今年最初の重要案件だった2024台湾総統線で、副総統で民進党の頼清徳氏が台湾総統選挙で勝利するも立法院では過半数を失た。端的に言って「台湾独立」をスローガンにするという非現実的な路線を取っているからだ。これに対して、今後は、台北市長だった柯文哲氏 が創設し、「台湾民族主義を堅持し、米国とも中国とも上手に付き合う」という現実路線を採用、第三極勢力として台頭している民衆党の勢いがさらに増していくだろう。ただし、台湾の国際政治上の帰趨は米中関係によって決まる。米国もニクソン・キッシンジャー外交以降は「中華人民共和国は中国の唯一の継承国であり、台湾は中華人民共和国の不可分の領土である」という立場を事実上認めているので、台湾も親中華人民共和国(中国)国家となっていくだろう。
台湾の政治的帰趨は米中関係によって決まるー現実路線への転換迫られる民進党政権
今回の2024年台湾総統選挙および立法院(各国の議会相当)選挙の結果について、NHKは次のように報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240113/k10014319761000.html)。
4年に1度行われる台湾の総統選挙には、与党・民進党から今の副総統の頼清徳氏、最大野党・国民党から現職の新北市長の侯友宜氏、野党第2党・民衆党から前の台北市長の柯文哲氏のあわせて3人が立候補しました。
投票は13日に行われ、即日開票の結果、民進党の頼清徳氏 558万6019票、国民党の侯友宜氏 467万1021票、民衆党の柯文哲氏 369万466票で頼氏が当選しました。投票率は71.86%で、前回4年前より3ポイントあまり低くなりました。
(注:記事の中では前後するが)一方、同時に行われた議会・立法院の選挙では民進党が過半数を維持できず、5月に就任する予定の頼氏は難しい政権運営を強いられることになりそうです。
民衆党の柯文哲氏が総得票数の27%を取り、非常に善戦している。台湾民衆党(中国語: 台灣民眾黨、英語:Taiwan People’s Party、英略称:TPP)は、2019年8月6日に当時台北市長だった柯文哲により結成された、台湾(中華民国)の政党である。民衆党の立場は、中国(中華人民共和国)との関係はあいまいにして、「台湾民族主義を堅持し、米国とも中国とも日本とも上手に付き合う」というものだ。ただし、Wikipediaによると、中国から資金援助を受けているとの参考資料もあり、親中国路線に傾斜していく可能性がある。
民進党は大雑把に言って「台湾独立」を掲げているが、これが非現実的な外交路線であることは誰にも分かる。国民党は、蔣経国を副総統として補佐し、その死後は後継者として台湾(中華民国)の歴史上初めて、総統選挙を実施して台湾総統になった民選総統(注:「総統」は「大統領」の中国語訳)であり、なおかつ本省人(注:1945年の「台湾光復」以前から中国大陸各地から台湾に移り住んでいた人々およびその子孫の人々)出身者では初の総統となった李登輝の伝統を受け継ぐ国民党は、表向き「台湾は中国の一部であり、共産党支配でない中国を発展させたい」としているが、実態は親中国路線だ。しかし、表向きのスローガンが既に非現実化しているうえ、党員や支持者の高齢化が進み、台湾の若者の支持を得るのは容易ではない。というか、困難になってきている。民衆党が国民党との候補者一本化を拒否したのも、そこのところを見越してのことだと思われる。
民進党の「(米国の手を借りて=米国から軍事兵器を買って=)台湾を独立させる」というのも単にスローガンであって、これまた現実的ではない。だから、日本の国会に相当する立法院では過半数を失った。今年の5月に総統に就任する頼清徳氏も現実路線に軌道修正しなければならなくなるだろう。だから、「台湾海峡有事」といった事態は起こり得ない。台湾を独立させるという気もないの米国にそそのかされて、国防費を大幅強化した日本の岸田文雄政権は世界の笑いものだ。「国防費」の大拡充に充てる予算があれば、子供を生み育て家庭を築くことの重要性を訴え(注:これには、岸田政権が弾圧している世界平和統一家庭連合=旧世界基督教統一神霊協会、略称統一教会=を始めとした宗教界の協力を得る必要がある)、そのための子育て予算(高等教育まで教育費を無償化することなど)を創設して、予算を回すことが肝要だ。
さて、台湾の国際情勢上の帰趨は米中関係によって決まる。国際情勢解説者の田中宇氏の諸論考(https://tanakanews.com/)によると、中国では胡錦濤ら鄧小平派(米国の下請け工場=従属国=になろうとする政治勢力)と政権を掌握した習近平国家主席派とが最後の戦いを展開しており、政権を掌握している習派が有利な展開になっているという。サイト管理者(筆者)には確認する手立てがないが、最近の中国の外交(サウジアラビアとイランの国交回復の仲介をするなど)を見ていると、中国の国内情勢はその方向に動きつつあるようだ。
また、同じく田中氏の諸論考によると、米国もディープ・ステート(DS)=田中氏は「諜報界」という言葉を使っておられる=内で軍産複合体を中心とする米国一国覇権体制維持派と資本の論理に立つ多極主義勢力派が争っているが、現在のところ多極主義勢力派がディープ・ステート(DS)の中枢を抑えているようだ。米国が財政赤字、経常収支赤字、世界最大の累積債務残高という三つ子の赤字に見舞われているという現状を見ると、米国には覇権を維持する力がなくなっている。民主党のバイデン現政権はディープ・ステート(DS)の傘下にあり、G7諸国を弱体化させる命令を下しているという。
そのひとつの証拠として、バイデン大統領は頼清徳氏の総統訪問に備えて大型代表団を編成し、台湾訪問をする予定らしいが、東京新聞は、「バイデン米大統領は13日、台湾総統選で民進党の頼清徳(らいせいとく)氏が当選したことを受け、報道陣に『台湾の独立は支持しない』と語った。バイデン政権は対中強硬派の頼氏を歓迎しているが、一方で中国との関係安定化も目指しているため、中国への配慮を見せた」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/302799)と報道しており、パイ電政権は台湾を中国から独立させる意図はないと考えていることが挙げられる。
さて、今後の台湾の国際政治上の帰趨として、田中氏は1月14日「米中逆転の現実化と台湾(https://tanakanews.com/240114taiwan.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)」を公開しておられる。その中で同氏は、次のように述べている。
習近平が中共上層部のトウ小平派を完全に潰すまで、米国の中国敵視策や、日韓の米軍駐留が続く。日韓など同盟国にあるのは米軍駐留の人数や床面積などの「枠」であり、実際に米軍がほとんど駐留していなくてもかまわない。いつになるか、どのような形になるか不透明だが、中共中央の権力闘争が完全に決着し、「枠」でなく実質的な米中間の政治経済の力関係において、中国(非米側)の優勢と米国側の劣勢が不可逆的に確立した後、日韓豪などにおける米国覇権が撤退していく。現状が長引くほど、米国の撤退は劇的になる。
それまでの間、台湾も、誰が政権をとるかに関係なく、現状維持が続く。おそらく、米覇権衰退が顕在化して日韓が変化した後に、台湾も、独立でなく親中国の方向に変化する。米諜報界を追い出した中共と異なり、日韓も台湾も、米諜報界に入り込まれているので、地元の政治権力(日本の自民党など)が自国の国益に沿って勝手に対米自立することは許されない。それを模索すると、安倍晋三のように米諜報界に殺されてしまう。
米中がこっそり結託して進める東アジアの転換まで、まだしばらく時間がかかる。台湾民衆党の柯文哲は、ゆっくり政権をとっていけばよい。
本サイトで述べているように、G7諸国を中心とする米側陣営と非米側陣営との対立・抗争は着実に非米側陣営が優位に立ってきている。サイト管理者(筆者)自身は、米側陣営と非米側陣営との対立・抗争が決定的になるのは歴史の基本的な趨勢ではないと思うが、米側陣営は自己再建を図る必要があるだろう。それにはやはり、キリスト教の自己再生とその支援が必要になるだろう。キリスト教は「結婚問題」を解決できないまま、あまりにも衰退しており、新たな宗教改革を必要としている。
米調査会社による2024年の国際情勢の10大リスク
ジェトロが報道した2024年の国際情勢上の10大リスクのうちの三大リスクは次の通りだ(https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/01/f19938f3be01b5d2.html)。
米国の調査会社ユーラシア・グループは1月8日、2024年の「世界の10大リスク」を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した(添付資料表参照)。1位には、大統領選挙を控えて米国の政治的分断が一層深まるとして「米国の敵は米国」が挙げられた。2位はイスラエルとハマスの衝突が続く「瀬戸際に立つ中東」、3位はロシアによる「ウクライナ分割」だった。同社は、著名な国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務め、1998年以来、年初に当該年の世界政治や経済に深刻な影響を及ぼす地政学リスクを予測している。
米国最初の予備選挙が行われるアイオワ州党員集会でトランプ前大統領が勝利
共和党の大統領候補選びが米国で最初に行われる予備選挙のアイオワ州党員集会で、トランプ前大統領が勝利した(https://www.yomiuri.co.jp/world/uspresident/20240116-OYT1T50056/)。
米大統領選の共和党指名候補争いは15日夜(日本時間16日午前)、初戦となるアイオワ州の党員集会が行われ、ドナルド・トランプ前大統領(77)が勝利を確実にした。米メディアが一斉に報じた。大統領への返り咲きを目指すトランプ氏にとって、幸先のいいスタートとなった。共和党指名候補争いは、各地の党員集会・予備選が6月まで続く。初戦は今後の選挙戦の流れを左右するだけに、全米でも高い注目を集めている。
AP通信によると、開票率3%で、トランプ氏は51・1%を獲得。フロリダ州のロン・デサンティス知事(45)が21・7%、ニッキー・ヘイリー元国連大使(51)が19・3%で、2位争いを繰り広げている。