トランプ次期大統領は2025年1月20日の正式就任を前にして、ウクライナ戦争(ロシアによる「特別軍事作戦」)の解決を選挙中の大統領正式就任後1日以内という「公約」に反して、就任後最大6カ月以内と延期すると発言したり、カナダやパナマ運河、グリーンランドについて、米国領に編入すべきなどと主張するなど、物議をかもしている。これらのうち、ウクライナ戦争については、ロシアが圧倒的に優位にあるため、欧州諸国の中で従来のエスタブリッシュメント・リベラル左派全体主義独裁政権が崩壊して、右派ポピュリズム政権(既成の政治権力に対抗する人民戦線)が政権を掌握するように誘導し、ロシアと欧州諸国の関係修復を目指す狙いがあるものと思われる。カナダやパナマ運河、グリーンランドについて、米国領に編入すべきだと言っているのは、国際情勢解説者の田中宇氏の論考をサイト管理者なりに解釈すると、これから多極化する世界の中で、南北米州と、それにつらなるグリーンランドを宗教・政治・経済・軍事的に統合する米州主義を実現するためだろう。「多極化」というのは、「文明の多極化」という意味だ。ただし、現代世界に出現している多極化文明それぞれが独立して存在するだけではなく、互いに調和を保つ必要があろう。
ウクライナ戦争解決の道は欧州に右派政権が誕生し、欧州とロシアが和解する時
まず、ウクライナ戦争だが、ウクライナが昨年2024年のクリスマス以降、巻き返しを図っているとする見方が絶えないが、ロシアの優位性は揺るがない。ロシア在住の日本人・ニキータ氏はかつて大英帝国を誇り、戦後、米国に単独派遣体制のノウハウを伝授した英国の命令で、ウクライナが昨年のクリスマスころから反転攻勢をしかけたものの、失敗したと現地から報道している(https://www.youtube.com/watch?v=H5_girdqRTY)。実際、ウクライナ東部のドネツク州では要衝クラホべがロシア軍に陥落し、その北にある東部最大の要衝(戦闘員や軍事兵器、弾薬、食糧などの供給を行う交通のかなめ)ポクロウシクも陥落寸前だ(https://www.yomiuri.co.jp/world/20250107-OYT1T50052/)。
ロシア国防省は6日、ウクライナ東部ドネツク州のクラホベを約2か月の戦闘の末に制圧したと発表した。クラホベはウクライナ軍が輸送拠点とする要衝ポクロウシクの南約40キロ・メートルにあり、ポクロウシク防衛にも影響する可能性がある。
露国防省は、ウクライナ軍が 要塞 化していたクラホベの軍事拠点を制圧したことで、「ドネツク州における進軍の速度が増すことになる」と主張している。ロイター通信によると、ドネツク州方面のウクライナ軍報道官は6日、クラホベでの戦闘が続いていると強調したが、別の同軍関係者は米紙ニューヨーク・タイムズに「実質的に失われた」と陥落を認めた。
クラホべの陥落が、ポクロウシクに及ぶのも時間の問題だ。東部最大の要衝ポクロウシクが陥落すれば、ウクライナの劣勢は明らかになる。
【追記:1月10日午後23時】ウクライナ戦争について戦況情報を発信している「航空万能論」は、「ロシア軍がトレツク、ポクロウシク、クラホヴェ、ヴェリカノボシルカで前進した」と報告し、「クルスク方面と東部戦線での動きは非常に激しく、全ての方面でウクライナ軍は後退を強いられている」(https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/russian-troops-advance-on-kursk-and-the-eastern-front-turning-entire-city-of-tretsk-into-a-grey-zone/)との情報を伝えている。
トランプ氏周辺は停戦の条件として、①ロシアが併合したロシア系ウクライナ人の多いウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州、南部のザポリージャ州とヘルソン州のあわせて4つの州をロシアに割譲する②この4州とウクライナの緩衝地帯を欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国が守る③ウクライナは短くても20年間、NATO加盟は認めないーという内容を掲げていた。
しかし、これに対しては、ロシア側がウクライナ戦争(「特別軍事作戦」)の優位性から、聞く耳をもっていない(https://www.yomiuri.co.jp/world/20250109-OYT1T50007/)。
だが、プーチン氏は昨年12月の記者会見で、「(加盟延期が)我々にとって何の違いがあるのか」と、将来的な加盟も容認しないと強調。セルゲイ・ラブロフ外相も年末、タス通信に対し、NATO加盟延期などを柱とする停戦案には「我々は満足できない」と拒否する姿勢を示した。
ロシアとしては、①東南部4州とクリミア半島をロシアの領土として国際社会が正式に認めること②ウクライナのNATO加盟は未来永劫許さず、最低でもウクライナを中立国とし、ロシアと欧州NATO加盟諸国との緩衝地帯にするーという条件は絶対的に譲れないだろう。できれば、大統領としての任期が昨年5月末に切れて、7カ月ほど任期を延長させているゼレンスキー政権を退陣させ、親ロ政権を樹立させたいところだろう。実際、ウクライナには事実上、「国民のしもべ」という政党しかなく(一党独裁制)で、複数のメディアも存在しない。こうしたことから、韓国紙中央日報によると、敗戦濃厚な現状に、ゼレンスキー大統領の支持率は開戦当初は90%あったが、現在では、50%程度である(https://news.yahoo.co.jp/articles/418e0b62d49c0b06cbb09940ab90c3407cf5f06d)。
2022年から3年間続くウクライナ戦争のためゼレンスキー大統領の支持率が急落した。ゼレンスキー大統領が昨年5月に任期を終えた状況でも戒厳を理由に大統領職務を継続している中、リーダーシップに亀裂が生じているという分析が出ている。
キーウ国際社会学研究所(KIIS)は先月2-17日の世論調査の結果、ゼレンスキー大統領の信頼度は52%だったと7日(現地時間)、明らかにした。KIISはゼレンスキーの支持率が戦争直後(2022年3月)に90%の支持率でピークとなって以降、下降していると分析した。特に米国と欧州連合(EU)の軍事支援が滞ってロシアの空襲が激化した昨年2月(64%)と5月(59%)に明確に支持率が落ちたという。戦争に入ってから最低値の52%となった今回の調査も、ロシア軍がウクライナ東部に進撃する中で実施された調査だ。(中略)
大統領の任期が昨年5月に満了した状況で、高い支持率はゼレンスキー氏の大統領職遂行を支えてきた。野党とロシアは、ウクライナ憲法に「戒厳時には議員の任期が延長される」という明示的規定はあるが、大統領の任期についてはいかなる言及もないとしてゼレンスキー大統領の資格を問題視している。(KISSの)フルシェツキー専務理事は「ゼレンスキー大統領に対する信頼低下は大統領制自体にも致命的な打撃」とし「大統領制と政府機関全般の正当性が崩れ、統制力を失うことになる場合、いかなる災難が生じるかは説明する必要もない」と述べた。
本来なら、ウクライナでは大統領選挙を実施し直し、新たな政権でトランプ次期大統領(その時は、大統領に就任しているはず)とプーチン大統領との首脳会談を行うべきところだろう。こうしたプーチン政権の対応を踏まえて、トランプ次期大統領もウクライナがNATOに加盟することに対して、明確に反対の意思を唱えるようになった(https://jp.reuters.com/world/ukraine/A246KKWC4FIYDEBXJTZOU4BBRA-2025-01-07/)。
トランプ次期米大統領は7日、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟すべきではないとするロシアの立場に理解を示し、大統領就任前にロシアのプーチン大統領と会えないことを残念に思うと述べた。
トランプ氏はフロリダ州パームビーチにある自宅で記者会見し、バイデン大統領がウクライナのNATO加盟に関し米国を変節させたと非難した。「ロシアは、プーチン大統領が就任するずっと前から『NATOがウクライナに関与するはずがない』と言っていた。それは石に刻まれたように変わらない立場だ。しかしある時バイデン大統領が『いや、彼らはNATOに加盟できる』と述べた。ロシアはすぐ近くに脅威を感じることになる。それに対する彼らの気持ちは理解できる」と述べた。
こうしたことから、トランプ次期大統領は、ウクライナ戦争の解決のためにロシア寄りの姿勢を取るのではないか。これに対して欧州では、欧州の大国であるドイツ、フランス、英国で右派ポピュリズム政権(人民戦線)の「(ドイツ)国民のための選択肢(AfD)」や「英国改革党(Reform UK)」、「(フランス)国民連合」などの右派政党がさらに勢力を拡大し、国民の支持を得て政権を担う基盤を確立する必要があるだろう。AfDに対しては、欧州エスタブリッシュメント左派全体主義独裁政権側から厳しい批判を浴びたものの、トランプ次期政権の中枢を担うイーロン・マスクが「ドイツを救えるのはAfDだけだ」と断定した(https://jp.reuters.com/world/us/YH4M4UX6IRPZRFAEZAVY35D6TM-2024-12-20/)。
トランプ次期米政権に外部顧問として加わる見込みの米富豪イーロン・マスク氏は20日、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に関し「ドイツを救えるのはAfDだけだ」と自身のソーシャルメディアXに投稿した。ドイツでは、ショルツ首相率いる中道左派の連立政権が崩壊し、来年2月23日に総選挙が実施される。
AfDはドイツの世論調査で2位に付けており、中道右派または中道左派の過半数獲得を阻む可能性がある。ただドイツで主流派を占める中道寄りの政党は、AfDとの連携を避けることを表明している。マスク氏は昨年、ドイツ政府による不法移民への対応を非難した際にAfDへの支持を表明。欧州の他の反移民を掲げる政党への支持もすでに表明している。
これらの右派政党は、ウクライナ支援に反対するとともに、「経済の停滞、移民の増加、炭素排出量を実質ゼロにする政策の推進を要因の一つとするエネルギー価格の高騰に苦しんでおり、もっとも重要な国家・国民の苦境の原因として欧州連合(EU)を非難して、国内で高まるEU懐疑論をたき付けている」ことで共通している(https://www.cnn.co.jp/world/35221131.html)。特に、ドイツのAfDとフランスの国民連合は、政権奪取の近くまで来ている。そして、トランプ次期政権とも政策が合う。
これに対して、田中氏の分析・展望をサイト管理者なりに解釈すれば、ゼレンスキー政権を支援する欧州エスタブリッシュメント左派全体主義独裁政権はNATOを使い、ウクライナ戦争を続けたがっている(「まだ続くウクライナ戦争」=https://tanakanews.com/250104ukrain.php、有料記事・https://tanakanews.com/intro.htm=)。
EU防衛相を出しているバルト3国は出すかもしれない。しかし小国群だけでは全く足りない。長い距離がある戦線の停戦監視には、交代要員を含めて45万人が必要とされ、欧州の主要な諸国がすべて派兵しない限り無理だ。NATOは加盟諸国の政治家たちに対し、対露和解を語るな、戦争体制の財政を組んで福祉予算を削って軍事費に回せ、と要請している。NATOは、ウクライナ戦争をずっと続けたがっている。(NATO State Warns Against Western Troops In Ukraine: "Discussion Has Gone Off The Rails")(Rutte announces launch of Command on Ukraine, calls to refrain from discussing peace)
こうした反ロ・新ウクライナ政策は、経済・社会的に混迷している欧州諸国民の批判・非難を受け、左派リベラル全体主義独裁政権は時代が変わったことに気が付かず、いつの間にか崩壊してしまうだろう。トランプ次期大統領は6カ月以内と言ったが、もう少し時間がかかるかも知れない。結局、「ドナルド・トランプは大統領に返り咲いたらウクライナ停戦を実現すると公約していたが、それは具現化しそうもない。ロシアもウクライナも乗り気でない。ウクライナが終戦するとしたら、それはドイツでAfDが政権をとるなど、欧州が対米自立し、ロシアと和解した時だ。それは意外と早いかもしれず、その場合、多極型に転換した世界の中で米露や欧露が和解する」ということになろう。
西シベリアのロシア産天然ガスを自国経由で欧州にパイプライン輸送する契約の破棄はウクライナの自殺行為
ウクライナのゼレンスキー政権(ゼレンスキー大統領と同大統領以上に政府を操っている政権中枢のイェルマーク大統領府長官)は、英国の指令で今年2025年1月1日から、ロシア産天然ガスを自国経由(トランジット)で欧州にパイプライン輸送する契約(ロシアのガスプロム社とウクライナのナフとガス社が2019年12月31日に締結。効力は5年間)を破棄した(https://jp.reuters.com/markets/commodities/5QKZG4R72JL4HG2S5YM6OA4BZM-2025-01-01/)。
ロシア産天然ガスをウクライナ経由で欧州にパイプライン輸送する契約が1月1日に失効する。ロシア側は期間5年の輸送契約を延長する姿勢を見せていたがウクライナ側が拒否した。ウクライナは年間約8億ドルの中継料収入を失うことになり、モルドバなどが影響を受ける。ただロシアのウクライナ侵攻を受けてガス価格が高騰した2022年の危機の再来はないとアナリストはみている。
31日1700GMT時点のウクライナのガス輸送業者のデータで、1日にロシアからガス輸送の予定がないことがないことが確認された(注:供給を受けている欧州種国に対する人道的配慮から、12月30日にほぼ上限量の天然ガスがガスプロム社から輸送された)。これによりロシア産ガスを輸送するパイプラインで稼働しているのは、黒海を横断してトルコに至るトルコ・ストリームのみとなる。ベラルーシを経由するヤマル・ヨーロッパ・ストリームは停止しており、バルト海を経てドイツに至るノルド・ストリームは22年に破壊された(注:実行犯不詳のままスウェーデンとデンマークの捜査が終了したが、ドイツがロシアに依存しないように(注:ドイツがロシア寄りにならないように)、バイデン政権の指令のもと、ウクライナの工作員によって爆破、破壊されたとの見方が強い)。
しかしながら、これは、ウクライナの自殺行為と言って良い。第一に、ウクライナ自身が年間10億ドル程度の天然ガス通過料を失ううえ、ウクライナ自身もさらなる天然ガス不足による厳冬と景気悪化が深刻化し、国際通貨基金(IMF)から福祉予算のカットを始めとした緊縮財政を強いられる。ウクライナは米国のバイデン政権や反ロシアの欧州諸国から軍事・経済援助を受けているが、すべてが無償(タダ)というわけではない。いずれ、返済する必要がある。また、契約が破棄されたパイプラインは、ソ連時代に作られたパイプライン・システムであり、しかも、メインテナンスもなされないことから老朽化し、再開されたとしても天然ガスの供給が不安定化してしまう。元々、西シベリアから欧州諸国へ天然ガスを供給する設備は、古い時期に建設されたものである。
第二に、ロシアからの天然ガスの供給を受けられなくなったハンガリーやスロバキア、オーストリア、モルドバ(親ウクライナ)、沿ドニエストル共和国(親ロシア、独自の通貨を持つけれども、主権国家としては承認されていない)といった一般的には、親ロシア的な欧州諸国を一段と敵に回すことになる。なお、親ロ派のオルバン首相率いるハンガリーは、トルコ経由で西シベリアのロシア産天然ガスを手にすることができる。ウクライナ戦争をめぐって今後ますます、ウクライナと欧州諸国の関係が悪化するだろう。
第三に、トランジット協定の破棄は石油や天然ガス、貴金属など資源・エネルギーが豊富なロシアを追い詰めるためだった(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250103/k10014684491000.html)。
ロシアがウクライナ経由でヨーロッパに輸出してきた天然ガスの供給を停止したことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は「モスクワの最大の敗北の1つだ」として、ロシアのプーチン政権は天然ガスの重要な輸出先を失ったと強調しました。
ウクライナ自身が困ることを無視して、こうした一方的なプロパガンダ記事を掲載するNHKもいかがなメディアと思うが、ロシアは現在、これまで、欧州諸国に輸送してきた西シベリア産の天然ガスではなく、中国など東アジア諸国をターゲットにした東シベリア産の天然ガスの輸出に力を入れている(https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2022032501/index.html#anc-02)。サハリンで進めている液化天然ガス(LNG)プロジェクト(日本がターゲット)もあるが、主力はやはり、パイプラインである。
中国向けの天然ガスパイプラインは、三本がすでに稼働または新設されている。、その第一は、「中央アジアのトルクメニスタンからウズベキスタン、カザフスタンを経て、中国の新疆ウイグル自治区に入り、中国西部のガス田から沿海部主要都市に向かう中央アジアパイプライン。カザフスタン国内の延長は1300km。現在稼働しているパイプラインの中では最もロシアからの輸入量が多く、経由3カ国の産出量を合わせると、中国のロシアからの圧縮天然ガス(CNG)輸入量の約82%(2020年)を占める」。
その第二は、「シベリアの力」だ。「中国ロシア東線(シベリアの力)」は2014年に両国が建設に合意、2019年、一部区間が開通した。中ロ間、初めての天然ガスパイプラインである。シベリア東部、ヤクーツク付近のガス田を起点に、中国黒龍江省の最北部、黒河付近で中国に入り、内モンゴル自治区、吉林省、河北省、天津市、山東省、江蘇省などを経て上海に至る総延長で5000kmを超える壮大な事業だ。現在、全体の3分の2に相当する河北省内までが完成し、稼働している。全線完工は2025年(注:つまり、今年)の予定。現在、年間100億㎥の天然ガスを輸入しており、CNG輸入量の9%を占める。これは現状ミャンマー産とほぼ同じだが、2022年中には設備の改良などで年間150億㎥に増やし、2024年には同380億㎥まで供給量を拡大することで両国の合意がある。今後、ロシア産(天然ガス)の比率がより高くなる見込みだ」という内容である。
その第三は、ロシアーモンゴルー中国を結ぶ「シベリアの力2」である。「将来、計画が実現し、『シベリアの力2』と中国のパイプラインがつながれば、今は主にヨーロッパ市場に送られている西シベリアの天然ガスを東に振り向け、中国に送ることができるようになるからだ。(中略)将来『シベリアの力2』が実現し、中国のパイプラインと接続すると、(旧い西シベリア産の天然ガスとは異なる東シベリアという)ロシア最大の天然ガス産出地と、中国というヨーロッパと並ぶ巨大な需要地とが直接パイプラインでつながることになる。しかも、計画によると輸送量は年間500億㎥で、すでに稼働中の「中国ロシア東線(シベリアの力)」の5倍の規模である」
この「シベリアの力2」については、プーチン大統領が国交樹立100周年を記念して昨年9月3日、国際刑事裁判所(ICC)に加盟しているモンゴルを訪問、逮捕の話は無視してフレルスフ大統領と「シベリアの力2」敷設での協力について、「2024年末に締結予定のモンゴル・ユーラシア経済連合(EEU)間の暫定FTA(自由貿易協定)が両国間の貿易の法的枠組みを拡大し、新たな協力の機会を創出することへの期待を表明した」(https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/09/ebea06e779473e7d.html)。その中でも重要なのが、「モンゴル、ロシア、中国の経済回廊の建設」、つまり、ロシアの「大ユーラシアパートナーシップ」、中国の「一帯一路」、モンゴルの「草原の道」という各構想の枠組みの中で、モンゴル経由でロシアと中国を結ぶインフラ(道路、鉄道、送電線、ガスパイプライン)の開発を推進するプログラム。「ガスパイプライン」とは「シベリアの力2」のことで、その建設に向けての両国の協力関係を深めることで合意したと見られる。
なお、中露については、「シベリアの力2」の建設に向けての契約を締結する段階に入っている。「ロシアは中国を欧州に代わる天然ガスの主要輸出先にしたい考えで、シベリアの力2の建設が急務となっている」(https://jp.reuters.com/world/china/7OCQW7WMGJO3LAS6FWDVLNRRE4-2024-05-17/)。つまり、ロシアはモンゴルや中国との同盟関係を重視しており、エスタブリッシュメントのリベラル左派全体主義独裁政権が、ゴルバチョフ書記長(当時、のちに大統領)が提唱した「欧州共通の家」構想(「大西洋からウラル山脈まで」の欧州全域の安全保障確立と経済統合を目指す構想)を無視して、欧州諸国を管理している間は、反欧州の立場を取らざるを得ない。
ロシアが欧州と和解するのは既に述べたように、基本的に右派対米自立政権が成立してからのことだ。ゼレンスキー大統領がイェルマーク大統領府長官とトランジット契約を破棄しても、ロシアに何ら打撃を与えることはできない。なお、ロシアはサハリンで液化天然ガスプロジェクトをめぐって、日本に門戸を開いている。以上が、トランジット契約の破棄がウクライナの自殺行為だと述べた理由である。