合流新党140人超との観測、政権奪取には共生主義と財政・金融政策の抜本転換、連合の干渉排除不可欠

朝日デジタル2020年8月14日 21時14分の「合流新党、最低140人規模の見通し 焦点は上積みの幅」と題する投稿記事(朝日新聞15日付3面掲載)によると、立憲民主党と国民民主党の合流新党の規模は140人以上で、新党合流賛成性派はさらに上積みのための多多数派工作を展開しているという。単なる数合わせであってはならないことは当然で、①新自由主義に対置できる共生主義を理念とすることの明確化②財政主導・金融補完への財政金融政策の抜本転換③税制と歳出構造の抜本的改革④集団的自衛権を認めた安保法制の破棄など国家安全保障戦略の抜本的転換−などを掲げ、政権奪取に万全の備えをすることが肝要だ。併せて、安倍晋三政権を支える日本経団連の御用組合になっている日本労働組合総連合会(連合)の干渉を排除することが欠かせない。


◎追記:朝日デジタル、NHKのWebサイトなどによると15日の新型コロナウイルス新規確認者は午後15:00の時点で385人。推測陽性率は7.4%。47%が40代以上だが、感染経路不明者の割合は64%と上昇に弾みがついている。全国では午後21時00分現在、1232人。沖縄県は県民だけで48人。死亡者は7人、重症者は少なくとも8人増。

朝日デジタル、朝日新聞の記事によると、「中堅・若手を中心に早期合流を求める署名は続けられており、所属する衆参62人のうち半数が賛同。平野博文幹事長や泉健太政調会長ら署名に加わっていない執行部の合流支持派も加えると、少なくとも30人超の合流新党への参加が見込まれている。野田佳彦前首相や岡田克也元外相ら国会で立憲や国民と統一会派を組んできた無所属の約20人も、参加の方向。立憲の衆参89人を合わせ、新党は少なくとも140人規模になる見通しで、旧民進党が分裂する直前の勢力と並ぶ格好だ」という。

立憲民主党と国民民主党の合流の構図
立憲民主党と国民民主党の合流の構図(https://digital.asahi.com/articles/ASN8G6V91N8GUTFK004.html?iref=comtop_8_06より)

なお、「玉木氏は19日の分党提案に向けて、党執行部との調整を続けている。国民は旧民主党、旧民進党の資金を引き継いでおり、玉木氏はBSフジの番組で「50億円ぐらいある」と明かした。分党の場合は、こうした資金の取り扱いなども課題となる」。政党助成金=国民の血税であるから、分党議員数に応じて、公平に分配されなければならない。

国民民主党の馬渕澄夫衆院議院
国民民主党の馬渕澄夫衆院議院(https://mabuti.net/#!page4)

さて、国民ではれいわ新選組の山本太郎代表と関係の深い馬渕澄夫衆院議員(奈良県第一区)の去就が大きな焦点になる。馬渕氏は、れいわ新選組の山本太郎代表と「消費税減税研究会」で共同代表を務めており、東京都知事選で応援演説に入るなど山本代表と近い関係にあるからだ。また、立憲から6月16日に離党(立憲は議員辞職韓国)表明した格闘家出身の須藤元気参議院議員(比例区選出)も、消費税減税について消極的な立憲執行部に対して批判的で、山本候補の応援演説を行っており、参院議員で一年生議員ながら今後の動静が注目される。

確かに、国民に残る議員はひと桁台にとどまる可能性が高く、160人規模の衆参国会議員でスタートすることになるだろう。しかし、旧民主党を破壊した野田佳彦前首相(2009年総選挙の際には「マニフェストに書いてないことはしてはならない」と絶叫したが、小沢一郎衆院議院による大型新党結成を阻止するため、「税と社会保障の一体的改革」という偽の「大義名分」から消費税率の10%への引き上げを打ち出し、実質的に自公両党に政権を禅定した)や岡田克也元外相(辺野古基地建設を裏で画策)も新党に合流する見込みであるうえ、立憲の枝野幸男代表もその一人であった。例えば、枝野代表も新自由主義は否定しているが、消費税減税については態度が不明である。

2017年総選挙
2017年総選挙(ヤフーニュースより)

政党助成金を小沢派に渡さないため、野田政権は自公と結託して2012年12月16日に解散・総選挙を実施(実質的に政権禅定)、その結果樹立した安倍政権は、「自己責任論」という言葉で弱肉強食の新自由主義を覆い隠し、新自由主義に由来する緊縮財政(度重なる消費税増税強行)やリフレ政策(黒田バズーカ砲=効果のない量的金融緩和政策)、利権企業のための税制・歳出構造改革政策を行い、日本の経済社会を破壊させてきた。このことについて、合流新党所属議員が正しく認識しているかが問われる。

確かに、今回予想される合流新党の規模に、野党共闘に加わると見られる日本共産党、社民党の議席数を加えれば、衆参併せて衆参併せて180〜190人の国会議員が野党共闘に加わるだろう。また、これまで日本国民の生活と経済社会を破壊してきたことに加え、コロナ禍対策の失敗も加わり、自公勢力の議席数が減ることは確実だ。しかし、「確かな隠れ与党」の日本維新の会が存在する。①自民党が公明党と手を切り、日本維新の会と連携して辛うじて過半数を獲得、「敵基地攻撃体制」を打ち出して閣議決定、強行採決により日本国憲法違反の「国家安全保障体制」を確立する②公明党が自民党に完全に屈服し、これに日本維新の会が閣外協力する③自公に加えて日本維新の会も連立与党に加わり、多数派を構成する−などのケースも考えられる。

参考までに、ヤフー・ニュースは2020年8月5日午前07時05分に、「10・25解散総選挙『完全当落予測』 51選挙区で与野党逆転」と題して週刊ポスト2020年8月14・21日号の総選挙予測記事(政治ジャーナリスト・野上忠興氏の協力を得て分析)を配信している。結果は、①投票率が60%に上昇する②立憲と国民が少なくとも選挙協力はする③自公両党が消費税率5%への引き下げを打ち出す(シングル・イッシュー選挙にして全権を国民から委任する)−などの前提で、「『中間値』では自公政権はギリギリ過半数(240議席)だが、『大敗ケース』では過半数割れ(216議席)、一方、『巻き返しケース』では自公で264議席と安定多数を維持する可能性がある。分水嶺に立って民意がどちらに流れるのか」ということだ。具体的な獲得予想議席数は次の通り。

10・25総選挙の獲得議席数
10・25総選挙の獲得議席数(https://www.news-postseven.com/archives/20200805_1583281.html?IMAGE&PAGE=2より)

これは、合流新党結成前の予測であり、合流新党が結成されることを前提にしたものではない。ただし、合流新党の結成は視野に入ってきているから、改めて選挙予測記事を報道することになるだろう。ただし、立憲、国民の選挙協力は前提になっているから、獲得議席予測の参考にはなるだろう。日本維新の会の獲得議席数が、安倍政権(健康不安説が取り沙汰されているから、総理・総裁が変わっている可能性もある)から野党側が政権奪取を実現できるか否かにかかっている。

やはり、野党側が政治理念と政策で大同団結できるかどうかに、総選挙の結果は依存していると見て良い。その際、消費税率5%の引き下げは自公も打ち出すとの観測が広まっているから、野党側もより高度な消費税減税(企業の消費税の代理納税免除=事実上の消費税率0%への引き下げ)を打ち出さなければ話にならなくなる。枝野代表も観念したらどうか。また、自民党内にも安藤裕衆院議院(京都6区、自民党総務会長代理・、日本の未来を考える勉強会を議員連盟会長)や西田昌司参院議員(京都府選挙区、自民党政調会長代行・日本の未来を考える勉強会会長)ら現代貨幣理論(MMT)に基づく積極財政を訴える議員ら100人が存在している。このため、コロナ禍対策もあり従来の積極財政とは異なる「新積極財政」を打ち出してくる可能性も少しはある。

こう見てくると、単なる数合わせの合流新党結成では野党側に勝ち目はないだろう。万一、政権奪取が出来たとしても、政策をめぐって実質的に再び分裂する。やはり、①新自由主義に対置できる共生主義を理念とすることの明確化②財政主導・金融施策補完への財政金融政策の抜本転換③税制と歳出構造の抜本的改革④集団的自衛権を認めた安保法制の破棄など国家安全保障戦略の抜本的転換−などを掲げ、政権奪取に万全の備えをすることが肝要だ。もちろん、本来は小新型コロナウイルス感染の第二波が襲来してきている以上、解散・総選挙はするべきではない。しかし、年内解散を行わなければ、来春には東京都議会議員の選挙があり、公明党はこの時期の解散・総選挙には反対だから(公明党の支持基盤である創価学会会員を基礎表として確保できなければ、自民党は小選挙区で勝てない)、安倍政権は追い込まれ解散になる。オリンピックの来夏開催も絶望的だから、安倍政治の実績ゼロという状態になり、これは何としても避けたいだろう。

また、枝野代表はれいわ新選組との共闘体制を打ち出すべきだ。今回の合流新党結成の立役者は小沢一郎衆院議員である。小沢氏は自由党時代に山本代表を共同代表にしたから、仲立ちをすべきだろう。れいわ新選組は中西恒樹元構成員の「政治による生命の選別」発言への対応が遅れたことで支持率が急落しているが、日本の戦後政治の総決算を目指している「確かな野党」である。東京都知事選への出馬の記者会見では、立憲側が山本代表への統一候補としての出馬を打診してきたが、①消費税減税率5%への引き下げさえ、拒否してきた②来夏の東京都議選へのれいわ新選組からの出馬を拒否した③れいわ新選組の調査では、宇都宮健児候補と一本化しても勝ち目はなかった④宇都宮候補とは財政政策が根本的に異なった−から独自に立候補したという経緯がある。

都知事選後に山本代表は、①党規約改正の準備②第二波コロナ禍による都内の企業の苦境の実地調査③近い将来の都民を中心とした国民とのゲリラ的対話の準備−を行っていた。盆を過ぎて秋風が吹き始めると、また活動を再開するだろう。れいわ新選組は野党としては唯一、現代貨幣経済論(MMT)を背景にした「異次元の財政政策」を打ち出している。ただし、コロナ禍第一、第二波で供給力に問題が生じてきていることを踏まえる必要がある。MMTの機能的財政論は、積極財政の目安としてインフレ率を挙げている。山本代表はコロナ禍以前の経済モデルを前提に「異次元財政出動」を訴えているから、修正が必要だ。

また、経済だけではなく対米従属の外交政策の抜本転換も主張している。山本太郎代表率いるれいわ新選組を野党共闘に引き入れるだけの度量がなければ、合流新党も「無党派層」という名の政治不信層・無関心層の支持を得ることはできず、投票率の上昇(日本維新の会の東征を考慮売れば、65%以上への引き上げが必要だと感じる)は期待できない。

併せて、安倍晋三政権を支える日本経団連ての御用組合になっている日本労働組合総連合会(連合)の干渉を排除することが欠かせない。連合の主力労組は時代遅れの原発(コストが高く、安全性には重大な欠陥があるというのが世界の常識。既に、東京電力や東芝はゾンビ企業であり、日立、三菱両グループも政府=安倍政権の原発プラント輸出政策が総崩れになっており、経営状況が苦しい)に固執する電力総連、消費税の大規模還付を受けられる輸出大企業の組合である自動車総連や電機連合だ。だから、原発再稼働や消費税増税には喜んで賛成する。連合と決別するか、勤労者の権利を守るまともな労働組合に変えるくらいの力がなければ、合流新党の前途は厳しい。





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