ロシアのウクライナの一部の独立承認は本格的な多極化の幕開けにー政府、オミクロン株に棄民政策

ロシアのプーチン大統領が、北京冬季オリンピックが終了するや否や、ウクライナ東部の新ロシア系地域・二地域を独立国家として承認し、ロシア軍の派遣を命じる大統領令にサインした。本サイトでもしばしば言及してきたように、冷戦後の米国一国支配時代は今や昔。米国の国力の衰退、代わってともかくも北京オリンピックを成功裏に終わらせたことに象徴されるように中国が台頭、ロシアも石油や天然ガスを主力輸出品とし欧州に圧力をかけているほか、中国にも供給して中露の結びつきを強化している。いわゆる西側のG7諸国がロシアを非難し、制裁を決議しても、ロシア側が壊滅的な打撃を蒙り、敗退することはないだろう。

現代は800年に一度の新文明への転換期

1990年前後にソ連帝国が崩壊するにあたって、ソ連のゴルバチョフ大統領とシェワルナゼ外相は米国のブッシュ大統領(父)とベーカー国務長官は、北大西洋条約機構(NATO)を「1インチ」とも東側に動かさないということで合意している。条約や秘密合意のほかこうした政府首脳間の取り決めは、政権が変わっても維持するのが国際法上の常識だ。変更するには、二国間・多国間のあらたな協議が必要になる。

ただし、米国は冷戦崩壊後、新弱肉強食主義を引っさげて世界に君臨し、「Japan as No. 1」とおだてられ、経済的には競争相手だった日本は経済が没落したため、2008年9月のリーマン・ショックが勃発するころまでは、同国一極時代を形成することになったため、米国の政治理念・外交政策・経済政策が政治・経済・外交を含む広い意味での実質的な国際法になった。過去の二国間、多国間取り決めは無視された。現在は、ロシアが2015年2月のミンスク合意(ウクライナ東部のロシア系住民の居住地をめぐる欧米、ウクライナ、ロシアの合意)に違反したとの報道がかまびすしいが、それ以前の米国とソ連(後継のロシア)とのNATO不拡大合意が厳然として存在する。

要するに、米国の支配層であるディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)は有頂天になったのである。しかし、米国は新たな敵としたアラブの過激派との戦いに敗北(その象徴はアフガニスタンからの撤退)したうえ、中国が鄧小平の開始した「改革・開放路線」が奏功して、既に購買力平価(理論的には、現実の為替レートの長期到達点)では米国の経済を追い越している。現実の為替レートでも5年程度で米国経済に追いつき、追い越すだろう。

一国の科学技術のレベルを測る科学技術論文数や他の科学論文から引用される論文の多さでも中国は世界のトップレベルまで達している。「中国経済大国」説には一定の裏付けがある。ロシアは科学技術のうえでは米国や中国に及ばないが、マッハ25の中距離ミサイルを実戦配備するなど、軍事技術は抜きんでいる。なお、ロシアが北方領土の変換に応じないのは、日本政府が北方領土への米軍展開を阻止できないからだ。ロシアはそのうえ、豊富な石油や天然ガスを生産し、欧州諸国に供給している。さらには、中国とも絆を強めており、石油や天然ガスを中国にも供給。G7諸国が対露制裁を行っても、欧州諸国は「返り値」を浴びる。

今回、プーチン大統領はウクライナ東部のロシア語圏内である「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、ロシア軍を派遣することになった。プーチン大統領はウクライナ主要部へのロシア軍派兵をちらつかせていたから、ある意味、「奇襲作戦」を採ったことになる。これは、国際法上から言えば、欧米諸国が「北大西洋条約機構(NATO)を『1インチ』とも東側に動かさない」との取り決めを再確認すると言えば良いだけのことだからだ。それを、バイデン大統領はしない。同大統領の背後にいるディープステート支配する米国はいつまでも「超大国」意識を振りかざしているが、状況の進展によってはその幻想を打ち砕かれるだろう。

なお、下記のYoutube「UIチャネル」によると、ロシアの国民はウクライナへのロシア軍の派兵は望んでおらず、プーチン大統領が強硬姿勢を本格化させれば、同大統領への国民の支持率は低下する。それでも、プーチン大統領が「ルビコン川」を渡れば、同大統領の並々ならぬ決意を意味し、重大自体を招く。

朝日新聞23日付(14版)1面によっても、ロシア側が欧米諸国に要求しているのは、①北大西洋条約機構(NATO)の拡大停止②NATOの軍配備をNATO拡大前の1997年時点に戻すこと③ロシア国境近くへの攻撃兵器の配備取り止めーの三点だ。これは、ソ連崩壊時のソ連(後継ロシア)と米国とのNATO不拡大原則を踏まえれば十分、ロシアとウクライナ、欧米諸国が交渉のテーブルに着くことができるはずだと思われる。

東アジア共同体研究所理事長の鳩山友紀夫元首相が主催する「UI」チャンネル2月10日号(https://www.youtube.com/watch?v=G76_c4SNhfM)によると、古参だが世界的にも影響力のある国際政治学者のグレアム・アリソンハーバード大学ベルファー科学・国際問題研究センター所長(ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長)は、「現在は既に多極化時代に移行しており、米国が大きな野望を持ったとしても、その野望を実現する手段は限られているし、行くだろう」とのことだ。余談だが、日本の能力のある政治家はケネディ行政大学院で学ぶ。それ以外の、能力的に劣る政治家はディープステート傘下の大学など研究機関に入ることになる。

今回のウクライナ事案について、一方的にロシア(のプーチン大統領)を非難するのは現実的ではない。ウクライナ事案は本格的な多極化の幕開けと捉えるべきだ。800年の文明周期説というものがある。人類史は800年ごとに文明の中心地が移動しているというものだ。西欧が勃興したのは12世紀中世ルネッサンスからだと言われる。21世紀は新しい文明が東アジアから胎動する起点になり得る。これに、マックス・ウェーバー=大塚史学(https://www.it-ishin.com/category/historysociology/)を重ね合わせる必要がある。

米国では今、民主党のバイデン大統領=ハリス副大統領コンビの人気が凋落、その一方でトランプ全大統領の人気が復活し、台頭しているという。例えば、将来の大統領と喧伝されたカマラ・ハリス副大統領の人気はかまびすしくない(https://www.newsweekjapan.jp/sam/2022/01/post-79.php)。

カマラ・ハリスは、ついに現代アメリカ史上最も不人気な副大統領になってしまった。11月の世論調査では支持率が30%を割り込んだ。副大統領就任当時の輝きはどこへ消えてしまったのか。人気急落の要因としては、バイデン政権で任されている政策の難しさ、不安定なコミュニケーション、そして女性初・黒人初・アジア系初の副大統領として直面する差別が主に指摘されている。これらの指摘は、いずれも的を射ている面がある。

まず、ハリスはバイデン政権で移民政策の陣頭指揮を執っているが、政権の移民政策を支持する人は35%にすぎない。しかも、移民問題はハリス自身の看板政策でもあるので、支持率へのダメージがひときわ大きいとされる。また、コミュニケーション面にも確かに問題がある。つい最近のテレビインタビューでも救いようのない失言をした。今日のアメリカ社会のムードを「マレーズ(沈滞)」という言葉で表現したのだ。

トランプ前大統領はツイッターやFacebookなどから締め出されているが、米アップルが同社のiPhone用アプリストアである「App Store」から、トランプ氏の後押しするSNSアプリ「トゥルース・ソーシャル」を21日、ダウンロードできるようにした(https://www.cnn.co.jp/tech/35183845.html)。トランプ氏は次期大統領選挙への出馬・再戦を目指して活発な活動を行っている。トランプ師はケネディ大統領と同様、時には妥協することもあるが、米国のディープステートに与しない大統領だ。大統領時代に二度、米朝首脳会談を行い、米朝国交正常化目前のところでディープステートに妨害されたとの情報もある。

例えば、国際政治経済評論家で日本内外の政治・経済の裏を知り尽くしている植草一秀氏はメールマガジン第3105号「真実が封殺され国家は悲劇に陥る」で次のように記している。

北朝鮮の脅威について、キッシンジャー博士が明確な解を示していることを(東アジア共同体研究所所長の)孫崎(享)氏が紹介された。「核兵器と外交政策」と題する論文。小国が核保有国になったとき、核の暴発を防ぐ方法は次のもの。小国に対して武力による国家破壊を行わないこと、トップを暗殺しないことを確約すること。このことによって小国が核兵器を使用することは防がれる。これが北朝鮮との間の停戦協定、平和条約締結の道。

トランプ大統領はこれに意欲を示した。しかし、断念させられた。誰がトランプを止めたのか。米国を支配する支配者=ディープ・ステイトであろう。米国の軍産複合体の生命線は「紛争の種の死守」にある。世界平和の到来は軍産複合体の死を意味する。軍産複合体が生き延びるために、紛争の種、脅威が人為的に創出されている。そのために、膨大な国費が注がれているが、軍産複合体はこの国費によって生きながらえているのだ。

月並な言い方かもしれないが、国際情勢の裏で暗躍する真の支配層は米国のディープステート(軍産複合体)だ。日本ではディープステートの意に逆らう政権は潰されてきた。今回のウクライナ事案は、ディープステートの支配力の限界を超える出来事で、多極化時代の本格的な幕開けを意味する。日本でも米国と同様、ディープステートに与しない内閣が誕生しなければならない。日本が凋落したのは、①米国一極時代の弱肉強食新自由主義に侵されたこと②感染症利権ムラや原発利権ムラなど多数の私益追求のムラ社会の集合体に成り下がってしまったことーにある。

これを打破しなければ、日本の再生はない。その前哨戦として、全権委任状項にしかならない「緊急事態条項」を盛り込む憲法破壊行為を阻止するため、夏の参院選で自公と維新、国民民主党、立憲民主党右派に三分の二以上の議席数を与えないことだ。国民民主党がその本性をむき出しにし、2022年度(令和4年度)予算案に賛成したことは想定内だが、右傾化したとは言え、立憲民主党の国会議員全員が右傾化するべきではないし、当然のことだ。憲法破壊を阻止し、新しい時代の世界情勢に対応するためには、立憲民主党の内部で、連合に支配された執行部に反対する立憲民主党の議員勢力がれいわに合流するしかない。「れいわ共生党」を創設し、れいわ共生党、社民党で真性野党勢力を形成、参院選に打って出るべきだ。

なお、新しい酒は新しい革袋に入れなければならない。時代の方向を示す新たな思想・社会科学の出現が不可欠である。

オミクロン株に事実上の「棄民政策」、真正野党は感染症利権ムラの追及を

新型コロナ 第6波の死者4000人近くに なり、去年夏の第5波を上回った。春めいてきたため、季節要因から新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株への感染者は傾向的に減少してきているが、遅行指数である死亡者は重傷者数はまだ増加傾向だ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220222/k10013497211000.html)。

オミクロン株が広がった新型コロナウイルスの第6波で亡くなった人の数は、ことしに入ってから22日までに4000人近くとなり、デルタ株が広がった去年夏の第5波を上回っています。新型コロナウイルスに感染して亡くなったと発表された人の数は22日、全国で322人と初めて300人を超えて過去最多となるなど、多い状態が続いていて、ことしに入ってから感染の第6波で亡くなった人の数は、合わせて3950人と4000人近くとなっています。

特に、エアロゾル感染=空気感染が感染の主要ルートなのに、自宅療養を強要し、しかも軽症だった高齢者が突如悪化して、死亡するケースが後を絶たない。救急車を呼んでも受け入れる病院がないこともあって、要するに医療体制が崩壊している。また、PCR検査をしない方針のため、無症状感染者も少なからず存在すると想定され、公表データも当てにならない。厚生労働省医系技官とそのOBからなる「感染症利権ムラは」解体すべきだが、岸田文雄政権にはその意思も意欲もない。夏には第七波が来る可能性が高いが、参院選では真正野党側が国民の生命を無視した岸田政権を徹底攻撃し、参院選勝利のテコにすべきだ。


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