2013年9月17日午後1時半より、参議院議員会館会議室で、消費税増税に反対する緊急アピールの記者会見が行われた。サイト管理者は都合で行けなかったが、記者会見を行った識者のうちの一人である政経評論家の植草一秀氏がメールマガジンで記者会見の模様を報告されているので、ポイントを紹介したい。結論は、「消費税増税法違反の消費税増税強行は史上最悪の2014年度財政デフレをもたらす」というものである。

まず、安倍晋三政権が財務省に操られて強行しようとしている消費税増税(税率5%から8%への引き上げ)は、増税を定めた消費税増税法に照らしても違反である。

この点については、東大名誉教授の醍醐聰氏が安倍政権が推進している消費税増税が消費税増税法の本則に照らしても反している点を鋭く指摘した。消費税増税法の第一条には「趣旨」として、

「この法律は、世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築することにより支え合う社会を回復することが我が国が直面する重要な課題であることに鑑み、社会保障制度の改革とともに不断に行政改革を推進することに一段と注力しつつ経済状況を好転させることを条件として行う税制の抜本的な改革の一環として、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成することを目指す観点から消費税の使途の明確化及び税率の引上げを行うとともに、所得、消費及び資産にわたる税体系全体の再分配機能を回復しつつ、世代間の早期の資産移転を促進する観点から所得税の最高税率の引上げ及び相続税の基礎控除の引下げ並びに相続時精算課税制度の拡充を行うため、消費税法、所得税法、相続税法及び租税特別措置法の一部を改正するとともに、その
他の税制の抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置について定めるものとする。」

と表記されている。もって回った書き方(官僚の作文)だが、要するに、「世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築することにより支え合う社会を回復することが我が国が直面する重要な課題である」ことを認識して、

1.社会保障制度改革
2.行政改革
3.経済状況の好転

を条件として、消費税の使途明確化及び税率の引上げを含む税制の抜本改革を行う」ために消費税法等の改正を行うとされているのである。しかし、これらのどれも手付かずのままである。マスゴミは経済状況が好転しているとはやしているが、1997年度から始まった恐慌型長期デフレ不況は今なお続いている。1997年に523兆円あった名目国内総生産は、新自由主義を採用した財務省の経済政策の失敗により今日まで漸減しており、2012年476兆円である。政府は今年2013年は4兆円ほど増えると見込んでいるが、2013年度に執行された総額13兆円規模の「景気対策」による一過性のものでしかない。それにしても、ピークからなお45兆円程度も経済規模がスパイラル的に現象している。2012年度補正予算が執行され、その効果が最も強く出ている4-6月期の経済指標のみを見て「景気好転」などと言うのは、国民を騙す以外の何物でもない。

1,2は全くやっていない。むしろ、環太平洋連携協定(TPP)に合わせて高額医療費助成制度(月8万円を超える医療費については、公的保険制度から拠出する)のなし崩し的破壊など、社会保障の切り捨てを実行しようとしているのが実態である。行革についても、「社会保障費などプログラム的支出の割合を増やし、裁量的支出の割合を減らす」という本来の姿から逆行し始めている。自民党お得意の利権政治の復活である。

消費税増税法本則に照らしても、安倍政権による消費税増税の強行は法律違反である。野党は法律に違反している政府の行動を許すのか。

次に、消費税増税強行は史上最悪の2014年度財政デフレをもたらすことについてだが、これは2012年度に成立したものの、4-6月期の景気の見かけの好転のために、執行が2013年度に先送りされた総額13兆円規模の補正予算である。これは一過性のものに過ぎない。2014年度はこれが剥げ落ちるから、ただでさえ13兆円のデフレ政策になる。これに、消費税を8%に引き上げれば大増税分は9兆円であるから、少なくとも22兆円のデフレ財政になる。

「安倍政権は今、5兆円の景気対策を提唱しているが、22兆のブレーキの5兆円分を差し引いても、ブレーキの規模は17兆円である。橋本政権のブレーキ(総額11兆円規模、名目GDP比3%)をはるかに上回る。GDP比4%の途方もない猛ブレーキになる。」(植草氏)

安倍政権は知ってか知らずか、日本の経済社会を破壊し尽くそうとしている。さらには、これによる国民の抗議行動を弾圧するため、「秘密保護法案」を成立させようとしている。2016年の衆参ダブル選挙での敗北は必至であるが、総選挙を行えないようにする可能性も強い。政党の枠を超えて、憂国の政治家が結集し、善意の国民はこれを支援、支持すべきである。

※なお、記者会見であるから東京新聞、北海道新聞、読売新聞から記者が来たけれども、読売の記者は途中で退席した。善意に解釈すれば、自分たちの書いていることが日本を滅ぼすことが明瞭になったので、いたたまれなくなったのであろう。

※追記
2014年度より所得税増税、厚生年金保険料引き上げも実施される。大和総研の試算(一世帯当たりの可処分所得の減少幅)などからその規模を推計した日本金融・財政研究所の菊池英博氏によると、総額6兆円規模である。従って、17兆円+8兆円=25兆円のデフレ財政になり、大変な財政デフレが現実のものになる。

 

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