ウクライナのロシア・クルスク州奇襲攻撃の意味ー米単独覇権体制の終焉と世界多極化の流れの加速化狙いか

ウクライナが現地時間で8月6日、突然、同国に接するロシアのクルスク州に奇襲をかけてきた。しかし、ウクライナの制空権を握っているロシアは上空からウクライナを監視しており、クルスク州への奇襲を防げたはずだ。国際情勢解説者の田中宇氏が14日、投稿・公開した「ウクライナ戦争で米・非米分裂を長引かせる」(https://tanakanews.com/240814ukrain.htm、無料記事)によると、米国に重荷を背負わせる米単独覇権体制の完全な終焉と世界多極化の流れを加速するための、米国諜報界(ディープ・ステート)多極派の狙いのようだ。

トランプ氏の使命は世界の高等宗教を融合し、統一文明の形成を担うこと

NHKは14日時点のクルスク情勢について、「ウクライナ“越境攻撃で70超の集落管理下 次の段階へ準備”」と題する不思議な報道をしている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240814/k10014548491000.html)。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア西部クルスク州への越境攻撃についてウクライナ軍は70以上の集落を管理下に置いていると主張した上で「次の段階に向けた準備が続いている」と述べ、作戦を継続する姿勢を強調しました。ウクライナと国境を接するロシア西部のクルスク州では、8月6日以降、ウクライナ軍が越境攻撃を続けていてウクライナ側は12日、これまでにおよそ1000平方キロメートルのロシアの領土を掌握したと主張しています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、軍のシルスキー総司令官と協議したとする写真をSNSに掲載し、「困難で激しい戦闘にもかかわらず、われわれの軍は前進を続けている」と強調しました。そして、74の集落を管理下に置いていると主張した上で「次の段階に向けた準備が続いている」と述べ作戦を継続する姿勢を強調しました。ただ、部隊をさらに進めるのか、前進をとめて領土の防衛に重点を移すのかなど、次の段階が何を意味するのかは明らかになっていません。

一方、ウクライナ外務省の報道官は13日、記者会見で「ウクライナはクルスク州の領土には関心がない。われわれの国民を守りたいのだ」と述べ、越境攻撃については、ロシア軍がクルスク州からウクライナ側に攻撃を仕掛けてくることや激戦が続く東部ドネツク州に部隊を追加で派遣することを阻止するのが目的だとしています。

つまり、「部隊をさらに進めるのか、前進をとめて領土の防衛に重点を移すのかなど、次の段階が何を意味するのかは明らかになっていません」ということであり、ウクライナ国民を守るため、ロシアの軍事力を分散させることが、クルスク州侵攻の目的だという。普通に考えれば、ロシアの侵攻を何としても食い止めたいということだろう。しかし、その場合に敢えて、クルスク州に侵攻する必要があるのか。また、クルスク州制圧まで侵攻するとなると、ウクライナ本土の防衛は極めて手薄になるのではないか、など数々の疑問は残る。

ウクライナは対露戦争のため、約4200万人の人口のうち1000万人ほどが国外に脱出しているほか、戦死者が激増するとともに出生者数が激減し、人口が劇的に減少している。欧米諸国から軍事兵器を供与されたとしても、ホンネのところはウクライナ戦争を早く終結させたいのではないか。プーチン大統領も「ウクライナによるロシア西部クルスク州への本格的な越境攻撃について、ウクライナは『西側諸国の支援』を受け、和平交渉で有利な立場を構築しようとしているとの見方を示した」(https://jp.reuters.com/world/ukraine/3WZMHVJBARKJ5DN35QVZC53VJ4-2024-08-12/として、ウクライナのゼレンスキー政権が和平・終戦交渉に乗り出したい意向を持っていると見ている。

実際、7月初めには、輪番制の欧州理事会議長国になったハンガリーのオルバン首相が、ゼレンスキー大統領に要請されたと見られるが、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、米国のバイデン政権のほか次期大統領の最有力候補視されていてるトランプ氏を回ってウクライナ和平について提案した。ところが、米国諜報界=ディープ・ステートの多極派は、米国に重荷を背負わせる米単独覇権体制の完全な終焉と世界多極化の流れを加速させたい意向のようだ。

このため、田中氏はリード文で、「対露和平交渉を始めたいゼレンスキーは、クルスク侵攻を企画していない。侵攻を企画したのは、ウクライナ軍の作戦立案を握る米上層部で、ゼレンスキーは知らされなかったか、拒否できなかったのでないか。プーチンは、ウクライナ軍の侵攻を察知しながら放置し、入ってきたウクライナ軍ができるだけ市民を殺さないよう前進を阻みつつ占領を許し、数日経ってから反撃を強める策をとったように見える」と分析している。

英国BBCの「ロシア領への侵入は「容易だった」 越境攻撃したウクライナ兵たちが語る」(https://www.bbc.com/japanese/articles/c990nxnp4n2o)はこの見方を裏付けている。ウクライナ軍の兵士は、「我々はほとんど抵抗を受けることなく、(ロシア領内へ)容易に侵入した。8月6日に、夜の間に最初の部隊がいくつかの方向へと入っていった」という。

この見方に関連して、田中氏は次のように分析している。

欧米が送り込んだ兵器も、前線に送り出す前に貯蔵場所の情報が露軍に漏れて空爆されて破壊された(米諜報界の隠れ多極派が情報漏洩構造を作ったと疑われる)。西欧はウクライナに兵器を送りすぎて自国防衛用が足りなくなった。ウクライナはロシアに完敗しているが、ロシアは戦線をドンバスなどに限定して拡大しないことでウクライナの3分割を先送りして国体を維持させ、欧米がロシアを敵視して米側衰退につながる米vs非米の世界対立を持続するように仕向けている。Russian human rights official urges UN to condemn Kiev’s ‘barbaric’ incursionまだまだ続くウクライナ戦争)(中略)

そもそもウクライナ開戦時も、ゼレンスキーにウクライナ国内の露系住民への弾圧を強めさせ、ロシアが邦人保護のためウクライナに侵攻せざるを得なくしたのは米上層部だ。ロシアがウクライナに侵攻したら、欧米が徹底的な対露制裁をやって世界的な米・非米分裂を引き起こし、ロシアを含む非米側を有利にしていくことを予測しつつ、米上層部はウクライナ戦争を誘発した。プーチンもそれを知っていたから、誘発に乗って開戦し、濡れ衣の極悪レッテルを貼られるままにした。こんな裏の構図があるとも知らず、欧州や日本のエスタブや市民たちは、プロパガンダを軽信してロシアを敵視し、ウクライナを応援する自滅の道を突き進んできた。プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類

今回のウクライナ軍のクルスク侵攻も、この構図の中で起きている。対露和平交渉を始めたいゼレンスキーは、クルスク侵攻を企画していない。侵攻を企画したのは、ウクライナ軍の作戦立案を握る米上層部で、ゼレンスキーは知らされなかったか、拒否できなかったのでないか。ゼレンスキー政権は事後的に「ロシア領内を占領し、それを返還する見返りにロシアを譲歩させる交渉術に使う」などと釈明しているが、釈明には無理がある。侵攻は、プーチンが交渉を否定して戦争構造を続ける口実を与えてしまった。プーチンは「一般市民を殺すウクライナと和平交渉などできない」と表明している。ゼレンスキーの和平策は行き詰まっている。Putin Says There Will Be No Peace Talks With Ukraine As 180,000 Citizens Evacuated Amid Invasion

米国多極派内には、5月で任期の切れたのに大統領職に居座り続けているぜレンスキー大統領の代わりにアルセン・アワコフ元内相を大統領にする案まで出ているという。ということで、多極派の狙いは、ウクライナ戦争を継続させ、米国に重荷を背負わせる米単独覇権体制の完全な終焉と世界多極化の流れを加速させたい意向のようだ。その一方で、次期米国大統領に返り咲く可能性が非常に高まっているトランプ氏ー同氏もどちらかと言えば隠れ多極派に属するーは、ウクライナ戦争の終戦の断行を行う可能性が高いが、共和党の一部に、ウクライナ戦争継続派も残しているという。ウクライナ戦争をこれまで通りに進めるためだ。

しかし、サイト管理者としては、トランプ氏はウクライナ戦争をほとんど永続化することが本来の使命ではないと思う。ロシアのプーチン大統領と関係が深いことから、ウクライナが自らバイデン政権の工作によってロシアをウクライナ戦争に導きこんだことを認めたうえで、トランプ次期大統領とプーチン大統領が「電撃的」に協力してウクライナ戦争を集結させることが人道的だと考える。田中氏もそのように考えておられたようだ。

しかし、同氏は、トランプ氏について「米国側(同盟諸国)に対し、中国との経済断絶を強要しようとしており、世界を非米化しようとする隠れ多極派である。だから彼は、プーチンと対話したいと表明しつつ、実際に大統領に返り咲いたら、議会に引きずられて対露制裁を続け、米・非米分裂を長引かせ、米覇権の低下と多極化の流れを継承するのでないか、そんな風にも予測される。プーチンも、トランプは予測困難な存在であると前から指摘している」と新たな見方を示している。

中露を盟主とし、人口・エネルギー・貴金属を含む資源大国でもある非米側陣営は、ドルによらない多国間決済システムを築きつつあり、米側陣営なしでも興隆していくことは可能だ。また、米側陣営の精神的支柱である欧米文明ーその根幹はアタナシウス派キリスト教ーは今、崩壊の憂き目に会っており、その速度は今後ますます加速する。だからと言って、非米側陣営の興隆と米側陣営の崩落をただ手をこまねいて見ているだけで良いのか。サイト管理者としてはやはり、米側陣営がキリスト教を中心に覚醒し、非米側陣営とともに新たな統一文明を創造することが、歴史的な人類の課題だと思う。

トランプ氏は共和党大会の最終日、狙撃暗殺未遂事件後の最初の演説で次のように述べた(https://news.ntv.co.jp/category/international/8ec40e5a8a674d1f9065c115515b4be9)。

アメリカ大統領選挙で返り咲きを目指すトランプ前大統領を支えているのが、大統領選に大きな影響力を持つキリスト教保守派の「福音派」と呼ばれる人たちです。トランプ氏を熱狂的に支持するワケとは。

共和党大会最終日に銃撃事件後初となる演説を行ったトランプ前大統領。トランプ前大統領「(銃撃を受けたが)私はとても安全だと感じた。なぜなら神が私の側にいると感じたからだ」「私がみなさんの前に立っているのは、全能の神の恵みのおかげだ」。繰り返し口にしたのは「神」という言葉でした。事件後の世論調査では、共和党を支持する人の65%が「トランプ氏が一命をとりとめたのは神の摂理」だと回答。さらに、党大会の会場の一角では、銃撃事件の写真と共にトランプ氏“公認”の聖書が1冊約9000円で販売されていました。

トランプ前大統領「全てのアメリカ人の家に聖書が必要です。私の大好きな本です」。これまでも「信仰心のあつさ」をアピールしてきたトランプ氏。その背景にあるのが、今、トランプ氏を熱狂的に支持するキリスト教の保守派「福音派」と呼ばれる人たちです。先月開かれた福音派の政治集会でトランプ氏が訴えたのは、「キリスト教への偏見と闘うため、新しいチームを立ち上げる」「何度も言うよ。クリスチャンのみなさん、投票してください」。

聖書を「神の言葉」だと信じ、バイデン政権が支持する中絶や性的少数者の権利について否定的な考えを持つ福音派。アメリカの成人人口の4分の1を占めていて、そのうちの81%がトランプ氏に投票するというのです。グレグ・ロック牧師「神があなたの人生を変えようとしていることを信じ、聖書の力を信じるならアーメンと叫んで!。トランプ氏を支持する牧師が開催する日曜礼拝には、1000人近い信者の姿が。会堂の一角には水槽が置かれ、洗礼式も行われていました。(中略)

今のアメリカの政治状況を(注:福音派の)ロック牧師はこう嘆きます。ロック牧師「敵はサタンのことだ。悪魔が文化に影響を与えているのは間違いない」「世界中のあらゆるものがLGBTQ=レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障がい者を含む、心と出生時の性別が一致しない人、 自身の性自認や性的指向が定まっていない状態にある人や、敢えて決めない人=を推進している」。近年、アメリカで見られる中絶や同性婚を認める動きに対し、牧師は伝統的な価値観がリベラルに変化することへ危機感を募らせていました。ロック牧師「絶対に同性婚を覆すべきで、中絶を覆して連邦政府として禁止して犯罪にすべきです」「福音派がトランプを支持する最大の理由は、彼が、私たちが信じていることを話すことを許してくれるからだ」。

キリスト教の価値観と異なるトランプ氏の言動について信者(注:欧米文明圏では信徒)はトランプ氏を支持(しているが、その理由について)福音派信者「彼は自分の罪を告白して神に導かれている。クリスチャンとして私たちは許しています。銃撃事件を受け、“神格化”が進むトランプ氏。福音派の信仰心が愛国心と一体となり、国内の分断がますます進むことが予想されます(聖書的価値観によれば、善と悪とは分立され、そのうえで、善側の「為に生きる奉仕活動」によって悪が分別されて善側に立つようになり、止揚・統一される)。

トランプ氏の岩盤は、米国の建国の精神になっているキリスト教を信じるキリスト教徒だ。ただし、アタナシウス派=ローマ帝国のコンスタンティヌス大帝が325年に主催したキリスト教教義を決する最高会議のニケア公会議で、父なる神と子なるキリストとの同質性を主張して,キリストを父なる神の被造物とするアリウス派を論駁(ろんばく),のち父と子に聖霊を加えての三位一体説を樹立した=のキリスト教は、サイト管理者から見て現代科学とは相容れない。

キリストを父なる神の被造物としたアリウス派は正統派から見れば完全な異端であるが、神と被造物はやはり異なるのではないか。ここから、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、儒教などの世界の高等宗教を包含する(排除しない)新たな次元の宗教が表に出てくるべき時期だ。歴史社会学的に見て、トランプ氏の歴史的な意義と業績は、ここのところの考察を深めることで定まってくるのではないだろうか。

岸田首相辞任について、対米隷属体制から脱却しなければ日本の政治は変わらない

岸田文雄首相が9月中に開かれる自民党総裁戦に出馬しないことを明らかにしたが、悪性の限りを尽くしただけに、当然のことだ。代わりに(本来は派閥を解消しているが)平成研の茂木敏充幹事長、大宏池会の河野太郎デジタル相。無派閥の高市早苗経済安保相、石破派の石破茂元幹事長らが事実上、名乗りを上げているようだが、対米隷属体制を超克しなければ日本の政治は変わらない。

◎NHKによる出馬予想名簿(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240814/k10014549111000.html

今年の流行語は、「私、辞めます」ではないか。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう