今年4月から消費税率が5%から8%に引き上げられたが、日本の経済社会を破壊しつつある。国会議員の歳費や公務員の給料が引き上げられている反面、庶民の給料は増えていない。これに加えて、意図的な大円安政策によって、日本が近隣のアジア諸国や中東諸国から輸入する食料品やIT(情報技術)関連を含む耐久消費財、原油価格が上昇、これが国内物価に跳ね返って消費者物価上昇率は上昇しつつあった。これに消費税率の上昇が加わったから、長期にわたったデフレよりももっと悪いスタグフレーション(不況化の物価上昇)が顕在化している。

 真実を伝える政経アナリスト・植草一秀氏のメールマガジン「第898号 消費税大増税の深刻な影響が日本経済を撃墜する」を引用させていただく。厚生労働省の毎月勤労統計調査からのデータである。

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この統計で労働者の賃金の変化を見ると、
2011年度 -0.3%
2012年度 -0.7%
2013年度 +0.1%
となった。 今年に入ってからの月次ベースの数値は、
1月 -0.2%(前年同月比、以下同じ)
2月 -0.1%
3月 +0.7%
4月 +0.7%

確かに、現金給与総額は少しずつ上昇している(引用者注意:ただし、最も重要な所定内現金給与総額はこの限りではない。残業代とボーナスが加わっているので、給料が上がっているように見えるだけだ)。しかし、給料以上に消費者物価が上昇すれば、意味はない。そして、その通りなのである。

消費者物価(生鮮除く総合)上昇率の推移を見ると、
2011年度  0.0%
2012年度 -0.2%
2013年度 +0.8%
であり、 今年に入ってからの月次ベースの数値は、
1月 +1.3%(前年同月比、以下同じ)
2月 +1.3%
3月 +1.3%
4月 +3.2%

こうした結果、5月の一般世帯の消費が前年同月比で8.0%の激減を示した。4月に比べても、実質で3.1%の減少だ。年率換算すれば31%の減少である。その内容を見ると、

住居の設備修繕・維持が -44.4%
自動車などの購入が   -29.7%
装身具が        -61.1%
腕時計が        -84.0%
の前年同月比減少を示した。

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 要するに、奢侈品ではない日常の耐久消費財、食料品など生活必需品の価格が庶民の給料のわずかな上昇(と見えるだけだが、実質的に重要な所定内賃金は趨勢的に下落傾向)以上に大幅に上昇しているのである。こうした真実は日本経済新聞社が伝えるべきだが、「心配ない、心配ない」のオンパレードである。同紙は名前を「日本政府経済政策機関紙」と名称を変えたらどうか。

ということで、日経平均もブル(強気)とベア(弱気)が交錯しつつ、次第にベアの方向が大勢となろう。安倍晋三政権は年金の積立金の株式投資を始めようとしている(実際は、政府系金融機関を使ってPKOをやっているのは明らかだ)が、「焼け石に水」になる。

だから、株価も全般的に冴えない。日本の株式市場では既に今年の上半期も終わったが、上半期最終日の6月27日金曜日、日経平均は前日比213円49銭急落し、1万5095円00銭で引けた。ちょっと試算すると、長期金利は現在0.555%。株式投資のリスクプレミアムを3%とすると、株式投資の利益率は3.555%。その逆数は28倍。これが、株価収益率(PER、株価が1株あたりの利益の何倍あるかを示す指数)の経験的な理論値になる。一般的に、25倍というのが経験的な目安だ。ところで、PERを日経平均の株価収益率で代表すると、下図のようになる。

gc

 

日経平均のPERは大体14倍程度で、低迷していると言わざるを得ない。企業の利益は高水準と伝えられるが、企業の利益から試算される理論的な株価に比べて、実際の株価はかなり割安になっていると思われる。これは、消費税増税で日本の経済社会が破壊されつつあるのを株式市場が読み取り始めたからである。

安倍晋三首相が昨年の大納会で「来年もアベノミクスは買い」とやったが、年明け以降はそうなっていない。むしろ、「今年はアベノミクスは売り」となっている。これは、アベノミクスの正体が米国を始めとして世界各国の経済社会を破壊してきた「悪魔の思想」である「新自由主義」そのものであるから、当然の帰結である。

なお、東京土建一般労働組合の組合員から建設業界(主としてゼネコン)は好況に湧いているとの話を聞いたが、安倍政権が消費税のさらなる大増税のために、平成26年度予算で予定されている公共事業の前倒しを進めるなど、なりふり構わず「偽装景気回復策」を進めているからである。

「集団的自衛権」で騒いでいるが、その前に経済情勢に大異変が起きる可能性が高い。また、「積極的平和異主義=軍国主義=当面の米国の戦争への加担=自衛隊(員)への謝礼なしの米国の傭兵化」、要するに戦争で平和をもたらすことが不可能であることは、歴史が証明している。

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