このところ、Youtubeやニコ生動画、有料配信の動画などで、「グローバリズム」を批判して、「反グローバリズム」を支持する国際政治学者や国際情勢分析者が増加しており、こられの動画チャンネルを視聴する国民も急増している。グローバリズムは、本サイトで正当に扱ってきた「ケインズ主義」を批判し、自己責任を前提とした経済の自由化と規制緩和を強調する「新自由主義」に近いものだ。サイト管理者としても「反グローバリズム」は支持できるが、何事も極端な行き過ぎは排する必要がある。難しいが、グローバリズムとナショナリズムの調和を図る必要があると思われる。そして、「反グローバリズム」だけに立脚するのではなく、宗教・思想を根幹にした文明論の立場に立って政策提言を行っていくべきだと考える。
まず、グローバリズムが崩壊した経緯について、少し長くなるが、触れてみたい。英国のジョン・メイナード・ケインズは、1930年代に米国で起こった世界大恐慌の原因について考察する中で、市場経済に委ねるだけでは完全雇用を実現できないとし、有効需要不足で経済情勢が悪化し、国民が失業状態に陥る(不況に陥る)ケースが一般的であるとし、大恐慌も起こり得るとした(「雇用・利子および貨幣の一般理論」)。このため、政府の財政政策による有効需要の喚起と有効需要不足の解消が必要だとした。当時の大統領は共和党のフーバー大統領であり、古典派経済学の立場から、失業が生じるのは賃金が高すぎるからだとして、賃金の引き下げを経済界に要請したが、ニューヨーク株式市場でダウ平均の大暴落が起こり、大恐慌に陥ることを阻止できなかった。
このため、次期大統領に選出された民主党のルーズベルト大統領は、ケインズの考え方を取り入れてニューディール政策を行い、大規模な財政政策を展開した。しかし、ニューディール政策は市場原理を根幹とする資本主義経済体制に政府(国家)が介入するものだとして、成功は収められなかった。この間、ドイツではヒトラー、日本では高橋是清が当時の金本位制度を無視して、ドイツ・マルクや日本円と金との兌換性を停止、貨幣増発による一種の「財政政策」を展開し、一時的にこれらの「持てざる国」では景気が回復した。しかし、最後は国際情勢の悪化から軍事兵器や弾薬の増産に突っ走る戦時経済に突入、第二次世界大戦に突入した。
大恐慌の正しい原因と対策が不明な中で、連合国側と枢軸国側が第二次世界大戦に突入することになり、最終的には連合国側の「(フランス)ノルマンジー上陸作戦」を契機に、ソ連が連合国側に味方したこともあって、連合国側が勝利した。第二次世界大戦後、戦争の被害を受けなかった米国は世界最強の国家になり、欧州や日本を支援するとともに、①資源が不完全利用されている場合はケインズ経済学を適用する②ケインズ政策によって資源の完全利用が達成された場合は、古典派経済学(市場原理を有効に機能させる経済学)を適用するーといったサミュエルソンらの提唱した折衷的な「新古典派総合経済学」を根幹とした経済政策を採用した。これを採り入れたのが、ジョン・F・ケネディ大統領である。
しかし、ケネディ大統領が1963年11月22日の金曜日正午前に狙撃暗殺されたころから、米国経済は暗礁に乗り上げ始めた。ベトナム戦争が激化する一方で、米国の国内経済はインフレに陥るとともに、第二次世界大戦の敗戦国であるドイツや日本の輸出攻勢で、これらの諸国に対する経常赤字が大幅化し、1944年7月に米国はニューハンプシャー州のブレトンウッズで結ばれた戦後の国際決済システムである金・ドル本位制(1トロイオンス=35米ドル)が、米国からの金の流出で崩れ始めた。
このため、ケネディ大統領暗殺後、ジョンソン副大統領が大統領に就任したが、米国はベトナム戦争で初めて敗北した。このため、ジョンソン大統領は1968年の大統領選挙を辞退して、結局、アイゼンハワー大統領時の副大統領を勤めた共和党のニクソン候補が勝利に至り、1969年1月20日、第37代大統領に就任する。ニクソン大統領は、①キッシンジャー大統領補佐官に対して1971年7月15日、中国を訪問させて周恩来首相と会談。翌年1972年2月21日、自ら中国を訪問して毛沢東国家主席と会い、「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」との中国の主張を認識して「平和五原則」を確認し、中華人民共和国を「赤い資本主義国家」に転換して、米側陣営に取り込む基礎を築く外交政策の大転換を行う②1971年7月15日、金・ドル本位制の廃止(金とドルとの兌換制を停止)を発表するというニクソン・ショックを引き起こすーなど、経済・外交政策の抜本転換を行った。
ニクソン政権時代に、米国は中華人民共和国に対する関与政策を展開し、米ソ冷戦に打ち勝つ素地を作る(もっとも、ソ連が崩壊したのは市場原理の否定というソ連内部の要因が根本原因であった)。ただし、米国は以後、ソ連に対しては打ち勝つものの、国内経済はインフレに苛まれ、「新古典派総合」の折衷政策が失敗する。この時期の1970年に登場したのが、マネタリズムの提唱者であるミルトン・フリードマンであり、市場原理への回帰を提唱、以後、ルーカスやサージェントなどの合理的期待形成学派を通して、「新古典派経済学」の全盛期になる。
ニクソン大統領の経済・外交政策とミルトン・フリードマンに始まる新古典派経済学(主流派経済学)を受け継いだのが、1980年の大統領選挙で地すべり的勝利を収め、翌年81年1月20日に大統領に就任したレーガン大統領である。レーガン大統領はレーガノミクス(①個人所得税の減税②歳出削減による小さな政府③規制緩和④ソ連と決着をつけるための軍事費の大幅増強⑤金融引き締めによるインフレ抑制)を展開し、市場原理を否定したソ連の自壊もあって、冷戦に勝利する基盤を築いた。レーガノミクスはサッチャリズムや中曽根政権の経済政策と結びつき、世界的な潮流になった。レーガン大統領のあとを継いだのが、パパ・ブッシュ大統領であり、1989年12月2日、3日に地中海のマルタ島でソ連のゴルバチョフ大統領と首脳会談を行って冷戦を終わらせ、冷戦以後の世界を切り開いた。
しかし、冷戦後の米国には次のような問題が生じた。第一に、米国が巨額の財政赤字、大幅な経常赤字、基軸通貨ドルの体制を維持するための膨大な対外累積債務残高を抱えてしまったことだ。そのため、「平和の配当」を生かして、同国に新型産業の基盤を作るというよりも、バブル経済の構築に力を注ぐという不手際を起こしてしまった。これは、2008年9月15日に米国投資銀行のリーマン・ブラザーズを見捨てるというリーマン・ショックを引き起こす。
第二に、中華人民共和国(以後、中国)では、鄧小平が登場、改革・開放路線を本格的に引き継いで、中国を米国に次ぐ、あるいは部分的に米国をしのぐ経済超大国に引き上げた。第三は、子ブッシュ政権の時代に、軍産複合体の要請により、米ソ冷戦の代わりに自作自演説の根強い9・11を起こすとともに、裏では中東でアルカイダ系のイスラム過激派を育て、対テロ戦争を展開する。第四に、ロシアとの間で約束した北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大の約束を反故にするとともに、ウクライナもNATOに加盟させようとして、ロシアのプーチン政権の「特別軍事作戦」を誘引した。
この間、米国の諜報界=ディープステート内では、大英帝国を築いた英国の影響が強く、規制緩和(大量の不法移民の確保)と基本的人権の擁護を名目とした好戦的なネオコンと結託した民主党リベラル左派米国単独覇権派とロックフェラー家など大財閥との「隠れ多極派」が暗闘を続けるが、「隠れ多極派」は米国単独覇権派に対して、石油・天然ガスによる二酸化炭素排出大規制策を行わせるとともに、新型コロナを引き起こさる中で、遺伝子ワクチン接種を強要して世界諸国民の健康を悪化させたり、物流網を破壊させたりするなど稚拙な政策を行わせたりして、自滅させていった。グローバリズムに基づく不法移民の容認もその重大な「政策」のひとつである。その最終段階に来たのが、バイデン・ゼレンスキー政権によるウクライナ戦争の勃発である。
隠れ多極派は、イスラエルの右派リクード系シオニスト(ネタニヤフ首相)やトランプ次期大統領と組んで、米側陣営と非米側陣営の鎖国的対立という情勢を醸し出して、大英帝国を築いた英国の影響の強い民主党リベラル左派米国単独覇権派を崩壊させてしまった。このため、英国が覇権体制のノウハウを伝授し、規制緩和(大量の不法移民の確保)と基本的人権の擁護を名目とした好戦的なネオコン勢力などリベラル左派からなる米国単独覇権派=結局、グローバリストと呼ばれるようになった=はそのうち、没落する運命になる。ただし、国際情勢解説者の田中宇氏は、ネオコン勢力はロックフェラー家など大財閥の傘下にあると見ている。
戦後の米国現代史を簡単に一瞥してみたが、国際政治学者の藤井厳喜氏は現代の政治勢力について、縦軸を資本主義と社会主義、横軸をグローバリズムとナショナリズムに指定して、次のように四つの勢力に分類している(https://www.youtube.com/watch?v=fYFvy3wWsz0&t=775s)。
藤井氏によると、資本主義とグローバリズムの組み合わせは、余命わずかのバイデン政権や欧州のエスタブリッシュメント全体主義独裁政権、ウクライナのゼレンスキー政権であり、資本主義とナショなリズの組み合わせは、トランプ次期政権やドイツの「国民のための選択肢」、フランスの「国民連合」、イスラエルのネタニヤフ政権、トルコのエルドアン政権、ハンガリーのオルバン政権などの右派政権である。さらに、社会主義とグローバリズムの組み合わせの代表は今や、英国のスターマー労働党政権であり、社会主義とナショナリズムの組み合わせの代表は中国の習近平政権や北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)政権である。
トランプ2.0が成立することによって、今後の世界的な潮流は資本主義とナショナリズムを組み合わせた右派政権になる見られている。エスタブリッシュメント全体主義独裁政権とその傘下にある既成メディアは今後、衰退していく。これは、幸福の科学出身で、参政党にも協力している及川幸久氏や及川氏と親しいロシア在住のニキータ氏なども同じである。
ただし、GoogleのAIは、グローバリズムについて、次のように説明している。
グローバリズムとは、地球を一つの共同体と捉え、世界の一体化を図ろうとする思想です。国境を越えて経済や政治、文化などを拡大させる考え方や姿勢を指します。グローバリズムの関連語には、「グローバリゼーション」「グローバル化」などがあります。グローバリゼーションやグローバル化は現象を指すのに対し、グローバリズムはそれを推進する理念を指します。グローバリズムのメリットとしては、生産コストの削減や海外市場でのビジネス展開、新技術の発展などが挙げられます。一方、貧富の差の拡大や国内産業の衰退、価格競争の激化などのデメリットもあります。
これに対して、「反グローバリズム=ナショナリズム」は、その反対ということになり、欧州連合(EU)のような国際組織ではなく、国家・国民の利益を最優先する考え方になる。トランプ前大統領が昨年2024年11月5日に左派メディアの予測を裏切って、大勝利したことは、「反グローバリズム」の思潮を圧倒的に強くする結果になった。もっとも、田中氏によると、トランプ氏の大勝利には隠れ多極派のロックフェラー家などの大財閥やネタニヤフ首相などのシオニストたちの支援があったと分析している。
さて、GoogleのAIの内容を見てみると、「地球を一つの共同体と捉え、世界の一体化を図ろうとする思想です。国境を越えて経済や政治、文化などを拡大させる考え方や姿勢を指します」とある。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という同じ唯一神を持つ宗教理念からすると、人類が普遍的な共同体・家族を構成するというのは、当然のことだろう。そうした観点からすると、公助・共助・自助をバランス良く活かすべきであり、「(国家間の格差に加えて)貧富の差の拡大や国内産業の衰退、価格競争の激化」などは相互に克服してゆくべき課題である。これは、グローバリズムが言葉の正しい意味で実行されなかったことと自戒し、国家・国民優先のナショナリズムによって補強されるべきことがらである。
こう見てくると、グローバリズムとナショナリズムは極端なな行き過ぎを排し、調和を図ることが肝要だということになる。また、社会主義といっても、かつてのソ連や中華人民共和国(文化大革命)のような市場原理を無視した統制経済には回帰したくないだろう。古典的な自由放任主義に対する反動としての社会主義(経済的にはケインズ主義)の役割はまだまだ残っている。このため、サイト管理者としては現代の国際情勢について、宗教・思想を根幹とする高等文明をひとつの単位として理解すべきであると見る。そして、これらの多極化高等文明を調和させ、人類一大家族にまで昇華させる新たな統一文明圏の創造が急がれていると想定している。サイト管理者は有神論者であるが、神が存在するとするなら、現代史はそうした方向に進化していくだろう。トランプ前大統領が狙撃暗殺未遂に終わったのは、唯一神の守りと期待があるからだと信じている。