gold Soars To Record High As Stocks Do Something Not Seen Since Oct 1987

トランプが主導する共和党は7月16日から党大会を開いているが、これに先立ち、7月8日に党の政策方針を要綱として発表した。これがトランプ政権の政策要綱になる。NATOへの意地悪やイスラエル支持、中国との経済縁切り、インフレ抑止、ドルの基軸性維持は、いずれも要綱に盛り込まれている。トランプの政策の分析については、また書きたい。2024 Republican Party Platform

トランプ氏が次期米国大統領に返り咲いたとしても、米国の経済再建に成功するか否かはまだまだ未知数だ。ただし、民族・国家独自の多様性を持ちつつ調和の取れた、新しい統一文明の創造に道筋をつけることは必要であり、叡智を絞れば可能だろう。なお、米国内に根強い中国敵視論については、かつてモンゴル民族が欧州を支配したことや、明治維新以降の日本が一定の近代化に成功し、一時的にアジアの支配者に立ったことなどから、欧米諸国には「黄禍論」が根強いこともあると思われる。統一文明の形成には、アジア側が黄禍論を払拭できる理念を提示しなければならない(「世界宗教の経済倫理・序論=https://www.it-ishin.com/2020/08/16/historical-sociology-2/=」)。サイト管理者は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)がその使命を有していると思う。

これから最高値を更新しつづける金地金相場

米国内で金本位制への復帰を求める声も出始めたとの報道(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21E020R20C24A6000000/)があるが、秋の利下げ観測で上昇傾向にある(注:利子をうまない金地金相場は、金利上昇機には下落し、下落時には上昇するという習性があるが、国際情勢が波乱含みになると必ず上昇する)金地金の相場が一時、最高値を更新した(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)。

トランプ氏は、中国敵視策を根本から修正し、同国との共存を図らなければならない。ロシアのプーチン大統領が両国を仲立ちする必要がある。日本は言うまでもないが、1972年に発表した日中共同声明と1978年に締結した日中友好平和条約で、①中華人民共和国が中国の唯一の合法的で正当な政権である➁台湾は中華人民共和国(中国)の不可分の領土であるーことを認めたことを常に念頭に置いて、行動しなければならない。台湾のライ・チントー(頼清徳)総統=台湾独立を志向する民進党の党首。年明け早々の立法院では敗北=が、台湾の世論を無視して独立運動を展開しない限り、これまでバイデン政権の指示通りに紙面で「警告」してきたメディアが「警告」するような「台湾有事」というようなことにはならない。

なお、トランプ陣営には、台湾最大の企業である台湾積体電路製造有限公司(TSMC)に、コンピューターの要である中央演算処理装置(CPU、GPU、生成AI用半導体)など、米国のコンピューター産業の核心を奪い取られたという被害者意識がある。例えば、将棋の藤井聡太八冠(注:現在王位タイトル防衛のために対局中)は、米国のCPU、GPU製造などのファブレス企業であるAMDが設計し、TSMCがAMDの委託を受けて製造したパーソナル・コンピューター用としては最高性能を誇るThreadripper(最大64コア、128スレッド。なお、下位機種のRyzenシリーズも委託製造を行っている)の最新版の提供を受け、Threadripper搭載のパソコンを自作。藤井八冠は、自作したパソコンを相手に将棋の研鑽を行っている。

こうした形で、米国の最新コンピューター技術が台湾に流出しているため、トランプ陣営は台湾に被害者意識を有している。この意味からも、シミュレーションで敗北が決まっている台湾を何としても防衛しなければならないという意識は薄い。

 

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