EU、対ロシア経済制裁は事実上破綻ー天然ガス輸入のルーブル決済容認、石油も船舶輸入のみ「禁輸」(新型コロナ問題追記)

欧州連合(EU)によるロシアに対する経済制裁措置は実質的に破綻してきたようだ。既に、パイプラインによるロシア産天然ガス輸入についてはロシアが要求しているルーブル建て決済を経済制裁に抵触しないとしているが、05月31日に開かれたEU首脳会議で石油についても船舶での輸入のみ禁輸とすることになり、パイプラインでの輸入は認めることになった。欧州諸国は主力のエネルギー源をロシアからの天然ガス・輸入に頼っており、ロシアに対する強力な経済措置はそもそも無理だった。米欧日諸国陣営のウクライナ事変での敗北は着実に進んでいる。

ロシア経済制裁をめぐる欧州諸国の分裂とウクライナ戦闘状況の今後

NHKは05月31日のEU首脳会議について日本時間で31日午前08時41分に公開した「EU 船で輸送されるロシア産石油にかぎり禁輸で合意」と題する記事(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220531/k10013650761000.html)で次のように伝えている(注:欧米日諸国陣営のウクライナ事変に関する報道は欺瞞だらけなので、信頼できる報道と判断できる限り、引用している)。

EU=ヨーロッパ連合は30日の首脳会議で、ロシア産の石油の輸入を禁止することで合意しました。加盟国の立場が分かれていることから当面は、対象を船で輸送される石油に限るということです。EUは30日から2日間の日程でベルギーのブリュッセルで首脳会議を開いていて、初日はロシアに対する追加制裁として検討してきたロシア産の石油の輸入を年内に禁止する案などについて協議しました。

石油の輸入禁止をめぐっては、パイプラインでロシアから石油を調達しているハンガリーが、自国のエネルギー確保が脅かされるとして強く反対してきましたが、協議の結果、輸入禁止の対象を当面はパイプラインではなく船で輸送される石油に限ることで合意したということです。

ハンガリーは米英両国の影響を受けない新ロシア派の東欧諸国の一角である。ハンガリーでは4月3日に議会選挙が行われ、プーチン大統領と経済面で親密な関係を続けてきたオルバン首相率いる右派与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が圧勝して同首相は四選を果たした。全199議席のうち、フィデス/KDNPの与党連合が2議席伸ばして135議席、野党連合は8議席を失い56議席となった。また、新たな極右政党の「我々の祖国(ミ・ハザ-ンク・モズガロム)」が7議席、その他が1議席を獲得したhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2022/04/ca9b60f712ba7528.html)。なお、米欧日陣営諸国では「極右政党」という言葉が多用されるが、雇用を含む経済政策を重視する民衆政党のことであり、マスメディア関係者は「排他的・暴力的なイメージ」を与えるために故意に使っている。

これより先、EU諸国側はロシアからの天然ガス、石油の輸入決済通貨をロシアの要求通りにルーブルにすることを認めざるを得なくなっている(https://tanakanews.com/220525hybrid.htm)。

米国側がロシアをドル決済(SWIFT)から追放し、対抗してロシアは米国側にルーブルで石油ガス代金を払えと要求して対立し、結局ロシアが勝っている。EUは先日、加盟国がロシアにルーブルで払っても対露制裁違反でないと決めた。これまで、ルーブル払いがEUの対露制裁に違反しているのかどうか不透明だった。EU上層部が「違反です」と言った後、イタリアのドラギ首相が「違反じゃない(ようだ)」と宣言する展開もあった。結局EUは、違反でないと決めた。EUの対露制裁は無意味になり、ロシアはEUを打ち負かした。これは今回の複合戦争の一部だ。ロシアのラブロフ外相が5月14日に「米欧(米国側)がロシアに対し、経済制裁など全面的な複合戦争を仕掛けてきている。ロシアは中国やインドと協力してこれを乗り越える」と表明した。露政府は最近、複合戦争という言葉をよく使う。 (EU Gives OK To Pay For Russian Gas In Rubles) (Russia Forges New Partnerships in Face of West’s ‘Total Hybrid War’ – Lavrov

EU加盟諸国にはハンガリーなど表向きはロシアの「ウクライナ侵攻」を批判しているが、ロシアに対する経済制裁には加わらない国が存在する。「ウクライナ侵攻」批判も建前だけだ。要するに、欧州諸国によるロシアに対する経済制裁は実質的には実行不可能である。

本サイトでしばしば述べてきたように、ウクライナ事変は米英一極支配体制を維持するための米国オバマ政権時代に本格的に実現したウクライナの傀儡政権化とロシア系ウクライナ人に対する大弾圧・大量殺戮に端を発する。その後、2021年01月21日に米国でバイデン政権が成立すると、その傾向は一段と強くなった。今回のウクライナ事変は、ロシア系ウクライナ人の安全を保障するためのロシア側の正当防衛策である。ただ、こうした正論は欧米日諸国陣営では「フェイクニュース(デマ情報)」扱いされる。欧米日諸国陣営の諸国民は、マスメディアが垂れ流す報道だけを鵜呑みにする(軽信する)のではなく、真贋を見極める必要がある。

なお、ウクライナでの戦闘状況はやはり、ロシア優勢の状況で進んでいるようだ。NHKは05月31日07時14分に「ロシア軍 東部で攻勢強める ウクライナ軍は南部で反撃転じたか」と題する報道を公開したが、「ウクライナ軍」うんぬんは希望的観測だろう。

ロシア国防省は、30日にミサイルなどの攻撃で、ウクライナ東部のドネツク州で武器庫や弾薬庫などを破壊したほか、南部ミコライウ州では造船所の施設を攻撃し装甲車両などを破壊したと発表しました。またロシア軍は、完全掌握を目指す東部ルハンシク州(ルガンスク州)で、ウクライナ側の最後の拠点とされるセベロドネツクを包囲しようと攻勢を強めています。(中略)

一方、ロシアが全域を掌握したと主張し、ロシアによる支配の既成事実化を進める南部ヘルソン州(注:ウクナイナの南部地方、クリミア半島の北部にあるウクライナのひとつの州)について(注:アメリカのシンクタンク「戦争研究所」なる得体の知れない研究組織によると)「ウクライナ軍がヘルソン州とミコライウ州の州境の近くで限定的に反撃に成功し、ロシア軍を守勢に追いやった。ロシア軍は作戦が混乱し、ヘルソンへの援軍を強いられる可能性がある」として、一部でウクライナ側が反撃していると分析しています。

NHKはいつも戦争研究所の戦闘状況分析を紹介して、枕詞のように「ウクライナは反撃している」と述べているが、どこまで真実なのか不明だ。ロシアは田中氏の指摘通り、コモディティ小国の米欧日諸国陣営側に打撃を与えることができるため、時間をかけて東部ドンバス地方から南部のヘルソン州、クリミア半島、オデッサ市から汎ドニエストル地方に至る「ノボロシア地方」の完全掌握に向けて動いているようだ。ウクライナの西部は米国の傀儡政権下にあるポーランド政権とウクライナ政権の共同統治下に入る公算が大きくなってきた。田中氏も最新解説記事「ドイツの失敗(https://tanakanews.com/220530german.php)」で次のように述べておられる。

ロシアは着々と、ドンバスとその周辺のウクライナ東部と南部を傘下に入れている。ゼレンスキーは先日初めて、それまでの「わが方が勝っている」ばかりのプロパガンダ発信をやめて「ドンバスをロシアに奪われそうだ」と認め始めた。ロシアはいずれオデッサも取り、ドンバスとクリミアから沿ドニエストルまでのウクライナの東部と南部を自国の傘下に入れ、ウクライナから独立した親露国(ノボロシア)にするか、ロシアに併合するだろう。ウクライナで残ったキエフやリボフ(リビウ)などの西部は、ゼレンスキー政権のまま、ポーランドの傘下に入る。米国はポーランドを通じてウクライナ(西部)を傀儡化し続ける。ポーランドも米国(米英)の傀儡だ。 (Zelensky Signals Donbas Could Soon Fall: “Indescribably Difficult” Russian Onslaught) (ノボロシア建国がウクライナでの露の目標?

ノボロシア

 

国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏の「人類を怒らせるための大リセット」をサイト管理者(筆者)で解釈すれば、地球温暖化説や新型コロナウイルス対応策、「ウクライナ侵攻」などの現在進行中の大きな出来事は世界諸国の主権を剥奪し、世界諸国民の基本的人権を奪う人類支配のための「世界政府」のようなものを創設しようとする米英ディープ・ステート(DS)側(現在は、米国ではバイデン民主党政権に勢力が集中している)の「大リセット」策の一貫だという(「人類を怒らせるための大リセット」https://tanakanews.com/220529WEF.htm)。これに対して、世界諸国民の民衆側が大抵抗を始めているというが、サイト管理者(筆者)も正しい分析だと思う。

エリートが推進する大リセットは、人々を怒らせ、下からのエリート敵視が強まる。怒った人々は、左派・民主党でなく右派ポピュリズム・トランプ共和党のもとに結集する。米国は今後の選挙で共和党やトランプの勝ちになり、反エリート・大リセット反対・中国敵視の右派ポピュリズムの国になっていく。ナショナリズムが強まり、国権をWHOに譲り渡すパンデミック条約を離脱する。覇権運営のエリートやマスコミが凋落して覇権が放棄され、QT(注:QTはQuantitative Tightening=量的金融引締め政策=のこと)でドルが崩壊して多極化が進む。欧州もハンガリーのような右派ポピュリズムの国が増え、対米従属やロシア敵視をやめて自立する。大リセットは、草の根運動に潰されて乗り越えられるために存在している。ひどいディストピア(注:ユートピアの反対語で反理想郷・暗黒世界を指す)が描き出されるほど反対派が鼓舞される。

なお、新型コロナ問題については植草一秀氏のメールマガジン第3234号の「16兆円のコロナ国費投入先を追え」の次の箇所を参照していただきたい。

新型コロナウイルスのパンデミックが発生した(創作された)のは2020年3月だが、この半年ほど前の2019年10月18日にEvent201がニューヨークで開催された。その内容を要約した動画映像をいまもネット上で閲覧することができる。半年後に発生するコロナパンデミックが非常に精度高く予行演習されていた。イベントの参画者はWHO、CDC(米疾病予防管理センター)、CCDC(中国疾病予防管理センター)、世界銀行などである。

最大の資金提供者がビル&メリンダ・ゲイツ財団であり、事務局機能を担ったのがジョンズ・ホプキンス大学である。ビル&メリンダ・ゲイツ財団はモデルナ等のワクチンメーカーへの最大級資金提供者でもある。新型コロナパンデミックに伴うワクチン販売によって同財団は巨大な利得を得たと考えられる。日本でも新型コロナウイルス関連の政府支出が16兆円に達したことが明らかにされた。そのうち、ワクチンに関連する政府支出は4.6兆円である。巨大な資金がワクチン関連ビジネス関係者の懐に入った。しかし、そのワクチンが巨大な災厄をもたらしている。

新型コロナウイルス問題の怪しい点については本サイトでも折りに触れて紹介させていただいたが、世界諸国の主権を剥奪し、世界諸国民の基本的人権を奪う人類支配のための「世界政府」のようなものを創設しようとする米英ディープ・ステート(DS)の策謀である可能性が強い。

世界の諸国民は今や、世界は大激動期に突入していることに気づかなければならない。その実感は、インフレの高進によって実感できる。日本でも電気・ガス料金の上昇や食料品の値上がりは家計に大きな打撃を与え始めている。


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