米露、ウクライナ戦争の終決に向けて水面下で協調、米・イスラエル首脳会談も「パレスチナ国家認めず」で一致(自民総裁選:次の投稿)
-=ホワイトハウスより

反トランプの急先棒でオールドメディアの代表格であるウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ政権が最新鋭の核搭載可能な巡航ミサイル・トマホークとトマホークの使用に不可欠な地形などの電子情報をウクライナに供与するという報道を行ったが、ロイター通信は10月3日(日本時間)、この報道を事実上否定した。8月15日のアラスカ会談以降、米露は水面下で、①ウクライナ戦争の終決(終戦)②来年2026年2月に有効期限が切れる新START(戦略核兵器削減条約)の更新③ロシア東部(北極圏)の共同開発ーなどを予定しており、キエフ政権にモスクワを攻撃させるわけがない。トランプ大統領とネタニヤフ首相の米・イスラエル首脳会談も9月30日、ホワイトハウスで開かれ、ガザ地区停戦やムスリム同胞団パレスチナ支部であるハマスの武装解除を含む20項目の計画が発表されたが、(大英帝国の三枚舌外交によってもたらされた)「パレスチナ国家構想」について、ネタニヤフ首相は認めないことを繰り返し強調している。ネタニヤフ首相と同じ世界諜報界の多極化勢力に属するトランプ大統領も、ハマスに提示した20項目の計画案をハマスが認めなければ、イスラエルを支援すると言明している。新たな国際情勢は、世界的な右派の台頭と左派の凋落による冷戦思考を超克した多極化時代(文明の多極化)に向かっている。

欧州リベラル左派官全体主義僚独裁政権潰しと民衆擁護に立つ右派政権の成立がトランプ大統領の真の狙い

日経新聞のサイトは10月2日、「トランプ氏、ロシアへの長距離攻撃で情報提供か ウクライナに」と題する報道記事を公開した(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0239F0S5A001C2000000/)。ネタ元は、ウォール・ストリート・ジャーナルである。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は1日、トランプ米大統領が、ロシア領内のエネルギー施設への長距離攻撃を支援するため、ウクライナへの情報提供を承認したと報じた。トランプ米政権はウクライナに巡航ミサイル「トマホーク」の間接供与を検討中だ。ロシアを和平交渉に引きずり出すため、圧力を強めているもようだ。ウクライナは米政権からの情報提供と強力な兵器を組み合わせることで、国境から遠く離れたロシアの製油所やパイプラインなどを効率的に攻撃することが可能になる。ロシアの侵略を支える資金源遮断にもつながる。米政権は北大西洋条約機構(NATO)の加盟国にも同様の支援をするよう要請している。

トマホークは射程距離2500Kmの核搭載可能な巡航ミサイルで、ウクライナから発射した場合、モスクワを直接攻撃できる(https://x.gd/lp5Yi)。東部ドンバス地方最大の軍事要衝であるポクロウシクをロシア軍に北東部から攻められ、既に市街戦に突入していることが伝えられるほど戦況が悪化しているウクライナとしては、藁をもすがる思いでトマホークの供与を待っているのだろう。しかし、トランプ政権が戦況ではロシアの勝利が確定しているウクライナ戦争で、キエフ政権に対して無償でトマホークを提供するわけがない。

Wikipedia

ささやかれていたトマホーク売却の仕組みは、トランプ政権がまず、英仏独を中心とした欧州リベラル左派全体主義独裁政権が差し押さえているロシアの凍結資産を担保に、左派政権に借金をさせる。そして、トマホークを欧州左派政権に売り込むというものだ。トマホークを実際に提供するのは、欧州左派政権だ。しかし、凍結資産とは言え、最終的にロシアの資産をロシアから奪い取るというような形になれば、欧州リベラル左派政権の信用度は格段に低下する(Youtube・「外交の真実」の投稿動画「ポクロフスク半分陥落、ゼレンスキーパニック 米国のトマホーク決断が最後の希望、https://www.youtube.com/watch?v=TKuP3oUsJZA」)。欧州左派政権としても、国内で右派勢力が民衆の支持を得て勢力を拡大している中、「ロシアとの戦争に備えた緊急事態政権(つまり、独裁政権)の樹立が必要」と言っても、国民は騙されないだろう。

要するに、米国がトマホークを間接的にキエフ政権に提供するのは、不可能な情勢なのだ。それに、バイデン大統領の時代にバイデン政権はウクライナの起死回生の策として、長距離ミサイルのATACMS(エイテクムス)や防空システムのPATRIOT(パトリオット)を供与してきたが、起死回生策には全くならなかった。トマホークも同じ運命か、欧州左派政権とウクライナにとってそれ以上の危険が待ち受けているのではないかと思っていたら、ロイター通信が3日、「米のウクライナへのトマホーク供与の公算小=関係筋」と題する報道記事を公開した。

トランプ米政権は長射程の巡航ミサイル「トマホーク」のウクライナへの供与を望んでいるものの、現在、在庫は米海軍などに充てられていることから実現する可能性は低いとみられる。米当局者および関係筋3人が明らかにした。米当局者は、「トマホーク」は在庫不足にはないと強調した上で、ウクライナにはより射程が短い他の兵器を供給できるとの考えを示唆。米国は欧州同盟国による他の長距離兵器の購入およびウクライナへの供給許可を検討する可能性はあるが、トマホークを供与する公算は小さいと述べた。

上記の記事も、「トランプ政権はトマホークの供与を望んでいるが」としてはいるが、「在庫不足」でなくてもトマホークの事実上のキエフ政権への供与は行わないと明記している。戦争の結果は戦況の状況によって決まる。既に、ロシア勝利が確定しているウクライナ戦争について、トランプ政権が、①来年2026年2月に有効期限が切れる新START(戦略核兵器削減条約)の更新②レアメタルを含む石油・天然ガスなど豊富な天然鉱物資源を有するロシア東部(北極圏)の共同開発ーなど、米国にとって多大のメリットのある米露首脳会談の成果を破棄するはずはないだろう。

新START条約=Wikipedia

これについて、国際情勢解説者の田中宇氏は、「続く英欧潰し(https://tanakanews.com/251002gagauz.htm、無料記事)」で、次のように述べている。

トランプ米大統領が9月23日、ウクライナとロシアを和解させる従来の姿勢を豹変し、好戦的な姿勢をとり始めた。トランプは「ウクライナは、EUから支援してもらえば(負けている戦争を挽回して)ロシアから全ての領土を奪還できる」とか「NATO諸国は、露軍機が侵犯してきたら(たとえそれが先日のポーランドの事態のようにNATO・ウクライナ側の偽旗作戦だった可能性があっても)どんどん迎撃しなきゃダメだ」「ロシアは経済が崩壊寸前だ。表向きだけ強そうに見せている"張り子の虎"だ」といった発言を連発した。Trump Says NATO Should Shoot Down Jets That Breach NATO AirspaceTrump Claims Ukraine Can Retake All Territory Captured by Russia, May Be Able to ‘Go Further’

突然の姿勢転換に、米露双方の分析者たちは説明に苦労していたが、裏を知っていれば簡単な話だ。米覇権放棄と多極化をこっそり推進する隠れ多極派のトランプ(注:ネタニヤフ首相もそのひとり)は、米覇権を動かしてきた英欧のリベラル派エリート(英国系)を自滅させるため、就任以来の9か月かけて、ウクライナ戦争の米欧側の主体を米国から英欧に移した。トランプの米国は、ウクライナ戦争の主導役を英欧に押し付け、米国は手を引いた。その移行作業がおおむね完成し、英欧が露敵視の主役を継承する準備を進めたので、トランプは8月にアラスカでプーチンと首脳会談して裏の親密さを確保し、表向きだけ米露が敵対に戻ることを決めたうえで、今回の豹変になった。Europe fears Trump to blame it for Kiev's military failureTrump’s new Ukraine stance is meant to pressure Putin, officials say, despite lack of sanctions or military aid

ウクライナ戦争は開戦後の早い時期から、ロシア側がウクライナNATO側の兵器庫の場所を探知し、攻撃して破壊してきた。米欧NATOは兵器の無駄遣いを強いられ、防衛費を浪費した。これは米英覇権崩壊・隠れ多極主義的な構図だった。米諜報界に、ウクライナのどこに兵器庫があるか露側に教える勢力(隠れ多極派、リクード系)がいた。The Five Most Likely Motives Behind Trump's Flip-Flop On UkraineTrump's latest line on Ukraine isn't a 'shift,' it's a hand-off

トランプは大統領に返り咲いた後、米国をこの自滅構造から引き抜き、ウクライナ戦争の主導役を英欧に押しつけた。英欧やウクライナが米国から得る兵器類は、それまでの無償(や割引価格)から有償(定価販売)に切り替わった。英欧は従来から、軍事力の根幹である諜報の人材もデバイスも少なく(注:軍事戦略では)米国依存だ。英欧は、戦争の主導役になった後も諜報面で米国の言いなりにしか動けないので勝てない。英欧が米国から兵器類を買ってウクライナの前線に出しても、兵器庫の情報が露側に漏れ、使う前に何割かが破壊されてしまう。EU Defense in Crisis: Why Europe is Falling Behind Russia

反露に転換したトランプが「ロシアは張り子の虎だ」と言い出したのに対し、言われたロシアは大統領報道官が「我が国は、虎じゃなくて熊だと言われるんですけどね。張り子の熊という言い方はないんですが・・・」と、冗談で返して受け流している(注:ペスコフ報道官、https://www.jiji.com/jc/article?k=2025092400996&g=int)。ロシアとしては、トランプが英欧に戦争の主役を背負わせて英欧の自滅が加速するのは大歓迎だ。Russia Mocks Trump's 'Paper Tiger' Remark, Says Ukraine Cannot Take Back Territory

本公開記事では、「トマホーク供与」の件が欠けていたが、ロイター通信の報道のように核超大国「ロシア」からの大報復に、欧州リベラル左派政権が耐えられるはずがない。軍事ドローンや航空機のポーランドなど東欧諸国の領空侵犯については、田中氏、及川氏も指摘しているように、ウクライナと英国のMI6の偽旗作戦(注:敵を油断させて攻勢に転じる軍事作戦)との見方もあるし、欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国がロシアとウクライナの交戦状況について、自国の航空機で偵察にやってきているという事実も忘れてはならない(https://www.youtube.com/watch?v=Vmf71Qm6ZlQ)。

及川幸久氏のYoutubeチャンネル・「THE CORE」

欧州NATO加盟諸国に対する強い警告として、ロシア外務省のザワロワ報道官は、欧州リベラル左派全体主義官僚独裁政権に対して、「西側とは冷戦ではなく、『激しい』戦いにあるとの見解を示した。欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)が軍事支出を正当化するため、ロシアによる妨害工作疑惑に関して虚偽の主張をしているとして、非難した」(https://jp.reuters.com/world/ukraine/F6LWG2DUPBMQZC5KC7IU2X5X6I-2025-10-02/)という。

ロシア外務省のザワロワ報道官

これも、プーチン政権の対応州リベラル左派政権の攻撃に対する大報復攻撃の本気度を示しつつ、欧州リベラル左派全体主義官僚独裁政権を自滅に追い込むための外務省報道官としての発言の意味合いも兼ねているのだろう。田中氏の指摘するように、英仏独を中心とした欧州リベラル左派全体主義官僚独裁政権を自滅に導き、これに代わる右派民衆勢力による政権樹立を実現することが、トランプ大統領の真の狙いでもある。

【追伸10月4日午後6時】産経新聞のサイトによると、プーチン大統領はロシア南部ソチで開かれた国際会議「バルダイ」の全体会合に出席して演説、「各地の前線でロシア軍が主導権を握る一方、ウクライナ軍は人員不足が深刻化しているとし、『ウクライナ指導部は(ロシアとの)合意に至る方法を検討すべきだ。彼らが交渉のテーブルに座る勇気を持つことを願う』」と述べ、ウクライナに勇気ある事実上の降伏を求めた。

プーチン大統領はその他、①米国がトマホークを供与してもウクライナ戦争の戦況に影響はないが、アラスカ州で構築した米露の良好な関係が崩れる②米国が新START条約の更新を望まないのであれば、ロシアも対応しない③「露軍がウクライナ東部ハルキウ州ボフチャンスクの半分を制圧し、同州の要衝クプヤンシクの3分の2を支配下に置いたと主張。東部ドネツク州でも露軍がウクライナ軍の防衛線の一角コスチャンチニウカに進入したと指摘した」ーなどと断言したという(https://www.sankei.com/article/20251003-FOMR4ITF7JMZVA6UJINZXUZED4/https://news.yahoo.co.jp/articles/51566c7a397aa9d2d25ded1dbf940fe82d56d1e7)。

米国・イスラエル首脳会談でも大英帝国の「三枚舌」外交に基づく「パレスチナ国家構想」は認めずー三大一神教の歴史的意義に注目すべき

トランプ大統領とネタニヤフ首相が9月29日、ホワイトハウスで米国・イスラエル首脳会談を行い、ガザ地区で戦闘を終わらせるための20項目の計画案を発表した。イスラエルのほか、欧州諸国やアラブ諸国も支持をしている。しかし、ネタニヤフ首相は、トランプ案で明確にされなかったことを明確に強調している。それは大英帝国の三枚舌外交が災いになって構想された「パレスチナ国家」の樹立は絶対に認めないということだ。まず、20項目からなる計画案について、NHKから引用してみたい(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014935981000)。

アメリカのトランプ大統領はホワイトハウスで29日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談し、ガザ地区でのハマスとの停戦や人質解放を含む、20項目の計画を発表し、イスラエルのほか、アラブ諸国やヨーロッパ各国などが相次いで支持を表明しました。計画には、①双方の合意による戦闘の即時終結②全面的な支援物資の搬入、それに、③ハマスが(死者も含む)すべての人質を解放することーなどが盛り込まれています。また、ガザ地区の統治については、④実務的で非政治的なパレスチナ人などの委員会が暫定的に担い⑤ハマスが関与しないのと同時に、イスラエルは占領や併合をしない⑥アメリカがアラブ諸国などと連携してつくる国際部隊が展開するとしています。

イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスが計画を拒否した場合、強硬な対応を辞さない構えを示し、トランプ大統領もイスラエルの行動を全面的に支援するとして、ハマスに受け入れを強く迫っています。これに対し、ハマスが運営するメディアは29日、幹部の声明として「計画はイスラエル側の構想に近い」などと伝えていて、ハマスの出方が焦点となっています。(注:文意を損なわない範囲で、若干変更)

このトランプ案で明確に示されていないもののうち重要なのは、国際情勢分析アナリストの及川幸久氏がYoutubeチャンネルの「THE CORE」で紹介している(https://www.youtube.com/watch?v=aJLSQhNnSsA&t=883s)。元駐米大使でネタニヤフ首相の(外交)政策顧問・側近であるロン・ダール氏がトランプ案に手を入れたという。

ここで注目すべきなのは、①国際安定化部隊(一種の多国籍軍)に米国やアラブ諸国が含まれるとしても、イスラエルも含まれる可能性もある②イスラエルきっての右派リクードの党首であもあるネタニヤフ首相は、「パレスチナ国家構想」を明確に拒否しているーの二点である。ネタニヤフ首相がパレスチナ国家を認めず(https://www.bbc.com/japanese/articles/cd07y83v9j2o)、「大イスラエル国家」高層に突き進んでいることは、田中氏が指摘している(https://tanakanews.com/250725israel.htm)。

これは、「パレスチナ国家構想」が大英帝国の三枚舌外交による歴史的な弊害を終決させるための苦肉の策だ。しかし、イスラエルの左派である労働党党首で1993年、オスロ合意によりパレスチナ国家構想を認めたイッツハク・ロビン労働党党首が、和平反対派のユダヤ人青年イガール・アミルから至近距離より銃撃されて死亡して以来、イスラエル国内では急速に右派が台頭してきた。その代表格が、リクードであり党首のネタニヤフ首相である。

ネタニヤフ首相は「パレスチナ国家構想」を認めず、パレスチナ人をエジプトその他の地域に移住させようとしており、トランプ大統領もおおむね、この考えを指示しているようだ。だからかつて、ガザの観光都市化案を提唱したことがある(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014712901000)。今回のトランプ=ネタニヤフ案は、スンニ派に属しながらサウジアラビアのような王政を否定するムスリム同胞団対策である。

なお、及川氏はトランプ大統領がネタニヤフ首相にコントロールされているとしている。しかし、田中氏によれば、トランプ大統領は世界諜報界の中でネタニヤフ首相と組み、世界の多極化を推進しでいると主要人物だという。今日の全面的な反グローバリストの勢力拡大を見れば、「反グローバリズム説」が妥当なように見えるが、サイト管理者(筆者)としては、それは違うのではないかと見ている。

アブラハムの家系図

新約聖書マタイ伝では、ヤコブの子ユダの血統からイエス・キリストが誕生したと記録されている。この問題は、突き詰めればユダヤ教、キリスト教、イスラム教の歴史的な存在意義に関わることである。これらの三大宗教は、卑近な言葉で言えば兄弟宗教である。何故、歴史的に鋭く対立してきたのか、その理由が明らかにされねばならない。

【追記:10月4日午前7時】ハマス、トランプ大統領=ネタニヤフ首相によるガザ停戦計画案を受け入れ

NHKの報道によると、ムスリム同胞団パレスチナ支部のハマスがトランプ大統領=ネタニヤフ首相によるガザ停戦計画案を受け入れたようで、米国とイスラエルの仲介国を通じて、協議を開始するようだ(https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014940761000)。協議の焦点は、「パレスチナ国家構想」の取り扱いだが、協議が順調に進めば、「パレスチナ国家構想」は消滅することになるだろう。

アメリカのトランプ大統領が9月29日に発表した、パレスチナのガザ地区での停戦などに向けた計画について、イスラム組織ハマスは10月3日、仲介国に回答を提出し、計画のうち人質全員の解放などについて同意する考えを明らかにしました。詳細について話し合うため、仲介国を通してすぐに協議を始める用意があるとしています。

 

 

 

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