トランプ候補、ウクライナの分割による終戦案を準備かープーチン大統領が「もしトラ」と習近平国家主席を仲立ち(追記:金地金の上昇)

共和党のトランプ大統領候補が、ウクライナをカトリックの信徒が多い西部とロシア正教の信徒が多い東南部とに分割することで、ウクライナを終戦に持ち込むアイデアをぶち上げた。ウクライナのセレンスキー政権が最終的には勝つ=「民主主義体制」は勝利しなければならないという思い込みによるもの=と信じ込んできた米側陣営の諸国民にとっては、極めてショッキングな話だろう。しかし、ウクライナの人口4千万人のうち千万人前後は、わいろなども使って国外に逃亡しており、その一方では妊娠した女性が戦闘要員として駆り出されている。ネオコン傘下のシンクタンクである「戦争研究所」などから最近、時々いさましいウクライナ軍の話も出てくるが、ウクライナ戦争では、制空権を握られたゼレンスキー政権の敗北は避けられないことが確定している。ゼレンスキー大統領はトランプ発言で表向き反発していようが、裏では自らの政治生命が保たれれば(少くとも生命が助かれば)、トランプ候補の構想に内心は賛成するのではないか。

共和党トランプ大統領候補のウクライナ分割案ーウクライナ国民に最良の利益

バイデン政権を支持する米紙ワシントン・ポストがトランプ候補の支持を落とそうとして報じたものだが、日本ではへたな解説が入っていない共同通信社や時事通信社の転送報道で確認しておいたほうが良い。共同通信社は次のように述べている(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN073TU0X00C24A4000000/)。

【ワシントン=共同】米紙ワシントン・ポスト電子版は7日、ロシアのウクライナ侵攻を巡り、トランプ前米大統領がウクライナに南部クリミア半島や東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州)の国境地帯をロシアに割譲するよう圧力をかけることで終戦に持ち込めると周囲に語ったと報じた。関係筋の話としている。共和党のトランプ前大統領は11月の大統領選で返り咲けばロシアの侵攻を終わらせることができると豪語しているが、具体的な方法が報じられたのは初めて。外交専門家は実際に割譲すればロシアのプーチン大統領を利し、武力による領土侵犯を看過することになると懸念を示している。

トランプ前大統領は非公開の場で、ロシアとウクライナの双方が「メンツを保ちたいと考えており、解決策も求めている」と述べ、ウクライナの一部地域にいる市民はロシア領になってもかまわないと考えているとの見方を関係者に示したという。(中略)

トランプ前大統領は自身の終戦案の中身について公言していない。トランプ陣営の報道担当者は「トランプ氏の計画に関する臆測は、状況を把握していない匿名の情報源から来ている」として報道は不正確だとの声明を出した。

共同電の中で、「外交専門家は実際に割譲すればロシアのプーチン大統領を利し、武力による領土侵犯を看過することになると懸念を示している」とのくだりがあるが、1999年に起こった親ロシア国のセルビアからコソボが独立した際、北大西洋条約機構(NATO)が事実上、アライド・フォース作戦(注:NATOはユーゴスラビア軍や民間の標的に対して攻撃を加え、アルバニア人勢力はユーゴスラビア軍との戦闘を続け、コソボにおいて大規模な人口の流動が起こった)を使ってユーゴスラビアとセルビアを武力攻撃し、コソボを独立させた(国連には加盟していないが、外務省によると独立を認める諸国は2016年7月現在、国連加盟国のうち、113か国)。

コソボ紛争
セルビアの南端の赤い地域がコソボ

要するに、武力による領土割譲はロシアより先にNATOが行っていたのである。コソボ紛争でNATOが武力によってセルビアの領土を奪ったことを抜きにして、「実際に割譲すればロシアのプーチン大統領を利し、武力による領土侵犯を看過することになると懸念を示している」などという自称外交評論家は、その名に値しない。次に、時事通信の報道を見てみる(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024040800150&g=int

【ワシントン時事】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は7日、トランプ前大統領が今年11月の大統領選で勝利した場合、ウクライナに対してロシアに領土を割譲するよう圧力をかけ、戦争を終結させる計画だと報じた。事実であれば、トランプ氏が返り咲いた場合、ウクライナを支援してきたバイデン現政権から劇的に政策を転換することになる。

事実関係を淡々と伝えているが、通信社とは元来、そのような報道の仕方を行うべきであろう。共同電では、「トランプ陣営の報道担当者は『トランプ氏の計画に関する臆測は、状況を把握していない匿名の情報源から来ている』として報道は不正確だとの声明を出した」としている。しかし、共和党がわずかながら多数派を占める予算編成権のある下院では、ウクライナに対する軍事予算がトランプ氏の影響で決まらないことを考えると、報道担当者の説明を字句通りに受け取ることはできないだろう。

トランプ候補関係者がワシントン・ポストにリークすることによって、ウクライナ戦争を長引かせることだけに力点を置き、ウクライナ国民の現状の悲惨さや米国を中心とする米側陣営の軍事支援負担、コストプッシュ・インフレがまだまだ収まらないことなどを解決する意思のないバイデン候補との関係を米国の有権者に対して際立たせる狙いがあるのではないか。トランプ候補のウクライナ戦争終戦構想にある領土分割案は、①プーチン政権のノボロシア構想に配慮したもの②ゼレンスキー大統領の身分を保証する(大統領を解任などされても、政治的生命ないし生命は守る)ーなどを考慮したものだろう。

現在、NATOの枠組みとは別に、「ウクライナの国民を守る」という名目でポーランド軍がウクライナに進駐しているが、トランプ構想はウクライナのポーランドとロシアによる事実上の分割統治を認めるものになろう。ただし、ポーランドとしては「カチンの森」事件からロシアに対して強硬路線を取るとしても、ウクライナの主権を侵害すべきではない。トランプ候補は、「もしトラ(もしも、トランプ候補が2024年大統領選挙に勝ったら)」、「ほんトラ(本当に次期大統領になったら)」が実現すれば、ありもしなかった「ロシアゲート(注:トランプ米大統領の政権とロシア連邦の間に存在するとされる、非合法な協力関係への疑惑のこと。ロシアゲートへの繋がりが疑われる一連の出来事には、2016年の米大統領選中に起こった選挙妨害活動へのロシアの関与や、トランプ米大統領の息子とロシア人弁護士の面会などが挙げられているが、実際は、「米司法長官、トランプ氏が「ロシアと共謀した証拠ない」というもの、https://www.bbc.com/japanese/47689105))の反動として、プーチン大統領と手を組む公算が大きい。

なお、「もしトラ」の可能性について、4月4日付のジェトロ・リポートは、ウクライナ戦争のため沈静化しないコストプッシュ・インフレで米国民が経済苦に追い込まれているとして、勝敗を左右する激戦州(スウィング・ステート)7州でトランプ候補がリードしていると伝えている(https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/04/d74c3619c9f1db19.html)。激戦集でない州は民主党か共和党の地盤になっており、本選挙は総取りの制度になっているため。

米国の2024年大統領選挙に向けた予備選挙を経て、党代表候補者として有力となった民主党候補のジョー・バイデン大統領、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領両氏の激戦州(スイングステート)での世論調査から、トランプ氏が7州のうち6州でバイデン氏をリードしており、その背景には経済状況への不満や、バイデン氏の能力への疑念がみられることがわかった。

「もしトラ」の革命的性格を台無しにする中国を中心とした「黄禍論」

仮に「もしトラ」、「ほんトラ」が実現すれば、米側陣営だけでなく、非米側陣営も劇的に変わる可能性が高い。プーチン政権のラプロフ外相は今月8日から中国の習近平国家主席を訪問するが、プーチン大統領も訪問することにしている。バイデン政権によって拙稚な方法でのウクライナ支援を余儀なくされ、結果として危機にあえいでいる米側陣営(欧州諸国)に対して、非米側陣営の核になる露中関係を深めるためだが、これに伴って中国との関係悪化を危惧される米中関係の仲を取り持つのではないかと見られる。

トランプ候補と米国民のアキレス腱は、中国だ。中国は今や、①金融・資本・為替市場に支配されない購買力平価ペースで世界最大の国内総生産(GDP)大国である②現代戦の核となるドローンの世界最大の企業を持ちコンピューターの頭脳とも言えるCPU(中央演算処理装置)でもインテルやAMDに頼らない、恐らく台湾セミコンダクター有限公司(TSMC)と協力して、国産化を志向する(既に、AMDのRyzen第一世代と同等の性能を持つCPUを開発している)など、科学・技術大国である③「共同富裕」をスローガンに所得格差の是正と内需振興を目指している④中距離ミサイル削減交渉(INF)に加わらなかったことから、中長距離核ミサイルの技術が極めて高いなど、軍事大国でもあるーなどから、トランプ候補としても中国とは共存共栄の関係を構築し、それが米国にとってもメリットになることを伝えていく必要がある。

トランプ政権末期から、ニクソン大統領以来続いてきた中国への関与政策を廃止して、関税を無理矢理に引き上げるなど、中国に対する「関与政策」を根本から見直し、米国内に「黄禍論」を引き起こして国民に対して恐怖感を与えたが、中国経済の現状を見ると「黄禍論」だけではやって行けない。近代からの欧米文明が「基本的人権思想」を展開したことにかんがみ、米側陣営と非米側陣営という二分法を乗り越え、新しい文明圏を創造していく必要がある。そのひとつは、欧州諸国が、北大西洋条約機構(NATO)をゴルバチョフ大統領(当時)が提示した「欧州共通の家」に転換することを戦略目標とし、その具体化を推進していくことである。

また、東アジアにおいては、中国と国交を回復して対中貿易でGDPを増加させ(一人あたりのGDPでは日本を追い越している)韓国とロシアのミサイル技術など高度な軍事支援を受けている北朝鮮の南北統一である。余談だが、文春オンラインが伝えたところによると、4月の総選挙で与党は大敗する見込みだ(注:「4月10日の投開票日が迫る韓国の総選挙(国会議員選挙)。野党が300議席のうち200議席まで獲るのでは、そうなれば単独で改憲も可能になる――。そんな仰天予測も飛び出すほど与党の劣勢が伝えられている。野党が勝ち過ぎることを中間層が警戒することを牽制した野党代表だが、その表情からは余裕も窺える」、https://news.yahoo.co.jp/articles/8ce72c0dca80e48ee69f0ed1a7eb789dae6d550c)。

なお、韓国の一人あたりの女性の出生率は生涯で0.7人強だ。未来はない。そういうこともあり、南北統一には関連する韓国、北朝鮮、ロシア、中国、米国が協力し合う必要がある。近い将来はまさに、そういう戦後の歴史をひっくり返す事態が起こる可能性が大きい。いずれも、新たな文明の創造に行き着く。

しかし、そのためにも、限界に達したら正統アタナシウス派キリスト教(父・子・聖霊は三位一体であり、同じ存在であるという認識が中核になっている)の抜本的宗教改革が不可欠である。サイト管理者(筆者)は、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)に期待しているが、ほとんどの信徒の現状認識が「民主主義対共産主義」の冷戦構造の時代のままである。

加えて、安倍晋三が狙撃殺害され、バイデン政権の意を受けて清和会つぶしが図られているが、そもそも安倍元首相(故人)の死因は前方首元二つの銃創のうち、ひとつの銃創から入った弾丸が心臓に達して起きた出血多量である。その弾丸は行方不明である。後方に居た山上哲也被告から撃てる位置ではないから、真犯人は山上被告ではない。安倍狙撃殺害の真相・深層を救命せず、選挙で使った世界平和統一家庭連合が濡れ衣を着せられたままの状態を許しておくから、バイデン政権の意のままに動く岸田文雄首相・自民党総裁によって、静和会つぶしが行われている。自民党は宏池会も清和会もおかしい。「政治とカネ」の問題は、「企業・団体」からの献金の禁止を立法化することで完全に解決する。このままで行けば、日本の政界・経済界及び日本国民は激変する国際情勢に対応できないだろう。

1トロイオンス=2000ドルを力強く上放れする金価格

1トロイオンス当たりの金価格が昨年の9月ころから、従来までの2000ドル以内から2000ドルを上放れし、4月の上旬に2300ドルを突破、トランブ候補のウクライナ分割でウクライナ戦争を終わらせる構想がリークされた後は2350ドルを突破している。ウクライナ軍の敗北が広く知れ渡ることになってきたことや、イスラエル空軍がシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館(の別館)を、戦闘機からのミサイル発射で破壊するなど、国際情勢が異常な状態になりつつある中、トランプ候補のウクライナ分割終戦構想がリークされたことを反映している(https://gold.mmc.co.jp/market/g_data/)。

 

田中宇氏がまず、4月7日に発表した「イスラエル窮地の裏側(https://tanakanews.com/240407israel.htm、無料記事)」によると、「イランはどうだ。今にもイスラエルと戦争しそうな感じだぞ。しかし、たぶん両国が実際にやる戦争は今後も小競り合いの範囲を出ない。小競り合いでも戦争だと喧伝される。この喧伝は、石油ガスや穀物、金地金などの資源類の相場を高騰させる。そっちの方が目的だ。すでに世界的に、資源類の利権の大半は非米側が持っている。資源高騰は、米欧覇権の低下を加速する。米経済覇権(ドル)の仇敵である金地金は最近、頻繁に史上最高値を更新しており、これからも上昇傾向だ」と現状を捉えている。

イスラエルのネタニヤフ戦時政権は、南部のラファ地帯に追い込まれたガザ市民(難民)が飢餓に苦しもうと、エジプトに追い出して、「パレスチナ国家構想」を叩き潰す戦略に、変わりはないとのことだ。左派のバイデン政権には人道無視のイスラエルを批判する声が強まっているが、イスラエルの支援を受けなければ11月5日の大統領選挙に勝てないので、ジレンマに陥っている。

なお、トランプ候補は強烈なイスラエル支持者である。ガザ侵攻の目的が、ガザ市民(難民)をエジプトに追い出し、「パレスチナ国家構想」を破綻させることがイスラエルの目的であることくらい、知っているだろう。「イスラエルのネタニヤフ首相は、多くの避難者が身を寄せるガザ地区南部のラファへの地上作戦について、あくまでも実行する考えを重ねて強調しました」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240410/k10014417471000.html

田中氏はまた、最近の金地金価格の高等について、その傾向は今後も変わらないとも指摘している(「金地金の高騰」https://tanakanews.com/240409gold.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)。次はこの投稿記事のリード分だ。

金相場が延々と2000ドル以下に戻されることはもうない。上昇傾向が続く。今後、米金融界がドル防衛策としてまた金暴落を誘発するかもしれないが、それは起きても一時的なものになり、暴落前よりも高値に戻る。金相場は、長年の抑止から解放されたと考えられる。

投稿記事の本文で田中氏は、金地金の相場とともに金地金とドル、仮想通貨の今後を予測しているが、ドルと仮想通貨の将来性には懐疑的だ。

今、2000ドルの抵抗線が大きく突破され、続伸の事態に入っている観がある。金地金が、長年の抑止から解放されたと考えて良いのか??。抑止のちからが一時休止しているだけで、いずれ再開することはないのか。現時点の私の見立てでは、金相場が延々と2000ドル以下に戻されることはもうない。今後、米金融界がドル防衛策としてまた金暴落を誘発するかもしれないが、それは起きても一時的なものになり、再び上がって暴落前よりも高値に戻る。金相場は、長年の抑止から解放されたと考えられる。“Blistering Central Bank Buying” Fuels Strong Gold Demand)(中略)

民間仮想通貨と金地金とドル(債券)は、三つ巴の戦いのように見えるが、本質的な決闘は地金とドルの間で行われ、仮想通貨は地金をけなして攻撃する「当て馬」としてドルに使われている。ドルとの決闘で、地金は延々とやられてきたが(注:米側中央銀行の中央銀行である国際決済銀行=BIS=や米連邦準備銀行による金地金の先売りが主な手口。先物取引は売買に多額の資金を要する)、地金は金属としての価値の実体があり、やられて価値が下がってもゼロにならない(注:米国=とりあえず、バイデン政権=は、景気対策のための財政資金(注:要するにドル紙幣の増刷)を優先度の高い債券や株式の高騰を維持するために使わなければならないので、金地金の先売りが不可能な情勢に陥った)。対照的に、ドルや債券は「紙くず」になり得る。仮想通貨も、インターネットが世界的に長期にダウンしたら流通できず無意味(ローカルに保存された文字列)になる。「紙くず以下」だ。

ウクライナ戦争やパレスチナ危機など国際政治・軍事情勢の危機に加えて、米側陣営の株式や債券価格の急落ないし暴落と非米陣営側に圧倒的に多い資源・エネルギー価格の高騰といった打開が極めて困難な情勢に、これから入ることを覚悟し、先手を打たなければならない。従来の政策を墨守していては駄目なのである。米側陣営は本当の「革命政権」を必要としている。

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