拝察ー「隠れ多極主義者」には強硬派と穏健派が存在するのではないかー米国は民主・共和党の分断国家に

国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏が米国内から育ち今や世界情勢の行く末を決定しているという「隠れ多極主義」論を精力的に展開しておられ、サイト管理者(筆者)も自己流ながら理解を示しているが、「隠れ多極主義派」には好戦的な米国の民主党政権を支配している過激で好戦的なネオリベ系統とトランプ共和党に根付いている穏健で、真の多極世界を形成しようとしている穏健派がの二勢力闘っている(暗闘を繰り広げている)のではないか。

二つの隠れ多極主義勢力

「隠れ多極主義者」の概念について、提唱者の国際情勢解説者である田中宇氏は昨日2022年09月19日「世界を多極化したがる米国」と題して、「隠れ多極主義」についてまとめの解説を行った論考を投稿されている(https://tanakanews.com/220919multipol.htm、無料記事)。その起源は、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて世界を一極支配する能力を失った英国が、米国が第二次世界大戦に参戦する代わりに戦後世界の一極支配権を同国に譲れと甘言で誘ったことにある。ただし、英国は狡猾で米国に譲ったかに見えた一極覇権体制を「共産主義」の脅威のもとに奪い返したという。

なお、英国が英仏海峡で行われたアルマダの海戦でフェリペ2世時代のスペインの「無敵艦隊」を破ったのは、1588年7月から8月にかけてのことで16世紀のことである。そして、17世紀には欧州の周辺的辺境地帯にあった英国は、アジアや古代ギリシア・ローマの農村共同体よりも生産力の高かったゲルマン農村共同体(注:大塚久雄の「共同体の基礎理論」(岩波書店)による)の内部から中世後期以降形成されてきた局地的市場圏を基盤に広域市場経済圏、国内市場圏を形成して歴史上初めて近代資本主義を形成、18世紀以降に興った産業革命を伴って、近代資本主義を世界的に拡大(近代植民地の形成という形も含む)してきた。

経済との「両輪の輪のように」その宗教的・倫理的・思想的基盤として、マックス・ウェーバー=大塚史学が指摘しているように「プロテスタンティズムの倫理」があった(英国ではプロテスタンティズムを受け入れたキリスト教はピューリタニズムと呼ばれる)ことを強調して置かねばならない。

近代資本主義システムの確立とともに英国は永く、「陽の沈むことはない世界大帝国」として世界を支配してきた。ただし、宗教的高揚はいつまでも続かず、熱狂が覚めると「救いの証(救いの確証として得るもの)」であったはずの富が、自己目的化する。こうして、近代資本主義は人類の始まりとともに古い「賤民資本主義」に堕してしまう傾向を持つようになる。こうした流れの中で、大英帝国が誕生し、世界を一極支配してきた長い歴史がある。

しかし、①英国は島国であり、資源もない②ドイツなど後進資本主義(開発独裁)が発展してきて、相克するーようになると、次第にその力が衰えてくるようになった。その結果、第一次、第二次世界大戦が起こったわけだが、英国としては遅れて米国が参戦した第一次世界大戦と同様、第二次世界大戦にも米国に参戦してもらわなければ、一時的に欧州全土がナチス・ドイツに奪われた同大戦を勝ち抜くことはできなかった。

米英覇権主義と多極主義の相克は、第2次大戦で英国がドイツに負けそうになっていた時に、当時中立国だった米国が英国に、覇権を譲渡してくれるなら大戦に参戦して勝たせてやると持ちかけた時に始まった。

ただし、田中氏によると米国は当初、単独一極支配体制の確立は好まなかったようだ。このため、五カ国の常任理事国が拒否権を持つ多極的な国際連合を組織化した。これを支援したのがニューヨークに建設された国連本部に建設されたロックフェラー家である(https://www.unic.or.jp/files/un00_10.pdf)。しかし、英国は米国に対して「共産主義の脅威」を説いて(チャーチル首相「鉄のカーテン」)、米国を単独覇権体制に引き返した。

19世紀初頭のナポレオン戦争から2度の大戦まで、英国が世界の覇権を握っていた(列強体制を活用し、他の列強諸国も頑張らせて覇権を効率運用していた)。米国(を動かしていたNYの資本家)は、第一次大戦前から、英国や列強が世界の大半の地域を植民地化して、それらの地域の経済発展を阻害している帝国主義体制が不満で、列強による中国の分割を阻止した。植民地を独立させて発展への道を解放した方が世界経済が長く繁栄する(資本家が儲かる)。そのため米国は、英国から覇権を譲り受け、新たに国際連合を作ってそこに覇権をもたせ(覇権の機関化)、国連の最上層部に多極型のP5を置き、国連が植民地の独立や戦争防止策を担当する新世界秩序を作ることを決め、英国からの覇権譲渡のために世界大戦に参戦した。米英は戦勝し、ヤルタ会談やカイロ会談が開かれて多極型のP5が構成されて国連が作られた。世界はいったん多極化した。 (米国の多極側に引っ張り上げられた中共の70年

英国は、世界に対する影響力が低下するので多極型の覇権体制に反対だった(資本と帝国の相克は英国内でも産業革命以来ずっと続いてきた)。それまで150年間の覇権運営の経験を持っていた英国は、覇権運営の初心者である米国に手ほどきする名目で、覇権運営のために新設された米国の諜報界に入り込んで牛耳った。そして、ソ連や中国は共産主義で危険だから味方でなく敵であるという冷戦思考を米上層部に広め、P5や国連内でソ中・社会主義陣営と、米英など自由主義陣営が対立するように仕向け、国連を機能不全に陥らせ、代わりに冷戦体制を構築した。英国系の米諜報界は、北朝鮮の南進を誘発して朝鮮戦争を起こし、冷戦体制を確立した。英国が冷戦を起こして米国を乗っ取ったことにより、米国が作った多極型の世界体制は、米英覇権の西側と、米英敵視の東側が対立する冷戦体制に取って代わられた。 (資本の論理と帝国の論理

英国が奪った米国の英米単独覇権体制は、①ソ連が市場経済システムを持たないことから経済的に内部崩壊を始めた②中ソ紛争が始まり、ソ連と中国に深刻な対立が生じるようになったーことから、米国から「多極的」世界実現に向けての巻き返しが起きるようになる。それを行ったのはニクソン、レーガン、トランプの歴代共和党政権である。

だが実際の歴史を見ると、中国やソ連との対立を解消して冷戦体制を崩したのはニクソンとレーガンという共和党の政権だった。いずれも、表向きは反共主義や軍事費増強(軍産複合体との親密性)を維持しながら、実際に推進したのはニクソンの米中関係正常化や、レーガンの冷戦終結という、冷戦体制=米英覇権体制の破壊、米中正常化による中国の経済発展・台頭への誘導、東西ドイツ統合とEU国家統合への誘導(欧州を世界の極の一つに仕立てること)などの多極化策だった。共和党は、表向きの共産主義敵視や軍産との癒着の下に、多極化や、米英覇権体制(米国の覇権運営が英国に乗っ取られている状態)の破壊を目指す動きを秘めている。共和党は「隠れ多極主義」の政党といえる。国連(多極型世界組織)の創設や、キッシンジャーをニクソン政権に送り込んで米中正常化を推進した黒幕としてロックフェラー家が知られており、ロックフェラーは隠れ多極主義であると言えるが、彼らも共和党支持である。共和党の隠れ多極主義的な傾向はロックフェラー(などNY資本家群)に起因しているとも考えられる。 (ニクソン、レーガン、そしてトランプ

このころは、米国の深部を操っていた軍産複合体(米国ディープ・ステート(DS))は民主党も共和党も支配していたが(アフガン、イラク戦争、シリア戦争)、どうもどちらかと言えばその後は、伝統的なキリスト教信仰や家庭の大切さを重視する健全なネオ・コンサーバティブ(新保守主義)から逸脱して軍産複合体と組んだ好戦的なネオコンと化した勢力が民主党のクリントン、オバマ政権を支配するようになってきた。シリア内戦やイラン核開発問題などに象徴される。また、政治経済評論家の植草一秀氏によると、米朝国交正常化の一歩手前まで両国の交渉が進んだところ、同国交正常化を妨げたのは戦争終結を気嫌う軍産複合体(伝統的に戦争を終わらせたくない)だったという。

これに加えて、コロナ騒動が2020年末から始まった。コロナ騒動は、アンソニー・ファウチ所長(2022年12月に公職から退く)率いる国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が中国の生物・化学兵器研究所に資金を渡して新型ウイルスを研究させていたところ、中国側の研究所の「管理が甘く」、コロナが中国国内に流出してしまったことに端を発するというのが隠れた真相のようだ。当時のトランプ大統領はファウチ所長と大きな対立を展開したが、結局、コロナ感染の存在自体と感染者のための郵便投票はそのものは、認めざるを得なかった。しかし、サイト管理者(筆者)の米国にいる友人たちに聞いても、郵便投票の管理(不正でないかどうかを厳密に検討することなど)が甘く、このため、同投票の大量不正でトランプ大統領はホワイトハウスを去らなければならなかった。

一方、オバマ大統領時代に副大統領を務めたバイデン氏は子息も使い、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大のためにウクライナの政界・経済界に隠然とした政界工作を行い、当時のビクトリア・ヌーランド国務次官補に指示して2014年02月にマイダン広場で流血の惨事を引き起こさせ、平和的なデモを暴力的なデモに変えさせ、非合法的にマイダン暴力革命を行わせて今日のウクライナ事変の原因を作らせた。2010年代は総じて、軍産を過激に利用しようとし、利用されもしてきた民主党と、軍産からは一歩引いているトランプ共和党との間に修復し難い亀裂が入った時代だ。こうした中でバイデン民主党政権時代を迎えるが、この政権の時代は過激で拙稚な「隠れ多極派」の時代のようだ。

今のバイデン政権も民主党だが、やっていることは覇権自滅的なことばかりで、立て直しを目指すのが民主党政権だという見立てと矛盾している。その理由は、米諜報界を牛耳る勢力が、以前の米英覇権派から多極派に交代してしまっているため、誰が大統領になっても覇権自滅的な流れにしかならなくなっているからだろう。オバマは覇権立て直しを目指したがシリアやリビアを内戦にされて失敗した。当時すでに米諜報界は多極派に乗っ取られ、大統領の言うことを聞かなくなっていたと考えられる。その後の覇権放棄屋トランプの政権で諜報界はますます多極派が席巻し、そのままバイデン政権に突入した。資源類を握った露中イランなど非米諸国の台頭を加速させているウクライナ戦争は、隠れ多極主義の最高傑作といえる。ハンガリーの親露大統領オルバンによると、ウクライナ戦争は2030年まで続きうる。多極化の傾向がずっと続くことになる。Ukraine conflict could last until 2030 – Orban) (米諜報界を乗っ取って覇権を自滅させて世界を多極化

米諜報界は戦時中に新設された当初から、英国勢に入り込まれている。米英諜報界は一体のものになっている。近年、米諜報界を席巻した多極派は、そのまま英諜報界にも入り込んでいる。英国は覇権自滅屋に牛耳られた。その結果、2016年の英EU離脱決定あたりから、英上層部(諜報界)は米国系の多極派に牛耳られ、英国は自滅的な策を多発している。ゼレンスキーに肩入れしすぎていることや、最近のトラス首相の就任がそうだ。 (米国が英国を無力化する必要性

もし、このままバイデン民主党政権が続けば、米側陣営は中露を中心とした上海協力機構とBRICSなど資源・エネルギー、貴金属、穀物などコモディティ大国からなる非米側陣営に敗北することになる。ただし、非米側陣営は欧米文明の普遍的な文明遺産の吸収は仕切れていない。ただし、今年11月08日の米中間選挙ゃ2024年の米大統領選挙でトランプ共和党が返り咲く公算はかなり大きい。トランプ前大統領が大統領に返り咲けば、プーチン大統領、習近平国家主席を通じて米側陣営と非米側陣営が歩み寄り、国連を正常化に向けて「敵国条項」を廃止するなど、国連改革を行うことも可能になるだろう。

米側陣営と非米側陣営の歩み寄りの象徴は、東アジアに北朝鮮の経済発展を前提とした朝鮮半島の統一を実現し、東アジア文明建設に向けて協力していくことだろう。サイト管理者(筆者)がこれまで考えてきたところからすれば、世界平和統一家庭連合(旧世界キリス基督教一神霊協会:略称統一教会)はそれを支えていくことが正しい使命だろうし、カルト教団という汚名の払拭の道にもつながると思われる。同連合の首脳陣は、世情(国際情勢)の社会科学的な分析・理解に努めなければならないはずだ。



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