カマラ・ハリス氏が大統領選挙の民主党正式候補になってから、賭け市場(Polymaket)では当初、ハリス氏当選予想者の割合がトランプ氏返り咲き予想の割合を4.5ポイント程度上回っていた。しかし、最近では2ポイント程度とその差は大局的に見て縮小傾向にあるようだ。ご祝儀相場が剥落してきたこともあるが、米国(注:大統領選挙も含む)を支配しているディープ・ステート(深奥国家)の「隠れ多極派」が、トランプ氏の返り咲きを支持し始めたことが影響しているようだ。
米国単独覇権主義のディープ・ステートを撲滅すると公言する民主主義再建のトランプ氏
まずは、日本時間で9月26日午後16時ころのPolymaket(https://polymarket.com/event/presidential-election-winner-2024、https://polymarket.com/elections)の状況を見てみる。
カマラ氏の当選を予測する賭け参加者の割合とトランプ氏の返り咲きを予測する参加者の割合は、当初は4.5ポイントほどあったが、最近では2ポイントに縮小している。また、ハリス氏当選を予測する参加者の割合は前回公表時に比べて、0.2ポイント低下している。激戦州予測に目を移すと、大統領選の勝敗を決すると言われるペンシルバニア州での差も、これまでハリス氏の勝利を予測する割合は52%ほどだったが、最近ではハリス氏51%、トランプ氏49%とトランプ氏勝利の予測が少し追い上げている。
ハリス氏が民主党の正式大統領候補に選出された際は、トランプ氏を追い越してハリス氏が優位に立った。しかし、最近ではハリス氏の当選を予測する参加者の割合は頭打ち傾向になっている。これはひとつには、米国で圧倒的多数を占めるリベラル左派メディアが、ハリス氏が良く言って大統領としての資質がない、悪く言えば無能であるのに、「世論調査」と称して、ハリス氏を異常に持ち上げたことがある。
しかし、米国がディープ・ステート(深奥国家)によって支配されていることは、米側陣営のメディアを軽信しない国際情勢専門家の間では、既に常識になっている。米国の大統領は一見、米国民が選ぶように見えるが、国際情勢解説者の田中宇氏も指摘するように(「ウクライナ停戦機運の強まり」、https://tanakanews.com/240924ukrain.htm、無料記事)、「米大統領選の勝敗を決めるのは欧州人やロシア人でなく、米国民だ。しかし、それも建前だ。米民主党は、諜報界の協力を得て、2020年と2022年中間選挙で郵送投票制度や開票作業を使った大規模な選挙不正をやり、完全犯罪として成功している」。2020年の大統領選挙では、「コロナ禍」を悪用して郵便投票と左派民主党が操作して、悪用できるいわくつきの投票機を使って大規模な不正投開票を行い、バイデン氏を大統領にした。
結果として、米国はバイデン大統領が正式に大統領に就任した2021年からバイデン大統領・ハリス副大統領政権が「温室効果ガス」を名目に、国有地でのフラッキング法によるシェールオイル、シェール・ガスの(注:頁岩=けつがん=という、泥が固まった岩石のうち、薄片状に剥がれ易い性質を持つ岩石で、天然ガスや石油を抽出できる。その方法として、フラッキング法==水圧破砕法=がある)生産を禁止した。
このため、石油・天然ガスの供給不足からコストプッシュ・インフレが起こり、これに加えて、ぜレンスキー大統領をけしかけて、ロシアによる「特別軍事作戦」を誘導し、ウクライナ戦争を引き起こした。そして、資源・エネルギー大国であるロシアに強力な経済制裁を行ったことで、世界的に石油・天然ガスの供給不足によるコストプッシュ・インフレが起こり、インフレを加速した。このため、中間層以下の米国民は累積インフレで物価の高騰に苦しみ、経済状態は最悪になった。
大統領選を制すると言われるペンシルバニア州はシェールオイル、ガスの生産で全米第二の州。このため、ハリス氏は従来の見解を否定して、フラッキング法によるシェール・オイル、ガスの生産は禁止しないと前言を翻した。ハリス氏が経済問題について真剣に考える能力がないのはもちろんのこと、選挙のためなら従来の発言をくるくる変えるのも同氏の特徴だ。
さて、ディープ・ステート(深奥国家)は、①軍産複合体②ウォール街の金融資本家③シオニスト系ユダヤ人−を中心とするようだ。なお、シオンは旧約聖書第二サムエル5章7節などさまざまな箇所で出てくるが、神殿の立った場所を意味し、狭義ではエルサレムの丘を意味する。シオニズムとはユダヤ人を〈民族〉と見なして,その差別からの解放を、ユダヤ人による国民国家の形成によって達成しようとする運動。
田中氏の分析では、イスラエルのネタニヤフ首相はイスラエルの領土内に「パレスチナ国家」を設ける構想自体を無きものにするため、戦争を起こしている(「こっそりイスラエルを助けるアラブやトルコ」、https://tanakanews.com/240920mideast.php、有料記事)。「中東諸国は、イスラエルによるパレスチナ抹消を傍観している。中露も同様だ。イスラエルへの非難は口だけだ。その理由は、中東諸国や中露が現実主義であり、イスラエルと戦争して中東を長期に混乱させるより、イスラエルのパレスチナ抹消を傍観した方が、その後の中東を安定させやすいからだ」(田中氏)。
そして、ディープ・ステートはその傘下に、米英のメディアを置く。ほとんどは、米国単独覇権主義を支持するリベラル左派メディアだ。ところで、田中氏の主張をサイト管理者なりにまとめると、このディープ・ステートは、従来の米(英)単独覇権体制派と、欧米文明の衰退によってもはや米国単独覇権体制を維持できなくなり、世界を多極化する以外に未来世界への道はないとする「隠れ多極派」に分裂し、熾烈な戦いを展開している。
しかし、ウクライナ戦争によって「隠れ多極派」が決定的に優位に立つようになっており、ネオコン系に支配されたバイデン政権を「利用」して、「温室効果ガス」の政策化や新型コロナに対処するための「都市閉鎖」、米国民の雇用を奪い、社会不安を増大している違法移民を保護し、選挙権を与えることなどの超愚策を行わせて、米国の国力を自滅させる一方、中露BRICSなど非米側陣営を興隆させ、多極国家群の一国家として米国の存続を図ろうとしている。プーチン大統領も「隠れ多極派」に協力している。ただし、多極化時代の実現には時間がかかる。だから、ウクライナ戦争はできるだけ長引かせたほうが良い。例えば、田中氏は次のような事例を挙げている。
ウクライナの真ん中を流れるドニエプル川には20本の橋がかかっているが、露軍はこれらの橋をほとんど攻撃せず、ウクライナ軍が橋を渡って露軍を攻撃しに行くことを、この2年半の間、ずっと容認している。露軍が橋を攻撃して落とせば、ウクライナ軍の補給路を断てる。それは戦争の基本であるが、ロシアはそれをやっていない。不可思議だ、と有名な在露米人ブロガーが書いている。(Why Won’t Russia Destroy Ukraine’s Bridges Across The Dnieper?)
私から見ると不可思議ではない。ウクライナ戦争が露軍優勢な中で永続することが、ロシアの国益を最大化するのだから、露軍よりかなり弱いウクライナ軍のために補給路の橋を残してやり、露軍の優勢を少しに限定する策をやっている。露軍は意図的に「飛車角落ち」にしている。
こうしたことから、プーチン大統領はウクライナ戦争を長引かせるため当初、「米国の大統領選ではハリス氏を支持する」と発言したことがある。バイデン大統領はハリス副大統領や英国のスターマー首相とともに、ウクライナに長距離高精度ミサイルを配備して、ウクライナからロシアのモスクワなど主要都市を攻撃させることを画策している。ただし、これは核兵器を伴う第三次世界大戦につながる。
メディア界では、ロシアが複数の核弾頭を搭載できる新型のICBM=大陸間弾道ミサイル「サルマト」の発射実験に失敗したとの情報が世界を駆け巡っている。しかし、NHKが伝えるように、【研究者グループのポドビク代表は24日、NHKの電話取材に対し「実験の失敗によって『サルマト』の開発や配備の計画に遅れが生じるのは間違いないが、ロシアは、そもそも『核大国』なので、ロシアの核戦力そのものに大きな影響は与えない」と述べました】(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240925/k10014591321000.html)
バイデン政権の内政・外交政策を受け継ぐハリス氏は、リベラル左派(正論をフェイク・ニュースとして弾圧する左翼全体主義)なので、中露壊滅のためにウクライナに長距離構成度ミサイルを配備することもためらわないだろう。ただし、このミサイル・システムはウクライナがまだ加盟していない北大西洋条約機構(NATO)の正規軍しか操作できない。ウクライナ軍による操作は不可能だ。だから、この件に関しては、強く反発しており、プーチン政権はNATOに対して強い意思を示すだろう。ラブロフ外相は次のように警告している()
[モスクワ 4日 ロイター] – ロシアのラブロフ外相は4日、米国がロシアの内陸部まで射程圏に入る長距離巡航ミサイルの供与についてウクライナと合意に近づいているという報道について、米国はロシアの「レッドライン(越えてはならない一線)」を軽視すべきでないと警告した。
ラブロフ外相は、米国が冷戦以来米ロ間の安全保障のバランスを支えてきた相互抑止の概念を見失いつつあり、これは危険であると述べた。「何があっても驚かない。米国はすでに自らが設定した限界を超えている」と指摘。「しかし、彼らはわれわれの越えてはならない一線を軽視すべきではないことを理解すべきだ」との見解を示した。
こういう情勢の中で、ロシアのラブロフ外相は、「プーチン大統領がハリス氏を支援すると言ったのは、冗談」と発言した(https://www.mk.co.kr/jp/world/11121332)。
ロシアのセルゲイ·ラブロフ外相が明らかにしたところによると、米大統領選挙に出馬した民主党候補のカマラ·ハリス副大統領を支持するというロシアのプーチン大統領の発言は冗談だった。21日(現地時間)ロイター通信など外信によると、ラブロフ長官は前日、スカイニュースのアラブとのインタビューで「ハリスを支持すると言ったのは冗談だった」とし「プーチン大統領はしばしば演説とインタビューなどで冗談を言う」と言及した。
つまり、プーチン政権は核を伴う第三次世界大戦勃発の可能性を排除したいものと思われる。プーチン政権は米国ディープ・ステートの「隠れ多極派」の意思を組んでいると見られるから、これは、世界の多極化の実現を目指している「隠れ多国主義者」が、時間稼ぎのためハリス氏を応援したのを止め、トランプ氏の応援に回ったことを示唆している。これについて、田中氏は次のように分析している。
ウクライナ戦争は、米諜報界の隠れ多極派とプーチンのロシアの共同作業によって、露中・非米側の台頭と米覇権自滅を引き起こす策略として長期化されている。停戦は、なかなか実現できない。仏マクロンの対露和解も実現困難だ。実現する前に、マクロンが辞任に追い込まれそうだ。とはいえ、この行き詰まりを一発で大転換できるシナリオも存在する。それは11月の米大統領選挙でトランプが勝つことだ。
トランプが勝って大統領への返り咲きが決まると、トランプは、すでにウクライナ停戦和平のために動いているハンガリーのオルバン首相などと連動し、停戦実現に向けて動き出す。トランプが来年1月に大統領に返り咲くと、諜報界の動きを上書きして、ウクライナ軍を自主的なクルスク撤退に誘導できる。(フランスの)マクロン(大統領)は、トランプにすり寄ってウクライナ停戦に協力し、政治的な延命を図れる。(米国の単独覇権派に命令されてウクライナに対して欧州では最大の軍事支援や経済支援を行い、国力を使い果たした)独ショルツ(首相)も静かにすり寄ってくる。
少し前まで、欧州でウクライナ停戦・対露和解に賛成していたのは、オルバンや独AfDなど、マスコ”ミに「極右」呼ばわりされる右派だけだった。独仏EUの首脳などエスタブ・主流派の勢力は、こぞって露敵視・ウクライナ徹底支援だった。欧州のエスタブ群は米民主党の仲間であり、トランプの敵だった。NATO内で、トランプが返り咲いた場合の「危機対応策」が検討されていた。EUはオルバン制裁を推進していた。だが今や、仏独首脳が政治延命のためにウクライナ停戦・対露和平派に転向した。オルバンは、EU諸国の政界でウクライナ和平派が急増していると喜んでいる。(More EU leaders joining ‘peace camp’ – Orban)
この流れの中で米国がトランプになると、欧米全体でウクライナ和平派の力が一気に強くなって主流派になる。米仏独が和平派に転換し、露敵視を維持しているのはEU上層部と英国、バルトなど東欧小国群の一部だけになる。トランプは、米国と世界を隠然と支配する「民主主義の敵」である米諜報界を潰すために大統領になった。2期目も、諜報界との果たし合いになる。米欧は、露敵視を続ける米諜報界とその傀儡のEU(委員長)ウルズラ・フォンデアライエン一派(注:超国家組織の欧州連合=EU=は、実は米国単独覇権主義者の傀儡組織で、欧州諸国家の実情を無視する)や英国などと、ウクライナ停戦したいトランプと欧州の仲間たち(オルバンや仏独)という対立軸になる。対立は、露敵視の優勢から、対露和解の優勢へと大転換する。欧州でトランプ待望論が強くなっている。(中略)
私は最近の記事で「米大統領選は、リベラル全体主義(リベ全:注:左翼全体主義)の完全犯罪的な歪曲の中に入った。リベ全のウソはバレたことがない。ハリスがトランプを落とす選挙不正もバレず、トランプは勝てない」という趣旨を書いた。(無能なハリスを有能と歪曲する)だが、米諜報界の多極派は、トランプと支持者たちを頑張らせ、ハリスの選挙不正を乗り越えて選挙に勝ってトランプ返り咲きを達成するというシナリオを用意しているのかもしれない。
難攻不落だった極悪なリベ全を、トランプと支持者たちが壊し、米国の民主主義と言論の自由を取り戻す。こういう革命のシナリオを用意して人々に具現化させることで、強い政治体制を作れる(だから、かつての諜報界=ユダヤ資本家群はフランスの民衆に革命をやらせ、強国=近代国家を作るモデルを作った)。人々を頑張らせて勝たせるシナリオを経ないと、せっかく作った新体制を、再び軍産単独覇権派に奪われかねない。だから多極派は、(注:軍産単独覇権派を自滅に追い込むため)リベ全とか大リセットとかコロナワクチンなど、トンデモな極悪物を作り、人々にそれを乗り越えさせようとする。もちろん世界には、どこかの国民みたいに、乗り越えずに従属・順応してしまう「劣等生」もいるが、そういうのは放っておく(ラッキーです)。
トランプが勝つと、米国側の大転換が加速する。ならば勝たせてみようかと、諜報界の多極派とかが面白がってやりたがる感じはする。プーチンは困っている(注:ただし、プーチン大統領の意を受けたラブロフ外相の発言に想定されるように、トランプ氏の支持に旋回した可能性がある)が、習近平はトランプの方が各地の戦争が終わるので良いと思っている。コロナ以来、DS(深奥国家=米諜報界=米覇権運営体)は、米諜報界と中共の共同覇権であるDH(深奥覇権)へと転換・止揚している観がある。WHOやIPCCを握っているのは米国でなく中共だ。習近平が望むならトランプが返り咲く、ともいえる。
トランプ氏は、単独覇権主義のディープ・ステートを壊滅することを最大の選挙公約にしている。このトランプ氏を、ディープ・ステートの中心になっている「隠れ多国主義者」が支援するようになれば、全米で11月5日に投開票が行われる大統領選の帰趨も決まってくる。トランプ氏が少しずつ勢いを増しているようだが、田中氏の分析のように「隠れ多極主義者」の勢力が本物であれば、「確トラ」ということになるだろう。大統領選まで残り、40日間だ。米国内で何が起きているのか、注意深く観察しなければならない。
制御できなくなりつつある金地金相場
金地金相場が1トロイオンス=2600ドルを超えてきた。中東での紛争(戦争)拡大、ウクライナでの長距離構成度ミサイル使用の可能性(核使用を伴う第三次世界大戦勃発の可能性)が高まってきたことを反映しており、「有事の金相場(ドル暴落を予兆)」ということだろうが、金地金相場は制御できなくなりつつあるのではないか(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)。