米英がロシアへの長距離高精度ミサイルの使用検討を加速ープーチン大統領は強く反発、核使用伴う第三次世界大戦勃発も

ウクライナのロシア・クルスク州への侵攻が当初の目的(ウクライナ東部のロシア正規軍の軍事力分散)を達成できず、東部ドンバス地方の要衝・ポクロウシクの防衛には役に立たなかったため、ウクライナの敗北が誰の目にも濃厚になってきた。このため、米国のプリンケン国務長官、英国のスターマー首相(労働党党首)を中心に北大西洋条約機構(NATO)の首脳がロシアが、ウクライナから長距離高精度ミサイルの使用の検討を加速している。使用すれば形だけウクライナから攻撃したということで、同ミサイルシステムの制御はNATOの正規軍が行うため、ウクライナ戦争はロシアとNATOの戦争へと暗転してしまう。その場合、世界最多の核兵器を保有するロシアのプーチン大統領は恐らく核兵器の使用も含めて反撃し、第三次世界大戦が勃発してしまう公算が大きい。

プーチン大統領、長距離ミサイルによる攻撃はNATOが戦争の当事者になることを意味すると警告

本サイトでは一貫して、ウクライナ戦争は違法なNATOの東方拡大を行ってきた米国によって起こされたと主張している。パパ・ブッシュ大統領、ベーカー国務長官は東西ドイツの統一時にゴルバチョフ大統領、シェワルナゼ外相に対して、「NATOの東方拡大はしない」と公式に約束した。しかし、米国(米英一極単独覇権派)はこの約束を破り、NATOの東方拡大を続け、その終着点として、カトリックを信奉する非ロシア系スラブ族のウクライナ国民とロシア正教を信じるロシア系スラブ民族のウクライナ国民からなる、いわば、多民族国家( 1989年の民族の構成比は,ウクライナ人72.2%,ロシア人22.1%,ユダヤ人とベラルーシが各0.9%)であるウクライナをNATOに加盟させるため、ウクライナ市民を巻き込んだ2014年2月のマイダン暴力クーデターなどを起こさせ、ウクライナに自国の傀儡政権を樹立させた。

傀儡政権の樹立後は、東部ドンバス地方のロシア系ウクライナ国民を徹底的に弾圧させ、特に、2020年の多数の不正郵便投票によって大統領に選出され、2021年1月20日に発足したたバイデン政権が、2015年2月に成立したミンスク合意Ⅱ(注:主要2州のドネツク、ルガンスク二州に行動な自治権を与えることが主目的で、この合意が尊守されれば、ウクライナはNATOに加盟できなくなり、実質的に中立国になる)は完全に無視させ、ゼレンスキー政権をけしかけてこの弾圧を強化させた。なお、ゼレンスキー氏は大統領選挙戦の際は、ミンスク合意Ⅱを守ると言っていた。弾圧の主力部隊(アゾフ大隊)はナチス・ドイツと親しかったステパン・バンデラによって組織化されたネオ・ナチグループである。

この東部ドンバス地方のロシア系住民(もちろん、子供も含む)をアゾフ大隊などネオ・ナチ系の軍事組織から守り、保護するために、国際法とミンスク合意Ⅱを踏まえてドネツク、ルガンスク二州の独立を承認し、両国の要請で東部ドンバス地方で展開したのが、「特別軍事作戦」の本質である。米側陣営のメディアはこの事実を自国の国民に伝えず、「ロシアの侵攻・侵略」と一方的に報道し、プーチン大統領を「悪鬼の頭・ベルゼブル(旧新約聖書に登場)」のように非難してきた。

こうした的外れ報道の重大な問題点を指摘したのが、このほど緑風出版から刊行された「米国を戦争に導く 二人の魔女』(著者・成澤宗男=なるさわ・むねお=氏)である。成澤氏は中央大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程修了後、ジャーナリストとして活躍、独立言論フォーラム(ISF)副編集長などを歴任している。植草一秀氏によると、「二人の魔女とはミシェル・フロノイ(オバマ政権元国防次官)とヴィクトリア・ヌーランド(バイデン政権前国務次官)のこと。本書は、冷戦終結後、米国が中国とロシアを『最も差し迫った戦略的課題』として敵対的脅威と見なすようになった現在までの時代の歩み、その軍事外交政策とその軌跡を二人の女性を通じて詳細に描くもの」だ。

ウクライナが東部ドンバス地方を中心としたロシアの正規軍の軍事力を分散させるために、米国の指示で行ったとされるクルスク侵攻は時間がかかったが、ロシアの反撃が始まっており、クルスク州はロシア側に取り戻されてきている。また、ロシア軍は依然として東部の要衝・ドネツク州のポクロウシク(ポクロフスク)に向かって進撃しており、米国・ウクライナのクルスク侵攻は失敗だったと見られるようになってきている(アゾフ海に面した州のひとつがドネツク州で、地図上で少し拡大しています。ウイキペディアより)。毎日新聞は、「ウクライナ越境攻撃1カ月 東部が手薄、作戦は裏目に出た可能性」(https://mainichi.jp/articles/20240906/k00/00m/030/357000c)と題する報道で次のように述べている。

ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃は、6日で開始から1カ月となった。ウクライナ側は一部地域を占拠したが、ウクライナ東部の戦線では露軍の攻勢が強まり、作戦は裏目に出たとも指摘される。(中略)

露軍は最近、鉄道の分岐点などがあるドネツク州の要衝ポクロウシクの制圧に向け攻勢を強めてきた。この都市が陥落すると、ウクライナ軍は補給ルートの再編を迫られ、戦況が大きく悪化する可能性がある。欧米諸国の衛星画像分析によると、ドネツク州での露軍の進軍スピードは、ウクライナ側の越境攻撃の前より速くなっている。英国防省は9月1日、「露軍は最近1週間で前進を加速させ、ポクロウシクから10キロ以内に到達している可能性が高い」との分析を公表した。現地では住民の避難が続いている。ウクライナ軍のシルスキー総司令官も8月27日、「露軍はクルスク州の防衛に3万人の兵力を投入したが、ドネツク州から(の転戦)ではなかった。ロシアは依然、ポクロウシクに戦力を集中させている」と認めた。

ポクロウシクが陥落すれば、誰の目にもウクライナの敗北が明らかになる。ロシア軍は正規軍を投入して、ポクロウシクの陥落・占領を目指していると見られ、その場合はウクライナ戦争はウクライナの敗北で終わりになる。ぜレンスキー大統領の政権は半数の閣僚が辞任するなど、政権は崩壊寸前だ。このため、ロシアをウクライナへの「特別軍事作戦」に誘い込んだ米英としては、ウクライナを「勝利」へと導くためには、ウクライナにNATO保有の長距離誘導ミサイル(米国製)を配備し、ロシアを攻撃する以外に道は残されていない。

米英は以前は兵器の供与や使途に制限を設けてきたが、今や、「なりふり構わず」の状態になっている。このため、米国のプリンケン国務長官は12日、事実上、ウクライナにNATO保有の長距離誘導ミサイル(米国製)を配備し、ロシアを攻撃することを認める発言を行っている(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024091201268&g=int#goog_rewarded)。

ブリンケン米国務長官は12日、訪問先のワルシャワで、ウクライナに提供した長距離ミサイルによるロシア領内への攻撃を認めるかについて「ウクライナが必要なものを確実に備えられるように調整する」と述べ、ミサイルの使用制限解除に前向きな姿勢を改めて示した。ポーランドのシコルスキ外相との共同記者会見で語った。

また、米国のプリンケン国務長官と英国のラミー外相はその前日の11日、ウクライナでぜレンスキー大統領とともに、ウクライナにNATO保有の長距離誘導ミサイル(米国製)を配備し、ロシアを攻撃することを前提にしたと見られる会談を行っている(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024091200228&g=int)。

ブリンケン米国務長官とラミー英外相は11日、訪問先のウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と会談した。3者は、ウクライナ側が求める長距離ミサイルの使用制限解除について協議。ブリンケン氏は、7億ドル(約1000億円)を超える対ウクライナ支援を発表した。

ブリンケン氏は会談後にラミー氏と共同記者会見に臨み、バイデン大統領にウクライナ側との協議内容を伝えると表明。

これに対して、ロシアへの長距離高精度ミサイルによる攻撃は、紛争の危険度の次元がNATOに加盟していないウクライナとロシアとの戦争からNATO対ロシアに上がったと認識していると表明している。BBCの「プーチン氏、長距離ミサイル承認は『紛争への直接参加』 スターマー氏はロシアが直ちに終戦にすべきと主張」と題する報道は次のように伝えている(https://www.bbc.com/japanese/articles/c3ejewpe8w3o)。

プーチン大統領の発言は、ロシア国営テレビが報じた。大統領は、西側のミサイルがロシアを攻撃すれば、「ウクライナでの戦争にNATO(北大西洋条約機構)の国々、アメリカや欧米諸国が、直接参加したということにほかならない」、「直接の参加だ。もちろんこれは、紛争の本質、性質を大きく変えるものだ」と述べた。(中略)

プーチン氏はまた、「ウクライナがロシア領土を攻撃するのを許可したり禁止したりするという問題ではない。ウクライナはすでにドローン(無人機)などで攻撃をしている」と主張。次のように続けた。「だが、西側製の高精度長距離兵器を使うとなると、まったく別問題だ。(中略)ウクライナ軍は、最新の高精度長距離システムを使った攻撃はできない。不可能だ。ウクライナが持っていない衛星からの情報データを使って初めて、それが可能になる。そのデータは、欧州連合(EU)やアメリカ、NATOの衛星だけが得られるものだ」

「NATO諸国の軍人(注:軍部)しか、これらのミサイルシステムに飛行任務を入力できない。それが重要な点だ。ウクライナの軍人がこれをしてはならない。したがって、これらの兵器でロシアを攻撃することを、ウクライナの政権に許可するとかしないとかの問題ではない」「これは、NATO諸国が軍事紛争に直接参加するという決断をするかどうかということだ」

英国のスターマー首相は、ワシントンのバイデン大統領と会談するためにワシントンに向かう機内で、「『この紛争を始めたのはロシアだ』と強調。『ロシアがウクライナを不法に侵略した。ロシアはこの紛争を直ちに終わらせることができる』と述べた」とされている。つまり、ロシアが自らの非を認めて降参すれば、長距離高精度ミサイルによるロシアへの攻撃は行わないと楽観的に考えているということだ。しかし、この認識は本稿冒頭で述べたように、根本的に間違っている。ウクライナ戦争を始めたのは、ロシアを葬り去りたい米英の一国単独覇権派である。なお、その勢力は戦後の世界を戦争に導いてきた。プーチン大統領のウクライナ戦争に対する認識は間違っていない。軽はずみなことをすれば、プーチン政権が本格的な対応を取るだろう。

取り敢えず、現時点ではロシアのプーチン政権の対応を恐れ、米英首脳会談では、「アメリカのバイデン大統領とイギリスのスターマー首相が会談し、ウクライナが求めている、射程の長い兵器をロシア領内への攻撃でも使えるようにするための制限の撤廃について意見を交わしたものの判断は示さず、協議を続けるとしました。こうした状況にゼレンスキー大統領は『強い決断が必要だ』として、制限の撤廃を急ぐよう改めて求めています」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240914/k10014581981000.html)。という、しかし、両首脳ともウクライナの敗北には政治責任を問われるので、長距離構成度ミサイルの使用を認める可能性を否定できない。

ウクライナ戦争終結、トランプ陣営はウクライナ中立化策、ハリス陣営は第三次世界大戦も視野

一方、バンス副大統領候補は12日、「共和党の副大統領候補であるJ・D・バンス上院議員はロシアによる侵略が続くウクライナを巡り、11月の大統領選でトランプ前大統領が返り咲いた場合の和平計画を説明した。ウクライナがめざす北大西洋条約機構(NATO)加盟を認めず、中立国になるべきだと提唱した」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13D7W0T10C24A9000000/)。これは、大統領候補のトランプ氏のミンスク合意Ⅱも踏まえたウクライナ戦争終結策を代弁したものだろう。

ハリス氏は、「第三次世界大戦視野」のバイデン大統領の考え方を引き継ぎつつ、ウクライナ戦争を拡大して、米国一極覇権体制思考を極左的に過激化することになると見られる。なお、民主党内部では妊娠9週間から生後も「人工妊娠中絶」扱いすることが考えられていたが、人間の生命の尊重という基本的人権の最高位にあるものについて、ハリス氏も含む今の同党主流派はどうか考えているのか。朝香豊氏の「日本の再興チャンネル」の次の動画番組(https://www.youtube.com/watch?v=iQHXlBeHj4k)は次項目の経済問題も含めて、有意義だ。米国民はどちらが大統領になれば、米国が衰退を止めて復興し、世界平和が実現するのか、良く考えてほしい。

NHKの「ハリス氏、トランプ氏どちらが大統領になれば日本にメリット?」の動画にひと言

NHKが、長年アメリカ経済を取材してきたという飯田香織解説委員「米大統領選テレビ討論会 日本経済に有利なのは?」という動画を掲載した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240913/k10014580471000.html)。紹介しているハリス増税案についてひと言。

ハリス氏の法人税増税だが、単純ではない。第一に、法人税率を引き上げれば、企業は対応策として賃金のカットに乗り出すことが予想される。これは、ハリス氏が重要視?していると言われる中間層を中心とした被雇用者には物価高の中、大きなマイナスだ。第二に、米国に本社を置いている企業の租税回避地(タックスヘイブン)の逃避を加速し、被雇用者の削減をもたらす可能性がある(https://news.yahoo.co.jp/articles/23ff110b9e93bfe9476d31908b014e4340f8492f)。

課税は、資産・所得(法人・個人)・消費(米国では欧日のようなて付加価値ではないが、小売売上高への課税がある)への課税があるが、アメリカン・ドリムームを志向してきた米国の歴史的伝統を踏まえて、バランスの良い課税精度を再構築するべきだろう。例えば、資産課税を強化して、多額の税金を収めて財政・経済に多大な貢献をした資産家には、日本の勲章のようなものを授与するということも考えられる。資産は「あの世」(That World)には持っていけない。

賭け市場はハリス氏1.1%ポイント・リードだが、上院は共和党多数派獲得予想

日本時間正午の時間で賭け市場(https://polymarket.com/event/presidential-election-winner-2024https://polymarket.com/elections)はハリス氏1.1%ポイント・リードで激戦州のネバダ州でもトランプ氏はハリス氏に追いつかれたが、結局のところ、ペンシルバニア州の勝者が大統領選を制することになりそうだ。ただし、不正選挙の可能性も強いことを考慮に入れておかなければならない。上院は共和党が多数派を獲得するとの予想だ。

11月5日の大統領選挙で「もしハリ」が実現すれば、上院が権限を持つ外交政策で、「ハリス大統領」は進退窮まるようになるだろう。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう