2022年7月参院選の結果と日本が待ち受けている苦難ー東アジア共同体の構築を

2022年07月に予定されていた参院議員選挙は10日、投開票が行われ、自民・公明両党の大勝に終わった。このため、新自由主義路線は継続し、①消費税追加増税②原油・天然ガス高騰を理由とした地震多発国での原発再稼働ーが待っている。しかも、「加憲」を唱えている公明党を含む自民・公明・維新・国民の四党の獲得議席数は177議席で参院議員の定数の三分の二(166議席)を上回った。衆議院も同じ状況であり、国会の発議に基づく「憲法改正=壊憲」が日程に上ってきた。ただし、投開票二日前の8日には、安倍晋三元首相への不可解な狙撃テロが行われ、与党側の大勝の一因になった。日本の行くべき道を識者の意見を参考にしながら検討したい。

2022年夏の第26回参院選の結果

NHKによると、2022年夏の第26回参院選の結果は次の通りだ。

これを見ると、与党の自民・公明両党で参院議員の定数248の過半数をはるかに上回る146議席。自公与党に協力的な維新は15議席から21議席に躍進した。国民も2議席減らしたものの、10議席を確保した。野党ではれいわが2議席から5議席へと健闘したが、他の反自公野党はふがいない。特に、立憲民主党は選挙前の45議席から39議席へと惨敗した。形式的に言えば、野党第一党の座は守ったとしても、御用組合でしかない日本労働組合総連合会(連合)六単産の支配下に自ら入った同党に野党を主導する力はない。即刻、解党して、真正野党共闘体制を再構築すべきである。なお、注目の小選挙区相当の1人区(32)では自民党28議席、野党4議席で自民党がほぼ制圧した。

また、「加憲」の立場の公明党も加えると、自民・公明・維新・国民の四党の衆参両院の議席数で「憲法改正=実態は壊憲」の発議が出来るようになる。

しかし、これから三年間の間に国政選挙はまずない。内閣不信任案決議の可決など夢のまた夢でしかないからだ。この暗闇の三年間に待ち受けているものは何か。日本内外の政治状況に詳しく、自らも政策提言を行い、「政策連合」実現に東奔西走しておられる植草一秀氏はメールマガジン・第3266号「立憲民主解体と新・野党共闘」で次のように指摘しておられる。なお、鳩山友紀夫元首相が主催する東アジア共同体のUIチャンネルも参考にされたい(https://www.youtube.com/watch?v=_-jTiEwJ_Ss)。

【追伸0712午前01時30分】鳩山元首相は上記のUIチャンネルで政界復帰を示唆した。

この空白期に、強い批判のある施策が強行されやすい。具体的には壊憲・原発稼働・消費税増税の地獄が日本を襲う可能性が高まる。憲法改定を強行するには最終的に国民投票のハードルを超える必要がある。ここが最後の最重要の砦になる。国民投票が行われる場合、メディアを利用した広告宣伝活動が重要な意味を持つことになる。この点で壊憲勢力は金力とメディア支配力を活用して、国民を洗脳することを目論んでいる。この点の懸念が残存していたから憲法審議に慎重対応が求められてきたが、立憲民主党が問題解決の確約も取らずに憲法審議を進めることに同意した。極めて危険な状況にある。(中略)

言語道断だが、政権与党が国会を支配している限り、何でもありだ。参院選のあとに本当の地獄が到来する。このような地獄を招いた責任の多くは立憲民主党にある。立憲民主党の即時解体が最重要の課題になる。立憲民主党が自壊したのは枝野幸男氏の転向が主因だ。昨年10月31日の衆院総選挙で立憲民主党が惨敗した。惨敗の主因は枝野氏の転向にあった。枝野氏はこう述べた。

「「野党共闘」というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。」野党共闘を否定して共闘の対象は国民民主党と連合であると宣言した。日本政治を刷新するには、政権与党に正面から対峙する政治勢力の大同団結が必要不可欠。その大同団結こそ野党共闘の意味である。立憲民主党が結党以来、躍進できたのは、主権者が、立憲民主党が野党共闘を主導すると期待したから。立憲民主党が躍進できたのは、共産党が全面的な選挙協力を実行したからだ。ところが、枝野幸男氏が転向した。総理になるには対米隷属に舵を切る必要があると感じたためだと思われる。総選挙での立憲民主党惨敗を受けて枝野氏が辞任したが、後任代表に就任した泉健太氏は枝野氏以上の右旋回を主導した。

この意味で、立憲民主党は解体されなければならない。そして、強力な新・野党共闘体制を構築する必要がある。今回の参院選で善戦し、衆議院議員3人、参院議員3人と合計6人の国会議員を有することになり、NHKも日曜討論への登壇を拒否できなくなるなど、発言力を増した。しかし、日本を含むG7諸国は目下、スタグフレーションの状況下にある。変動が大きいとして従来はあまり重要視されなかった食料・エネルギー価格の持続的な高騰による。変動の大きい食料品価格、エネルギー価格を覗いたコア・コアインフレ率を重視し、2〜3%以内なら統合政府(政府と日銀)の通貨発行権を利用して内需の大喚起を実現できるというれいわ新選組の主張は、正念場に立たされている。

山本太郎代表自身は否定するが、れいわの根本的な考え方はMMT(現代貨幣理論)によるものと思われる。しかし、MMTには今のところ、スタグフレーションに対する対策(政策)が明確であるようには思われない。1970年代の第一次、第二次石油ショックの際には日本の産業構造を資源・エネルギー多消費型の産業構造に転換することによって克服できた。今回のコストプッシュ・インフレは新型コロナに伴う都市封鎖による流通網の寸断と、米英ディープ・ステートとその傀儡政権であるウクライナのゼレンスキー政権が引き起こしたロシアの「ウクライナ侵攻」(ウクライナ事変)に伴う対ロシア経済制裁がある。さらに、QE(Quantitative Easing=量的金融緩和=)による極端な円安誘導政策が加わる(注:外資による日本の優良資産の買い占めを招いている)。

つまり、新型コロナ問題やウクライナ事変といったすぐれて国際情勢問題を会計しない限り、スタグフレーションは克服できないと思われる。この点に関して非常に参考になるのが、国際情勢解説者の諸論考だ。昨日投開票の参院選に関連して、同じ日には自民党大勝をもたらした「安倍元首相殺害の深層」という論考を公表しておられる(https://tanakanews.com/220710abe.htm、無料記事)。

まずはリード文を引用させていただきたい。

岸田は安倍路線を捨て、米国から誘導されるままに露中敵視を強めるが、それは日本が経済的に露中から報復されて窮乏することにしかつながらない。米諜報界とバイデン政権を牛耳るネオコン系は隠れ多極主義なので、露中を強化して多極化を進めるために、日独に自滅的な露中敵視をやらせて潰し、露中を優勢にしている。安倍は日本を米中両属にして国力の温存を図ったが、今回ネオコン系(注:軍産複合体=ディープ・ステート(DS)のこと)に殺され、代わりに日本の権力を握らされた岸田は、ネオコンの傀儡になって日本を急速に自滅させていく。

田中氏の「安倍晋三論」は次のようなものだ。

7月8日の安倍晋三・元首相が殺害された事件の最大の要点は、安倍が自民党を仕切っている黒幕・フィクサーだったことだ。安倍は一昨年に首相を退いた後、後継の菅義偉と、その後の今の岸田文雄が首相になるに際して自民党内をまとめ、菅と岸田の政権が安全保障・国際関係などの重要事項を決める際、安倍の意向が大きな影響を与える体制を作った。安倍は首相時代から、対米従属を続ける一方で中国との親密さも維持し、日本を「米中両属」の姿勢に転換させた。安倍は、米国の「インド太平洋」などの中国敵視策に乗る一方で、日中の2国間関係では中国を敵視せず協調につとめ、世界の覇権構造が従来の米単独体制から今後の多極型に転換しても日本がやっていけるようにしてきた。 (米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本

安倍はプーチンらロシアとの関係も維持しており、ロシア政府はウクライナ開戦後、岸田首相や林外相らを入国禁止の制裁対象にしたが、岸田の後ろにいて日本で最も権力を持っていた安倍は制裁対象にしなかった。ウクライナ戦争によって作られた米国側と非米側の対立の激化は、今後時間が経つほど資源類を握るロシアなど非米側が優勢になり、日本など米国側は資源調達がとどこおって経済的に行き詰まる。岸田政権は今のところ米国の言いなりでロシア敵視の姿勢を続けてきたが、今後はロシアなど非米側から石油ガスなどを止められる傾向が強まり、資源を得るためにロシアと和解せねばならなくなる。そのとき安倍がプーチンとの関係を利用して訪露などして対露和解を進め、日本を資源不足の危機から救う展開が期待できた。そのため、露政府は安倍を入国禁止の対象に入れていなかったと考えられる。

左翼リベラルなどは安倍を敵視してきたが、安倍は今後の日本に必要な権力者だった。だがその安倍は今回、ロシアなどが日本への資源輸出を止める報復措置を強め始め、安倍の出番が近づいたまさにそのタイミングで殺されてしまった。これから日本が資源を絶たれて困窮しても、日本を苦境から救うことができたかもしれない安倍はもういない。7月8日の安倍の殺害は、偶然のタイミングにしては絶妙すぎる。報じられているような、犯人の個人的な怨恨によるものとは考えにくい。今回のような大きく衝撃的な政治事件は、偶然の産物として起きるものではない。安倍の殺害は、日本がこれから困窮しても中露と関係を改善できず、中露敵視を続けざるを得ないようにするために挙行された可能性が高い。 (中立が許されなくなる世界

サイト管理者(筆者)の立場から言えば、森友・加計・桜を見る会前夜祭・広島政界疑獄内政不祥事はすべて故・安倍元首相が関連している。内閣総理大臣(首相)としてはどうかというのが、偽らざるところだ。しかし、故・安倍元首相が米中二股外交を展開してきたことは確かだ。北方領土問題解決のために、ロシアのプーチン大統領と27回に及ぶ交渉を重ねてきたことも事実だ。だから、サハリン2問題解決のために、故・安倍元首相が生きておればプーチン大統領との交渉に臨んだだろうとう説もあながち荒唐無稽とは言い切れない。

植草氏も指摘しているように、日本の最大の課題は対米隷属外交からの脱却である。サイト管理者(筆者)自身は故・安倍元首相にその力量があったかどうか疑問なところがある。しかし、日本が期待せざるを得ないところまで追い込まれていることは確かだ。こうした状況に追い込まれているのも、現在は欧米文明が瓦解していく歴史的な転換期に遭遇しているからだと思われる。

真の野党としては、ウクライナ事変を正当に評価できなければならない。植草氏も軍事力を使ったロシアは非難されなければならないが、バイデン政権樹立後、ロシア系ウクライナ人が多数を占める東部ドンバス地方を猛抗議するなどしてロシアがウクライナに「侵攻」するように誘導したバイデン政権とその傀儡政権であるゼレンスキー政権はもっと悪いと解説している。もっとも、ロシアが悪いと言っては米英アングロ・サクソン系ディープ・ステート(DS)の思うつぼだろう。中途半端なことを言っていてはいけない。サイト管理者(筆者)としては新生野党共闘体制の構築には、歴史社会学的な思考が必要だ。そして、日本は非米陣営国側につき、東アジア共同体の構築に尽力するべきだろう。


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