次第に激化するロシアの対ウクライナ報復ードニプロペトロウシク州「侵攻」を本格化(追記:トランプ・マスク両氏の「プロレス?! 」)

6月1日にウクライナが行ったウクライナ・ロシアの国境地帯から遠く離れたロシア東部の4飛行場へのトラックで運んだドローンによる攻撃に対する、ロシアの報復攻撃が本館化しようとしている。当面は、これまでロシア軍が行っていなかったドニプロペトロウシク(ロシア語ではドニエプロペトロフスク)への侵攻だ。プーチン大統領としては、堪忍袋の緒が切れて、超音速中距離ミサイルのアレーシュニクなどを中心に、キエフ政権も「射程」に据える可能性がある。なお、トランプ大統領とイーロン・マスク氏との「確執」は、民主党を正常化するための「プロレス」の可能性もある。

キエフ政権解体に向けて動き出したウクライナ戦争

オールド・メディアの代表格であるNHKは次のように伝えている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250609/k10014829511000.html)。

ロシア国防省は、8日、軍の部隊が新たにウクライナ東部のドニプロペトロウシク州への攻撃を行っていると発表しました。ウクライナ軍は州内への侵入を否定していますが、ロシア側は力ずくで占領地を拡大させる構えも示し、領土をめぐる攻防が激しさを増しています。ウクライナへの侵攻を続けるロシアの国防省は8日、軍の部隊の1つが、ウクライナ東部ドネツク州の西の端に到達し、隣のドニプロペトロウシク州への攻撃を行っていると発表しました。ロシアは、ウクライナ東部と南部の4つの州について一方的に併合を宣言していますがドニプロペトロウシク州は含まれていません。

アメリカのシンクタンク、戦争研究所による7日時点の分析では、ロシア軍がドニプロペトロウシク州の近くで攻勢をかけています。こうした中、ロシア安全保障会議のメドベージェフ副議長は8日、SNSで、ドニプロペトロウシク州への攻勢を始めたとした上で、「戦争の現実を交渉の場で認めようとしない者は、戦場で新たな現実を突きつけられることになる」と投稿し、力ずくで占領地を拡大させる構えを示しました。一方、ウクライナ軍の参謀本部の報道官は、8日、地元メディアに対し、「発表は偽情報だ」として州内への侵入を否定しました。

これに対して、米国のCNNはロシア軍がドニプロペトロウシク州に侵入したと伝えた(https://www.cnn.co.jp/world/35234002.html)。

キーウ(CNN) ロシアは8日、ロシア軍が過去数カ月にわたり到達を試みていたウクライナ中部ドニプロペトロウシク州に初めて進軍したと主張した。ウクライナ中部へのロシア軍の侵入は、疲弊しているウクライナ軍に新たな問題を引き起こす可能性がある。

ロシア軍が進軍したとされるウクライナのドニプロペトロフスク州=ロイター

 

ロシア国防省によれば、ロシア軍の第90親衛戦車師団の小隊がドネツク州とドニプロペトロウシク州の州境に到達した。ドネツク州の大部分はすでにロシア軍の占領下にある。部隊はその後、ドニプロペトロウシク州へと進軍を続けたという。進軍の規模は不明で、ロシア側の攻撃の意図もわかっていない。CNNは戦場からの報告を確認できていない。ウクライナはロシアの進軍を否定している。

6月1日にウクライナのキエフ政権は、ウクライナ・ロシアの国境地帯から遠く離れたロシア東部の4飛行場へのトラックで運んだドローン攻撃を行った。しかし、ロシア側は翌日2日にトルコのイスタンブールで行われた停戦協議に出席した。普通なら、停戦協議への代表団の派遣を中止するところだが、ロシア側が出席したということは、本格的な報復攻撃を実施する意思を表明したというところだろう。

キエフ政権の言い訳を誇大に掲載するNHKよりは、やはり、CNNの方が少しは信頼できるだろう。ロシアは「緩衝地帯」の設置という名目で、スミ州などキエフに近い州に対しても侵攻を行っているが、ドニプロペトロウシク州にも侵攻したということは、ロシアのプーチン政権がキエフ政権の解体に乗り出したことを伺わせる。ロイター通信によると、ロシアはまた大規模なドローンによるウクライナの首都キエフや港湾都市オデッサの攻撃を9日、10日と二日連続で行った(https://jp.reuters.com/world/ukraine/SVWPK7UOEZOPHDHTA37D74QBGM-2025-06-10/)。

[キーウ 10日 ロイター] - ロシアがウクライナに対し再び大規模なドローン(無人機)攻撃を行い、首都キーウの大半の地区のほか、南部の港湾都市オデーサの産科病棟が被害に遭った。ウクライナの現地当局者が10日未明に発表した。オデーサでは住宅地への攻撃で1人が死亡した。この夜間攻撃は、ロシアが9日にウクライナに行った大規模なドローン攻撃に続くもの。ロシア政府は一連の攻撃について、ウクライナが最近ロシアに仕掛けた攻撃への報復措置だとしている。

なお、同じくロイター通信によると、トランプ政権の当局者は、「ロシアの報復攻撃は今後、多面的な攻撃になり、予想今後さらに本格化する」と予想している(https://jp.reuters.com/world/ukraine/6MLAJIXWTNJAXMTFXZZ4DOXGKQ-2025-06-09/)という。

ロシアは今月初めのウクライナによるドローン(無人機)攻撃に対する報復を表明したが、米政府は本格的な報復はまだ始まっておらず、今後、大規模な多面的攻撃が行われる可能性が高いとみている。複数の米当局者がロイターに明らかにした。本格的な報復のタイミングは不明で、ある関係筋は数日中に予想されると指摘。別の米高官は、報復にはミサイルやドローンなどさまざまな航空能力が含まれる可能性が高いと予想している。(中略)

ロシア国防省は6日、ウクライナの「テロ行為」への報復として、ロシア軍がウクライナの軍事施設などに対し夜間に大規模攻撃を実施し、成功したと発表した。 もっと見る
西側の外交筋は、報復が始まった可能性があるが、今後、ウクライナに明確なメッセージを送るために、政府庁舎のような象徴的な建物が標的になり、攻撃が激化する可能性が高いと分析している。

プーチン政権は大量のドローンやミサイルを使ってウクライナの制空権をさらに弱体化する報復攻撃を行っているが、ロシア在住のロシアを中心とした国際情勢アナリストの11日時点の「ニキータ伝〜ロシアへのいざない」チャンネルの最新投稿動画「行方不明者〜終戦2年後に裁判で認定⁉️」(https://www.youtube.com/watch?v=-oZEJKyDRXc)から、報復攻撃関連のキャプチャ図を掲載しておく。

現時点での大規模で多面的な報復攻撃が今後、キエフ政権を揺るがす本格的なものになる可能性もある。例えば、射程距離300キロメートルの超音速中距離ミサイル・アレーシュニクを中心に他のミサイルやドローンを使って、ウクライナを徹底的に攻撃すれば、ウクライナにとっての最悪のシナリオである「無条件降伏」を迫ることができるかもしれない。トランプ大統領は、プーチン大統領から「核搭載ミサイルは使用しない」との言質は取れていない。プーチン大統領が核ミサイルを使用することはないだろうが、アレーシュニクを多用すれば、キエフ政権は解体できる。

キエフ政権は地下に重要施設を建設しているようだが、ロシアのプーチン政権は重要施設の位置を熟知しており、その攻撃の準備も水面下で行っていると見られる。ウクライナ戦争の終わりが始まったと見るべきだろう。ウクライナでは、英国大使に左遷されたウクライナ軍元軍最高司令官のヴァレリー・フェードロヴィチ・ザルジニー氏の復権もささやかれている(「追い詰められたキエフ政権」https://www.youtube.com/watch?v=K-nUGfZ9tkE)。

トランプ大統領と超大企業経営者のイーロン・マスク氏の確執は「プロレス」の可能性も

トランプ大統領と超大企業経営者のイーロン・マスク氏の「確執」はもはや修復不能との見方が一般的だが、マスク氏が民主党に替わる「新党」の結成を主張し出したことから、民主党を解体して「新民主党」を結成するための、「プロレス」の可能性もある。国際情勢解説者の田中宇氏は、9日に投稿・公開した「イーロンマスクを激怒させた意味(https://tanakanews.com/250609elon.htm)」で、次のように匂わせている。

トランプは、政権をとった主目的である覇権解体や多極化の推進をエスタブ議員から邪魔されないよう「エサ」として政府予算の大盤振る舞いを放置している。米国は財政と金融の負債が巨額にバブル膨張しており、いまさら財政緊縮しても崩壊は免れない。むしろトランプは、自分の任期中のバブル崩壊を防ぐ延命策として財政赤字の増加を放置している。これらの事情により、財政改革を進めたいマスクの努力や支持者の期待は無視されている。マスクが「善」でトランプが「悪」でなく、米国を立て直したい理想主義で直裁的なマスクと、米国をダメにしてきた覇権を放棄することを優先する現実主義で巨視的なトランプが対立している。All Hell Breaks Loose After Musk Slams GOP Bill As "Disgusting Abomination"Views of Elon Musk)(中略)

だが、別の見方もできる。マスクを騙したトランプ陣営は、マスクが激怒して離党するのを予期していたはずだ。政治活動家のマスクが新政党を作り、共和党から支持者を引き抜いた場合、共和党の支持者が減り、今後の選挙で勝てなくなる。それならトランプはマスクを騙さないはず。トランプがマスクを騙し、人気取りのためにDOGEを作った時点で、最終的にマスクが激動(注:激怒)して離党して新政党を作っても、大した脅威でないか、むしろマスクが民主党をエスタブ覇権主義者たちから乗っ取って覇権放棄に協力してくれると予測していたとか。大統領になる前にトランプが作っていたテレビドラマの筋書きみたいだ。そんな予測ができるのかとも思うが、諜報界とかリクード系の心理戦略はすごいものがある。今後どうなるかを見る必要がある。Polling on Elon Musk glaring red light for Republicans

サイト管理者(筆者)としては、レーガノミックスの時代から米国の三つ子の赤字(巨額の財政赤字と累積連邦政府債務残高、大幅で持続する経常赤字、世界最大の対外純債務残高)が米国経済の致命傷になると予想していたが、この悲劇を回避するために二期目のトランプ大統領が誕生した。ただし、トランプ大統領は、三つ子の赤字の解消より、覇権放棄を優先させている。

覇権を放棄して、文明の多極化を進め、国内に高度な製造業を中心とする製造業を再生させることが出来れば、米国は米州主義を基盤にして再生できる。長距離核ミサイルを含むあらゆるミサイルを撃退できるとされる「ゴールデン・ドーム」はその基幹的技術になる。

インターネットやAIは、軍事技術から生まれたり、相乗効果で飛躍的に発展した。イーロン・マスク氏のスペースX(スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ)は、宇宙輸送サービス会社であるほか、衛星インターネット・アクセス・プロバイダでもある。トランプ政権も、スペースXを必要としている。

テキサス州にあるスペースXの本社

田中氏は「プロレス」とは断定しておらず、様子を見守るとしているが、カリフォルニア州ロサンゼルス市の違法移民の暴動にトランプ大統領が軍による鎮圧を命じたことから、民主党は今後、カマラ・ハリス氏などの極左派が解体に向かうだろう。そうした動きの中で、トランプ大統領と民主党から共和党に転じたマスク氏が、民主党を乗っ取るための「プロレス」をうっていることも有り得ない話ではない。

一方、国際情勢アナリストの及川幸久氏によると表の動きでも、バンス副大統領の仲介で、トランプ大統領とマスク氏が再び手を組む動きを見せているようだ。マスク氏は、トランプ大統領のロサンゼルス市などで起きている違法移民による大々的な暴動に対して、トランプ大統領が州兵や海兵隊を繰り出したことを評価しており、エプスタイン文書にトランプ氏の名前が掲載されていると発言したことに対しては謝罪していると伝えられるなど、関係改善の動きも見せているというhttps://www.youtube.com/watch?v=U_fIjpx2eW0&t=2458s)。

米国の累積債務残高は36.2兆ドルで10年物国債金利は4.5%に急上昇している

ただし、レーガノミックスの時代から米国の三つ子の赤字(巨額の財政赤字と累積連邦政府債務残高、大幅で持続する経常赤字、世界最大の対外純債務残高)の解消(解決)は極めて困難であることは強調しておく必要がある。

 

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