ウクライナ市民を犠牲にしているのはゼレンスキー政権を傀儡政権にしている米国ー植草一秀著「日本経済の黒い霧」を拝読して

ロシア軍撤退後のキエフ(キーウ)近郊・ブチャでの「市民多数殺害」が大問題化している。ロシア側は全面的に否定しているが、米欧日諸国では相手にされない。真偽は不明というのが、現時点での正しい見方だ。問題は、米国のバイデン大統領がロシアとウクライナの戦闘を停戦に持ち込む努力を全くしていないことにある。これは、米国にとって停戦は都合が悪いためだろう。ウクライナ国民(市民)の犠牲がますます増えていく。

悪の権化は米国ディープ・ステート(DS、軍産複合体と弱肉強食の新自由主義勢力)

まず、米欧日諸国プチャでの300人の「市民殺害」疑惑に対する、ロシア側の弁明を引用しておきたい(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220404/k10013565911000.html)。連日全面的にウクライナ寄り、ゼレンスキー大統領を「白馬の騎士」のように報道し続けているNHKも、多少のロシア側の言い分は報道せざるを得ない。

”多くの市民死亡” ロシア側「ねつ造やフェイクの兆候明らか」

ウクライナの首都キーウ・ロシア語でキエフ北西のブチャで、多くの市民が死亡しているのが見つかり、ロシアの責任を問う声が強まっていることに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は4日「これらの映像について、われわれの専門家はねつ造やフェイクの兆候が明らかだとしていて信用できない。ブチャで市民が殺害されたとするいかなる非難も断固として拒否する」と述べ、ロシア側の関与を否定しました。
そのうえで「この問題は、高いレベルで話し合われるべきだ」と述べ、国連の安全保障理事会に提起したい考えを示しました。
またロシア外務省のザハロワ報道官は4日、SNSで「ウクライナ政府の目的は、停戦交渉を混乱させ、暴力をエスカレートさせることにある」と投稿し、ウクライナ側が停戦交渉に影響を与えようとしているなどと一方的に主張しています。

東アジア共同体(鳩山友紀夫理事長)のYoutube番組で、米国からの独立を理念に掲げている右派系団体・一水会の木村三浩代表は、イラク戦争などで米国が他国に国際法違反の軍事侵攻を行い、侵攻した国の国民(市民)を大量に殺戮してきたことを強く批判している(https://www.youtube.com/watch?v=NPTQDFdXB0g&t=2447s)。また、ゼレンスキー大統領に停戦交渉の最終決定権はなく、同大統領を背後で操っている米国(バイデン政権)が交渉の実質的な権限を保有しているとの見方を示している。既に本サイトでも紹介したが、ポーランドの米国大使館を根城にしてゼレンスキー大統領を操っているのだろう。

ゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部ドンバス地方でのロシア系ウクライナ人の大量虐殺(ロシアや東欧諸国を何度も訪問している木村代表は1万6000人)問題の解決のためのミンスク合意Ⅱ(①ロシア系住民の基本的人権の保障②ルガンスク州やドネツク州に高度な自治権を付与するーことなど。ドイツのメルケル元首相が根回ししたとされる)を履行することを公約に挙げながら、両州の代表をテロリスト呼ばわりし、ミンスク合意Ⅱの誠実な履行を完全に反故にした。

ちなみに、2014年2月のマイダン暴力革命の深層・真相を伝えたIMF日本代表理事の小手川大助氏は次のように証言している。

極右政党の歴史などについては別の章で詳しく述べるが、今回政権の一角についた政党のスローガンのうち、特に目を引くものとして以下のものがある。「ウクライナは至高の存在」、「ウクライナ人のためのウクライナ」、「ウクライナに栄光あれ、敵には死を」、「モスクワの連中を刺し殺せ、ロシア人を削減せよ、共産主義者を絞首刑に」

東部ドンバス地方でのロシア系ウクライナ人の大量殺戮を直接になったのは、ウクライナのオリガルヒであり、ゼレンスキー氏を大統領にするためにテレビドラマを活用して政治工作したイーホル・コロモイスキー氏が創設したアゾフ大隊と見られる。

このアゾフ大隊について、Wikipediaは次のように紹介している。

アゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフとくしゅさくせんぶんけんたい、ウクライナ語: Окремий загін спеціального призначення «Азов»)、アゾフ分遣隊、アゾフ連隊(ウクライナ語: Полк Азов)、アゾフ大隊(2014年9月まで)、または単にアゾフは、アゾフ海沿岸のマリウポリを拠点とする元準軍事組織、現在はウクライナ内務省管轄の国内軍組織である国家親衛隊に所属している組織である。数年前まで極右・右翼やネオナチ、ナショナリストとして報じられていた。2014年3月に制定された国家親衛隊法によりウクライナ国内軍を改編して創設された。現在は、ウクライナ国家親衛隊の東部作戦地域司令部第12特務旅団所属のアゾフ特殊作戦分遣隊(通称: アゾフ連隊)となっている。アゾフ海沿岸地域のマリウポリを拠点とする。

日本の法務省の外局(破壊活動防止法、団体規制法などに基づいて、公共の安全の確保を図ることを目的として設置された法務省の外局)である公安調査庁もアゾフについて次のように記述している(https://www.moj.go.jp/psia/ITH/topics/column_03.html

2014年,ウクライナの親ロシア派武装勢力(注:2014年2月の米国のバイデン副大統領とビクトリア・ヌーランド国務次官補らオバマ政権中枢がウクライナのネオ・ナチ勢力に指示して起こしたマイダン暴力革命に反発して決起した勢力)が,東部・ドンバスの占領を開始したことを受け,「ウクライナの愛国者」を自称するネオナチ組織が「アゾフ大隊」なる部隊を結成した。同部隊は,欧米出身者を中心に白人至上主義やネオナチ思想を有する外国人戦闘員を勧誘したとされ,同部隊を含めウクライナ紛争に参加した欧米出身者は約2,000人とされる。(下図はニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm33940753から)

「KAZANグローカル研究所」サイトのhttps://bit.ly/36w1HRzでは、ウクライナの非合法革命政権に抵抗して決起した親ロシア派が守ろうとしたロシア系ウクライナ人のジェノサイドとも呼ぶべき大量殺戮について詳しく紹介されている。米国のマスコミ工作が異常な状況に陥っていることと、改行がなされていないことで読みにくいことに鑑み、長くなるが、大事な部分を引用させていただきたい。

4000人以上の人(一水会の木村代表は1万6000人と把握している。4000人程度ではないだろう)が虐殺され、1000人以上が負傷を追っているとのニュースだ。ユーラシア研究所の研究員中澤孝之氏のご厚意による正鵠を極めたレポートが当方に送られてきたので皆さんにシェア―することにする。

ウクライナ東部でジェノサイドー多数の住民遺体発見
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は10月1日の記者会見で、「ウクライナ東部のドネツク市の近くで集団埋葬場所が見つかり、400人以上の遺体が発見された。これは恐るべき戦争犯罪である」と言明した。そして、同外相は、「西側のメディアはこの事件について明らかに沈黙している」と付け加えた。確かに、邦字紙も含め多くの主要な西側の報道機関がこの集団虐殺(ジェノサイド)事件を報じた気配はない。いろいろ調べて見ると、集団埋葬所が最初に発見されたのは、およそ1週間前の9月23日であった。

この集団埋葬場所はドネツクから北東に35キロ離れたコンムナル村で3カ所あって、地雷や手榴弾の配線を除去していた親露派兵士によって、うっすらと土が盛られた4体の遺体が偶然、発見されたという。1人は男性、女性が3人で、そのうち1人は妊娠していると見られた。4人とも普段着で、手を縛られ、頭部に銃弾の跡があった。2人は頭を切り落とされていたという。さらに、ドネツク市の北東35キロのニジニャ・クルインカ村の炭鉱場敷地内の2カ所で見つかった複数の遺体も、同じく身体に拷問の痕跡があり、皮膚にナチスを象徴するカギ十字の焼き印が押されていたと伝えられる。ドネツク人民共和国のアレクサンドル・ザハルチェンコ首相によれば、9月26日の時点で、約40の遺体が発見されていた。

遺体発見の翌日9月24日には欧州安保協力機構(OSCE)の特別監視団が現地に赴いた。監視団によれば、8月後半に行われた犯罪の跡を示す証拠が見つかったという。国連人権高等弁務官事務所(UNHCR)のウクライナ・モニタリング使節団も、遺体発見直後に現地調査を行った。9月25日ロシアのリア・ノーボスチ通信社が伝えたところでは、英国のヘルシンキ人権グループの創設者の一人、ジョン・ローランド氏は、ドネツク人民共和国政府は大量遺体発見の事実を国連と国際刑事裁判所(ICC)に通知するべきであると述べるとともに、「この事実を西側のメディアが報じないのは恥ずかしいことだ」と言明した。

こうした埋葬所のあった場所は、9月21日までウクライナ国家親衛隊の部隊が留まっていたことから、この部隊の仕業ではないかと見られている。遺体を発見した親露派兵士の一人は「埋葬地の近くに国家親衛隊の乾燥した配給食糧が見つかっている。われわれはこの場所から彼らを追い出したばかりだ」と語った。 国連総会に出席したラブロフ外相は9月26日、国連での記者会見で、ドネツク郊外で多数の遺体が発見されたことについて、潘基文国連事務総長や、OSCEのランベルト・ザニエル事務総長、ディディエ・ピュルカルテ議長と協議したことを明らかにし、「ウィーンで発表されたOSCE報告によって、彼らは民間人であり、しかも、拷問による暴行を受けたうえに、事実上、至近距離から射殺された可能性があることが、とりあえず確認されている。われわれはこのことに深い憂慮の念を抱いている。調査の結果が出ないうちは誰をも非難することはできないが、そうした調査が実施され、それも公開の独立した調査となるように強く求めていく」と語った。

ロシアのチュルキン国連大使は9月30日、国連安保理事会に書簡を送って、集団虐殺事件への注意を喚起した。同書簡には「犠牲者たちに懲罰が加えられたのは明白だ。後ろ手に縛られ、頭に銃撃の跡があった。遺体のそばには薬莢が見つかった。これらの市民がウクライナの軍人により無慈悲に殺害されたと推測できる根拠がある。埋蔵場所発見の2日前、ウクライナ政府軍と国家親衛隊の戦闘員らが、この地区を離れている。彼らは長いあいだ、この地区を支配下に置いていた」と述べられている。

一方、ウクライナ政府は国家親衛隊による大量殺戮を否定し、その時期には国家親衛隊の戦闘員は一人もいなかったとしながらも、なにがしかのウクライナ軍兵士たちが当時そこに展開されていたことは認めた。「ロシアのFBI」ともいわれるロシア捜査委員会(RIC)は9月29日、ウクライナ東部のドネツクおよびルガンスク(ルハンスク)各人民共和国のロシア語使用住民に対するジェノサイド事件の捜索開始を決めた。発表によれば、ウクライナ政府幹部、ウクライナ軍、ウクライナ国家親衛隊、それに右派セクターは両共和国に住むロシア語使用住民の完全抹殺を命令し、彼らの行動によって2500人以上の住民が死亡し、さらには30万人以上の住民が生命の危険を感じ、避難を求めてロシア領内に移住してきたという。

RIC報道官のウラジーミル・マルキン氏が10月1日発表したところによれば、ドニエプル志願兵大隊所属のセルゲイ・リトビノフと名乗る兵士を逮捕したところ、住民殺戮を供述したという。この志願兵大隊は、キエフ当局が東部での住民抹殺軍事作戦を開始した4月に結成され、のちに国家親衛隊(注:アゾフ大隊と推定される)に吸収されたという。殺人罪で告発されたリトビノフは精神医学テストのためにモスクワに移送された。なお、アムネスティ・インタナショナルはウクライナ志願兵大隊による犯罪と人権侵害にはウクライナ政府に責任があると断定している。

今年4月12日は、米国のジョン・ブレナン中央情報局(CIA)長官が極秘裏にキエフを訪問した日で、その2日後に、(マイダン暴力革命後に暫定大統領になった)アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行が米国とNATOを後ろ盾にして、民族浄化作戦開始を承認したことで知られている。「民族浄化作戦」の幕開けであった。(中略)

こうしたウクライナにおける「民族浄化作戦」、つまりロシア系住民根絶(民族浄化)作戦の陰には、ウクライナのオリガルヒ(新興財閥)の一人といわれる人物がいる。アルセニー・ヤツェニク首相に任命されたドニエプロペトロフスク知事イゴール・コロモイスキー氏だ。イスラエルとウクライナ両国の市民権(キプロスのパスポートも所有しているとか)をもち、ジュネーブを生活の拠点にし、推定資産28億ドルで、ウクライナの4番目の富豪といわれている人物である。なお、ドニエプロペトロフスクという地名はブレジネフ時代にモスクワに2回合計9年間滞在した筆者にとって懐かしい名前だ。39年ドニエプロペトロフスク州党書記に、さらには戦後の46年同州党第1書記として活躍した、のちの党書記長レオニード・ブレジネフにとって非常に縁のある場所であった。

コロモイスキー氏は今年4月、武装集団「アゾフ」を組織した。右派セクターから流れてきた200人ほどのメンバーで構成されているといわれる。その約半数は犯罪歴があり、6月14日のキエフのロシア大使館襲撃事件の中心的存在だったと伝えられる。コロモイスキー氏はそのほにも、「アイダル」「ドンバス」「ドニエプル」(前記の兵士リトビノフが所属)といった武装グループも作ったという。(中略)

ドネツク人民共和国副首相アンドレイ・プルギン氏は9月22日、ウクライナ東部での死者数について、4000人以上と、国連の示した数字を上回る数を挙げていた。ドイツによるホローストを思い出させるウクライナ東部でのジェノサイド事件は、7月の(注:ウクライナ軍の地対空ミサイルによるものと推測されている)マレーシア航空機撃墜事件(馬渕睦夫元ウクライナ大使は近刊「世界を操る支配者の正体」[講談社]の中で、事件解決のために米国は衛星写真を公開すべきと主張している)と同様、うやむやのうちに闇に葬られ去る気配が濃厚である。

事実、この東部ドンバス地方でのロシア系ウクライナ人の大量虐殺事件は、欧米日諸国ではほとんど報じられていない。このアゾフ大隊の根拠地がWikipediaで述べているように、アゾフ海沿岸地域のマリウポリである。ウクライナでのロシア軍とウクライナ軍の攻防が最も激しい地域がマリウポリ一帯であるのは、このためである。このことも、欧米日諸国のメディアではほとんど報じられていない。現状では、ロシア軍が制圧しつつあると伝えられているが、マリウポリでの戦闘の結果が、今回のウクライナ事変(侵攻)の停戦に大きく影響を与えるだろう。マリウポリの市民の迂回路が設置されたが、迂回路を経由しての同地からの脱出を阻止しているのは、市街戦で罪なき市民を人質にして立てこもっているアゾフ大隊ではないかと推測している。

なお、残念ながら停戦が仮に成立しても、欧米日諸国(金融技術立国)側と中国、ロシア、インド、イラン、中東諸国(新セブンシスターズ)など非欧米諸国(コモディティ立国)側の対立は長期化すると思われる。その象徴が、プーチン大統領が決めた天然ガス(気化状態にある天然ガス)のルーブル決済と思われる。なお、NATOのトルコは物価が前年比で60%以上、上昇している。欧米日諸国側は今後、金融・資本情勢が極めて厳しくなると思われる。要するに、ここ2,3年でドル基軸通貨変動相場制(ブレトンウッズ体制2)が崩壊する恐れがある、というわけだ。

他方、プーチン大統領は時間をかけて、①露中銀が国内民間銀行から固定相場で金地金を買い集める②国際的に石油(・天然)ガスの輸出代金をルーブル払いさてもらうように仕向け、ルーブルと地金が固定相場なので地金による石油(・天然)ガス購入も増え、ロシアに金地金がさらに集まる③金地金がたくさん貯まったら露中銀がルーブルの固定相場で金地金を売ることも開始し、ルーブルを正式な金本位制通貨にしていく(ブレトンウッズ3への移行)ーとの見方が出ている(国際情勢解説者の田中宇氏、https://tanakanews.com/220405rubles.php、ただし有料記事です。無料記事もあります)。

なお、田中氏の見立てでは、ウクライナ事変は既にロシア側の勝ちが決まっているが、それを認められないバイデン大統領らがロシアの罠にはまってウクライナ事変を長期化させようとしているということだ。実は米国ディープ・ステート(DS)も一枚岩ではなく、覇権体制の維持に巨大なコストがかかる(一水会の木村代表の指摘によれば、米国の国防予算し年間6〜7超ドル=70兆円規模で、2位から7位までの6カ国の国防予算の2倍程度ととてつもなく巨額=)から、DS内の「隠れ多極派」がロシアにこっそりと協力しているというのが、サイト管理者(筆者)の田中氏解説記事の解釈だ。

ゼレンスキー大統領はこのようにウクライナに根付いているネオ・ナチ勢力を権力基盤にするとともに、さらに、①バイデン政権の発足後の20210年3月25日に「ロシア連邦との地政学的対決において、国際社会がウクライナを政治的、経済的、軍事的に支援することを求める」ことや「ウクライナのNATO加盟」を明記した「軍事安全保障戦略」を大統領令として発出した(当然、ロシアに脅威を与える最新の軍事兵器を設置した軍事基地が建設される)②2021年9月に、軍事力行使を前提としたクリミア半島地方の「脱占領と再統合」のための戦略を実施するための行動計画を承認した③2022年6月には正式にNATOに加盟しようとしていたーなど、ロシアがウクライナ事変(ウクライナでの特別軍事作戦)に踏み切らざるを得ない状況を作り出した。

3月29日の対面停戦交渉でも、ウクライナ側の提案は「東部ドンバス地域の問題についてはロシア、ウクライナの首脳会談で話し合う」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220330/k10013558751000.html)となっており、国連安保理で決議・承認(第2202号)され、国際法の資格を得ているミンスク合意Ⅱの履行については、あいまいなままだ。今回のウクライナ事変の真の犯人は、外国に対して内政干渉と軍事侵攻を続けてきたバイデン大統領など歴代の大統領(注:トランプ前大統領はそうではない)を傘下に置く米国ディープ・ステートとその傀儡政権であるゼレンスキー政権、そして同政権を支えるネオ・ナチ勢力だろう。

植草一秀著「日本経済の黒い霧ーウクライナ戦乱と資源価格インフレ」を拝読して

国際政治経済情勢の深層・真相を伝え、悪化する国際情勢の打開策として共生の政策体系を提示されておられる日本でも屈指の政策通として知られる植草一秀氏が4月1日、ビジネス社から「日本経済の黒い霧ーウクライナ戦乱と資源価格インフレ(修羅場を迎える国際金融市場)」を上梓された。アマゾンでは発売前からビジネス・経済部門でベストセラーになっている。僭越ながら、サイト管理者(筆者)の観点で読後感を述べさせていただきたい。

本書は1980年代に米国のレーガン政権が採用したレーガノミクス(高金利容認・ソ連と対決するための軍備増強型財政拡張政策)に始まって今日にいたるまでの日本経済衰退・没落の原因を明らかにしたうえで、日本経済再生の共生の政治・経済政策を提示している。サイト管理者(筆者)の独自解釈だが、植草氏は日本経済衰退・没落の根本原因は、日本国が自主・独立の気概を喪失させられ、「米国を裏から支配するディープ・ステート」(121頁)の従属国家のままでいることにあると判断されているのではないだろうか。

本サイトでも「ディープ・ステート(DS)」という概念を多用しているが、「陰謀論」のように受け取られるかもしれない。しかし、本書によると米国の指導者である大統領になるためには予備選、本選で勝利するためには巨額の選挙資金が必要になる。このため、民主党、共和党、いずれの政党においても、大統領選挙で勝利するためには米国を支配する巨大資本の支配下に自らを組み入れてしまうことになる。その巨大資本とは、①米国最大の産業である軍産複合体②弱肉強食の新自由主義の「政策」に基づいてグローバルに活動を展開する多国籍企業③両者に金融面で便宜を供与するウォールストリートの金融資本ーのことである。ただし、トランプ前大統領はその系列にはない。なお、ケネディ大統領が暗殺され、中国を引き入れたニクソン大統領が失脚させられたのもディープ・ステート(DS)のせいではないかと推察している。

本書はディープ・ステート(DS)の対日工作を子細に追っていくことにより、日本経済を覆ってきた「黒い霧」の深層・真相を明らかにし、日本経済の衰退・没落の原因を分かり易い言葉で説得的に説明している。サイト管理者(筆者)の独断解釈だが、「共生の政治哲学」を根本にした「共生民主主義」を実現することによって、ディープ・ステート(DS)がもたらした「強欲資本主義」に打ち勝てるし、打ち勝たなければならないということが、筆者が読者に伝えたいことではないかと拝察する。別の言葉で表現すれば、「共生の政治哲学」を根本とした粘り強い日本国憲法が定めた独自の平和外交努力によって、「対米独立革命」を成功裏に果たすことが日本の根本的な再生への道であると指摘されておられるように思える。

著者が米国だけでなく欧州や中国の現状について詳しく触れ、そして今回のウクライナ事変=ロシアによるウクライナ侵攻の真相・深層を詳細に述べておられるのも、上記のためであるように思われる。mRNAワクチン接種の重大な疑惑について実証的に述べておられるのも、その一環だと思われる。なお、今日のウクライナ事案については端的に言えば、オバマ政権二期目の2014年2月に当時のバイデン副大統領とビクトリア・ヌーランド国務次官補が、ウクライナの米国大使館を根城にして、ウクライナに根付いているネオ・ナチ勢力を使って起こしたウクライナ憲法を破壊してのマイダン暴力革命が発端だと指摘しているように思われる。

まさに、「悪の権化はロシアでなく米国」なのである。この知られざる真実はマスメディアに洗脳されている日本国民には知らされないが、本書を精読いただき、「知られざる真実」を知っていただきたいと願ってやまない。サイト管理者(筆者)は、このままで行くと日本は夏の参院選で真正野党が敗退し、「平和憲法」が壊憲されて自民党とその補完勢力による独裁体制が構築されてしまうのではないかと危惧している。さて、著者は2022年の三大リスクとして、FRB・コロナ・戦争を指摘しておられる。

  1. FRBがいよいよ金融引き締めのプロセスに移行します。米国のインフレ率は7%を超えました。ハイパー・インフレには到達していませんが、明白なインフレ経済に突入しています。パウエルFRB議長とイエレン財務長官のコンビが米国財政金融政策を指揮することになりますが、インフレを取り除き、成長を維持する難事業に成功を収めることができるでしょうか。米国の金融引き締めは、世界の金融情勢を激変させることになります。
  2. コロナ騒動は継続していますが、2022年にはパンデミックがエンデミック(特定地域における流行の反復)に移行することになると思われます。しかし、コロナ感染がもたらしたマインドセットの転換を、直ちに解き放つことはできないでしょう。経済活動に生じた質的な変化がそのまま継承されることになると思われます。これはビジネス環境の激変を意味します。(中略)急成長を遂げる事業分野と企業が生み出される一方で、急激に衰退する事業分野と企業が生み出されることになります。
  3. 2022年度最大のリスク要因が戦乱です。ウクライナの問題が最大であると考えられます。大規模戦争は望まないが、小規模戦争は必要である軍産複合体の事情を考慮しなければなりません。そして、多くの戦乱が想定外の不測の事態発生によって想定外の拡大に発展した歴史を踏まえると、ウクライナ紛争が大規模戦争に拡大してしまうリスクも完全には排除しきれません。

著者はM2の急増によるインフレ懸念を指摘されているが、サイト管理者(筆者)は、上記はコロナによるサプライチェーンの崩壊、資源大国ロシアへの大規模な経済措置から、コストプッシュ型の物価の急騰・暴騰が生じている。これらを踏まえると、著者がデノミと預金封鎖という究極のリスクを念頭に置く必要があることに注意を促されていることも理解できる。ただし、最初は非常に驚いたことを書き添えて置かなければならない。

本書は、コンパクトながら濃い内容の解説が圧縮された好著であり、高校生以上のすべての日本国民必読の書だと思う。なお、サイト管理者(筆者)などの勝手な見方だが、欧米日諸国側がインフレと金融危機に直面している中、原油や天然ガスなどの資源や金の生産大国であり、穀物なども豊富に生産する中国やロシア、中東諸国(新セブンシスターズ)、南米諸国などの「コモディティ大国」が今後、有利になるのではないかと推察している。

ロシアも中国とインド(両国ともロシアに対する非難決議には棄権している)の仲を取り持つ外交を展開している。極論すれば、ウクライナ事案が長引けば長引くほど、ドル基軸通貨体制はたそがれの時期に行くの見立てである。ただし、近代西欧が生み出した「基本的人権」の理念は最優先で尊重されなければならないと思っている。著者にもこうした見方の妥当性について、論じていただければと期待している。いずれにしても、著者のさらなるご健勝とご達筆、ご活躍を祈ってやまない。


この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう