ウクライナ戦争の真の目的は英覇権体制の崩壊ーロシアとウクライナの停戦は意味がなく、終戦だけが必要(追記:ウクライナ情勢)

トルコのイスタンブールで行われたロシアとウクライナの交渉代表団による直接の協議は、①千人規模での捕虜交換②交渉の継続ーなどで「合意」した。しかし、ウクライナ戦争のきっかけは2014年2月、当時の英米単独覇権主義者達が、ウクライナのネオ・ナチ勢力(アゾフ大隊)を傘下に置き、合法的に選出された新露派のヤヌコーヴィッチ政権を暴力による非合法的なクーデターで打倒したことに対するロシアの反発にある。そして、そのウクライナ戦争の真の目的は、英米単独覇権主義勢力から米国が離脱したことから、英独仏と欧州連合(EU)を中心とした欧州のリベラル左派全体主義完了独裁政権・勢力(英国覇権体制)の打倒にある。その目的は急ピッチで、達成されつつある。

ウクライナ戦争の真の目的は「英国覇権体制」の崩壊と多極化文明時代の到来

今回のロシアとウクライナの交渉代表団による直接の協議について、日本のオールド・メディアの代表格であるNHKはウクライナの主張する「停戦」にこだわり、「ロシア ウクライナ直接協議 捕虜交換で合意も停戦の発表なし」として、次のように報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250516/k10014807211000.html)。

ロシアとウクライナの停戦をめぐる高官級の直接協議が、およそ3年ぶりにトルコで行われました。それぞれ1000人の捕虜を近く交換することで合意しましたが、停戦の実現をめぐっては、双方から具体的な発表はなく、今後も協議を続けるものとみられます。日本時間の16日午後7時半すぎからトルコのイスタンブールで行われた直接協議には、ロシアのメジンスキー大統領補佐官が率いる代表団と、ウクライナのウメロフ国防相をトップとする代表団、それに仲介役のトルコのフィダン外相が出席しました。(中略)

それによりますと、今回の協議ではそれぞれ1000人の捕虜を近く交換することで合意したほか、首脳会談の可能性についても議論したということです。ただ、停戦の実現をめぐっては、双方から具体的な発表はなく、メジンスキー補佐官は「交渉を続けることが適切だと考えている」と述べていて、今後も交渉を続けるものとみられます。(中略)

(これに対して、ウクライナのゼレンスキー「大統領」は、いつものように)SNSでイギリスのスターマー首相やフランスのマクロン大統領らとともに、アメリカのトランプ大統領と電話会談を行ったと明らかにしました。イスタンブールでの協議について話したとしています。その上で「ウクライナは真の平和を実現するために可能な限り迅速に行動する用意があり、世界が強い姿勢を維持することが重要だ」と強調しました。そして「われわれの立場はロシアが完全で無条件の停戦を拒否した場合、厳しい制裁を科さなければならないというものだ。ロシアが戦争を終わらせる準備ができるまで、ロシアへの圧力を維持する必要がある」と訴えました。

しかし、ウクライナ戦争はロシアがドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州を併合しており、戦力的には圧倒的に優位に立っている。ウクライナに都合の良い「無条件の停戦」は、英米単独覇権主義勢力から米国(トランプ政権)が離脱したため、英独仏と欧州連合(EU)を中心とした欧州のリベラル左派全体主義官僚独裁政権・勢力の軍事支援を背景に、敗北を喫しているウクライナ軍を立て直しするためにある。

ただし、既にレームダック化したドイツのメルツ首相が施政方針演説で「ドイツ軍を欧州最強に」と明言しているように(https://www.asahi.com/articles/AST5G71MMT5GUHBI003M.html)、英独仏と欧州連合(EU)を中心とした欧州のリベラル左派全体主義独裁政権・勢力は軍事力を強化して、ウクライナを支援するつもりだ。しかし、それは実際には不可能だろう。欧州諸国・EUは、米国の庇護(露骨に言えば、米国に対して経常黒字でドルを貯め込み、同国を搾取するシステムを構築)の下に、「福祉国家」として国民の支持を得てきた。リベラル左派全体主義官僚独裁政権・勢力は軍事力を強化しようとすれば、国民の大きな反発を招く。

実際、欧州ではオールド・メディアが「極右」と呼ぶポピュリズム勢力(真のポピュリズムとは迎合主義ではなく、政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、人民に訴えてその主張の実現を目指す運動である=Wikipedia=)が国民の期待に応える真の民主勢力として大きく台頭している。イタリアでは右派のメローニ政権が誕生し、欧州で着実に影響力を強めつつあるが、「極右」と呼ばれるドイツの「国民のための選択肢」、フランスの「国民連合」、英国の「リフォームUK」などが、国民の支持を大きく伸ばしている。

イタリアの右派政権を指導するメローニ首相=ロイター首相

フランスのマクロン政権は、国民連合を率いるマリーヌ・ルペン氏を「横領罪」で次期大統領選挙に出馬できないようにしたし、「ドイツで過激派などを監視する情報機関の憲法擁護庁は2日、『ドイツのための選択肢』を極右団体に認定」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250503/k10014795831000.html)した。スターマー首相の私邸も放火によって消失したが、犯人は「ウクライナ国籍のロマン・ラヴリノヴィッチ被告」(https://www.bbc.com/japanese/articles/cx27q8z4544o)だという。何故、ウクライナを軍事・経済面で支援しているウクライナ国籍の人物が首相私邸を放火したのか、謎だ。

ロマン・ラヴリノヴィッチ被告の放火が真実なら、ウクライナの反ゼレンスキー政権に属する人物である可能性が強いが、ウクライナ国民の支持率が低下しているゼレンスキー政権の支持率を高めるためのプロパガンダとして利用される可能性がある。しかし、結局のところは、国民志向で国民主権を目指す「極右」勢力が民主主義革命を起こし、英独仏と欧州連合(EU)を中心とした欧州のリベラル左派全体主義完了独裁政権・勢力を打倒して、政権の座につくだろう。

その兆候は次第に表れ始めている。最大のNATO基地を建設中のルーマニアでは、第一回の大統領選挙で「極右新露派」のカリン・ジョルジェスクが首位になったことから、欧州リベラル左派勢力の圧力で憲法裁判所が同選挙を無効とし、ジョルジェスク氏も第二回大統領選挙に出馬できないようにした。しかし、第二回の大統領選挙でも、極右政党とされる「ルーマニア人統一同盟(AUR)」を率いるジョルジェ・シミオン氏が40%超の得票率で首位となったことから、ルーマニアのチョラク首相は5日、辞任を余儀なくされた(https://www.bbc.com/japanese/articles/c78723935ydo)。

「極右」勢力を弾圧すればするほど、国民は「極右」政党・勢力を支持するようになる。オールド・メディアが根拠なしに「極右」と呼ぶ勢力が、民主主義の担い手になっているというのが、偽らざる欧州の政治情勢だ。

ルーマニアで4日、やり直しの大統領選挙の第1回投票が実施され、極右政党「ルーマニア人統一同盟(AUR)」を率いるジョルジェ・シミオン氏が40%超の得票率で首位となった。これを受け、与党・社会民主党のイオン=マルチェル・チョラク首相は5日、辞任を表明した。また、同党が親欧州の連立政権から離脱するとした。ルーマニア第一主義を公約に掲げる、欧州懐疑派のシミオン氏は4日、やり直しの大統領選挙の第1回投票で40.9%の票を獲得。18日の決選投票でも勝利が予想されている。

ところで、英国では大英帝国時代からの世界覇権支配体制が残存している。英覇権体制の狙い・特徴は、世界の資産家を糾合し、タックス・ヘイブン(租税回避地)などに誘導するなどして、世界支配体制を維持・強化するところにある。国際政治学者の藤井厳喜氏によると、この英覇権体制の活躍の場が、金融街のシティーであり、シティーを通じて世界覇権体制を強化しているのが、1902年に設立された英国の最上層組織とされる「ピルグリムソサエティ」だ(https://www.youtube.com/watch?v=9Y48tl4nTP8)。

国際情勢解説者の田中宇氏の「諜報界(ディープ・ステート=DS=)」論と併せて考えれば、サイト管理者(筆者)の予想では、この「ピルグリムソサエティ」が第二次世界大戦前後、ロックフェラー家らが国際連合を創設し、世界の諸国家の主権の自主独立性と世界の多極化を推進しようとしていた米国をそそのかして、諜報界(ディープ・ステート=DS=)を組織し、大英帝国の覇権体制維持・拡大のノウハウを伝授することにより、英米単独覇権体制を築いてきたと考えられる。

この英米単独覇権体制の傘下に属し、協力してきたのが、米国の民主党系の政治家・経営者(資本家)である。その傾向は、米ソ冷戦が米国の勝利で終わって以降、より強くなったが、米国は巨額の財政赤字、超大幅な経常赤字を抱える世界最大の対外純債務国家に成り下がってしまい、国内の産業は壊滅して、金融界の「錬金術」でしか生き残れない、貧富の格差が想像を絶するほどの軟弱国家に成り下がってしまった。こうした状況の中で、諜報界(ディープ・ステート=DS=)は単独覇権派とロックフェラー家などの多極化勢力との暗闘が展開され、イスラエル右派のリクードが多極派に加わることによって、単独覇権派は覇権争いで敗北するようになってしまった。

トランプ大統領は多極派に属するから、英国を中心とした単独覇権派の崩壊・解体を目指している。話の途中だが、これまで「米側陣営」と述べてきた陣営は既に、「英側陣営」に縮小しているから、今後は「英側陣営」と呼ぶことにする。話を元に戻すと、そのひとつが、ウクライナ戦争を継続させることによる英独仏や欧州連合(EU)の没落である。これが、ウクライナ戦争の真の目的である。

プーチン大統領は、ウクライナ戦争の終結(和平)は、「紛争の根本原因を除去すること」の持論をまったく崩していないが、既に引用したNHKの記事では、「ウクライナのNATO=北大西洋条約機構への加盟の断念を含む『中立化』などを主張しているほか、領土をめぐっても譲歩する姿勢は示しておらず、双方の立場の隔たりは大きく、協議は難航が予想されます」としか解説していない。

プーチン大統領の言う「紛争の根本原因」とは、オバマ大統領がバイデン副大統領に指示し、実務指導者としてビクトリア・ヌーランド国務次官補がウクライナのネオ・ナチ勢力を指揮して起こしたマイダン暴力クーデター以降、ウクライナの政権を主導するようになった「ネオ・ナチ」勢力の一掃である。このネオ・ナチ勢力は、英国主導のリベラル左派全体主義官僚独裁政権・勢力、つまり、英側陣営の傘下にある。プーチン大統領も、「米側陣営」から米国(トランプ政権)が離脱し、「英側陣営」に希薄化して、多極化時代が本格化していることを認識しているはずだ。

トランプ大統領とプーチン大統領=BBC

だから、NHKも先程の記事で、「アメリカのトランプ大統領は訪問先のUAE=アラブ首長国連邦で、記者団からロシアのプーチン大統領との会談の時期について問われ、『機会を設定できしだいすぐにだ』と述べ、早期の会談の実現に意欲を示しました」と報道し、米露協調を水面下で進めていることを伝えざるを得なくなっている。BBCも、「ウクライナ和平交渉、突破口開くには『トランプ氏とプーチン氏の直接協議』必要と米(国務)長官」と題する報道で、次のように述べている。

トルコ・イスタンブールでのウクライナとロシアの和平交渉が16日まで延期される中、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は15日、和平交渉に大きく期待はしていないとし、交渉の進展にはドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の直接協議が必要だと述べた。

ルビオ米国務長官は、「トランプ大統領とプーチン大統領がこの件について直接やりとりするまで、(和平交渉で)突破口が開けるとは思わない」と、トルコ南部アンタルヤでの北大西洋条約機構(NATO)外相会合後に語った。

こうした諜報界(ディープ・ステート=DS=)の大転換について田中氏は14日、「世界にとって、ウクライナ戦争の目的は、覇権勢力である英欧を潰すことだ。欧州を主導するEU独仏は英国の傀儡であり、英欧とは「英国系」のことだ。米国は、トランプになって覇権勢力から抜け、戦後の『米英覇権』は今や『英国系覇権』に変わった」をリード文とする解説記事を投稿・公開された。タイトルは「英欧つぶしの進展(https://tanakanews.com/250514euus.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)」である。一部、引用させていただきたい。

ウクライナは、徴兵できる若者が残っておらず、戦争継続が難しくなっている。ロシアは、かなり手加減してやることで戦争状態を維持している。軍事的に、もうロシアは負けない。経済的にも、ロシアは好調だ。その大きな要因は、中国がロシアの石油ガス(注:天然ガス)食糧など資源類を高値で買い続け、戦費を供給し続けていることだ。Trump says he will ask China to help with Ukraine conflict resolution

中国がロシアの資源類をいくらで買っているのか公表されていない。専門家たちは、中国はロシアの足元を見て安く買い叩いているはずだと言っている。しかし、だとしたら露経済の好調さの説明がつかない。中国は、こっそりロシアから高めの値段で資源類を買ってやり、英欧の自滅過程が完了するまでロシアがウクライナ戦争を続けられるようにすることで、中国自身は全く表に出ずに、アヘン戦争以来の仇敵である英国系を潰すことができる。今の状況下で、中国がロシアの資源類を安く買い叩くはずがない。ここ数年(コロナ以来)、隠れ多極派の策略に乗せられて、日米欧の専門家やマスコミは、露中の優勢や巧妙さを認めることを許されず、どこまでも馬鹿な存在になっている。Putin and Xi make progress on key gas pipeline

サイト管理者(筆者)の見立てでは、中国はBRICSの盟主であり、先の「ロシア戦勝80周年記念大会」で、ウクライナ戦争の終結・和平は、「紛争の根本原因を取り除くこと」だと言うプーチン大統領の主張に同意するなど、中露同盟をさらに強化した。トランプ大統領も中国の習近平主席と水面下で交渉しているようだ。これからの国際情勢は、英国系覇権体制が崩壊・消滅する中で、トランプ大統領、プーチン大統領、習近平国家主席、右派リクードの党首であるネタニヤフ・イスラエル首相が想像する多極化文明時代に発展するだろう。

トランプ大統領がサウジアラビアを訪問、同国の最大権力者であるモハメッド・ビン・サルムーン(MbS)皇太子と会い、巨額の「アメリカ製武器1420億ドル(約21兆円)相当をサウジアラビアが購入すると発表。ムハンマド皇太子は、対米投資は最終的に1兆ドル規模に達する可能性があると述べた」(https://www.bbc.com/japanese/articles/cx2jv7nlk70o)のは、イスラエルとサウジアラビアで「拡大アブラハム合意」を結び、中東に真の安定と平和を取り戻すためだ。

マックス・ウェーバー

トランプ大統領はまた、ロシアの水面下での支援を受けて、イランとの関係改善に努めている(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR15BR00V10C25A5000000/)。脱第二次世界大戦後の世界の多極化文明時代の到来は、すぐそこにまで来ている。そのためには、多極化文明を調和・統合する歴史の転轍手(線路=時代の流れの切り替え役)としての高度な宗教理念が必要だ。

ゼレンスキー政権内部に亀裂が生じ、政権転覆も

ロシア在住の日本人実業家でロシア・欧州の地域情勢アナリストのニキータ氏が17日土曜日に公開したロシア・ウクライナ両国代表団協議についての動画(https://www.youtube.com/watch?v=7i6lwM8B6Pw)によると、①ゼレンスキー「大統領」はロシア・ウクライナ間の交渉をコントロール出来ておらず、欧州のリベラル左派全体主義官僚独裁政権に操られている存在でしかない②ウクライナからゼレンスキー政権内部に亀裂が生じており、崩壊して新政権が樹立されるとの情報が出ている(ただし、反ゼレンスキー氏側も戦争継続派でしかない)③今回のイスタンブール協議は、米露が仕組んだものと思われ、米露の水面下での交渉(ニキータ氏が「グローバリスト」と呼んでいる英覇権体制の解体・消滅が最終目的)が着実に進んでいるものと推測できるーなどの情勢分析を行っている。

トランプ大統領のサウジアラビアなど中東訪問での発言

二国間の交渉というのはまず、交渉代表団を送り、交渉協議が完全に煮詰まってから両国首脳が直接会って会談、合意文書に調印するというのが、本来の在り方だ。ゼレンスキー「大統領」がイスタンブールに来なかったと言って、プーチン大統領を批判するのはお門違いである。両国はロシアの「特別軍事作戦」開始直後の2022年5月、イスタンブールで代表団が交渉を行い、和平でほぼ決まっていたが、当時の英米覇権派の傘下に会ったバイデン大統領の指示で、英国のボリス・ジョンソン首相がウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領に和平案を放棄させたというのは、有名な事実だ。

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