米中間選挙、共和党が上下両院で過半数を獲得かーバイデン民主党政権はレームダック化する(追記:DSについての中間まとめ)

来週11月08日火曜日に投開票される米国中間選挙では、共和党が下院の過半数を獲得することが確実になっており、上院も接戦州があるが、同党が過半数を制することが濃厚になってきている。バイデン民主党政権が中間選挙後にレームダック化することは確実であり、米側陣営と非米側陣営の対立・抗争の象徴になっているウクライナ戦争など国際情勢に大きな影響を与えることになる。

米中間選挙で民主党が上下両院で過半数を失い、民主党バイデン政権はレームダック化

米国中間選挙では下院435議席全議席が改選されるが、民主党が過半数を失うことは既に確定しているようだ。例えば、ジェトロは次のように紹介している(https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/11/6111ae69577d5afb.html)。

連邦下院(435議席、任期2年。注:小選挙区制)では、共和党が多数派を奪取する見通しだ。接戦の10議席を除く、改選後の獲得議席予測(10月31日時点)は、民主党202議席、共和党223議席となっている。民主党が全ての接戦区で勝利したとしても、共和党の獲得議席数には及ばない公算だ。

現在完全に過半数を占める下院に対して、上院(100議席、中間選挙で三分の一相当の35議席が改選)では現在民主党と共和党が50議席あるが、議長を務める副大統領が民主党のハリス副大統領であるため、実質的には(注:強力な党議拘束がかけられるという前提で)かろうじて民主党が過半数を獲得している。上院の改選選挙の予測については、ジェトロが次のように報じている。

最大のポイントは、民主党が連邦上院で多数派を死守できるか否かだ。連邦上院(100議席、任期6年)のうち、改選は35議席。ウェブサイト270toWin外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載されている有力な選挙予測のコンセンサス予想(10月27日時点)によると、ジョージア州およびネバダ州の上院選で接戦となっている。当該2議席を除く、改選後の獲得議席予測は、民主党49議席、共和党49議席だ。また、ペンシルベニア州とアリゾナ州では、民主党候補がわずかに優勢とみられるものの、共和党候補との差は小さい。ジョージア州では人工妊娠中絶、ネバダ州では経済状況、ペンシルベニア州では民主党候補の健康不安、アリゾナ州では南部国境からの移民流入などに、焦点が当たっている。

上院に関してはCNNが11月04日時点でジェトロと同じような情勢報道を行っている(https://www.cnn.co.jp/usa/35195591.html)。

米中間選挙の投開票日が近づくなか、上院選の行方が以前よりもはっきりとしてきた。世論調査の結果明らかになったのは、上院を押さえられるかどうかは、アリゾナ、ジョージア、ネバダ、ペンシルベニアの4州の結果次第となる可能性が高い。計算は簡単だ。民主党が上院の支配権を維持するためには、この4つの上院選のうち3つに勝利する必要がある。共和党の場合は、もう少し楽な状況で、4つのうち2つに勝てばよい。

ただし、上院での議決が賛成50、反対50と同数になった場合は、上院議長のハリス副大統領に投票権があるから、共和党は「もう少し楽な状況」というのは誤解を招く表現ではある。また続く記事内容によれば、アリゾナ、ジョージア、ネバダ、ペンシルベニアの4州の選挙情勢は複雑でもある。民主党が再び事実上の過半数を獲得する可能性も否定できない。しかし、中間選挙の争点は外交問題よりも内政問題、とくに経済情勢の大きな争点になっているインフレ率の高止まりだ。ジェトロは先の記事で次のように紹介している。

ハーバード大学と調査会社ハリス・インサイツ&アナリティクスが10月12~13日に実施した世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、有権者の関心事項として、「物価上昇・インフレ」(37%)が最も高く、「経済・雇用」(29%)、「移民」(23%)、「犯罪・薬物」(18%)が続いている。消費者物価指数が前年同月比8~9%上昇する状況にあって、経済政策に対する期待が有権者の投票行動に大きな影響を及ぼすとみられる。また、「移民」「犯罪・薬物」「人工妊娠中絶」は、有権者の暮らしに直結し得る課題であり、投票率を引き上げる要因になる可能性がある。

重要な問題は、物価問題が最大の焦点になっていることだ。米国の中央銀行システム(FRS、連邦準備制度理事会と全米12地区の連邦準備銀行からなる)の中核である連邦準備精度理事会(FRB)のパウエル議長はなお、政策金利のフェデラル・ファンド・レート(FFレート)の0.75%引き上げを行い、QT(Quantitative Tightening=量的金融引締め政策=、民間金融市場からの資金の引き揚げ)を強化しようとしている。しかし、本サイトで何度も触れているように、米側陣営諸国のインフレはコストプッシュ型のインフレであり、需要抑制政策の金融引締め政策(不況政策)では解決しない。インフレと不況が併存するスタグフレーションが本格化するだけだ。

連邦準備銀行

最大の争点になっている物価問題を解決するには、コストプッシュ型のインフレの原因になっている強力な対露経済制裁だから、ウクライナ戦争を終結させること以外にない。この点では、民主党のバイデン政権に「戦争終結」に向けての期待はできない。ウクライナ戦争の終結に向けては、共和党内でロシアのプーチン大統領とも関係が深いトランプ前大統領が圧倒的な支持を得ている共和党にしか期待が持てない。ジェトロの選挙情勢記事によると、トランプ前大統領が支持している新人候補の選挙情勢は次のようになっている。

トランプ前大統領を支持する共和党新人候補の動向にも注目が集まる。選挙の結果は、同氏の共和党内での立場にも影響を及ぼすとみられる。各種報道によると、トランプ派の新人候補は上院選に11人、下院選に25人立候補しており、10月末時点で「当選確実」「優勢」「やや優勢」とされる候補が上院選で7人、下院選で20人となっている。

なお、NHKは米国のインフレが「人手不足」つまり「名目賃金」が高いことがインフレの原因になっていると報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221104/k10013881571000.html)。

アメリカの10月の雇用統計が発表され、農業分野以外の就業者は前の月と比べて26万人余り増加し、市場の予想を上回りました。失業率は低い水準が続いていて、記録的なインフレの要因(注:「要因」とあいまいな表現をしている)となっている人手不足が継続していることが改めて示された形です。

しかし、ロイター通信が10月05日に公開した「米国の賃金上昇、インフレ高進に追い付かず=ダラス連銀調査」と題する報道(https://jp.reuters.com/article/usa-fed-wages-idJPKBN2QZ249)は次のように伝えている。

米ダラス地区連銀が4日公表した調査によると、米国民の賃金上昇はインフレ高進に追い付いておらず、実質賃金の下落率の中央値が8.5%強に達していることが分かった。インフレ抑制に向けた米連邦準備理事会(FRB)の積極利上げ姿勢に一定の支持を与える内容だった。同地区連銀のエコノミストは「労働市場の逼迫による賃金の上昇にもかかわらず、大多数の労働者は賃金の伸びがインフレ上昇に遅れをとっていると感じている」と指摘した。

この内容を深読みすると現在は実質賃金が低くて不況であり、賃金の上昇はインフレ高進の要因ではなく、結果であることも分かる。インフレ高進は直接的には、①電気・ガス料金の上昇②食料品価格の上昇ーによるものであり、もとを探れば資源・エネルギー価格、穀物価格の上昇によるものだ。これは、対露経済制裁の跳ね返りのほか、サウジアラビアなど中東産油国とロシア(OPECプラスワン)の原油の協調減産で、米側陣営向諸国向けには原油や天然ガスの供給価格が非米陣営側の思惑で高くなっているためだ。

頁岩(けつがん)と呼ばれる堆積岩の層から採取される天然ガスの一種であるシェールガスも、頁岩は非常に粒子が細かく液体や気体を通すスキマがほとんどないことから、そこから資源を回収するには高度な採掘技術が必要で、米国でコストを安く抑えるシェールガス掘削技術革命が起こったと言っても、掘削・生産・ガス会社のための天然ガス化にはやはりかなりのコストがかかる。過大な期待は禁物だ。なお、シェールガスの埋蔵量は、中国、米国、アルゼンチンの順とされる(以上、http://www.toha-search.com/keizai/shale-gas.htm、参照)。下図は「世界経済のネタ帳」から取ったものだ。基調的に、米国でもウクライナ事変以降、天然ガスは上昇している。

つまり、米側陣営のインフレ高進はコストプッシュ型のインフレであることは明瞭だ。なお、インフレ抑制に向けた米連邦準備理事会(FRB)の積極利上げ姿勢に一定の支持を与える内容だったというのは意味不明だ。政策金利(FFレートの大幅引き揚げ)やQTによる金融引き締めで需要を抑制し、不況にすればするほど、賃金の切り下げや雇用の喪失で賃金は下がり、高進するインフレに米国をはじめ非米側陣営の諸国民は実質賃金の大幅低下で、生活に大きな支障を来す。

インフレの高止まりないし高進は止まず、実質賃金は低下する(不況になる)から、スタグフレーションが本格化する。欧州諸国でフランスやイタリア、スウェーデン、ハンガリー(NATO加盟国でオルバーン・ヴィクトル首相率いる親露派右派民衆政権が成立している。NATOは重要事項の決定が全会一致制)などで「国民の生活が第一」の右派民衆政権(注:マス・メディアは極右などと意図的に誤報している)が政権を掌握したり、勢力を拡大しているのはこのためだ。米側陣営諸国の左派勢力は事態を全く把握できていない。米側陣営の諸国民にとっては左派より右派が「まし」だ、という状態だ。

なお、日本はサハリンⅡに続いてサハリンⅠにも出資することを決めた。戦後一貫して対米隷属政策を進めてきた自民党政権は、現在の岸田文雄政権がこっそりと米国陣営から離脱しようとしているのかも知れない。ドイツで開かれているG7で、岸田首相の後継者と見られる林芳正外相が表向き、中国に大国としての責任を求めつつつ、その一方で実質的には、中国との協力関係強化を表明したのも、その流れかも知れない(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221104/k10013880471000.html)。林外相のホンネは、安倍晋三首相(当時)が「地球俯瞰外交」として展開した日米両属外交を受け継ぎ、その継承を考えていると見られる。

ロシア極東のサハリン沖で行われている石油と天然ガスの開発プロジェクト「サハリン1」をめぐり、政府はプロジェクトに参画する日本の事業会社が、ロシア側が設立した新会社への参画を決めたと発表しました。サハリン1をめぐっては、先月14日、ロシア側が新会社を設立し、日本など外国の事業者は、設立から1か月以内に、株式の取得に同意するかどうかをロシア政府に通知する必要があるとされていました。これについて、政府は、日本の事業会社である「SODECO=サハリン石油ガス開発」が4日、ロシア側の新会社に参画の申請をすることを決めたと発表しました。

米国民が、物価問題についてウクライナ戦争に起因しているものだと理解するようになれば、アリゾナ、ジョージア、ネバダ、ペンシルベニアの4州にトランプ前大統領支持派がどの程度存在・拡大するのかが大きな焦点になるだろう。なお、共和党の上下両院議員の間ではウクライナ戦争への米国の経済的・軍事的支援に懐疑的な見方が広まっている。加えて、バイデン大統領がオバマ政権の副大統領時代にウクライナに内政干渉したことや、長男のハンター・バイデン氏の対ウクライナ不正工作問題を問題にして追及し、バイデン大統領を弾劾する勢力も強まっている。また、民主党議員の中でも、ウクライナ戦争への米国の経済的・軍事的支援に懐疑的な見方がかなり広がりつつある(https://news.yahoo.co.jp/articles/6bea6df2506802474a620251a96a0207cf94c472)。

米共和党のトップ議員らが、中間選挙で連邦議会の過半数議席を同党が獲得した場合、ウクライナへの支援を削減するかもしれないと語り、選挙に火種をまいている。(中略)

共和党の連邦下院トップのケヴィン・マカーシー院内総務は10月初め、共和党が議会を掌握した場合、ウクライナに「白紙小切手」を渡すことにはならないだろうと示唆した。同党は現在、中間選挙で下院の過半数議席を獲得する勢いだ。アメリカの憲法によると、下院は全ての予算決議を行う。過半数を取れば、下院議長となったマカーシー氏がどの法案を採決にかけるかを決められる。

ウクライナ支援に対して同じような懸念を示す共和党員は他にもいる。ジョシュ・ホーリー上院議員(ミズーリ州)は、ウクライナ支援は「アメリカの利益にはならない」とし、「ヨーロッパにただ乗りを許している」と述べた。この発言は、共和党内の分断を示すものでもあるようだ。マイク・ペンス前副大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「擁護者」や、「アメリカを広い世界から切り離してしまう」共和党員を、強い口調で非難した。今春の4000万ドル規模のウクライナ支援策に反対したのは全員、共和党議員だった。下院では57人、上院では11人が反対票を投じた。

国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏は、最新の論考「EU自滅の行方(https://tanakanews.com/221103europ.php、有料記事)」でも、これらの点についても考察している。一部を引用させていただきたい。

米国では来週の中間選挙で、トランプが主導する共和党が議席を大幅に増やし、米議会は上下院とも多数派が民主党から共和党に移りそうだ。2020年の大統領選で不正をやってバイデンを勝たせた(覇権放棄屋のトランプに続投させたくない)民主党は、今回も郵送投票制度を悪用して選挙不正をやっているふしがあるが、民主党の支持の減少は大幅な(上院7、下院50議席とギングリッチが予測している)ので、選挙不正によって覆せる範囲でない感じだ。共和党の権力が増すほど、米国はウクライナを支援しなくなり、逆にゼレンスキーらの不正や戦争犯罪行為を問題にしていく。がんばって米傀儡を演じ、ウクライナの不正に目をつぶって支援し、ゼレンスキーに馬鹿にされても我慢し、欧州市民の生活苦を無視して対露制裁してきた欧州エリートは、米国からはしごを外される。 (GOP Could Gain Up To 7 Seats In Senate, 50 Seats In House, Gingrich Says) (After Sending Out 240,000 Unverified Ballots, Pennsylvania Now Warns Of ‘Delays’ Counting Midterm Votes

テスラCEOのイーロン・マスク氏

米議会の共和党(ランド・ポール上院議員ら)は、中間選挙で多数派になったら新型コロナ対策での米政府(アンソニー・ファウチら)の不正を暴くと宣言している。コロナのインチキも暴かれていく。民主党による選挙不正も暴かれるかもしれない。極悪政党に成り下がった米民主党は裁かれた方が良い。共和党支持に変身したイーロン・マスク(注:電気自動車で有名なテスラの共同創設者兼最高経営責任者=CEO=)がツイッターを乗っ取り、民主党支持の経営陣を解雇して、彼らがやってきた言論抑圧をやめさせている。この動きが中間選挙の直前に実現したことも興味深い。 (Rand Paul says U.S. botched covid. He could soon lead probes of it.) (Elon Musk promises ‘most accurate source of information on Earth’

ウクライナ戦争は、米傀儡の欧州エリートが権力を失い、非米親露的な右派ポピュリストの勢力がEUを乗っ取るまで続くのでないか。早ければ来年の後半ぐらいに終わるかもしれない。それまでに米金融システムの崩壊も起こるかも。米諜報界を牛耳る多極派が、いろんなもののタイミングを一致させている感じがする。米中間選挙を前に、NATOがロシア国境近くで軍事展開し、今にも世界大戦になりそうな感じを演出している。米連銀は利上げして米経済を潰そうとしている。北朝鮮もさかんに打ち上げている。 (NATO has doubled troops on border – Russia) (North Korea Launches Record Number Of Missiles, Prompting Response From South) (The Mainstream Is Increasingly Accepting The Possibility That The Fed Will Blow Up The Economy

なお、本論考のリード文は次のように記述されている。

欧州では、露敵視・米傀儡のエリートと、それに反対する民意や右派ポピュリストとの分裂がひどくなる。EUやNATOが決定不能な状態を続ける状況が今後も続く。米傀儡から対米自立・親露へとすっきり変わることはない。対米自立・親露に転じた諸国は、NATOやEUから離脱するのでなく、残留し、全会一致の制度を逆手にとって何も決められないようにすることで、米覇権の衰退を加速させ、ロシアを助ける。EUには通貨をユーロにしている国が多く、通貨が統合されているので加盟国が簡単に離脱できない。EUは潰れるのでなく、最終的に丸ごと米傀儡から離脱して非米側に転換し、世界の極の一つになることで多極化に対応する。

いずれにしても、民主党バイデン政権では国内の最重要問題であるインフレ率の高止まりやスタグフレーションには対応できない。田中氏が予測するように、中間選挙での民主党の敗北は必至だろう。米国の上院では、①大統領の外交政策に対する関与(助言ないし修正・拒否)②大統領によって指名された人物の承認(連邦政府各省長官、最高裁判所裁判官、米国連邦準備精度理事会議長、最高司令官などの高位の軍司令官といった重責を担う人物)ーなどの権限を持つ。下院は連邦政府予算を決定する権限を持ち、大統領に対して強い牽制力を持つ。来週の中間選挙で、民主党が上下両院で過半数を失うのは必至の情勢と見られるが、そうなればバイデン民主党政権の「レームダック化(政治的統治能力、政権担当能力を失うこと)」は必然的になる。

米国ディープ・ステート(DS)について

本サイトでは、米国のケネディ大統領暗殺(当時:ベトナム戦争のエスカレーションには消極的だったとされる。その結果、ジョンソン副大統領が大統領に昇格し、ベトナム戦争がエスカレートした)の真犯人とされるディープ・ステート(DS)という用語がひとつのキーワードになっているが、ここで田中氏の論考などを参考に中間まとめを行っておきたい。

DSはアイゼンハワー大統領が離任時(1961年01月17日)に軍産複合体の存在・定着を指摘してから、米国および世界を影で支配する政治勢力として一部の政治・経済・外交専門家からその存在を指摘されている。サイト管理者(筆者)も、その存在を認めた立場で本サイトを公開している。日本の政権政党の政務調査会を母体に築かれる「各種利権ムラ」とは全く性格が異なり、米英DSは戦後、世界の単独支配権を有してきた。なお、外務省出身で外交評論家の馬渕睦夫氏の視点も参考されたい。

ただし、プロテスタンティズム(キリスト教の新教)の力の衰退で、米国経済の衰退・社会の荒廃が現実のものになってきたことから、DSにも変化が生じてきているようだ。第一期は米国軍産複合体が世界支配を長期にわたって継続してきた英国の圧力で、反共・滅共思想を名目に世界を事実上支配した時代だ。ベトナム戦争激化時代までがこの時期に相当するだろう。第二期は、軍産複合体がニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官を使って中国に対して関与政策(中国側で言えば、鄧小平の改革開放路線)に転換し、核戦争を起こすことなく冷戦に打ち勝とうとした時期。

もっとも、ソ連帝国が崩壊したのは、マルクスの資本論を頼りに「計画経済」という名の「統制経済」を行い、経済の需要と供給を調整する市場原理を否定し、経済システムが崩壊したことが真の原因だ。林道義の「スターリニズムの歴史的根源」(東京女子大学教授時代に執筆された)に詳細が分析されており、いわば「古代化社会主義」という、日本で言えば大化の改新後の律令国家などに象徴される古代社会への大巻き戻しである。

第三期は、冷戦の処理と軍産複合体のためにイスラム教を利用して中東諸国を中心に戦争地域を移動した時期で、この時期は軍産複合体がネオ・リベラリズム(新自由主義)を利用して世界の支配を継続した。しかし、第二期の冷戦終結後の戦後処理に失敗したことや、紛争地域の中東諸国などへの移行が重なったうえ、ネオ・リベラリズム(新自由主義)の経済政策失敗によって、米英両国には社会の格差が大幅に拡大し、科学・技術開発力の衰退とも併せて、経済力が弱体化した。これは、2008年09月のリーマン・ショックまでだろう。

第四期は、米英両国とりわけ米国経済の衰退によって、ネオ・リベラリズムを使った軍産複合体による世界一極単独支配が不可能になるとともに、中国、ロシア、インドなど非米陣営諸国が台頭して世界経済に強い影響力を持つようになって多極化時代が始まった時代であり、現在はその進行中だ。田中氏の論考を参考にすると、この時代のDSは旧態依然たるネオ・リベラリズムを名目として軍産複合体が米側陣営(欧州や日本などの対米隷属諸国)に過激な政策を採らせ、自滅させて、北大西洋機構条約や日米、日韓安保条約を空洞化させる(バイデン民主党政権がその支配下にある)過激な隠れ多極化勢力とプーチン大統領や習近平国家主席(共産党総書記)ともつながりが深く、軍産複合体に頼り切らない多極化勢力に分かれるようだ。

この時期は非米側陣営諸国が経済的な力を付け、欧米文明に頼らない新たな文明を創出する時期に当たる。要するに、文明の転換期に相当する。その舞台は、朝鮮半島(東アジア地域)になるだろう。ただし、マックス・ウェーバー=大塚史学の「世界宗教の経済倫理(古代ユダヤ教、儒教、仏教と政治・経済との関連を歴史社会学的に考察したが、新約キリスト教=主に、「父子・聖霊」の三位一体論を説くアタナシウス派キリスト教=とイスラム教と政治・経済の相互関連性を解明する予定だったが、ウェーバーはその前に死去した。ただし、「プロテスタンティズムと資本主義の精神」は「世界宗教の経済倫理」執筆の前に執筆されている)」によると、新たな文明の創造期には新たな思想が創造される。宗教的に言えば、宗教改革が行われる。

サイト管理者(筆者)は、キリスト教の経典である「聖書」の奥義を解明したとされる「原理講論(注:当時の世界基督教統一神霊協会長の劉孝元著、文鮮明師が執筆した「原理解説」が元になっている)」の研究者でもあるが、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)が本来、時代の期待に応えられる宗教改革を起こす必要があると考えている。もっとも「教典」ではなく、あくまでも「聖書」が言わんとするところの解説書であるとともに、近現代史の解説も行っているので、戦後の現状に応じた書き直しは必要だろう。特に、国際情勢の社会科学的な分析と理解は必須である。

ただし、ウェーバーの意味での宗教改革が成功しなければ、極めて厳しい時期を迎えることになる。なお、田中氏の論考を筆者なりに解釈すると、旧態依然たるネオ・リベラリズムを名目として軍産複合体としてのディープ・ステート(DS)がマス・メディアを利用して、世界の諸国民を誤導している(例えば、プーチン大統領は極悪人であり、ウクライナのゼレンスキー大統領は白馬の騎士であると軽信させている)と思われる。このため、本サイトでのマス・メディアの引用は、上記の内容を踏まえ事実関係を中心に引用させていただいている。


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