ロシア、金資源価格本位制移行に自信かー「特別軍事作戦」の隠れた最大の目的は新国際決済システムの確立

ロシアによる「特別軍事作戦」の目的は、ロシアによるウクライナ政府内(国防軍含む)に根付くネオ・ナチ勢力の一掃にあることは間違いないが、隠された最大の目的は弱肉強食の新自由主義によって破綻しつつある米欧日諸国の経済と崩壊しつつあるドル基軸管理通貨制度(ブレトンウッズ2)を土台とした国際決済システムに替わる金資源本位制・調整可能な為替相場制による新たな国際決済システム(ブレトンウッズ3)の確立だ。ロシアが天然ガスの決済をルーブル建てにしたことが成功しつつあり、ロシアはブレトンウッズ3確立に自信を深めつつあるようだ。国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が4月30日の解説記事で明らかにした。

田中氏の「ロシアを皮切りに世界が金本位制に戻る」(https://tanakanews.com/220430gold.php、有料記事)がその解説記事だ。田中氏は同氏のサイトでソ連崩壊後の米英ディープ・ステート(DS)の中東地域への軍事侵略を批判し、さらに弱肉強食の新自由主義によって米欧日諸国の経済が破綻して、ドル覇権体制も崩壊することを予測しておられた。今回のロシアによるウクライヘの「特別軍事作戦」の大きな狙いのひとつは、ウクライナの親米傀儡政権による東部ドンバス地方などロシア系ウクライナ国民の虐殺からロシア系ウクライナ国民を守ることだ。しかし、田中氏が強調してこられたもう一つのロシアの狙いは、サイト管理者(筆者)の言葉で言えば弱肉強食の新自由主義と急激なコストプッシュ・インフレによって、深刻な状況に立たされている米欧日諸国の経済(日本が見本。フランスも国民生活の窮状の解決を訴えマリーヌ・ルペン氏が善戦)と崩壊しつつあるドル基軸管理通貨制度(ブレトンウッズ2)を土台とした国際決済システムに替わる、金資源本位制・調整可能な為替相場制を土台とした新たな国際決済システム(ブレトンウッズ3)の確立だ。

そのためには、世界諸国に対する覇権を一手に握ってきた米英のディープ・ステート(DS)と本格的に戦わなければならないが、プーチン大統領は、サイト管理者(筆者)流に言えば、ディープ・ステート(DS)との本格的な戦いを決断し、「特別軍事作戦」に踏み切ったようであり、それに成功しつつあるようだ。なお、サイト管理者(筆者)は以前に、プーチン大統領がディープ・ステート(DS)との本格的な戦いを決断したことを示唆する記事を投稿させていただいた。

田中氏の解説記事は有料記事なので、引用は最低限にして紹介させていただきたい。詳細は有料会員となっていただいて、ご覧頂きたい。まず、トップページには各投稿記事のリード文があり、有料・無料会員問わず読むことが可能なので、こちらから引用させていただきたい。

【2022年4月30日】ロシア政府が「金資源本位制」の導入を検討していることを正式に認めた。3月末からロシア中銀が1g5000ルーブルの固定相場で国内銀行から金地金を買い始め、金本位制への移行が感じられていた。これまで非公式だった金資源本位制の導入が今回正式なものになったことは、この導入がうまくいきそうだと露政府が考えていることを感じさせる。金本位制の導入は人類にとってニクソンショック以来51年ぶりだ。QEの終了によっていずれ米国側の金融が大崩壊してドル基軸が喪失すると、日米欧の米国側も通貨の立て直しのために金本位制を導入せざるを得なくなる。世界はドル崩壊と金本位制に向かっている。

ニューヨーク証券取引所

 

田中氏がこのリード文を投稿された背景には、本サイトでも投稿させていただいたが、ロシアのプーチン大統領が天然ガスの支払いをルーブル建てに変更したことがある。田中氏の解説記事によると、ロシアからの天然ガスの輸入なくしては経済が回らない欧州ではドイツがルーブルによるロシア産天然ガスの購入に踏み切った。大使館が米国によるウクライナ事変に対する「司令塔」になっているポーランドでは、ロシアからルーブル建てで天然ガスを購入しているドイツから密かに天然ガスを回してもらっているようだ。天然ガスの9割をロシアに依存しているブルガリアでは、国民経済が相当に厳しくなり、経済界や国民が同国政府に対してロシアとの再交渉を求めているという。

サンクトペテルブルグのガスプロム本社ビル、ラフタ・センター

 

こうした動きが、中国など米国から敵視されている非米欧諸国で強まることが予想される。まず第一に、米国を牛耳るディープ・ステート(DS)の言うことを聞かなければ、欧米日諸国陣営に持つ資産を凍結=剥奪されてしまうからだ。第二に、弱肉強食の新自由主義によって破綻しつつある米欧日諸国の経済と崩壊しつつあるドル基軸管理通貨制度(ブレトンウッズ2)の前ではドルは、極端に言えばペーパー・マネーに過ぎず、実物資産の裏付けはない。1971年8月のニクソンショックによってドル金本位制=ブレトンウッズ1=は崩壊した。その当時は金1オンス=35ドルだったが現在では1オンス=1900ドル〜2000ドルのボックス圏内にある。それだけドルの価値は激落しているわけだ。ドルは最悪の場合、寒い冬の日に暖炉で燃やして暖を取るしか使い道がなくなる。

本来、輸出などの決済通貨は為替差損を防止するために自国建てで行うのが当然だ。なお現在、急落(実質実効為替レートでは暴落)している円相場については、日銀がQE(Quantitative Easing=量的金融緩和=)を止めて金融政策を転換することが必要だが、日本政府が保有している大量の米国債を(一部または相当部分)売却して、円買い介入を行うという緊急策もある。かつて、橋本龍太郎首相が1997年6月23日、ドル売り・円買いの為替介入のための介入ドル資金を調達するため「米国債を売りたい気持ちにかられることがある」と語ったことがあった。しかし、「もし売るようなことがあれば(米国への)宣戦布告とみなすと脅された」との噂が出たこともある。対米隷属国は事実上、米国債を売却できないことになっている。「トモダチに貸したおカネは帰ってこない」(植草一秀氏「日本経済の黒い霧」)のである。

さて、田中氏の解説記事を若干引用させていただきたい。

プーチンは、対露貿易におけるドル使用の拒否・ドル基軸制の拒否を世界に強要している。ロシアを含む非米諸国は、相互の貿易にドルを使わないようになっている。ドル決済を好む米国側に対しては、欧州へのガス輸出を皮切りにルーブル決済を強要していく。最初に欧州へのガスを狙い撃ちしたのは、欧州が対米従属の一環で強烈なロシア敵視をしているくせにガス消費の半分をロシアに依存していて弱いからだ。欧州へのガスのルーブル決済がある程度実現したら、次はロシアが輸出する他の資源類もルーブル払いにしていくだろう。 (ルーブル化で資源国をドル離れに誘導するプーチン) (ガスをルーブル建てにして米国側に報復するロシア

ロシアが米国側に対して輸出品のルーブル決済の強要を成功させたら、それを見て中国など他の非米諸国も、自国の輸出品のドル建て決済を拒否し、自国通貨建てで決済することを米国側に求め始める。米欧日が中国から輸入する製品は、すべて人民元決済になるかもしれない。(中略)

ウクライナ戦争を起こしたプーチンの最大の目標は、こうした米覇権崩壊と多極化を引き起こすことにある。プーチンは、米諜報界の隠れ多極主義者(多極派)たちと、直接もしくは間接的に結託している。ウクライナが米英傀儡の国となってネオナチ極右民兵団がロシア系住民を殺している状態を解消する「非武装化、非ナチ化」もこの戦争(軍事作戦)の目標であるが、それよりはるかに巨大な副産物的な目標として、米覇権つぶしがある。米国の多極派にとって、今の展開はとても有望だ。おそらく多極派は、事前にコロナ危機を起こして米国側のQEを急拡大させ、米欧の人々がコロナに騙されたことに激怒していずれ自国の政権を転覆する下地も作ってから、プーチンを誘導して今回のウクライナ戦争を起こしている。世界を多極化したプーチン

田中氏の論考から推察すると、サイト管理者(筆者)の言葉・解釈で言えばディープ・ステート(DS)内部は、あくまでも米英(アングロサクソン)一極による世界支配を狙う勢力と、一極による世界支配には膨大なコストが嵩み、非米・反米諸国に腹の底では敵視もされるようになるため、米英(アングロサクソン)一極世界支配を諦め、多極体制に転換したいと考えている勢力がせめぎ合っているようだ。その「隠れ多国主義者」がロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席と通じているらしい(あくまでも、サイト管理者(筆者)による推測で、さらなる検討・検証が必要だ)。

ただし、プーチン大統領が金資源本位制・調整可能な為替相場制(自国通貨を金・資源に連動させるとともに、貿易収支が一定の許容限度を超えた場合にG20などの機会か国際通貨基金=IMF=に替わる非米側の国際通貨管理組織を通じて、各国通貨と為替レートを調整する制度)による新たな国際決済システム(ブレトンウッズ3)の確立に向けて動きを本格化させていることは、かなりの確率で妥当と言えるのではないかと思う。もちろん、金資源本位制・調整可能な為替相場制による新たな国際決済システム(ブレトンウッズ3)の構築には、第二次世界大戦前の金本位制度の欠点を克服するとともに、高度なハイテク技術を必要とする。

なお、ドル紙幣の最大の敵である金は米国の商品取引所などで先物売りによって1オンス=2000ドルを上回らないように操作されているとの見方は根強いが、田中氏によるとそれでも1900ドルを割り込ませることは出来ていないとしている。

米英両国ではソ連崩壊前後ころから、証券と金融の垣根を取っ払い、各種のデリバティブ商品を編み出し投資銀行などで売買する「金融ビッグバン」が始まったが結局のところ、2008年9月にリーマン・ショックが起こり、失敗してしまった。それ以降、米欧日諸国の中央銀行はQE(Quantitative Easing=量的金融緩和=)を行い続け、証券価格を上昇させてきたが、コロナ禍に伴うサプライチェーンの寸断や今回のウクライナ事変による資源・穀物価格の上昇(ないし急騰)で金融引き締め(政策金利の引き上げ)を展開せざるを得なくなり、QEの終了とともにQT(Quantitative Tightening=量的金融引き締め=)を行わざるを得なくなっている。行き着くところは、資産価格(証券価格)バブルの崩壊だ。

ただし、正式にQEを終了させ、金融・資本市場から資金を引き揚げる正しいQTを行っても、急激なインフレの原因がコロナ禍に伴うサプライチェーンの寸断や今回のウクライナ事変による資源・穀物価格の上昇にあるため、「資源・穀物小国」では急激なインフレを抑えることはできない。だから、中長期的に「資源・穀物=コモディティ大国」に覇権が移るようになる。今回のウクライナ事変の大義はロシアにあるが、「悪の権化は米国(ディープステート)」(植草氏)であり、ディープ・ステート(DS)と戦いを始めたロシアの大義を見抜けない米欧日諸国の反グローバリズム(弱肉強食の新自由主義に反対の)勢力(主に、各国の野党勢力)は何とも情けないと言わざるを得ない。

ただし、サイト管理者(筆者)は近代欧米文明が普遍的価値として築いてきた基本的人権(良心・進攻・思想・結社の自由と生存権)の真の確立は必要である。非米陣営もこの点を、政治システムの中にビルト・インしなければならないと考える。


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