学術会議会員任命拒否問題で内閣法制局を持ち出すなど詭弁を続ける菅首相ーウィザウトコロナへ転換必要(修正)

日本学術会議会員任命拒否事案で、菅義偉首相の詭弁・虚偽答弁が続いている。衆院本会議で、①日本学術会議法には首相に任命権があり、同法に基づいて6人の任命を拒否したのは違法ではないと強弁している。加えて、日本学術会議の会員構成には偏りがあるーとした。しかし、それは「当てはまらない(間違っている)」。コロナ禍については、感染拡大と経済活動停滞の悪循環をもたらす「ウィズ・コロナ」の幻想を捨て去り、充実した休業補償体制を確立したうえで、大規模な抗体、PCR検査を集中的に行う体制を整え、無症状感染者の早期発見・保護・隔離・治療を行うことを最優先させる「ウィザウト・コロナ」への対策の抜本転換が必要だ。

10月30日コロナ感染状況

10月30日金曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では1周間前の23日金曜日の186人より18人多い204人(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)、死亡者は2人確認知れた。東京都基準の重症者数は前日比2人増加し、31人になった。東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は166.4人、PCR検査人数は4082.3.6人だから、陽性率は4.08%。東京都独自の計算方式では3.5%。感染経路不明率は52.94%。全国では午後23時59分時点で776人の感染者と8人の死亡者が確認されている。各都道府県の中で、大阪市を解体して、基礎自治体として機能するか不安視される4特別区に代替設置することの可否を問う大阪府では7日から4日連続で新規感染者が100人を超え、137人の感染者と1人の死亡者が確認された。
東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)のデータは31日午前10時の時点で公表されておりません。

10月30日金曜日の東京での新型コロナ感染者数
10月30日金曜日の東京での新型コロナ感染者数

朝日新聞10月30日付け3面(朝日デジタルhttps://digital.asahi.com/articles/DA3S14677028.html?iref=pc_ss_date)掲載の記事によると欧州では冬に差しかかり、新型コロナの第2波が襲来しているが、フランスでは現地時間10月30日から全土で外出禁止令(都市封鎖、ロックダウン)を開始した。その他の国々でも、英国では11月2日から9日までの8日間のロックダウンに踏み切ることにしているほか、夜間の外出禁止、飲食店や映画館、演劇場の閉鎖実施を余儀なくされている。米国でも感染者数が急増しており、反動で今年第3・四半期の実質国内総生産(GDP)が前期比年率換算で33.1%増加したが、コロナ禍以前の成長軌道には戻っていない。11月3日投開票の大統領選がもつれ込んだ場合やコロナ禍が拡大すれば今後、経済を回復起動に乗せることが困難になると見られる。
日本など東・東南アジア地域では、①コロナ型のウイスルに対する交差免疫がヒトの体内に産生されている②マスクをつけ、下履きでは家に上がらないなど欧米諸国との生活習慣が異なっているーことから、爆発的感染には至っていない。併せて、対症療法がかなり確立してきたことから現在のところ、感染者数・重症者数・死亡者数が底打ちから微増に転じてきた状況だ。ただし、①PCR検査体制が充実してきたとは言え、人口当たりでの1日のPCR検査数が世界各国ランキングで152位程度に位置しており、先進国としては恥ずかしいほど、少なすぎる②冬に予想されている感染拡大がどうなるか予想がつかないーなどの問題を抱えている。
まずは、感染拡大と経済活動停滞の悪循環をもたらす「ウィズ・コロナ」の幻想を捨て去り、充実した休業補償体制を確立したうえで、大規模な抗体、PCR検査を集中的に行う体制を整え、無症状感染者の早期発見・保護・隔離・治療を行うことを最優先させる「ウィザウト・コロナ」へのコロナ禍対策の抜本転換が必要だろう。

本題に入る。まず第一に、9月29日金曜日の衆院本会議で日本共産党の志位和夫委員長が代表質問を行い、最初に日本学術会議任命拒否問題を取り上げた。志位委員長は、日本学術会議(以下、会議)が推薦した会員推薦者の「任命を拒否したことは、(会議の)独立性・自律性を定めた日本学術会議法(以下、日学法違反)違反だ。憲法第23条で保障されている学問の自由も侵害する。任命拒否の撤回を強く求める」と質した。

日本共産党の志位和夫委員長の代表質問に対して回答する菅義偉首相
日本共産党の志位和夫委員長の代表質問に対して回答する菅義偉首相

これに対して菅首相は、憲法第15条(第1項で「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」)を持ち出し、「必ずしも学術会議法の推薦通りに任命しなければならないわけではない。内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考え方であり、日本学術会議法(以下、日学法)に沿って(首相自身)が(任命を)行った」と答弁、日学法は首相が(実質的に)会員を任命することになっていると断言した。

しかし、憲法第15条をもとにして、これまでの政府が一貫して会議会員の実質的な任命権を認めてきたわけではない。1983年に会員の選出方法を公選性から推薦制に基づく任命制に変更する法改正を行った際にも、当時の中曽根康弘首相ら政府側は、第7条第2項「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」の任命規定は、内閣総理大臣の任命が形式的なものであることを繰り返し主張している。

憲法第6条の「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」、同2項の「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する」に規定しているような天皇の任命権、憲法第79条「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する」での内閣の任命権のようなものだ。

第17条はしばしば述べているように、「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者の うちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦する ものとする」というもの。優れた研究又は業績がある科学者」だけが推薦基準であり、会議の推薦者は全員、内閣総理大臣が会員に任命しなければならない。

なお、日学法第17条にある内閣府令は日学法施行令という政令であり、会員、構成員の任期、構成員の再任、会員として不適切な行為がある場合の会員の退職規定などを定めている。次のサイトの最後に記述がある(http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/sokai/siryo168-6.pdf)。また、2004年に次期会員の推薦方式が各種学会から会議の会員に変更する法改正が行われたが、その時にも立憲民主党の小西洋之参院議員が入手した、2004年1月16日を作成日とする総務省の内部文書で「日本学術会議から推薦された会員の候補者につき、首相が任命を拒否することは想定されていない」と記されていた。このことは、

で指摘した通りだ。本事案についての小西参院議員のツイートは、https://twitter.com/konishihiroyuki/status/1311916696974761985であり、全体と想定問答集の核心部分を下図に示しておきます。

立憲民主党の小西洋之参議院が発見した日本学呪法に定める任命権が形式的任命権であることを明確にした想定問答集
立憲民主党の小西洋之参議院が発見した日本学呪法に定める任命権が形式的任命権であることを明確にした想定問答集

この想定問答集には、「推薦人の推薦に基づいて会員を任命することとなっており、この任命は、形式的任命である」とはっきり記載されている。

中央合同庁舎第4号間
中央合同庁舎第4号間

こうした想定問答集は、政府答弁の根幹にかかわるものであるから当然、内閣法制局も関与している公算が大きい。また、関与していて当然だし、していなければおかしい。Wikipediaによるが、「内閣法制局は、内閣の下で法案や法制についての審査・調査等を行う機関であり、その長は、内閣が任命する内閣法制局長官である(内閣法制局設置法 第2条)。また内閣法に言うところの主任の大臣は、内閣総理大臣である。内閣(政府)が国会に提出する新規法案を、閣議決定に先立って現行法の見地から問題がないかを審査することから、俗に『(行政府における)法の番人』といわれる。第二次世界大戦後に司法省と統合されて法務庁(後に法務府)となるが、法制局設置法(昭和27年法律第252号)に基づき、1952年8月に内閣に法制局が設置され、ほぼ現在の姿となる。その後、総理府設置法等の一部を改正する法律(昭和37年法律第77号)により1962年7月に法制局設置法は内閣法制局設置法に改題され、法制局は内閣法制局と改称された」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80)としている。

 

しかし、この内閣法制局は第二次安倍晋三政権になってから、「行政府における法の番人」ではなくなった。内閣の支配下に置かれるようになつたからだ。2013年8月8日、安倍内閣は小松一郎駐フランス大使を内閣法制局長官に任命する人事を発令した。政府は従来、集団的自衛権の行使は憲法に反すると解釈しており、内閣法制局はこの憲法解釈(現状維持)の中心となってきた。そのため、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更に積極的とされる小松氏を長官に任命して、内閣法制局の人事刷新と憲法解釈変更への地ならしを図った。小松氏は、第1次安倍内閣のときには外務省国際法局長を務めており、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の事務方として実務に携わっていたという経歴の持ち主である(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%92%8C%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%B3%95%E5%88%B6#%E5%AE%89%E4%BF%9D%E6%B3%95%E5%88%B6%E6%87%87%E3%81%AE%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E3%81%A8%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E9%95%B7%E5%AE%98%E4%BA%BA%E4%BA%8B)。

この内閣法制局長官人事を起点に、それまでの内閣法制局が日本国憲法に基づいて認めなかった「集団的自衛権」を認める動きが活発になり2015年9月17日、日本の集団的自衛権を明確に容認する「新安保法制(6つの法律の一括改正=改悪)」が、安保委員会での野党側の追及もむなしく強行可決され、衆参両院本会議で可決されて、国会で法律として成立することになった。この前から、自公与党が進める対米隷属の「安全保障政策構想」にとって邪魔な日本学術会議にも目をつけることになったようだ。

臨時国会での首首相答弁は、2018年11月13日に同会議事務局が作成したという、作成の経緯が不明な、「日本学術会議第17法による推薦と内閣総理大臣による会員の任命との関係について」という「怪文書」の内容の域を基にしており。そのままの説明と言っても良い。この怪文書の作成にも、菅政権を忖度している内閣法制局が関与している可能性が高い。

しかし、従来の法解釈(日学法の解釈)を変更するということになれば、公務員は一般公務員と特別公務員にかかわらず、憲法第15条1項によって国民が任命・姫意見を持っているのであるから、国民を代表する国会議員で構成する国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会に報告し、徹底的な審議をしなければならないはずだ。しかし、安倍内閣が国会に報告・審議した形跡はない、これは、憲法第15条を全く無視している。憲法第99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」違反にもなる。国権の最高機関であり、唯一の立法府である国会を冒涜するものだ(追記:10月31日午後19時30分)。今ころになって怪文書を持ち出してくるのは、菅首相側が、うしろめたいことを感じているからに他ならない。

日本学術会議の新会員に推薦されながら任命されなかった候補者6人の人文・社会科学社
日本学術会議の新会員に推薦されながら任命されなかった候補者6人の人文・社会科学社

もっとも、怪文書での法解釈の変更は不可能だろう。論態自体に矛盾がある。日本学術会議会員を特別公務員として扱っていない。怪文書ではまた、憲法15条の第1項、2項(「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」)に違反して、内閣に都合の良い人物が会議の会員に任命される公算が大きいことも明らかだ。なお、「安保法制」成立時に、内閣法制局が「行政府の番人」には最早なっていないことは周知の情勢だが、与野党間で徹底的に国会審議していれば、正野党としては国民に対しても学問の自由(①人文・社会・自然科学者などによる自由な研究活動と研究成果の公表②教育とともに研究を行う大学や研究機関・組織の自律性・自治制の徹底的な保障)を否定し、最終的には基本的人権を破壊する可能性が極めて強いものであることを国会での論戦を通じて国民に周知徹底することになり、主権者国民が重大事案視することにもなるからだ。

今回の志位委員長の正面切っての質問に対して、菅首相は内閣法制局を盾に取らざるを得なかったが、一般公務員、特別公務員(検察官や日本学術会議会員など)には、任命・罷免を含む個別の法律がある。検察官の場合は検察庁法、会議の場合は日学法がある。内閣は、主権者国民とその代表である国会議員、国会議員で構成する国権の最高機関である国会が定めた法律と従来からの法解釈通りに法を執行する義務がある。内閣法制局の官僚・職員は所詮、公僕である公務員であって、かつ公務員は憲法第15条2項によって「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定められているから、全有権者の25%の支持しか得ていない安倍・菅政権の意向を忖度して、こけのての政府解釈からは真逆の解釈変更を行うことなど、できないはずだ。

安倍政権は、国民の財産を不当に廉売するなど不祥事だらけの安倍政権を守ってくれる黒川公務東京高検検事長(いずれも当時)の定年(検事総長以外は63歳)を延長する閣議決定を行い、検察庁法改正案を数の力で改悪しようとしたが、天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず)の教え通りに、黒川検事長の賭博麻雀が発覚して、同検事長は退職に追い込まれ、検察庁改革法案も見送りになった。数の横暴は民主主義なのではなく、「少数意見も尊重する」というのが、民主主義制度の維持には不可欠なのだ。

菅首相がいくら内閣の法制局の了解を得たといっても、国会の審議を得ずに日学法の解釈を勝手に変えても、実質的な会議会員の任命権を得ることはできない。今回の会議会員の6人の任命拒否は明らかに日学法違反、憲法違反である。

あの、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)党首のアドルフ・ヒトラーでさえ、ワイマール憲法に拘束されない無制限の立法権を與える「全権委任法」を議会で制定させている。主権者国民としては、今回の会議会員任命拒否事案は、それを上回る事案だと理解せざるを得ない。これも繰り返しになるが、菅首相の側近として、警察畑出身の杉田和博官房副長官(会議が推薦した105人の名簿を見て、任命できない候補者がいると首相に事前に報告したことが知られている=朝日デジタルhttps://digital.asahi.com/articles/DA3S14674279.html?iref=pc_ss_date=)をトップとして、北村滋国家安全保障局長、中村格警察庁次長が存在する。これらの「秘密警察トリオ」が首相官邸にIT技術を駆使した実質的な秘密警察を組織化していると推察されても仕方がない。

長くなりましたが、今回の菅首相の代表質問での答弁の第ニの問題点は、志位委員長に対して任命拒否の表向きの理由として、「民間出身者や若手が極端に少なく、出身や大学にも大きな隔たりが見られることも踏まえ、多様性が大事だということを念頭に(任命を)判断した」と答弁していることである。これは、会議の努力を無視する虚偽答弁でしかない。10月9日のグループ・インタビューで105人の名簿は見ていないと明言したのに何故、会員の構成(出身大学、年齢、男女の構成比など)に偏りがあることか分かるか疑問だが、それはさておき、会議の多様性に向けて会議側が努力を行っていることは確かだ。東京新聞10月30日付、しんぶん赤旗29日付の調べを下図に引用させて頂きたい。

日本学術会議の多様性に関する東京新聞の調べ
日本学術会議の多様性に関する東京新聞の調べ
日本学術会議の多様性に関する日本共産党の調べ
日本学術会議の多様性に関する日本共産党の調べ

これを見ても、会議側が会議の構成員の多様化に向けて、相当な努力をしていることが分かる。相変わらず家業としての政治屋を受け継いだ自民党の世襲党員構成よりも、会議の方が多様化に努力しているのではないか。余談だが、衆参両院の代表質問では、首相答弁としては官僚作成の文書を読み上げるだけだ。しかし、28日には6か所読み間違い、朝日新聞10月30日付4面では新型コロナ対策、経済再生が最優先だと解散・総選挙の先送りを匂わしたが(信用してはいけないが、「時間の制約がある」と答弁しているから、なおさらだ)その後、「政権への期待はそこある」と読むべきところ、「政権への期待はそこそこある」と読み間違えた。読み待ち違えたほうの内容が真実に近いが、官房長官時代は「それは当てはまらない」「問題はない」を連発するだけだった菅首相の答弁能力は、自民党内でも懸念されている。



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