ウクライナの首都・キエフの近郊で多くの市民が殺害されたとするウクライナ側のニュースが発端になり、チェコ政府がウクライナへの戦車の供与を発表するなど、停戦に向けた交渉が遠のきウクライナ事変がエスカレートしているようだ。背後には、ウクライナ事案(ロシア軍)を泥沼に追い込んでロシアを崩壊させ、中国・ロシアに奪われつつある米国の世界一極支配を維持しようとするディープ・ステート(DS)傘下のバイデン政権の狙いがあると推察できる。
キエフ郊外の「大量市民虐殺」問題について
まず最初に、米国には欧米日諸国陣営の公的機関やマスメディアを使って、ウクライナ・ゼレンスキー大統領が「ロシア軍によるキエフ近郊の市民殺害」を世界中に拡散させる資格はないことを改めて確認しておく必要がある。
代表例が2003年3月20日から2011年12月15日までの約8年8カ月にわたって、米国がイラクが大量破壊兵器を保有しているとウソをついてイラクを侵略したことだ。イラクは国連の査察を受け入れることを表明していたが、当時のブッシュ(子)政権はこれを無視してイラクを侵略した。そのため、少なくとも10万人以上の罪なきイラク国民が殺戮され、負傷している。一説には、数十万人規模とも言われている。正確な調査がないこと自体がおかしい。
国際司法裁判所元判事であるC.C.ウィーラマントリー氏の著書『国際法から見たイラク戦争』(勁草書房、2005年)の「日本語版への序文」冒頭には次のように記されている(植草一秀氏のメールマガジン第3184号「他国の体制転覆是とする無法国家=注:米国のこと」による)。
侵攻開始後数週間もたたない2003年4月上旬に、本書は、この侵攻が国際法に基づき完全に違法であったことをきっぱりと断言し、10以上にものぼる国際法の基本原則の違反を列挙した。これは侵攻直後の余波のさなかに、軍事行動の全面的な違法性に注目した最初の出版物の一つとなった。その主張が、現在国連の上層部において支持されているのは重要なことである。2004年9月25日、コフィ・アナン国連事務総長は、国連総会での演説において、イラク侵攻は国際法に基づき違法であると述べている。
ブッシュ政権によるイラク侵略の際に、西側のマス・メディアは米国の不当な国際法違反の侵略によって、罪なきイラク国民が数十万人規模で殺戮され、傷ついていることは報道せず、イラク侵略を両手をあげて賛美した。殺戮され、負傷したイラク国民の報道や、イラク国民・難民の救援に対する報道に比べて、今回のキエフでの「ロシア軍によるキエフ近郊の市民殺害」の報道の熱狂的な報道はあまりにも異常だ。これには、欧米日諸国の「白人優位」思想も加わっている。人種にかかわらず、人は皆、平等であるはずだ。
実は、「ロシア軍によるキエフ近郊の市民殺害」よりも遥かに多くのロシア系ウクライナ人が、ウクライナの東部・ドンバス地域で、ポーランド人、ロシア人、ユダヤ人を国家再生の敵と考えジェノサイドを鼓舞する思想を流布したステパン・バンデラを始祖とするネオ・ナチ勢力のアゾフ大隊などのウクライナ国軍によって殺戮(惨殺)されている。なお、バンデラはウクライナ独立を掲げたため、第二次世界大戦中はナチスの強制収容所に移送されたが、死刑になることはなかった。バンデラはナチスの敗北とともに逃亡生活を続け、1959年10月15日に西ドイツのミュンヘンでソ連のKGBスパイ、ボグダン・スタシンスキーによって暗殺された。
米国は太平洋戦争当時に東京大空襲をはじめ全国の主要都市を空襲爆撃、多数の民間人犠牲者を出した。沖縄戦でも民間人が犠牲になり、1945年8月には初めて原子爆弾を広島と長崎に投下し、今日にいたるまでその犠牲者が出ている。戦後は、1964年8月のベトナム沖でのトンキン湾事件をきっかけにした本格的なベトナム戦争の開始や、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件以降は中東での「対テロ戦争」なと世界のいたるところで、民族自決・内政不干渉や武力行為の禁止をうたった国連憲章を踏みにじり、武力侵略を行ってきた歴史的前科がある。すぺては。米国のディープ・ステート(DS)の主力組織である軍産複合体の必要に応じたものだ。米国の軍事産業には巨額の同国民の血税が注がれる。同国には世界最大規模の軍事産業が存在している。
今回のウクライナ事変が起こったのは、ウクライナを米国陣営(北大西洋条約機構=NATO加盟=など)に取り込むため、米国が2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン暴力革命などの内政干渉を行ったことに根本原因がある。狙いは、もはやロシアはスターリン主義に基づく共産主義国家ではないのに、ロシアのプーチン政権を崩壊させてロシアを弱体化させた上で、同国を米国の一極支配体制化に取り込むためだ。その意味では、軍産複合体にとっては、ロシアとウクライナが早急に停戦合意にこぎ着けては困る。これに徹底抗戦したのが、プーチン大統領だと思われる。同大統領はディープ・ステート(DS)に初めて国際政治、国際経済(直接的には後述するように国際決済システムの確立)の両面から、本格的に闘いを挑んだキー・パーソンである。
今回のキエフ攻防戦でウクライナ側が勝利したように伝えられているのは第一に、米国が同国の多国籍軍事企業のロッキード・マーティン社やレイセオン・テクノロジーズ社が開発した高額の携帯型対戦車ミサイル「シャベリン」や携帯型地対空ミサイル「スティンガー」をウクライナに大量供与して、ロシア軍のキエフ侵攻を防いだことが大きいと見られている。しかし、第二にロシアとウクライナの停戦交渉の最終決定権がウクライナ側ではゼレンスキー大統領ではなく、その背後にある「黒幕」が握っていることが明確になったからではないかと見られる。黒幕とはもちろん、マイダン暴力革命以降の米国である。現在でもそうだ(下図はhttps://www3.nhk.or.jp/news/special/ukraine/mariupol/より、)。
このため、ロシア軍は東部ドンバス地方でのロシア系ウクライナ人の安全保障体制の確立と、アゾフ大隊の根拠地であるマウロポリ(アゾフ海=黒海北部にある内海で、ケルチ海峡によって黒海と結ばれている=の港湾都市で、ウクライナ東部と南部を結ぶ要衝)の攻略に最大の力を注ぎ、オデッサ市にいたる東南部の制圧に最大の力を注いでいるのではないか。そして、ロシア軍は既に制空権、制海権を握っており、「停戦交渉」を有利に進められるところまで来ていたのではないかと推察される。ゼレンスキー大統領が強力な空軍力の保持を必要とする「飛行禁止区域」の設定を米国やNATOに求め続けてきたのはその証左だろう。制海権の掌握では、新米ウクライナ政権から観光資源による観光収入を収奪してきたウクライナ半島住民の新米ウクライナ政権への反発があることから推察される(https://www.youtube.com/watch?v=NPTQDFdXB0g)。このうち、「飛行禁止区域」の設定は、米国を盟主とするNATOにはウクライナ防衛の義務はないことから、NATOは突っぱねている。
こうした状況の中で、「ロシア軍によるキエフ近郊の市民殺害」が大々的に報道され、米国が130億ドルに加えて追加的な軍事支援を行うことを発表したほか、チェコ政府が戦車を供与するなどの報道もなされ、「停戦交渉」の道は遠のいて「泥沼化」の道が選択されているようだ。しかし、「ロシア軍によるキエフ近郊の市民殺害」については、中国政府の次の談話が正当な見方だろう(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220406/k10013569011000.html)。
中国報道官「根拠のない非難をすべきではない」
ウクライナの首都近郊で多くの市民が殺害されているのが見つかったことについて、中国外務省の趙立堅報道官は6日の記者会見で「ブチャで民間人が死亡したとする報道や映像は、とても心配なものだ。事件の真相や経緯は、必ずきちんと調べなければならない」と述べ、真相を調べるための調査が必要だという考えを示しました。
そのうえで「いかなる非難も事実に基づくべきだ。調査結果が明らかになるまでは各国とも自制を保ち、根拠のない非難をすべきではない」と述べ、非難を強める欧米各国をけん制し、ロシアに配慮する姿勢をにじませました。
アメリカのバイデン大統領は、以前の主張を再度繰り返し、ロシアのプーチン大統領が戦争犯罪を行っていると主張しています。
しかしロシア政府は、この主張に激しく反発しています。同国の一部関係者や団体は、公開されたブチャの映像は捏造されたものであり、事前に計画されたロシアに対する陰謀にあたるとしました。ロシア大統領府のペスコフ報道官は4日月曜、「我が国の国防省の専門家らは、この西側メディアの公開した映像内に様々な改変の痕跡を見つけた」と発表しました。この出来事に関連する安保理会合開催というロシア政府の要請が拒否されたと同時に、同国はこの件に関し、自国で独自調査をすると明らかにしました。
イルナー通信(イラン系の通信社との見方がある)によりますと、ロシア下院外交委員会のレオニード・スルツキー委員長は4日夜、イギリスが現在の安保理議長国として、ロシアが要請したこの緊急会合開催を拒否したことに触れ、「この会合が実施されないことは、すなわちこの件のすべてが事前に計画されていたことを意味する」と述べました。そのうえで、「ロシアは引き続き、ブチャでのこの出来事に関する真実を暴くために、調査委員会による調べを主張していく」としました。また、この映像に関する西側の非難を、シリアへの化学兵器を使用したテロ攻撃の事件と比較して、「西側諸国は、ブチャの出来事に関する調査を回避するつもりだ」と指摘しました。
また、次のような掲示板のコメントもある(http://snsi.jp/bbs/page/1/)。
ドイツ、フランスも加わった国際的な停戦合意であるミンスク合意を破って東部ウクライナを攻撃し続け、(注:ロシア系の)ウクライナの住民を虐殺し、国際法違反の生物兵器を開発し、ロシアを追い詰めてきたのはディープステイトとその代理のゼレンスキー政権のほうではないですか?
ロシアは当初から民間人が犠牲にならないよう、軍事拠点と生物兵器研究所とネオナチの拠点に絞って攻撃してきました。そして、「3月30日にはロシア軍はブーチャから撤退していたのに、その後に亡くなった直後の遺体が見つかるのは時系列的に矛盾する」というロシアの反論は具体的です。
本件が日本で報じられたのは4月4日で、キエフと日本との時差は6時間。なお、ウクライナの民間人を拷問・殺害して何のメリットがあるのかという素朴な疑問もある。いずれにしても、本件については中国政府のコメントが妥当なところではないか。
米国側が中立的な現地調査を却下したまま、一方的な「ロシア軍犯行説」が、ウクライナとその傘下の人々の主張だけをもとに流布され、米国側の政府やマスコミ権威筋がそれを鵜呑みにしてロシア敵視を喧伝し、米国側の多くの人々がそれを軽信し、早とちりしてロシアに怒っている。虐殺の真犯人はウクライナ極右民兵団だろう。彼らを育てたのは英米だ。(中略)
ウクライナ当局は、中立な第三者組織の現地調査を認めておらず、すでに事件発生から数日が過ぎ、遺体とその周辺の瓦礫などはウクライナ側によって片付けられて「証拠隠滅」が進み、虐殺の真犯人を公式に確定する方法が失われつつある。ウクライナ当局がブチャの虐殺遺体の動画を「ロシアの犯行だ」と決めつけて発表し始めた4月4日、ロシアは国連安保理でブチャの事態に関する話し合いを緊急に持つべきだと繰り返し提案した。だが、安保理の議長をつとめる英国は、ロシアの提案を却下した(英国はずっと前からウクライナのロシア敵視勢力を支援してきた)。その後も、国連が第三者組織を作ってブチャの虐殺現場を現地調査すべきだというロシアの提案は却下され続けている。 (West ‘shut eyes, ears with blinds,’ unwilling to hear Russia’s points on Bucha) (The truth about Bucha is out there, but perhaps too inconvenient to be discovered ー Scott Ritter)
英国など米国側が中立的な現地調査を却下したまま、一方的な「ロシア軍犯行説」が、ウクライナとその傘下の人々の主張だけをもとに流布され、米国側の政府やマスコミ権威筋がそれを鵜呑みにしてロシア敵視を喧伝し、米国側の多くの善良(間抜け)な人々がそれを軽信し、早とちりしてロシアに怒っている。国連総会は一方的なロシア犯行説をもとに、3分の2以上の諸国の賛成によって、ロシアを人権理事会から除名する決議をしてしまった。現地調査を却下したままウクライナ側の主張だけを鵜呑みにしてロシアを犯人扱いするのは、手続き的に国際法違反だが、そんなことは全く無視されている。諸大国の中で唯一、現地調査せずロシアを除名することに反対した中国は正しい(イラン、シリア、ベトナム、ラオス、アルジェリアなどアフリカ7カ国、カザフスタン、ボリビア、北朝鮮など24か国が反対)。 (China Sides With Russia During Key Vote At UN Human Rights Panel)(中略)
4月2日、ウクライナ内務省傘下の国家警察の部隊がブチャに進駐してきた。国家警察の部隊は、ブチャに露軍が駐屯していた時に犯した戦争犯罪について調査したり、露軍に協力した者たちを探して取り締まったりするのが進駐の目的だった。国家警察と一緒に、同じ内務省傘下の組織である極右民兵団(アゾフ大隊やThe territorial defence battalions)の部隊も同行した。ブチャに進駐してきた極右民兵団の1つの部隊(Sergei Korotkihが率いるBOATSMAN BOYS)が発表した動画では、ブチャの街頭を巡回中に、民兵の一人が上官に「青い腕章をつけていない奴らを射殺して良いですか」と尋ね、了承をもらっているやり取りが収録されている。 (Sergey Korotkih (“Boatsman”) posted a video of clearing of Bucha)
ブチャの市街戦の戦地では敵味方を見分けるために、ウクライナ側の兵士や市民が青い腕章(アームバンド)をつけ、ロシア側の兵士や市民(ロシア系住民など)が白い腕章をつけていた。露軍撤退直後の3月31日以降のブチャで、青い腕章をつけていない市民は、ウクライナ側を積極的に支持しなかった中立的な市民であり、白い腕章をつけている市民は露軍を支持していた市民だった。露軍撤退後にブチャに進駐してきた極右民兵団は、青い腕章をつけていない、中立的もしくは親露的な市民を見つけしだい射殺していたことが、この動画からうかがえる。 (Russia and Ukraine trade accusations over Bucha civilian deaths)
米英諸国とウクライナは既に証拠隠滅を行っており、本事件の真相・深層を解明するのはかなり難しいだろう。しかし、「天網恢恢疎にして漏らさず」の格言通り、真実はいずれあきらかになるだろう。なお、プーチン大統領極悪戦争犯罪人並みの報道を続けているNHKも、一方で、今回はこれまで2回の決議と比べ賛成した国は少なく一定数の国がロシアへの配慮を示した形となり、国際社会が一致して対応する難しさも浮き彫りになりました
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220408/k10013572431000.html)と追記せざるを得なくなっている。
こうした中で、これまではロシアとウクライナの早期停戦協議に期待が集まっていたが雲散霧消しつつある様相で、米国の傀儡政権である親米ウクライナ政権を率いるゼレンスキー大統領はこのところ、「徹底抗戦」の様相に戻りつつある。これに対して、ロシアは制空権や制海権を握り、戦闘を有利に進めていると推察されることから、①クリミア半島地方の領土問題②東部ドンバス地方のルガンスク、ドネツク州の「独立自治共和国」問題ーでは絶対に譲らない構えだ。ただし、ゼレンスキー政権が米国の傀儡政権でなくなれば、妥協の道はあり、早期停戦に持ち込める可能性がある。
対ロ経済制裁の帰趨と欧米日諸国陣営と中露陣営の行方
こうした中で、欧米日諸国陣営は対ロ経済制裁の強化に全力を挙げている。しかし、対ロ経済制裁の強化は、欧米日諸国陣営に深刻な金融危機とスタグフレーションをもたらして、同陣営を破綻の方向にもたらすだろう。欧米日諸国陣営では既に物価が急騰している。これには、量的金融緩和(QE)を続けてきたことに加え、コロナ禍や対ロ経済制裁で資源価格が高騰しているという原因がある。
逆に、サイト管理者(筆者)などの推測だが、欧米日諸国側が深刻な金融危機とスタグフレーションに直面している中、原油や天然ガスなどの資源や金の生産大国であり、穀物なども豊富に生産する中国やロシア、中東諸国(新セブンシスターズ)、南米諸国などの「コモディティ大国」が今後、有利になるのではないかと推察している。ロシアがルーブル建てで米国債などの元利返済を行ったが、米欧諸国がロシアの資産を凍結しているうえ、ロシアには豊富な原油や天然ガスなどの鉱物資源があることから、「デフォルト」などと言ってもつまるところ、意味がない(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220407/k10013570501000.html)。なお、ルーブル相場も1ドル=150ルーブルから1ドル=80ルーブルとウクライナ事変(ロシア軍によるウクライナ侵攻)前まで戻している。
ロシア財務省 ドル建て国債 ルーブル払い
ロシア財務省は6日、今月4日に期限を迎えたドル建ての国債の償還と利払い合わせて6億4920万ドル、日本円でおよそ800億円について自国通貨のルーブルで支払いを行ったと発表しました。ドルでの支払い手続きを海外の銀行から拒否されたためだとしています。
アメリカ財務省は今月4日からアメリカの金融機関を介してロシア政府がドル建て国債の利払いなどを行うことを認めない措置をとっていました。
ロシア財務省は「アメリカ財務省の非友好的な行動により、ロシアの金融機関に支払いを依頼することを余儀なくされた」としたうえで、債務はすべて履行されたとの認識を示しています。またロシア大統領府のペスコフ報道官は6日「ロシアには資金がある。理論的にはデフォルト=債務不履行の状況になるかもしれないが、それは単純に人為的につくられたものだ。デフォルトの根拠は全くない」と強調しました。今回の利払いなどには30日間の猶予期間がありますが、ルーブルでの支払いは一方的な返済条件の変更に当たるとしてデフォルトと認定される可能性があります(ウクライナ事変を正しく報道しないNHKの独善的な見方)。
むしろ、非欧米日諸国側の「コモディティ大国」側では、ドル基軸通貨体制に代わる新たな国際決済システムの構築に向かっているようだ(ブレトンウッズ体制2)。極論すれば、ウクライナ事案が長引けば長引くほど、ドル基軸通貨体制はたそがれの時期に行くの見立てである。国際政治的にも、ロシアは中国とインド(両国ともロシアに対する非難決議には棄権している)の仲を取り持つ外交を展開している。中でも注目は、中東諸国だ。国際ジャーナリスト(国際情勢解説者)の田中宇(さかい)氏は、「非米化する中東」(https://tanakanews.com/220406iran.php)と題する解説記事で次のように述べておられる。
ウクライナ戦争で世界が米国側と非米側(ロシア側)に決定的に分離し始めたのと同期して、中東では米国覇権の低下に拍車がかかり、中東全体が非米側に入っていく流れが起きている。非米化は中東を平和にしていく。中東の不安定さのほとんどは、米国(米英)が中東支配を恒久化するために意図的に設置したものだった。米国がいない方が中東は安定する。
田中氏によると、これまで米国よりだったサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE、注:国連総会でのロシア非難決議に棄権して、世界を驚かせた)がロシアと接近しており、パレスチナ問題を抱えているが、アラブ諸国と敵対しない戦略を取りつつあるイスラエルもその兆候が見られるという。今回のウクライナ事変で最も得をしているのは、「核問題」で米国から制裁を受けていた石油大国イランだという。ウクライナ事変が泥沼化しても、非欧米日諸国陣営にはむしろ有利になる。国際政治・経済情勢には驚くべき変化がここ2年ほどで起こり得る。
ただし、サイト管理者(筆者)としては、近代西欧(欧米)文明が生み出した「基本的人権(侵攻・思想・言論・結社の自由と生存権の保障)」は最優先で尊重されなければならないと思っている。欧米日諸国陣営でも民主主義をうたいながら、実際はそうではないが、権威主義体制と呼ばれる非欧米日諸国陣営でも「基本的人権」は最大限、尊重されなければならない。欧米文明はキリスト教とギリシア思想によって成立した。
主役は、マックス・ウェーバーが見抜いたようにキリスト教だ。米国の現状はディープ・ステート(DS)が世界を牛耳ることにより、キリスト教の本来の精神から著しく離脱した。これを大修正しなければならない。その意味で、2024年の米大統領選挙は歴代の大統領選挙でも極めて重要な大統領選挙になるだろう。キリスト教精神を深く理解し、ディープ・ステート(DS)の傘下にない政治力のある大統領が選出される必要がある。