衆院解散・総選挙後の日本の政界は、混乱・波乱が避けられなくなりそうな状況に
衆院解散・総選挙後の日本の政界は、混乱・波乱が避けられない状況になりそうだ。こうした状況に陥るのは第一に、国民新党の玉木代表も指摘しているように(共同通信報道)、政権与党の自民党が党勢拡大のために憲法7条による解散を「首相の専権事項」として悪用してきたことによる。日本国憲法には第69条に「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と解散もしくは総辞職の要件を明確に規定している。
憲法第7条の「天皇の国事行為」の中で規定されている「三、衆議院を解散すること」とあるのは、衆議院の解散には天皇陛下の詔(みことのり)が必要であるということであって、この詔の国会での広布は憲法第69条と連動している。対決法案で内閣不信任案が可決されたわけでもない政治状況の中で、首相が勝手に衆議院を解散するのは厳密な意味では、憲法違反のはずである。日本国憲法を改正するというのなら、この点から始めなければならない。
衆議院解散・総選挙の後に、混乱・波乱が避けられそうにない第二の理由は恐らく、高市早苗首相の世界観が従来の冷戦体制を意識した、国民の一部の層が拍手喝采する国体重視の「反共右翼路線」で構造的に固定しているからだろう。首相は予算委員会で、中国が台湾有事の状況を作り出した時は、安保法制発動の時だと中国を名指しで批判した。これは、外務官僚が作成した答弁書にはなかったということが、その後明らかにされている。しかし、台湾有事の際に、米国のトランプ大統領は台湾を防衛するとも、MAGA(Make America Great Again)のために、米軍を派遣しないとも言っていない。つまり、曖昧(あいまい)戦略を一貫して採用している。
安保法制(集団的自衛権の限定的な行使容認や他国軍への後方支援の拡大など、日本の安全保障政策を転換させた一連の法整備)は今から10年以上前に成立したものだが、冷戦対戦を前提とした英米(バイデン政権まで)単独覇権主義体制時代に成立したもので、トランプ大統領・政権がMAGAの思想に基づいて米州主義を確立することを中心に、世界の多極化戦略をを強力に推進している現在、既に時代遅れの法制だ。
現代は、中国やロシアなど旧共産圏諸国も共産主義思想に懲りており、資本主義的市場経済原理を導入して経済再建と経済発展を進めている。中東諸国やグローバルサウス諸国もそうだ。だから、高市早苗首相は最初に言っていたように、世界のどの国に対しても主権は尊重、内政不干渉の原則に基づいて、「戦略的互恵関係」を築いて行く必要がある。こうした世界の大転換期の内実に対して、構造的に固定した世界観に基づいて対応しようとしたところに真の問題がある。構造的に固定した世界観も、マックス・ウェーバーの言う「カリスマ」によって変動する。高市首相はトランプ大統領やメローニ首相といった大中の政治的カリスマに出会っている。そのカリスマからの影響をシャットアウトしているように見える。
衆議院解散・総選挙の後に、混乱・波乱が避けられそうにない第三の理由は、新党「中道改革連合」などの野党も、多極化時代の到来を十分認識し得ていないと思われることである。現在、Youtubeチャンネルでは、「グローバリズム(政治的には新保守主義=好戦的なネオ・コンサーバティブ=ネオ・コン、経済的にはケインズ政策を否定する新古典派理論に基づいた新自由主義)」vs「反グローバリズム」の構図で国際情勢を捉えているチャンネルが少なくないが、世界各国の主権(文明)を尊重しつつ、各国の相互交流と協調、統合を目指すグローバリズム自体は中立的な概念だと思う。
だから、反グローバリストには国家再建の戦略はあっても、世界統合の理念はない。多極化体制の中で、各国の相互交流、世界統合への向けての動きには、各極の根底にある理念・思想・宗教を尊重し、その調和と融合、統一を図ることが重要である。共産主義思想は、ロシアの哲学者でありマルキストであったニコライ・ベルジャーエフが、負のキリスト教であると喝破した。無神論思想である共産主義を有神論化して、逆立ちしている(土台が上部構造を決定するという)状態を元に戻せば、新しい理念になり得る。
その意味で、現在の野党も多極化時代の本格到来を大前提とした国家戦略を国民の前に示すべきだ。現在、欧州は、悪しきグローバリズムの立場から成立した欧州連合(EU)が、欧州諸国の国家主権と国家独自の経済政策(財政・金融・通貨政策)をはく奪する欧州リベラル全体主義独裁体制に暗転した。このことから、マルクス主義と決別したバート・ゴーデスベルク綱領(1959年に採用)で、市場経済原理に基づく競争原理と行き過ぎた格差を是正する分配政策の調和を目指す社会民主主義を取り入れたが、その社会民主主義政策を発動できなくなった。これが、少子化による人口減少を根本とした欧州文明の行き詰まりの二番目の原因と、サイト管理者(筆者)は捉えている。
日本は現在の与党も野党も、多極化時代(文明の多極化時代)の本格到来を前提に、ケインズ経済学を完全否定した新古典派経済学の限界を克服できる新しい時代の社会民主主義を構築すべきと思う。併せて、ドル=原油本位制も、中国がサウジアラビアとの交渉で、人民元による原油の購入を実現し、風穴を開けたから、ドル=原油本位制に代わる新たな国際決済通貨体制を構築すべきだろう。ブレトンウッズ体制Ⅱが必要な時期に来ている。このところ、金地金相場は1トロイオンス=4600ドルを超えて上昇しているのもドルに対する信認の大幅な低下の表れだろう(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)。
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金地金相場形成の主役は、欧米から中国に移っている。金取引の中心はロンドンにあるロンドン貴金属市場協会(London Bullion Market Association)だが、GoogleのAIであるGeminiによると、「中国がLBMA(ロンドン貴金属市場協会)から完全に『離脱』したという公式発表はありませんが、中国の銀行がLBMAのゴールド価格オークションへの参加を減らす傾向が見られ、これはドル離れや国内の金需要、地政学的リスクの高まり、中国国内市場への注力といった要因が絡み合っていると分析されています。中国は独自の金市場を強化しつつあり、世界的な金市場の構造変化が進んでいます」とのことだ。




















