その辺のことはいくら外務省がバカでも理解しているはずだ。だから、安倍首相は今回の中東訪問において、イスラエル紙に次のようなイスラエルのリクード政権の入植政策を批判する寄稿を行った。

(引用開始)

安倍首相:「入植政策は国際法違反」イスラエル紙に寄稿

毎日新聞 2015年01月20日 11時04分(最終更新 01月20日 12時12分)

【エルサレム大治朋子】イスラエルを訪問中の安倍晋三首相は地元紙「イディオト・アハロノト」(19日付)に寄稿し、イスラエルが推進するユダヤ人入植(住宅)地の建設について「国際社会が国際法違反とみなす」ものだとして、改めて見直しを求めた。入植地拡大政策はパレスチナとの中東和平交渉再開の大きな障害となっており、改めて「苦言」を呈した形だ。

首相は「真の友からの提案」と題する寄稿で、昨年春以降、和平交渉が頓挫している「現状を懸念している」と指摘。一方で、入植地で作られた商品の不買運動については「当事者の一方をボイコットするような動きには明確に反対する」と述べ、「日本は友人として、イスラエルが国際社会で孤立しないことを願っている」とした。

(貼り付け終わり)

確かに安倍寄稿はイスラエルの政策を批判している。しかし、同時に「真の友」とも述べている。イスラエルの首相に対して、安倍首相は友人であると述べている。 去年の末からの中東情勢を見れば、このような書きぶりができるはずはない。イスラエルは、現在、3月17日に投票予定の解散総選挙の真っ最中であり、同時にパレスチナの国際刑事裁判所(ICC)加盟という新しい動きに直面している。

イスラエルが最も嫌がっているのは、ICCを通じてイスラエル国防軍の兵士たちが、ガザ地区で行っている軍事行動について国際法違反であると指弾されることである。産經新聞の報道によれば、「安倍首相は国際刑事裁判所(ICC)への加盟を申請したパレスチナ自治政府に対して「中東和平に支障がある動きは控えてほしいと伝える」と、ネタニヤフ氏に説明した」という。実は、ネタニヤフ首相は安倍首相がこのメッセージを出すように根回しをしていたようだ。

日本の独立系ニュースブログでは、マアリブ紙の報道を引用して、ネタニヤフ首相が、安倍首相に国際刑事裁判所にイスラエルだけとやり玉に挙げ続けるのは受け入れがたいというメッセージを伝えるようあらゆる手段を取って欲しいと要請する見通しである」と書いている。(http://blogos.com/article/103815/

このICCを巡る動きが、イスラエルの孤立化につながっている、ということは安倍寄稿を読めば分かる。イスラム国の人質ビデオにこの安倍首相のイスラエルとの連帯発言がどの程度影響したか、ということについては議論があるだろう。しかし、安倍首相はまんまとイスラエルに嵌められた、ということは言えると思う。

年明けに起きたパリでのイスラム原理主義派による風刺新聞襲撃事件の後にも、ネタニヤフは、わざわざパリに出かけ、フランスのオランド大統領やドイツのメルケル首相が参加するデモンストレーションに参加している。イスラエルの左派系のハーレツ紙によれば、「オランド大統領はネタニヤフにパリのデモ行進に来るなと伝えていた。ネタニヤフがイベントを利用しフランスのユダヤ人について演説することを懸念していた」ということである。つまり、イスラム原理主義のテロをシオニズムのプロパガンダに使われることを欧州はものすごく嫌がっているということだ。(http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/.premium-1.636557

イスラエルを支持する文脈での「テロとの戦い」という視点で物事を見る「仮説」をたてることが重要ではないかと思う。イスラエルと戦っているハマスというパレスチナの過激派を作ったのはモサドではないかという話がある。このことの真偽はともかく、ハマス幹部の息子がイスラエルに内通し、イスラエル総保安局シン・ベトに協力していたという本が少し前に話題になった。(『ハマスの息子』)イスラム国にも同様の情報網がイスラエルにはできている可能性は十分にある。

イスラム国を盛り上げることはイスラエルにとっても利益だ。イスラム国の残虐さを強調することで、イスラエルのパレスチナにおけるテロ行為が大きく報道されなくなるからだ。

これにネオコン派のマケインが中東で暗躍しているのが非常に気になる。日本は知らない間に、イスラエルとパレスチナの戦いのイスラエル側にたって参加させられることになったのではないか。マケインは戦争を煽るプロフェッショナルで、ロシアとウクライナの対立にもウクライナを焚きつける役割をしていた。

言ってみれば、今の中東地域、イラク、シリアのイスラム国支配地域は、かつての旧満州周辺の馬賊が支配するような軍閥割拠地域であるだろう。そういうところに反シリアのアサド政権の文脈でアメリカが支援したイスラム過激派が紛れ込み、それが「ブローバック」となって、イスラム国が生まれた。それでもマケインのような過激派は、そうなったらそうなったで、「ならばイスラム国も潰す。別の反アサド勢力を育てるまでだ」というだけだろう。ツイッター上で、ジョン・マケインという政治家は「馬賊の長」だと書いていた人がいたが、言い得て妙だ。おそらくは「アラビアのロレンス伝説」も似たようなものだろう。 ネオコンは世界中に戦争の種をまき散らしている。これとオバマ大統領は戦っている。

https://www.youtube.com/watch?x-yt-cl=84411374&x-yt-ts=1421828030&v=vItuKKuz_7Y

さらに言えばウクライナ紛争の時に電話が傍受されて公開された、米国務省の東欧担当の高官であるヴィクトリア・ヌーランド(下の写真)だが、米国のフランス大使館主催でワシントンで開催された、風刺漫画家殺害に抗議する連帯デモには政府の代表で参加していたという報道もあった。ネオコン派とオバマ政権のリアリストの対立があるのは間違いない。

http://livedoor.blogimg.jp/bilderberg54/imgs/8/e/8e52b887.jpg

そのような中で、オバマ大統領とバイデン副大統領が、パリでの連帯デモに参加しなかったのは実に賢い判断だった。ネオコンが戦争をいたるところで煽っている中、アメリカの国益にかかわらない案件に深入りする必要はないという判断なのだと思う。

アメリカも中国のような大国と戦争はできない、ということはわかっている。しかし、アメリカの基幹産業である軍需産業を支えるためには世界の何処かで戦争しなければならないという「原罪」を背負っている。そこで注目されたのはイスラム原理主義との戦いというプロパガンダである。これを始めたのはネオコン派やイスラエル・ロビーのシオニストたちである。

イスラエルがリクード政権のネタニヤフという危険なネオコンとつながっている指導者に率いられている今、安倍首相はネタニヤフとの結束をアピールするべきではなかった。これは反ユダヤ主義でもなんでもなく、イスラエルの外交政策、とりわけ、パレスチナへの入植政策が問題であるということだ。そのことを安倍首相は理解していたはずなのに、みずから墓穴をほってしまった。

かくして「テロに屈するな」というスローガンが飛び交うことになる。安倍首相のイスラエル外交が日本をその地獄の淵に引き寄せた、というのが後世の歴史家の適正な評価となるだろう。

参考までに「日本のイスラエル・ロビー」というサイトのリンクを張っておきます。イスラエル歴訪に同行している安倍側近の中山泰秀外務副大臣はこのメンバーである。安倍を支持する日本会議にも「神の幕屋」というシオニスト団体が加わっていることも重要である。

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米軍産複合体の経済規模(付加価値額)は年間60兆円規模と言われる。戦争を起こすことが、ビジネス・チャンスであり、戦争が起こらなければ衰退する。これに加えて、米国は世界最大の(純)債務国であり、対米債権国連合が形成されつつある。これを阻止するために、あらゆる手段を使って戦争を引き起こすことを狙っていると見られる。米国内でも、軍産複合体を代弁するヒラリー・クリントンとこれに否定的なジョー・バイデン副大統領が対立している模様である。


【マケインとイスラム国の関係を紹介するYoutubeのビデオ】

集団的自衛権や積極的平和主義を振りかざし、維新の党を抱き込んで憲法改悪を狙う安倍晋三政権は、政治・経済・外交・軍事あらゆる面で、確信的にその尖兵になろうとしていることを、賢明な日本の国民の皆さんは見抜き、これを阻止する必要がある。今回は水面下で交渉し、人質の解放を勝ち取り、米英イ有志連合から離脱する必要があるが、安倍首相に期待するのは無理筋というものだ。

 

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