ウクライナ事変、軍事・経済情勢ともにロシア有利のまま推移・長期化かー日本は壊憲阻止に全力を

ウクライナ事変、軍事・経済情勢ともにロシア有利のまま推移しており、ロシアの米欧日陣営に対する経済攻勢(米国一極支配体制の破壊が目的)で長期化する可能性もある。

米欧日陣営のマスメディア報道はこれまで、ロシア軍が不利な展開になりやがて、ロシア側が敗退してウクライナの勝利に終わるとの見方がほとんど(というか全て)だったが一部に、ウクライナ側の反撃を「伝える」ことは忘れていないものの、ロシア軍有利な地域もあるとの見方も出始めた。これに対して国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏は06月04日に公開した「ロシアの優勢で一段落しているウクライナ」(無料記事、https://tanakanews.com/220604ukrain.htm)で、今の軍事・経済的にロシア優勢の状況が続くと米国の一極覇権体制はかなり近い将来に崩壊するとの見方を一段と強めている。

まず、06月05日(日曜日)の朝にNHKが公開したウクライナ情勢によると、NHKはロシア軍が有利になっている状況を次のように伝えている(https://www3.nhk.or.jp/news/special/ukraine/)。

ロシア軍がウクライナへの侵攻を始めてから3日で100日です。


ロシア軍は東部ルハンシク州の完全掌握に向けて攻勢を強めています。ルハンシク州の知事は、ウクライナ側の州内最後の拠点とされるセベロドネツクのおよそ8割がロシア軍に掌握されたという見方を示しました。また、ゼレンスキー大統領は、ルクセンブルクで行った演説で「ロシア軍はウクライナの領土の約20%を支配している」と指摘しました。
一方、ウクライナ側は東部ハルキウ州や南部へルソン州(注:ウクライナの南部、クリミア半島の北部)でロシア軍を押し返していて、欧米側は軍事支援のさらなる強化を表明。ロシアは強く反発するなど100日が経っても対立は深まる一方で戦闘はさらに長期化する見通しです。

「ゼレンスキー大統領は、ルクセンブルクで行った演説で『ロシア軍はウクライナの領土の約20%を支配している』と指摘しました」との報道はロシア軍が有利にウクライナでの戦闘を勧めていることを示す。南部ヘルソン州についてはロシアが05月下旬に同州を制圧したと発表。それ以降、ロシア軍によって設立された暫定政権『ヘルソン州軍民政府』のトップが2022年05月23日、ロシア・ルーブルをウクライナ・フリブナと並行して流通させることを発表している(https://www.47news.jp/world/ukraine/7821429.html)。

ロシア軍が全域制圧を表明したウクライナ南部ヘルソン州で同軍関係者らがつくる暫定政権のトップ、サリド知事は23日、ヘルソン州内で同日からロシアの通貨ルーブルがウクライナ通貨フリブナと並行して公式に流通を始めたと述べた。タス通信などが伝えた。

サリド氏は2ルーブル(約4円)が1フリブナに相当すると述べ、将来は価格表に2種類の通貨で値段を表示することが義務付けられるとの見通しを示した。

NHKの報道では米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO)は高性能軍事兵器を供与すると発表したと言うが、実際に供与されたかどうかは定かではない。だから、ヘルソン州でのウクライナ側の「反撃」なるものが奏功するか、当てにはならない。ロシア側は米国の傀儡政権と化したウクライナ非合法政権が真摯な停戦交渉を行わない限り、東部ドンバス地方から南部ヘルソン州、クリミア半島、南西部オデッサ州、オデッサ州に隣接したモルドバ共和国の汎ドニエストル地域にいたるノボロシア地域構想の実現を目指しているが、ヘルソン州でルーブルを流通させ始めたことなどからすると、その実現に向けて前進しつつあると見られる。

ロシアに対する強力な経済制裁は、欧米日陣営に新型コロナによる国際的な流通網の寸断によるコモディティ不足とあいまって資源価格インフレをもたらし、コストプッシュ型のインフレを引き起こしている。だから、従来型の財政・金融政策(総需要のコントロール政策)では対応が困難だ。このため、ロシア側がウクライナ事変の早期終結を急ぐ必要はない。米国のバイデン政権はこれに「応える」形でウクライナ事変の長期化を目指している(ウクライナ事変を名目とした米国連邦政府予算の横流しが目的と見られる)。

ウクライナの2022年の国内総生産(GDP)は前年に比べて半減すると言われ、ウクライナ国民の15%の人口(約600万人)が海外避難していると伝えられる。ウクライナ政権は米国の傀儡選件であることを止め、ロシアと協調する内政・外交路線に転じて、ウクライナ国民の生命と財産を守るべきである。こうした中で、田中氏はウクライナ事変は軍事、経済とともに優勢な状況で戦闘が一段落していると指摘している。まずは、解説記事のリード文は次のようにまとめている。

軍事でも経済でも、ロシアの優勢で事態が一段落している。しかし日本など米国側のマスコミやネット大手ではこうした状況が全く報じられず、正反対の、ロシアが今にも潰れそうな妄想話ばかりが流布し続ける。米国側の自滅を加速する対露制裁が今後も続き、ロシアはますます優勢になる。こういう状態がたぶん来年まで続く。その間に米国の金融システムがQT由来の大崩壊を引き起こし、米国の覇権が崩れ、ロシアなど非米側が台頭して覇権が多極型に転換していく。マスコミはその流れを報じず、多くの人が気づかないうちに覇権転換が進む。

さてまず第一に、ロシア軍が軍事的に有利な情勢について次のように紹介している。

2月25日の開戦から百日目の6月4日、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアに領土の2割を奪われた状態にあると表明した。ロシア系住民が多いウクライナ東部のドンバス2州(ロシアから見ると、すでにウクライナから分離独立したドネツクとルガンスクというドンバス2カ国)で、ロシア軍がウクライナ軍を大体追い出した。ウクライナ戦争はロシアの勝ちで一段落している。ロシア側は余裕があり、対照的にウクライナ側は軍が疲弊して限界に達している。軍を酷使するゼレンスキー政権と軍部の間に対立があると、ベラルーシのルカシェンコ大統領が指摘している。軍や極右民兵団は、ポーランドがウクライナ西部を事実上併合する件をゼレンスキーが了承していることにも不満だ。 (As Invasion Enters 100th Day, Russia Now Holds 20% Of Ukraine: Zelensky) (Ukrainian military at odds with Zelensky – Belarus) (同盟諸国とロシアを戦争させたい米国

ロシア側から見ると、露軍は正義の戦いに勝っている。米国が2014年にウクライナの政権を転覆して極右とすげ替え、極右民兵団などがロシア系住民を殺そうとする内戦に入って以来、ロシア政府は、ウクライナ在住の同胞(ロシア系ウクライナ人)を守ること(邦人保護)を重視してきた(ソ連時代の名残で、旧ソ連諸国の各地にロシア系住民がいる)。米国は昨年末から、ゼレンスキー政権を動かしてウクライナ東部のロシア系住民への攻撃を強めさせ、ロシア軍がウクライナに侵攻せざるを得ない状況を作り、2月25日の開戦を誘発した。露軍は百日かけてドンバスからウクライナ軍をほぼ排除し、首都キエフ周辺のウクライナ側の軍事施設も緒戦で破壊し、ドンバスのロシア系住民が安心して暮らせる状態をおおむね実現した。 (ウクライナ戦争で最も悪いのは米英) (ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも

露軍はだいたい予定通り戦争(特殊作戦)を完遂している。露軍は大失敗しているという、いまだに続いている日本など米国側のマスコミ報道は大幅に間違っている。2週間ほど前、露軍がハルキウ市街から郊外へ撤退し、それはウクライナ軍が米国から届いた対戦車砲を使って露軍に反撃し始めたからだと言われた。これから露軍の敗退が加速し、ウクライナ軍が建て直して勝っていくとの憶測も流れたが、結局ウクライナ軍が奪還したのはハルキウ市街だけに終わり、他の場所は露軍が優勢のままだ。 (複合大戦で露中非米側が米国側に勝つ) (ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧

ハルキウ市街はノボロシア地帯構想からかなり外れている。次に経済面で米国を盟主とするNATO側(EU諸国側)が不利な状況に陥っていることについて、田中氏は次のように伝えている。

対露経済制裁など複合戦争の面でも、ロシアの優勢と米欧の不利が増し、逆転不能な確定状態になってきている。EUはロシアからの石油ガスの輸入を止める対露制裁をやると言いつつ、実際はほとんど何もできないことが露呈している。欧州諸国はロシアの天然ガスを買い続けているし、石油もパイプラインでの輸送分は制裁しないことを決めた。船積み輸送分は、インドなど非米国がロシアから買った石油を転売してもらうことで欧州諸国が買い続けられる。製油所の多くは特定の油質の原油しか精製できず、欧州にはロシアのウラル原油しか精製できない製油所が多いので、ロシアからの輸入を止められない。インド勢はロシアに値引きさせて原油を大量に買い込み、欧州などに転売して大儲けしている。半面、欧州は合計で1兆ドルのコスト高になると概算されている。 (複合大戦で露中非米側が米国側に勝つ) (Germany Expects Oil Embargo Decision This Week

米国側の諸国が石油ガスの対露制裁をやるほど、石油もガスも国際価格が高騰し、ロシアが非米諸国に売ったり、制裁を迂回して米国側に売る石油ガスの値段も上がり、ロシアの儲けが増え、米国側の損失が増える。米政府内では、財務省などが、対露制裁をやるほど米国民が使うガソリン代など燃料費が値上がりし、米経済を痛めつけるのでもう対露制裁しない方が良いと言い出している。米政府内のネオコンたちはそれに反対で、もっと強く制裁すればロシアが潰れて事態が好転すると言い続けている。実際のところ、ロシアは潰れず優勢になるばかりで、米国の事態は好転しない。6月に入って米連銀のQTが始まったので、そのうち金融崩壊する。 (India is Buying Up Cheap Sanctioned Russian Oil and Selling it to the U.S. and E.U. at Huge Profits) (Russia Uses Chinese Ships And Indian Refiners To Stay Ahead of Oil Sanctions

田中氏によると米国は、中東産油諸国とロシアが掌握するOPEC+に原油の増産を頼み込んだが、原油相場はむしろ1バレル=110ドルから120ドルへと高騰した。これに比べ、ルーブルの対ドル相場はウクライナ事変の勃発時に一時急落したが、前回の増産約束が口先だけのものだったからだ。現在は1ドル=60ルーブル程度でウクライナ事変の前よりも堅調に推移している。こうなると、ウクライナ事変はこれまで世界を一極支配してきた米英ディープ・ステート(DS)の凋落の本格的な始まりになると思われる。加えて、今年秋の米国中間選挙ではバイデン政権側の民主党が大敗し、トランプ共和党が躍進する可能性がある。

世界諸国民の現在と将来はG7諸国ではなくG20諸国(G7諸国=米国、英国、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、日本=の7か国に、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20か国・地域)が握っている。G20諸国のうち、アングロサクソン諸国と日本を除けば、残りの国々は表ではロシアの「軍事侵攻」に対する国連決議には実質的には非賛成(棄権を含む)であり、ホンネは自国が米英アングロサクソン陣営に脅かされることを恐れ、ロシア支持だ。このため、ドル基軸通貨国際決済システム(ブレトンウッズ2)に代替できる原油や天然ガス、金など貴金属、穀物などコモディティに裏打ちされたコモディティ本位制決済システムの構築に乗り出しているようだ。ただし、財政・金融政策が制約を受けない形に仕上げなければならない。

なお、日本のマスメディアではウクライナ事変の本質が全くといって良いほど伝えられず、「ロシアがウクライナに突然軍事侵攻した。だから、日本は中国の尖閣諸島に対する侵攻や台湾有事に備えて敵基地攻撃能力を保有・強化し、軍備も大幅に増強するべきだ」という非論理的な声が支配的になっている。さて、米国は1979年の「米中共同声明」で、中華人民共和国側の①中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府であること②台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることーの二つの主張のうち、①を「recognize(承認)」するとしたものの、②については「acknowlegde(認知する)」と曖昧にし(注:日本は1972年の日中国交正常化のための日中共同声明で①②ともに承認している)、1979年に「台湾関係法」を制定して台湾との間に米華相互防衛条約を結んでいる。

このため、日本にとっては「台湾海峡有事」ということは国際法上有り得ないが、米国にとっては有り得、同国は台湾に武器輸出を行うことができることになっている。ただし、外務省出身(国際情報局長、イラン大使などを歴任)の外交評論家の孫崎享氏によると、米国が関与するのは軍産複合体と政治家の裏金作りのための武器輸出に限られる。米国の専門家のシミュレーションによると、台湾有事の際に米軍は必ず敗北するとの結果が出ているからだ。台湾有事を起こす場合は、日本に先鋒の役割を担わせる。しかし、その場合も中国の精密中長距離ミサイルで在日米軍基地および関連の自衛隊空軍基地は滑走路が攻撃され、使用不能になる。要するに、岸田文雄政権と「与党側似非野党」の主張には全く根拠がない(https://www.youtube.com/watch?v=KYJShRbvuHY)。

日本政府は先のバイデン大統領来日の際に、日米両国が世界諸国の主導権がG20に移っていることを無視したうえで、「安保理常任理事国にしてやる」などと時代錯誤的で出来ないことを言われて「はしゃいでいる」が、その勢いで来る07月10日に行われる予定の参院選で壊憲勢力が衆参両院で三分の二を確保し、壊憲を国会として発議しそうな情勢だ。新潟県知事戦では立憲民主党が連合に支配され、自主投票としたためまともな野党側は50万票の大差で敗退したことが、その象徴だ。参院選後の壊憲に向けて、新型コロナ対策の終焉とGo To トラベル政策の人気取り政策が行われようとしている。壊憲は絶対に阻止しなければならないが、もし壊憲に向けて国民投票という事態になれば日本の国民はマスメディアに踊らされず、壊憲に反対の投票を行う必要がある。日本は平和憲法に則り、米国の隷属国家であることを止め、独自の外交(基本は東アジア共同体の構築)を展開するしか生き残る道はない。


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