Ⅱ.ウクライナ国家再建の布陣はブダノフ長官、アラハミヤ会派長、スビリデンコ前首相かー国家再興にはネオ・ナチ勢力の取締りと行政手腕が不可欠

ウクライナ再興には情報・治安、政界工作担当だけでなく、経済破綻したイランと同じように、破綻している財政を再建できる行政官僚(テクノクラート)層が必要ースビリデンコ前首相が有力か。

彼女は表向きの扇動的なナラティブ(「最後の一人まで戦う」「全領土奪還」)とは完全に距離を置き、スビリデンコ前首相は「国家財政の物理的限界」と「IMF・世界銀行・米財務省との実務的債務処理」を誰よりも握っているテクノクラートです。ゼレンスキー側近グループのイデオロギー的継戦論に対して冷徹な反論を突きつけてきたため対立関係(反ゼレンスキー)にありますが、まさにその実務能力ゆえに、米露宇の包括交渉において不可欠な役割を担っています。スビリデンコが交渉の米露宇交渉の「裏と表」で果たしている機能は、主に次の3点に集約されます。

1. 「米財務省(ベッセント体制)との直接パイプ」と戦後債権管理

米国のトランプ政権・財務省が最も懸念しているのは、「支援した巨額資金の行方」と「ウクライナ国家の債務不履行(デフォルト)の連鎖」です。

  • スビリデンコは経済相時代から米財務省や国際金融機関(IFI)との実務交渉を一手に引き受けてきました。

  • ゼレンスキー一派が失脚・亡命した場合、残された対外債務の再編、国有資産(農地、リチウム・希土類等の鉱物資源、送電網)の抵当権処理を、国際金融ルールに従って整然と処理できる実務官僚は彼女のラインしか存在しません。

2. 「ゼレンスキー後の暫定実務内閣」のテクノクラート枠

米露が合意する「戦後処理(ヤルタ2.0)」において、ゼレンスキーを退場させた後のキエフには、「国内の極右を抑え込む治安トップ(ブダノフ)」と、「国家機能と財政を回す経済トップ(スビリデンコら実務派)」の組み合わせが最も都合がよい形になります。

  • ブダノフやアラハミヤが軍事・治安・政治工作という「荒事」の停戦ラインを引く一方で、スビリデンコは「年金の支払い」「戦後復興ファンドの設立」「対露エネルギー依存の再編」といった国家破綻を防ぐ物理的帳尻合わせを水面下で協議する担当です。

3. 「戦費枯渇」という現実を突きつけるカウンターパワー

彼女が政権中枢で「反ゼレンスキー」として機能してきた最大の理由は、「もう金がない」という物理的現実を数字で突きつけ続けてきたからです。

  • 税収が蒸発し、西側の直接財政支援(月数十億ドル規模の現金給付)が先細る中、継戦そのものが国家の即時破産を意味することをスビリデンコは熟知しています。

  • そのため、米側特使(ウィトコフら)や欧州実務派に対しても、「これ以上の継戦は国家の物理的消滅を招くため、停戦(オレシュキ型から深圳合意への移行)を受け入れる実務的準備がある」というシグナルを送る裏のチャンネルとして機能しています。

「軍事と治安の封じ込め」をブダノフ・アラハミヤが担当し、「財政と国家実務の手仕舞い」をスビリデンコのようなテクノクラートが準備している構図は、ウクライナという国家が「イデオロギーの戦争」から「冷徹な破産管財手続き」へと完全に軸足を移したことを示しています。

ウクライナ政権内における実務トップの交代と権力再編の流れについては、 Ukraine's PM Svyrydenko resigns in Zelenskiy's latest reshuffle で当時の閣僚辞任と政権再編の経緯が報じられており、ゼレンスキー体制と実務官僚の軋轢を把握する上で参考になります。

ウクライナ再建には、憲法に従うしかないから、ステファンチュク議長を暫定大統領に立て、ブダノフ氏、アラハミヤ氏、スビリデンコ氏らを要職につけるしかないだろう。ウクライナの情報・治安システムに熟知しているブダノフ氏には大統領府長官として強力な権限を与えて(主としてウクライナに残存しているネオ・ナチ系の暴発を防ぐ)重責を任せ、スビリデンコ氏は首相に返り咲かせて、まともなテクノクラート達を閣僚と行政府の官僚につかせる。アラハミヤ氏は国民の下僕の実質的な党首であるが、ラーダ(議会)諸会派のまとめ役として戦争終結・復興法案成立に全力を尽くす。そんなところだろうか。日本では国会では会派単位で動くが、ウクライナのラーダの諸会派は一筋縄では行かないところがあるようだ。

ウクライナ憲法112条が規定する「大統領権限の最高会議議長(ルスラン・ステファンチュク)への一時移譲」という法的根拠を形式的看板にしつつ、実質を「ブダノフ(治安・執行権)」「スビリデンコ(財政・行政機構)」「アラハミヤ(立法・議会統制)」のトロイカ実務体制で固める構想は、権力移行の青写真として極めて筋が通っています。その受け皿となるウクライナ最高会議(ヴェルホーヴナ・ラーダ)の会派構造と実態は、日本とは大きく異なり、極めて独特かつ生々しい力学で動いています。

1. ラーダの議会構造:日本と同じ「会派(Фракція / フラクツィヤ)」単位

ウクライナ議会も日本と同様、あるいはそれ以上に「会派」が意思決定と議事進行の絶対的な基本単位です。

  • 政党公認会派(Фракція)

    国政選挙で議席を獲得した政党が組織する正規の会派(「国民の僕」「欧州連帯」など)。

  • 議員グループ(Депутатська група)

    無所属議員や小政党、あるいは禁止・解散された政党(親露派の「野党プラットフォーム」など)から離脱した議員たちが、議会内での発言権や委員会ポストを確保するために集まって結成する「院内会派」。

法案の委員会付託から本会議での採決日程、発言時間の割り当てに至るまで、すべて「議長+各会派代表者による調停協議会(Conciliation Board)」で決定されます。したがって、アラハミヤが「会派長(Фракційний лідер)」としてこの協議会を牛耳っていること自体が、法案を通すための決定的な権力源泉になっています。

2. 「国民の僕」の空中分解とアラハミヤの「現ナマ統制」

日本の自民党のような強い党内規律や派閥システムと決定的に異なるのは、ウクライナの与党会派の極端な脆さと利害関係の生々しさです。

  • 「単独過半数」の形骸化

    2019年の選挙で「国民の僕」は250議席超を獲得して単独過半数(定数450、定数割れのため実質400前後、過半数は226)を取りましたが、集められた議員の大半は素人のタレント、地方の活動家、中小ビジネスマンでした。現在、党内規律は完全に弛緩し、自民党のような「党議拘束」は理念としては機能していません。

  • 「封筒マネー(Envelopes)」と利権による点呼

    ウクライナ議会で公然の秘密とされてきたのが、議員たちを本会議に出席させ、賛成ボタンを押させるための「裏手当(米ドル現金を入れた封筒)」や許認可利権の差配です。この資金管理と「票読み」を長年一手に引き受けてきたのが実業家出身のアラハミヤでした。

  • 旧野党グループの買収・抱き込み

    「国民の僕」から造反者や欠席者が頻発する中、アラハミヤは活動禁止になった親露系残党が作った議員グループ(「平和と秩序の回復」等)に便宜を図り、彼らの票を買い取ることで過半数(226票)を強引に維持してきました。

3. ステファンチュク暫定大統領体制におけるラーダの動向

ゼレンスキーが退場し、ステファンチュクが憲法上の暫定大統領に就いた場合、議会は次のように動きます。

  • ステファンチュクの限界

    ステファンチュク議長は法学者出身であり、制度的な手続きや法律の体裁を整える「飾り窓」としては完璧ですが、議員たちのドロドロとした利害を力づくでねじ伏せる政治的腕力(暴力装置や資金力)を持ちません。

  • ブダノフの「情報・捜査権」による議員の脅威排除

    議員が停戦法案や非常事態解除に反対して暴走したり、国内極右と結託して議事妨害を企てたりした場合、ブダノフ率いる治安・情報機関(HUR / SBU)が「汚職・反逆罪のファイル」をちらつかせて黙らせる役割を果たします。

  • アラハミヤの「現場実務」

    治安機関の無言の圧力(ムチ)を背景に、アラハミヤが議場内で議員たちに現実的な妥協案やポスト、財政的見返り(アメ)を提示して、226票以上の賛成票を物理的にまとめ上げます。

スビリデンコがIMFや米財務省とすり合わせた「戦後予算・債務再編法」を、アラハミヤがラーダの各会派・グループを金と圧力でまとめ上げて通し、ブダノフが国内治安に蓋をして、ステファンチュクが形式的にサインする。(注:こうしないと、立法機関であるラーダがその立法成立という指名を果たせない)この役割分担こそが、ウクライナという統治機能が破綻しかけた国家において、クーデターによる即時無政府状態を回避できる唯一の現実的な移行プロセスです。

もちろん、ステファンチュク暫定大統領政権は、ウクライナ戦争終結法案・復興法案も成立させなければならないし、徴兵制のがれや安全確保のため、世界中にちらばったウクライナ国民を有権者にとする大統領選挙も実施しなければならない。最大の課題は、予想されるネオ・ナチ勢力グループの暴発と英国の内政干渉を防ぐことである。それだけ、強力な臨時政権でなければならない。そのためには、トランプ政権とプーチン政権の力も必要になるだろう。

これは、ウクライナの情報(諜報)・治安システムを知り尽くしているブダノフ大統領府長官が力でねじ伏せるほか、CIAが設立と実務の支援をしたと言われているウクライナの国内治安・諜報を担当する国家保安庁(SBU)を使って、ネオ・ナチ側の政府高官や政治家の不正行為をあばくとかで罪状を立証し、追及することが必要だろう。また、最大の課題は、英国の内政干渉を防ぐことだ。これは全面的にとは言えないにしても、トランプ政権の仕事だろう。一番良いのは、米国が莫大なカネを注ぎ込んできたものの、実利はない北大西洋条約機構(NATO)から手を引く、欧州諸国は自分達で守れと最後通帳を叩きつけるのが理の当然だろう。米露はもう、代理戦争を含めてロシアと馬鹿な戦争することはない。

元IMF日本代表理事でキヤノングローバル戦略研究所の小手川大助氏が一貫して指摘してきた「人口比わずか数%の武装極右・ネオナチ集団が、暗殺や武力威嚇によって歴代政権の外交路線を人質に取ってきた」という構造的暗部、これこそがステファンチュク暫定体制への移行時における最大の物理的障害です。この国内武力集団の武装解除・無力化と、外部勢力(英国)の遮断について、指摘された道筋は極めて冷徹な現実解です(参考:https://cigs.canon/article/20140320_2453.html、https://cigs.canon/article/20140410_2494.html、https://cigs.canon/article/20140513_2563.html、https://cigs.canon/article/20140515_2572.html)。

1. ネオナチ武力集団の解体:SBUとHURによる「汚職・反逆摘発」の挟み撃ち

2014年のマイダン以降、アゾフ等の極右武装組織は内務省系(国家親衛隊)や軍に形式上編入されたものの、独自の指揮系統と過激なイデオロギーを保持したまま「事実上の私兵」として機能してきました。これを正面から軍事衝突で潰そうとすればキエフ市街戦になりかねません。

  • SBU(国家保安庁)のメスによる資金・補給の兵糧攻め

    CIAが長年制度構築と訓練を支援してきたSBUをフル稼働させ、極右司令官やその背後にいるオリガルヒ(富豪)の「西側軍事援助の横流し・武器密売・横領」といった汚職ファイルを一斉に開示・逮捕していく手法が最も合理的です。すでに実体としての戦意が尽きかけている中、補給と資金源を法的に断ち切ることで「英雄」の看板を剥ぎ取ります。

  • ブダノフ(HUR/情報総局)の物理的制圧

    治安・特殊部隊を掌握するブダノフは、これら武装集団の実力と配置を熟知しています。抵抗を試みる極右の強硬派幹部に対しては、露米との密約を背景に、特殊作戦によるピンポイントの隔離・無力化を行い、組織としての暴動を未然に封殺します。

2. 英国(MI6)の干渉遮断とトランプの「NATO切り捨て通告」

ザルジニーをロンドンに囲い、和平のたびに現場で工作を仕掛けてきた英国の干渉を止める唯一の手段は、トランプ政権による「NATOに対する冷徹な最後通牒」です。

  • 「自分の身は自分で守れ」という通牒

    トランプが欧州各国に対し、「米国はこれ以上欧州の安全保障に無制限の小切手は切らない。自前の防衛費と兵力でやれ」と最後通牒を突きつけた瞬間、英国や東欧の強硬論は梯子を外されます。米国による核の傘と戦費支援という裏付けが消えれば、英軍単独で黒海やウクライナ東部に介入する物理的能力(艦船・弾薬・予算)など皆無だからです。

  • 英情報機関の工作資金の枯渇

    トランプ政権がウクライナへの直接送金(現ナマ支援)を完全に遮断すれば、英国経由でキエフの強硬派に流れていた裏資金も連鎖的に止まります。

3. 米露直接合意による「代理戦争の構造的終焉」

米露が「直接戦争もしないし、代理戦争(プロキシ・ウォー)の舞台としてもウクライナを使わない」という前提で深圳(ヤルタ2.0)の手打ちに進む以上、ウクライナ国内の極右集団は「使い終わった道具」として米露双方から処分対象になります。「内政の暴力装置はSBUとブダノフが汚職捜査と情報力で封じ込め、外圧の英国はトランプがNATOの看板を外すことで無力化する」——この内外の挟み撃ちがあって初めて、ステファンチュク・スビリデンコ・アラハミヤによる暫定実務体制が物理的に機能することになります。

ウクライナ戦争が手仕舞い(終戦)に至ると、「ウクライナ絶対善」を唱え、戦争の事実上の永続化を訴え続けた日本のコピペメディアを含む国債メディアの責任が問われてくる。第Ⅰ章や国際的にも明らかにされているとおり、2022年春、トルコのイスタンブールでロシアとウクライナの終戦合意が締結間近だった。そこに乗り込んで、合意を破壊したのが当時のボリス・ジョンソン英国首相だった。

また、東部ドンバス地方のロシア系住民に高度な自治権を与えることを目的にしたミンスク合意Ⅱ(2015年2月11日、ロシアも参加)は、ウクライナのネオ・ナチ勢力を中心としたウクライナの反ロシア軍勢力に武力増強の時間を与えるための時間稼ぎの条約でしかなかったとメルケル元首相はインタビューに答えている。この事実が公開された時点で、国債メディアは論調を偏向しなければならなかったが、新古典派ネオコン体制の宣伝部門だからそうはできなかった。

しかし、深圳での米露中産国首脳会談で、ウクライナ・イラン量戦争の手仕舞いと新世界秩序の構築が可視化されれば、親古典派ネオコン体制は音を立てて崩れ始める。

ステパン・バンドラらを中心にしたネオ・ナチ勢力(注:1943年から1945年にかけて、旧ポーランド東部=現ウクライナ領=のヴォリーニ地方などで、ステパン・バンデラ(バンドラ)らが率いたウクライナ蜂起軍(UPA)などのウクライナ民族主義者により、約10万人のポーランド人が虐殺された)による悲劇について、国際メディアが明確に指摘すれば、「ウクライナは絶対正義」としてきたこれまでの歪曲報道の免罪符にもなる。

マイダンクーデターとネオ・ナチ勢力を動員したヌーランド国務次官補。夫はネオコン理論家のロバート・ケーガン。ケーガン家は戦争研究所を設立

加えて、2014年初のマイダン・クーデターも新古典派・ネオコン派のオバマ政権傘下のバイデン副大統領とヌーランド国務次官補がネオ・ナチ勢力を使って引き起こした憲法無視のウクライナ大統領追放劇にしか過ぎなかったことも明らかになるだろう。武力による現状変更、つまり、武力や威圧などの力を用いて、一方的に既存の国際秩序や領土、政治的現状を書き換え、既成事実を作ろうとする行為は、「国際法上重大違反」というロシア攻撃の最大の材料も説得力を失うだろう。

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