経済・軍事の複合戦争でロシア陣営側、米英陣営側に対し有利に展開へー米英陣営、スタグフレーションで経済破綻

国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が2022年10月05日に公開した最新投稿「米英覇権を潰す闘いに入ったロシア」によると、米側陣営マスメディアの垂れ流し報道とは裏腹に、軍事・情報・経済覇権の「ウクライナ複合戦争」でロシア側陣営は米英覇権打倒に向けて一段と優勢な展開を進めているとのことだ。米側陣営のメディアとは全く正反対の見方だが、田中氏の見方が真実・真相に近いだろう。

田中氏の最新論考・「米英覇権を潰す闘いに入ったロシア」は無料記事でサイトのURLはhttps://tanakanews.com/221005russia.htm。ウクライナ事変の本質は、だらだら続く戦闘ではなく米英覇権を打倒するための「複合戦争」であ。これからの世界に決定的な影響を与えるだけに、必読のサイト・論考とも言える。「複合戦争」というのは、大きくは①軍事②情報③経済覇権ーの三分野からなる戦争のこと。

ウクライナ事変の軍事面では、ロシア側はウクライナの制空権を掌握しているから本来は同国に圧倒的に有利なはずで、ロシアとしても空軍を利用すればNATOが高性能軍事兵器を無償で供与しているとしても(タダより高いものはない。ウクライナには高くつく。その象徴がクリミア半島に加えての東部、南部4州のロシア編入である)、無効化することが可能なはずだ。しかし、米国マスコミを通したウクライナでの戦闘状況報道では、ウクライナが米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO諸国)の軍事援助によって巻き返しに成功しつつあるとの報道が繰り返し流されている。

これは、米側陣営のウクライナ優勢報道にわざとまともな反論をしないことによって、米側陣営の権力者(注:ディープ・ステート(DS)、最近はDSも揺らいでいるようだ)を油断させ、諸国民に誤った認識を持たせるための「情報戦」をロシア側が進めているものと思われる。なお、ロシアはロシア軍がキエフ近郊のブチャや東部ハルキウ州のイジュームでウクライナ住民を大虐殺したという米側陣営の報道にもまともに反論していない。

ブチャの大虐殺に関してはロシア軍が撤退開始してから三日間程度は虐殺が行われているとの報道はない。実際は、ロシア軍が撤退した後、ウクライナ側が反政府系ウクライナ人、ロシア系ウクライナ人を殺害した可能性が高いと言われているが、ロシア側がまともに反論していないのは、田中氏によればロシア側が「偽悪」説を取っているとのことだが、これは、米側陣営を油断させるためウクライナ事変(軍事・情報・経済覇権の複合戦争)の本質を見誤らせるためだろう。

しかし、ロシアが住民投票で東部ドネツク州とルハンシク州(ルガンスク州)、南東部ザポリージャ(ザポロジエ)州、それに南部ヘルソン州を実質的に自国の支配下に置いたことで、米側陣営を油断させつつ、もともとロシア系ウクライナ人が圧倒的多数を占めるノボロシア地域を奪還する戦略は取り合えすば成功していると見てよいだろう。

米側陣営は「不正に行われた茶番劇」で「国際法上は全く無効」などと報道しているが、ノボロシア地地域(ウクライナ東部から南部、南西部(オデッサ州)、ウクライナ隣国モルドバの東部を流れるドニエストル川と、モルドバとウクライナの陸上国境とに挟まれた南北に細長い地域)は、2014年02月の米国オバマ政権時代のバイデン副大統領がビクトリア・ヌーランド国務次官補(いずれも当時)に指示し、ステパン・バンデらを開祖とするウクライナのネオ・ナチ勢力を使って起こした非合法のマイダン暴力革命以降、徹底的に弾圧してきたロシア系ウクライナ人が多数を占め、クリミア半島での住民投票のようにロシアに編入を求めるウクライナ人が多い。それに、国連憲章は民族自決権を前提としている。「茶番劇報道」は意図的な歪曲報道だろう。

なお、取り敢えず旧ソ連邦構成国でつくる独立国家共同体(CIS)は公然とロシアを支持し始めている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221008/k10013841521000.html)。しかし、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)は水面下で結束を強めていると思われ、中国の北京に本部がある上海協力機構(SCO)には原油、天然ガスの埋蔵量では世界最大級のイランが加盟した。サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、新セブンシスターズ(ペトロチャイナ=中国=、ガスプロム=ロシア=、ペトロブラス=ブラジル=に、サウジアラビアのサウジアラムコ、ベネズエラのPDVSA、マレーシアのペトロナス、国営イラン石油を加えた7社。世界の原油生産・埋蔵量の少なくとも30%を占め、原油価格の支配権を持つようになってきている)に加盟し、ロシアと中東産油諸国も関係を強化してきている。

ロシアのプーチン大統領は7日、旧ソビエト諸国でつくるCIS=独立国家共同体の非公式の首脳会議を第2の都市サンクトペテルブルクで開きました。冒頭、プーチン大統領は、出席した首脳たちについて「最も親しい友人で同盟国であり、真の戦略的なパートナーシップの関係がある国々の指導者」と表現し、結束を強調しました。プーチン大統領にとって7日は70歳の誕生日で、会議に出席したベラルーシのルカシェンコ大統領が農業用のトラクターをプレゼントしたほか、ロシア大統領府によりますと、トルコや南アフリカなど友好国の首脳から祝意が寄せられたということです(注:ウクライナ事変に関する日本の報道の紹介・引用は信頼できる内容にしております)。

なお、ユーラシア大陸欧州諸国ではフランスの国民議会で中所得層以下の生活防衛のためにインフレ急進阻止を訴える急進左派や国民連合が多数派を占めたり、イタリアのように民衆生活安定を第一とする民衆政権が誕生しているが、こうした政権、政党は今後、国民の生活防衛のため親ロシア政策を採用せざるを得なくなる公算が大きい。

これに対して、米側陣営は基本的にロシアに対する経済制裁の跳ね返りによるコストプッシュ型のインフレ加速とQT(Quantitative Tightening=量的金融引締め政策=)による強力な金融引き締め(強力な需要抑制政策、要するに不況加速政策)でスタグフレーション入りしつつあるだけに、既に経済的に苦境に陥っていることは間違いない。QE(Quantitative Easing=量的金融緩和政策=)に戻れば多少は延命できるが、実体経済に新規発行通貨が回れば激しいインフレを引き起こすため結局、QTに戻らなければならなくなる。米側陣営の経済政策は将棋で言えば最早、「詰んでいる」状態だ。

その一方で、ロシアは主として欧州への天然ガス供給をストップする一方、インドや中国などの一大需要国に転売している。「国際市場価格」よりも安い価格で転売しているが、国際価格が上昇しているため、ロシアは自国に対する経済制裁にもかかわらず、儲かっている。

なお、ロシアから欧州諸国に天然ガスを供給している海底パイプラインのノルドストリームの一部が破壊された事件が起きたが、ロシアが大陸欧州諸国を非米側陣営に「鞍替え」させる切り札のひとつであるノルドストリーム破壊する理由は見当たらない。米側陣営に属する国の政府機関が、①ロシアに「濡れ衣」を着せる②ロシアと和解しようとする欧州諸国の一部のエスタブリッシュメント勢力に圧力をかける③米英が結託して維持してきた従来の一極覇権(世界支配)体制の維持は米国の経済力の衰退のため最早、不可能であることを認識している米英の「隠れ多極派(注:新たなモンロー主義)」が欧州諸国を非米陣営に「鞍替え」させる(注:田中氏の論考を参考にさせていただいた)ーなどのために行った可能性が強い。

スイスのバーゼルにある国際決済銀行

また、金などの貴金属価格は米側陣営の国際決済銀行などが裏で金価格の上昇を抑制しているため、非米側陣営は米側陣営から金地金を安く買い、ロシアで高く買ってもらっている。こういうことは長くは続かいないから、近いうちに、金相場は1オンス=2000ドルを突破して行くだろう。こうした状況になれば、国際的な金融市場・商品市場は大荒れの展開になり、米側陣営の経済は完全に行き詰まる。

複合戦争でのロシア側の優勢を象徴するものは、ルーブル相場の上昇だ。次の図はグーグル検索によるものだ。

こうしたことを踏まえて、田中氏はやはり露軍は米国側マスコミが報じる通り、弱くて敗北寸前でないのか??。負けてないなら動員体制など組まなくていいはずだし・・・。そんな疑念もよぎったが、いろいろ考えていくとむしろ、これはプーチンが従来の戦略に沿って、新しい段階の作戦を開始したことを意味すると考える方が、私にはしっくりきたとしている。「米英覇権を潰す闘いに入ったロシア」(https://tanakanews.com/221005russia.htm)から、重要と思われる箇所を引用させていただきたい。

まず、冒頭のリード文は次の内容だ。

ウクライナ戦争で最も重要な分野は、ウクライナでの戦闘の状況でなく、金融で世界を支配してきた米国覇権が崩壊していき、ロシアが非米諸国を誘って世界の資源類を握り、米国覇権の崩壊を加速させる国際政治闘争を展開しつつ、世界の覇権構造を米単独覇権から多極型に転換していく国際政治経済の分野である。ウクライナでの戦闘は、この覇権転換にタイミングを合わせる形で、一進一退の感じを長引かせつつ展開していく。

次に、本論から若干引用させていただきたい。

プーチンのロシアは2月末にウクライナに侵攻した当初から、敵方である米国側(米欧日など)に対し、ロシア軍を実態よりも劣勢・劣悪なものに見せ、勝てるのに勝たないで負けているふり・弱いふりをする戦略を採っているのでないか。私は、ずっとそのように疑っている。露軍は、侵攻直後にウクライナの制空権を奪取し、今も保持している。米国側はウクライナ上空に入れない。露軍は制空権を持っているのだから、攻撃してくるウクライナ地上軍を上空から反撃して破壊できる。圧倒的に優勢のはずだ。ゼレンスキーを殺すこともできる。だが露軍は、優勢さを十分に活用せず、地上軍どうしで戦闘してウクライナ軍に押されて撤退したりしている。露軍は「負けている」「弱い」のでなく、ウクライナ側との戦闘で「一進一退の状況」を意図的に演出している感じがする。 (プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類)(中略)

しかも経済面ですら、ロシアと米英が格闘して勝敗をつけるのでなく、ロシアはプーチンとかが「米英覇権を潰す闘いをするんだ」と宣言し続けて石油ガス資源類を米国側に売らないでいるうちに、米英が勝手に金融バブル崩壊していき、欧州も資源不足で経済破綻していく流れになる。米英がこれから金融崩壊していくので、ロシアは戦わずして勝っていく。米英は金融崩壊する可能性がどんどん高くなり、ロシアは何もしなくても不戦勝する。プーチンは、この流れに合わせて「米英覇権と闘って潰すぞ」と宣言し続けることで、何もしなくても「プーチンは米英覇権と闘って勝っている」という話になる。ロシア国内でのプーチンの高い人気が維持される。 (West and Russia already fighting WW3 – former US advisor

プーチンは今回、ロシア国民に総動員をかけたが、その本質は、米英が金融崩壊していくタイミングを狙って「プーチンと露国民が総動員で米英覇権と闘って勝つ」という構図を作り、ロシア人が戦勝感や達成感を得られるようにしている。これは政治闘争だ。実際に兵士として動員する人数は多くない。プーチンは、2月末に米英がQEをやめると同時にウクライナに侵攻して世界を金融vs資源の強い対立に転換し、今回また米英が金融崩壊を加速しそうなタイミングで4州併合と露国民動員、米英覇権潰しの闘いの宣言を発し、ウクライナの戦争を覇権転換の闘いに転換している。日本など米国側の軽信者たちは「マスコミは本当のことしか報じない」というウソに絡め取られ、米国側マスコミの戦争プロパガンダを信じてしまい、本質が全く見えなくなっている。日本などの左翼リベラルは本来なら、米英覇権の世界支配を壊すロシアの闘いに賛同・参加すべきなのに、間抜けにも米英マスコミのプロパガンダを軽信し、ロシアを敵視している。大馬鹿だ。複合大戦で露中非米側が米国側に勝つ

サイト管理者(筆者)の目から見て現在、ウクライナ事変に関する最も注目すべき解説・論考記事は田中氏のものである。さて、英国のブレア元首相は西洋支配の時代は終わると発言したが、米側メディアではあまり注目していない。しかし、これは正しい認識だろう。西洋支配というのは、マックス・ウェーバーによれば、欧米型キリスト教文明圏のことである。西洋支配の時代が終わるというのは、単刀直入に言って、欧米のキリスト教では人口問題・人類存続の根本問題である「結婚」について、曖昧な教えしか出来ていないことが最大の限界になっているためだ。

これに、経済破綻問題が米側陣営の人口減少の難関問題に追討ちをかけている。例えば、カトリックの教義では神父は結婚できないことになっている。しかし、歴史上、カトリックの神父が事実婚を行い、自らの子女を「甥(nephew)」と偽って、「ひいき」にして社会的な地位を与えてきたことは公然の事実だ。「ネポティズム」という言葉はここから出てきた。カトリックの内部からは神父の結婚問題について改革案が出ているが、教義的に解決するのは極めて困難だ。端的に言って、イエス・キリストが処女マリアから誕生したという教えは、科学と整合性を取れない。

旧約聖書創世記第2章18節では「また主なる神は言われた、『人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう』」と記されている。しかし、新約聖書パウロ書簡のコリント人への第一の手紙第7章8節〜9節(注:その前後も参照しておきたい)には「次に、未婚者たちとやもめたちとに言うが、わたしのように、ひとり(注:独身者)でおれば、それが一番良い。しかし、もし自制することができないなら、結婚するが良い。情の燃えるよりは結婚する方が良いからである」と記されている。キリスト教では旧約聖書(メシア=キリストの出現を預言)と新約聖書(キリストとして誕生したイエスの教えについての教義)は連続している聖典だが、「結婚」については曖昧である。

欧米型キリスト教(カトリック、プロテスタント、ロシア正教を含む東方正教会)文明は政治・経済・社会の衰退という文明の終焉期に当たって、真の宗教改革を切実に必要とする秋に来ている。日本では世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会:略称統一教会)問題が噴出しているが、同問題は文明の大転換期という流れの中で考察する必要がある。その際、日本は山本七平や小室直樹が追求した「日本教」に支配されてきたという歴史的事実を踏まえる必要があるだろう。



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