バイデン現職大統領、11月5日の大統領選挙から撤退ー民主党内部のクーデター成功、トランプ前大統領は返り咲きが確定

米国のバイデン大統領は現地時間で21日午後、秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦から撤退する考えを表明した。トランプ前職大統領との第一回討論会をきっかけとして起こった民主党内部のクーデターが奏功した形だ。バイデン氏は民主党の正式候補としてカマラ・ハリス副大統領を推薦しているが、ハリス氏ではトランプ氏には勝てない。ハリス氏を民主党の正式候補として擁立することに対する民主党内部の異論、反発も強く、今回のクーデターによる混乱は収まりそうにない。11月5日の大統領選挙はトランプ前大統領の返り咲きが決まった。

トランプ氏、「ハリス副大統領なら簡単に倒せる」と余裕

全世界のメディアは一斉に、バイデン大統領の2024年選挙戦からの撤退を伝えている。例えば、NHKは「バイデン氏大統領選 撤退表明 後任候補ハリス氏支持」と題して、次のように伝えていてる(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240722/k10014518831000.html)。

アメリカのバイデン大統領は、21日、秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦から撤退する考えを表明しました。今後、民主党の後継の候補者選びが行われますが、バイデン氏が支持するとしたハリス副大統領が有力視されています。

アメリカのバイデン大統領は21日午後、SNSで声明を発表し「民主党や国にとっては私が選挙戦から退き、大統領としての残りの任期のまっとうに集中することが最良だと信じている」として、秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦から撤退する考えを明らかにしました。再選を目指す現職大統領が選挙戦の途中で撤退するのは、1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりの事態です。(中略)

アメリカ国民の皆さんへこの3年半、私たちは国家として大きな進歩を遂げた。こんにち、アメリカは世界で最も強い経済力を有している。私たちは歴史的な投資を行って、国の再建や高齢者向けの薬価の引き下げ、そして、記録的な数のアメリカ国民に手がとどきやすい医療を拡充してきた。有害物質にさらされた多くの退役軍人に、不可欠な医療を提供した。過去30年で初めて銃規制に関する法律を成立させた。最高裁判事に初めてアフリカ系アメリカ人の女性を任命した。世界の歴史上最も重要な気候変動対策に関する法律を成立させた。

アメリカがこんにちほど主導的な立場にいたことはない。どれもアメリカ国民なしには成しえなかったことだ。私たちは共に100年に一度のパンデミックと、大恐慌以来、最悪の経済危機を克服した。私たちは民主主義を守り、維持してきた。そして世界中の同盟関係を活性化し、強固にした。

みなさんの大統領を務めることは、私の人生で最大の名誉だ。再選を目指すつもりでいたが、私が選挙戦から退き、残りの任期は大統領としての職務を全うすることに専念することが、党にとっても国にとっても最善の利益になると考える。私の決断の詳細については、今週、国民のみなさんに話す予定だ。

いまは、私の再選のために尽力してくれたすべての人たちに深く感謝したい。あらゆる仕事において素晴らしいパートナーとなってくれたカマラ・ハリス副大統領に感謝したい。そして、私に信頼を寄せてくれたアメリカ国民に心から感謝したい。私はきょうもいつものように信じている。私たちが力を合わせればアメリカにできないことはない。私たちはアメリカ合衆国であることを忘れてはならない。

今回のバイデン氏の撤退表明の背景については、次の投稿記事を参照していただきたい。

バイデン氏は民主党のカマラ・ハリス副大統領を民主党の正式候補として推薦したが、民主党の他の上院議員や州知事も出馬を模索している。第二次大戦後の現職大統領の選挙戦撤退は、朝鮮戦争で南北分断の固定化を招いた責任を取った民主党のトルーマン大統領(1952年)とベトナム戦争の泥沼化の責任を取る形で撤退したジョンソン大統領(1968年)の二人だが、この時の大統領選挙はいずれも、民主党が敗北している。

ハリス副大統領も、バイデン大統領から犯罪や米国民の雇用の喪失など、米国社会不安の温床になっているメキシコとの国境からの不法移民などの移民対策を任されたが、現地への視察も行わず、全く成果を挙げていない。実績がない上に、政治手腕や国際情勢に対する認識などの面で、大統領候補としては不安だらけだ。また、先のNHKの報道記事によると、「政治情報サイト『リアル・クリア・ポリティクス』のまとめによりますと、7月20日までの各種世論調査の平均では、ハリス氏を支持するとした人は38.1%、支持しないとした人は52.3%となっています」という。

共和党のトランプ氏はCNNの取材に対して、バイデン氏について、「米国史上、最もひどい大統領として歴史に名を残すだろう」と述べるとともに、「民主党の(注:正式な)候補者が誰になるかは現時点で不明だが、バイデン氏よりもハリス副大統領の方が簡単に倒せると考えている」と話した(https://www.cnn.co.jp/usa/35221758.html)。

現在の状況からして、11月5日の大統領選挙はトランプ前大統領の返り咲きが確定している。もしトラ→ほぼトラ→確トラの順に、トランプ前大統領の返り咲きが確定してきた。トランプ氏を次期大統領とする次期米国政権は、左翼バイデン政権とは全く異なり、ナショナリズムを掲げる巨大な右派政権であるため、バイデン政権に追随してきた欧州諸国のエスタブリッシュメント政権や日本の岸田文雄政権、韓国のユン・ソンニョル政権、台湾独立に向けておかしな動きをしている民進党のライ・チントー政権など、米側陣営主要国の政権ははしごを外されて、巨大な打撃を被ることになる。これらの国々では、ナショナリズム・右派政権が台頭しているが、その動きが加速し、近くナショナリズム・右派政権が樹立されるだろう。

また、ウクライナ戦争の終焉やイスラエル・ハマス紛争も大きな転機を迎えることになる。なお、トランプ氏の発言を額面通り受け止めれば、米国と中国のデ・カップリングが始まることになるが、これは、米国経済に新たなインフレをもたらすことになり、強行は現実的には困難だろう。いずれにせよ、民主党内部のクーデター以降、国際情勢の大転換は既に始まっている。

民主党の大統領候補は正式にカマラ・ハリス副大統領になるのか

民主党の秋の大統領選挙の正式候補は、カマラ・ハリス副大統領が8月中旬に開かれる民主党全国大会で、正式候補を決定する代議員の半数以上を獲得したことから、「政治家としての魅力がない」(イラン大使などを歴任した国際情勢に詳しい孫崎享氏)カマラ・ハリス副大統領(59)に決まりそうだとの報道が増えている。

余談だが、今後の米国の大統領選挙の見通しやトランプ氏の暗殺未遂の不可思議な点(注:クルックスが狙撃暗殺体制に入っていたことは、狙撃の20分前から連邦政府のシークレットサービス=USSS、上部組織は本土保安省=と地元警察には分かっていたが、シークレット・サービスは地元警察の警告に耳を貸さず、狙撃を阻止できなかった。議会でこの点を共和党議員に強く指摘され、取り敢えずシークレット・サービスのキンバリー・チートル長官は辞任した)については、https://www.youtube.com/watch?v=vr8WpJ-jF5oが参考になる。

話を元に戻すと、国際情勢解説者の田中宇氏は「バイデンの不出馬」と題する投稿記事(https://tanakanews.com/240723biden.htm、無料記事)で、バイデン氏が不出馬を決意したのは、カマラ・ハリス副大統領主催の大口献金集めの集会(大口献金が可能な300人ほどの民主党支持者が参加)が大失敗に終わったからだと分析している。

バイデンが21日の不出馬表明に追い込まれたのは、7月19日にハリスが主催して300人が参加した大口献金者向けのオンライン会議での大失敗が「最後の一撃」となった。会議に参加した献金者たちは、バイデンが6月27日のトランプとの討論会の失敗・敗北からどう挽回するつもりなのか、計画を知りたがった。だが、ハリスらバイデン政権の人々は、挽回策について何も言わないどころか、会議の前半、政権支持の参加者(左派)に頼んで、バイデンを支持しない人々は党の団結を壊す裏切り者だといった全体主義・共産主義的な論陣を張らせ、バイデンに批判的な参加者を封じ込めようとした。'A Total Failure' - Donors Vent Over Kamala Harris Conference-Call Flop

会議開始後、バイデン批判封じ込めのやり取りが20分続いた後、ようやくハリスが登場して話したが、それは事前に撮影された映像で、バイデン政権がいかに素晴らしいか、トランプの党大会での演説のどこがダメだったか、などを5分間だけ話して終わり、参加者からの質問も受け付けなかった。その後、参加者から、馬鹿げた会議だ、この会議の運営自体がバイデン政権の無能さを象徴しているといった不満表明が相次ぎ、主催者は会議をそそくさとしめくくった。会議後、この会議の開催に積極的だった参加者から、他の参加者たちに対し、あんな会議になってしまってごめんなさい(私たちも失望しました)と謝るメールが送られた。It Looks Like Kamala’s Call with Democrat Donors Was a Disaster

田中氏によると、「ハリスはバイデンより不人気・無能で、討論も下手だ。バイデンの無能・認知症が露呈したように、今後ハリスの無能さが露呈した場合、能弁な対抗馬が立候補してくる可能性がある。対抗馬よりハリスの方がショボいと、今はハリスを支持した知事や議員らも撤回しうる。対抗馬に鞍替えする州が続出し、党大会前の全国的な意思統一ができなくなる」。秋の大統領選挙の際には、上下両院議員の選挙(上院は三分の一改選、下院は全議席改選)も行われるため、民主、共和両党の大統領正式候補者の政治家(Politician=政治屋ではなく、政治家=Statesman)としての資質は、上下両院の議席にも重大な影響を与える。

このところ急に、「ハリス副大統領 民主党の(正式の)候補者に指名される見通し」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240723/k10014519971000.html)といった「報道」が多くなったが、民主党内の混乱が続いて、孫崎氏や田中氏が指摘するように、ハリス氏の政治家としての素質に大きな疑問があることが露呈した場合、対抗馬が名乗りを上げる可能性があることに留意しなければならない。米側陣営のメディアはほとんど、ハリス氏礼賛一色だが、それだけ「確トラ」を恐れているということだろう。

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