英国第2・四半期実質経済率は前期比年率59.9%減と衝撃、集団免疫挫折とロックダウン−検査拡大に全力
The Prime Minister Boris Johnson Portrait

英政府統計局(ONS)が12日午後15時(日本時間13日午前零時)ころ発表した今年第2・四半期の実質国内総生産(GDP)は前期比20.4%減少、年率換算では59.9%減と衝撃の数字になった。前年同月比でも21.7%減少。英国は当初、集団免疫獲得路線で言わば「ほったらかし」にしておいたが、感染者、犠牲者が多くなりすぎて集団免疫獲得路線を転換、ロックダウン(都市封鎖)を行うというコロナ禍対策の大転換を行った。そのせいである。ただし、ロックダウン後は、国民の生活保障(十分な生活支援金給付)とPCR検査を大規模に行い、安定を取り戻してきたようである。やはり、まずは徹底的にPCR検査、抗原検査、抗体検査などの重要な検査を適切かつ大規模に行うことが肝腎だ。

◎追記:朝日デジタルの報道によると14日の新型コロナウイルス感染確認者は、東京都が9日以来の300人台の389人となった。11日のPCR検人査(6315人)の花亭結果が反映されているとしているから、瞬間陽性率は6.1%。「感染経路がわからない人の割合は、13日までの1週間(注:7日移動平均と思われる)で64・4%と上昇傾向にある」という。市中感染が急激に増加しており、行政検査の濃厚接触者を追跡する「クラスター対策」ではもはや手に追えない段階になっている。全国では午後20時30分の時点で1358人、沖縄県は県民だけで106人。

同じく集団免疫獲得路線を取り続けているスウエーデンと比べてみる。ロイター通信によると、「スウェーデン統計局が5日に発表した第2・四半期国内総生産(GDP)速報値は前期比8.6%減少し、過去最大の落ち込みとなった。前年比では8.2%減」になった。前期比年率換算では30.2%減である。英国とスウエーデンの実質経済成長率を比較して、現代貨幣経済論(MMT)の日本の第一人者である京都大学教授の藤井聡教授は「集団免疫獲得路線」が正しかったと言わんばかりの見解を語っている(https://www.youtube.com/watch?v=NsbeV0Ih6mc)が、日本でのMMTの権威だけに残念だ。

確かに、実質GDPの前期比落ち込みは幅は英国の方がはるかに大きい。しかし、ジョンズ・ホプキンス大学が公開しているサイトhttps://www.worldometers.info/coronavirus/に(日本時間14日7時41分時点)よると、人口は英国の6792万7863人に対して、スウエーデンは東京都より少ない1010万6627人。この人口規模での前期比8.6%減少、年率換算では30.2%減少というのはかなり深刻な経済状況に陥っていることを示す数字ではないか。東京都の都内GDPがこれほど落ち込んだら、小池百合子都知事はコロナ禍対策の責任を追及されてしかるべきだ。

さて、下に英国とスエーデンのコロナ禍関連の指標を比較してみる。人口100万人当たりの比較である。

国名 PCR検査数 感染者数 死亡者数 感染率 死亡率
英国 27万7774人 4620人 609人 1.6% 13.2%
スウエーデン 9万0736人 8297人 572人 9.1% 6.9%
日本 8584人 405人 8人 4.7% 1.98%

これを比較してみると、感染率は英国の方がはるかに低い。感染率が低いことから、感染防止対策が功を奏していると考えられる。死亡率は英国がスウエーデンの2倍あるが、最初の「集団免疫獲得路線」が失敗した結果と思われる。死亡者は少し英国の方が多いが、スウエーデンの方が感染率が高く、高齢者が多いため、死亡者数も今後増えると思われる。なお、スウエーデンは高齢者の延命帳はしない方針とも伝えられている。また、スウエーデンが「集団免疫」を獲得したということは現代医学・感染症学・遺伝子工学的に不明で、世界の共通認識にはなっていない。スウエーデンは北欧諸国に比べて死亡者が多すぎて、他の北欧諸国からの出入国を制限が厳しい。新型コロナの感染源は、無症状だが感染している若者だからだ。このため、PCR検査などの検査はそれなりに行っている。

さて、これに比較すると日本は圧倒的にPCR検査が少ない。これは、医療法に基づく医療措置の一環として検査が行われているのではなく、感染症法15条に基づく「行政検査」として、診療行為ではなく、強制隔離のための措置として行われているからだ。本サイトでは何度も指摘しているが、デモクラシータイムスの番組(https://www.youtube.com/watch?v=52vgbjDDPBQ)からキャプチャした図を下記に示しておく。にもかかわらず、感染率は英国よりもはるかに高い。市中感染が広まっていなければ、過検査人数に占める陽性判定者(感染率ないし陽性率)は低下するはずだが、むしろ、次第に上昇している。死亡率も安心できる状態にはない。



民間検査会社のPCR検査は保健所の委託を受けたもので、行政検査であることに変わりはない。通常の医療法に基づいて医療保険による飲料行為の一環としてPCR検査などの主要な検査を享けることができるようにするべきだ。そのためには、通常の医療機関への大規模な財政支援措置が不可欠である。

朝日デジタルが2020年8月14日午前5時00分に投稿し、朝日新聞14日付1面で報道した「8月死者(既に)7月を上回る」の記事によると、「国内で新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の数が8月に入って増えている。公表された死者は13日午後9時までで64人に上り、すでに7月の39人を大きく上回る。(中略)感染者数は『第1波』を大幅に上回る。7月は1万7千人を超え、4月の1・5倍近くに達した。(中略)厚生労働省によると、全国の重症者も13日時点で203人と1カ月前の6倍となった。また新型コロナでは、症状が急速に悪化するケースがある(遺伝子工学の専門家である児玉龍彦東大名誉教授によると首都圏型に変異したRNAの新型ウイルスの感染が拡大しているが、厚労省と国立感染研究所はこのことを公表していないという)。自治体資料などによると、7月1日~8月12日に公表された死者92人のうち、少なくとも15人(16%)は、死亡後に感染が確認された」という状況だ。

新型コロナ第二波の状況
新型コロナ第二波の状況(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14586513.html?iref=pc_ss_dateより)

藤井教授は、コロナ感染心配は要らないという主張のように拝聴できるが、いつも疑問に思う。MMTの日本での第一人者であるだけに、サイト管理者(筆者)としては残念だ。さて、日本経済研究センターが8月13日に民間エコノミストの第2・四半期の改定予測値の平均を公表した(https://www.jcer.or.jp/esp-forecast-top)。それによると、4~6月期GDPは平均で前期比年率マイナス26.59%に下方修正―20年度はマイナス5.75%成長との予測だ。内閣府は8月17日午前8時50分に第一次速報値を公開するが、あまり意味はないが、総選挙で有利にするため統計情報の捜査により民間予測よりは減少幅が高いか、小さい数値を出してくるかも知れない。

英国のボリス・ジョンソン首相(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3より)

もはや、政府=安倍晋三政権の弱肉強食の新自由主義政策の破綻は、コロナ禍で一層、明確になった。英国の保守党党首であるボリス・ジョンソン首相は自らが新型コロナウイルスに感染し、集中治療室での治療を余儀なくされたことから、マーがレート・サッチャー保守党党首・首相(当時)が始めた新自由主義を明確に否定している。安倍首相には、体調不良も伝えられるが、その気はさらさらない。新自由主義という言葉さえ知らないのではないか。記者会見の際に、プロンプターに映し出された「云々(うんぬん)」を「でんでん」と平気で読むくらいだから。

野党は理念と供給力の低下を防止する措置を講じたうえで、①大規模なPCR検査を柱とした抜本的コロナ禍対策②「異次元の積極財政」の展開③歳出構造の抜本改革④正しい構造政策⑤コロナ禍不況による雇用者対策−で大同団結しなければならない。投票率を最低でも65%に引き上げることができなければ、勝ち目はない。なお、消費税率の5%への引き下げは自民党も打ち出すようだから、それだけでは解散・総選挙の争点にはならない。①5%への引き下げとともに、下請け企業の代理納税の免除(既に納税している場合は還付)②消費税率の0%への引き下げ−など、さらに踏み込んだ対策を打ち出さなければならない。





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