
ロシアのタタールスタン共和国の首都であるカザン(モスクワから東へ800キロメートル)で、10月22日から24日までBRICS+首脳会議が開かれ、非米側陣営の国際(経済)システムの始動を告げるカザン宣言が採択された。米側陣営諸国は、ディープステート(深奥国家、諜報界)の米国単独覇権主義派の支配下にあるバイデン大統領・ハリス副大統領民主党左派政権がウクライナ戦争を誘導し、世界の米側陣営と非米側陣営への分裂を決定的にしたが、その後、米国を中心にインフレと不況が併存するスタグフレーションの経済的危機に直面。このため、ドル紙幣の造幣で資本市場にバブルを引き起こすことによって、ドルの米国への還流システムを必至で維持しようとしている。しかし、ドル債券に対する需要は次第に減少、米国の10年物国債価格は次第に下落(金利は上昇)してきており、「ドル・原油本位制」によって裏打ちされている「ドル基軸通貨体制」は近い将来、崩壊する見込みだ。カザン宣言の内容はこの状況に対応したもので、①「越境決済システム(ドル代替決済システム)」の構築・運用②いずれは原油や天然ガス、金地金を中心とした貴金属の取引を含むようになる「穀物取引所」の創設・運用ーが中心と言って良い。BRICS+を中心とした非米側陣営の経済発展の可能性を考慮すれば、米側陣営は11月5日の米国大統領選挙で、「米国単独覇権主義派」ではなく「隠れ多極主義派」に属するドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲き、単独覇権主義派のディープステート勢力を一掃した上で、非米側陣営諸国と協同で新たな「統一文明」を築く必要がある。
カザン宣言は非米側陣営の国際経済システムの始動宣言
BRICSには今年2024年1月からエジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が加わったが、サウジは米国バイデン政権の圧力で正式加盟国にはなっておらず、取り敢えずは9カ国体制だ。ただし、カザン会議にはサウジの実権を握るモハンマド・ビン・サルムーン(MbS)皇太子兼首相こそ参加しなかったものの、ファイサル外相が出席した(https://jp.reuters.com/markets/commodities/SA7P4GRZRJK67G5QLHKAGSUFTQ-2024-10-11/)。サウジには昨年12月、中国の習近平国家主席が公式訪問し、原油を人民元建てで購入することを正式に決めたほか、習近平政権が仲介して同国はイランとの国交正常化を行っている。
また、イスラエルは2020年8月13日、当時のトランプ大統領らの仲介で、サウジの傘下にあるアラブ首長国連盟(UAE)と国交を正常化し、平和友好関係を築くための「アブラハム合意」に調印した。イスラエルと、イスラム教スンニ派(イスラム教を体現している人物をモハンマッド=マホメット=の後継者として重視する)の主導国であるサウジアラビアとシーア派(モハンマッドの血統を重視する)の中心国であるイランは互いに国交の正常化を図り、中東に和平を確立することを最終的な目的にしている。
イスラエルが10月26日、イランのミサイル基地や製造施設をピンポイント攻撃する報復措置を行ったが、イラン外務省は「『自国を防衛する権利と義務がある』と表明し、イスラエルの攻撃を非難した。しかし『地域の平和と安全に対する責任を認識している』とも述べ、過去の緊張激化時よりも融和的な姿勢を示した」(https://jp.reuters.com/world/security/PQVEYEQWK5MQZOMKKNUZ7JY5WM-2024-10-26/)。イランの最高指導者であるハメネイ師が報復の応酬合戦は望んでいないようであるのも、このためだと考えられる。イスラエルが敢えて「戦争犯罪」とも言える激しい戦闘を行っているのも、最終的な目標が中東和平の実現であるからだろう。
さらに、中国とインドは国境紛争問題があり、外交関係の悪さが何度も報道されたが、今回のカザンでのBRICS+首脳会議にはインドのモディ首相も参加し、中国の習国家主席は同首相に対して、「(中国とインドの)双方は意思疎通と協力を強化し、相違点を適切に管理しなければならない」と語りかけ、モディ首相もこれに応じた(https://mainichi.jp/articles/20241023/k00/00m/030/361000c)。インドは安倍晋三首相(当時)が提唱した日米豪印(QUAD)の中核国であるが、BRICSとも協力する「両属外交」をおおっぴらに展開している。外交巧者である。
外交は国益を最優先にすべきで、米国の隷属国や従属国だけになるのでは能がない。インドのモディ首相を見習うべきだ。石破茂首相は総選挙大敗の責任を追及されるだろうが、生き残る道はトランプ氏が大統領に返り咲いて、安倍晋三首相(当時)と同じように、ディープステートの「隠れ多極派」のトランプ氏と良好な関係を築く以外にない。
さて、カザン会議の成果について、ロイター通信は次のように伝えている(https://jp.reuters.com/markets/commodities/IB7YRZKGNVKHBOD5DKHLINO73I-2024-10-24/)。
ロシアや中国、インドなどで構成するBRICS首脳が23日採択した「カザン宣言」では、ロシアなど一部加盟国に科された制裁の撤廃を求めたほか、BRICS穀物取引所や越境決済システムなど基本合意された共同プロジェクトが示された。ロシアのプーチン大統領は、2024/25年のBRICS諸国の平均経済成長率は3.8%で、世界の成長率は3.2─3.3%になると予想。「BRICSが世界経済で主導的な役割を果たす傾向はさらに強まるだろう」と述べ、その主な要因として人口増加、都市化、資本蓄積、生産性向上を挙げた。
カザン宣言は、ロシアやイランを含むBRICSの一部加盟国に科された「一方的な制裁措置」が対象国の最貧困層の人々を苦しめていると非難し、その撤廃を求めた。プーチン氏は会議で「BRICS諸国は世界有数の穀物、豆類、油糧種子の生産国であることから、BRICS穀物取引所の開設を提案した」と説明。 この取引所は「食料安全保障の確保という特別な役割を考慮すれば、製品や原材料の公正で予測可能な価格指標の形成に貢献する」と述べた。取引対象はいずれ原油やガス、金属などに拡大する可能性がある。(中略)BRICS首脳はまた、ドル支配の世界金融システムを回避して相互に貿易できるようにする、共通の越境決済システムの構築を支持した。ブラジルのルラ大統領はオンラインで首脳会議に参加し、BRICS諸国が代替決済手段を構築する時が来たと述べた。インドのモディ首相は、BRICS諸国の金融統合に向けた歩みを歓迎すると述べ、中国の習近平国家主席はBRICS諸国の金融・経済協力の深化を促した。プーチン氏は演説の中で、BRICS投資プラットフォームの創設も呼びかけた。このプラットフォームはBRICS諸国間の相互投資を促すもので、グローバルサウスの他の国々への投資にも利用できる。
カザンでのBRICS+首脳会議の中心は、①「越境決済システム(ドル代替決済システム)」の構築・運用②いずれは原油や天然ガス、金地金を中心とした貴金属の取引を含むようになる「穀物取引所」の創設・運用ーだろう。カザン宣言では米側陣営諸国に、ロシアへの経済制裁撤廃を求めているが、それは当面実現しないから、根本はこういうことになる。
つまり、米国の制裁を受けても問題がないように、国際銀行間通信協会(Swift=Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication=、国際銀行間の送金や決済に利用される安全なネットワーク等を提供する非営利法人)を使わなくても二国間・多国間の貿易・金融取引の決済が出来るドル代替決済システムの構築・運用が、カザン宣言のメインである。このシステムはロシアを中心に既に基本的には既に構築されているものと思われる。これに関して、ロイター通信があらかじめ概要を報道している(https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/AU7ZTAVVOJIMVENKK7HLO2Q2A4-2024-10-17/)。
ロシアは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成するBRICSが来週開く首脳会議で、欧米の制裁の影響を受けない国際決済プラットフォームを構築するよう呼びかける。BRICSは22─24日にロシアのカザンで首脳会議を開く。ロシアは、世界の金融システムを見直し、米ドル支配を終わらせるために他国の協力を望んでいる。
首脳会議に先立ちロシア政府が配布した資料によると、BRICS各国の中銀を通じて相互にリンクされた商業銀行のネットワークに基づく決済システムを提案する。ブロックチェーン技術を活用し、各国通貨に裏付けされたデジタルトークンを保管・移転することで、デジタル通貨を安全かつ容易に交換できるようになり、ドル取引の必要がなくなる。
第二の重要な宣言内容は、非米側陣営が大量に有する穀物・エネルギーを米側陣営に買い叩かれないよう、いずれは原油や天然ガス、金地金を中心とした貴金属の取引を含むようになる「穀物取引所」の創設・運用だろう。中国は既にロンドン金地金市場協会(London Bullion Market Association=LBMA=)から脱退しており、LBMAの信用売りによる金地金相場の引き下げに対抗できるようになっているので、2024年以前は1トロイオンス=2000ドル以下に抑えられていた金地金相場は今年に入って「重し」が取れ、史上最高値を更新し続けるようになった。
三菱マテリアルのサイトから、最近の金地金相場の状況を下図に示す(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)。
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金地金相場は1トロイオンス=2000ドルの壁を打ち破り、最高値を更新し続けている。同3000ドルの壁を突破するのも、時間の問題だ。それだけ、ドルの価値が下がっていることの証左である。なお、米国は巨額の財政赤字と大幅な経常赤字を垂れ流し続けてきた。それでも、ドルが「強い」のは、米国に輸出した国が手にしたドルで米国の国債を購入して、ドルを米国に還流させていたからだ。しかし、非米側陣営諸国では10年物米国債などの債券をもはや、購入しなくなった。
世界最大のドル建て債券所有国は中国だったが、中国はドル建て債券の売却に転じている。現在、世界最大のドル建て債券の保有国は日本である。日本が、物価高の大きな原因のひとつになっている円安問題を解決するには、ドル建て債券を段階的に売却すれば簡単だが、「トモダチに、貸したカネを返してくれというのは、『水臭い』と言われてしまうので、帰ってこない」状態だ。このため、米国の10年物国債の利回りはこのところ、上昇に転じている(価格は下落、https://jp.investing.com/rates-bonds/u.s.-10-year-bond-yield)。
多少の上下の変動はあるが、米国の10年物国債金利は今年の夏場以降、上昇に転じている。米国の景気はさほど強くない。今回の米国大統領選挙でも、有権者の最大の関心はインフレと不況をなんとかして欲しいという経済問題だ。この点に関しては、トランプ前大統領の政策手腕がハリス氏よりも圧倒的に支持を受けている。こうした中で、10年物国債金利(価格は下落)が上昇し始めているのは、一時的なものではなく趨勢的なものであることに注意が必要だ。最終的には、基軸通貨と言われるドルの信認問題に発展する。
なお、米側陣営の今後のドル崩壊現象に関して、田中氏は「中露が金地金で米覇権を倒す」(https://tanakanews.com/241024gold.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)と題する投稿記事で、次のような指摘をしている。イスラエルが7正面作戦を展開しているのも、世界中から基軸通貨と崇められてきたドルに対する信認が、間もなく崩壊することを見越してのことだろう。ロシアとイスラエルは歴史的に関係が深い。イスラエルがBRICSまたはBRICSパートナーに参加する可能性を考慮しておく必要がある。
イスラエルのエルサレムポストが、金相場や米覇権、BRICSの関係について興味深い記事を出してきた。中露がBRICSを率いて金地金の現物を買い漁る勢いを増大し、米欧の銀行群が続けてきた信用取引の売りに(注:金地金の空売りなど)よる金相場の上昇抑止策を上回る上昇力を金相場に持たせ、信用売りを破綻させて米欧の金融危機を誘発し、ドル基軸や債券金融システムを壊して米覇権を潰し、覇権を多極化して世界経済の中心を非米側に移す策略を始めた、という指摘だ。(As BRICS Accumulate Gold, Western Banks Continue to Short Sell)
以上述べたカザン宣言を中心とする国際経済情勢について、国際情勢解説者の田中宇氏は29日に投稿・公開した「BRICSが多極型世界の準備完了」(https://tanakanews.com/241029brics.htm、無料記事)の中で、次のように分析・解説しておられる。基本的な国際経済情勢の流れは、「BRICSはウクライナ開戦後の2年半の構築・試用期間を経て、今回のカザンサミットで非米システムがほぼ完成し、今後は本格運営に入っていく。非米システムは米覇権より不便だろうが、何とか機能するところまで作れたのだろう。世界経済は、米国側の既存システム・米覇権体制と、非米側の新システムがしばらく併存する。いずれ、米政府の財政赤字急増の結果として米国側の金融バブルが大崩壊し、世界の中心が非米側に移っていく」というものだ。本文を引用させていただく。
BRICSは今回のサミットで、非米側の多極型世界システムを完成した。中露の言い分は、米国が覇権延命のためにライバルになりそうな露中などを敵視制裁したり、途上諸国の資源を安く買い叩いたりするのが不当だから、敵視制裁されても潰れないようにする正当防衛として非米システムを作った、というものだ。私から見ると、この中露の言い分は、いま起きていることの全体像の半分(中露から見た視野)しか表していない。残りの半分は、米国の覇権運営体(諜報界、DS)の中に、世界が多極型に転換した方が実体経済の世界規模の成長が長期的に拡大するので、過激に稚拙にやり続けて米覇権を自滅させ、非米側・途上諸国を世界の中心に押し出してきた勢力(隠れ多極派)がいる、ということだ(注:トランプ氏も隠れ多極派に属する)。(米英覇権を潰す闘いに入ったロシア)(Here’s what the West misunderstands about BRICS)
米国が良質な覇権策をやっている限り、中露は便利な米国システムに満足し、わざわざ不便な非米システムを作る必要などなかった。米国は、中露を不必要に敵視制裁し、ウクライナの露系住民を殺して戦争を誘発する極悪だが自滅的な策をやり、中露BRICSが非米システムを作りたくなるように仕向けた。米諜報界は、覇権維持派(英国系・帝国の側)と、隠れ多極派(国連P5=拒否権を持つ常任理事国=を作ったロックフェラー系・資本の側)が騙し合って暗闘しており、多極派は覇権維持っぽい策を稚拙に過激にやって失敗させ、覇権自滅と多極化を招いてきた。(世界を多極化したがる米国)(世界帝国から多極化へ)
米中枢の隠れ多極派は、米議会を動かして、リーマン危機後の米金融システムの最大の延命策だったQE(造幣による債券買い支え)を2022年3月からやめさせ、替わりに米政府が急増する財政赤字の一部を注入して金融システムを延命させている。米国債は過剰発行(注:債券の供給増は価格の下落をもたらすが、債券価格の下落は金利の上昇を意味する)になり、長期金利や金相場がじりじり上がっている。これは、ドル崩壊の兆候だ。たぶん米国は、次期政権(多分トランプ)の間に金融崩壊して覇権衰退する(注:ハリス氏では事態を理解できない。トランプ氏が返り咲けば、側近が諫言する必要がある)。それで、イラク侵攻やリーマン倒産から続いてきた覇権の多極化・非米化が完成する。この流れを作ったのも隠れ多極派だ。(中露が金地金で米覇権を倒す)(ドルはプーチンに潰されたことになる)(中略)
今回、世界の13か国がBRICSの伴侶諸国(パートナー)になった。その中に、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムというASEANの4カ国が入っている。ASEANはかつて米国の傀儡勢力だった。近年は、米国と中国の両方の影響圏になっていた。それが今、BRICSの伴侶として、非米側に入る感じが濃厚だ。米国側から問われれば「ASEANは中立です」と言うだろうが、全く自由がない米傀儡・対米従属である日本やEUから見ると、中立とは非米側のことだ。(This week’s BRICS summit was historic and here’s why)(BRICS just dropped a manifesto for the new world order)
日本では、選挙で自民党が負けた。しかし今回の選挙で、米覇権が衰退してBRICSが台頭し、非米化や多極化が進んでいる世界の中で日本がどうすべきかという外交安保の話は、争点にも話題にもなっていない。これが今後の日本にとって最重要なことなのに。与野党とも馬鹿みたいに中露敵視・米覇権衰退無視だ。日本人のほとんどがマスコミ権威筋のインチキ話を軽信するだけなので、このような事態になっている。まあ、米覇権が完全に消失するまで気づかず、お得意の無条件降伏を、次は中露に対してやればいいだけの話。米英より中露の方が他国を放任する。それほど不幸にならない。石破茂は、かつての安倍晋三に劣らず(むしろそれ以上に)トランプと気が合いそうだ。国内で劣勢でも、首相職が維持できれば、安倍がやり残した、トランプに牽引された対米自立(もしくは、米・非米両属)をやれるかもしれない(注:石破構想の中にある日米地位協定の是正などは、この範疇に属する)。(中国敵視を使って対米自立)(BRICS signals shift from US dominated financial system)(BRICS Sensation No. 1 - India's Turn From U.S. To China)
なお、米側陣営と非米側陣営の国力の比較を図示してみる。中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授の遠藤誉氏によるものだ(「中露を軸とした『BRICS+』の狙い G7を超えて「米一極支配からの脱出」を図る、https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9342c8922177af4713bd4bf74378bbbe31c9544e)。金融情勢に左右されない購買力平価ベースの国内総生産(GDP)では、BRICS+がG7を大きく引き離している。なお、ステルス加盟のサウジアラビアの購買力平価ベースのGDPは世界18位である(https://www.globalnote.jp/post-3386.html)。
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サイト管理者としては、米側陣営のネオコン系米国単独覇権派が理不尽な国際情勢撹乱策を展開してきた以上、米側陣営と非米側陣営との対立・分裂は避けられないとは思う。しかし、キリスト教の観点からすれば、人類史の目的は「神の国=地上天国」の実現である。その意味では、11月5日の大統領選挙で、「隠れ多極派」に属するトランプ前大統領の返り咲きが不可欠で、「統一文明」実現に向けた米中露の連携が必要になる。そのためには、良識ある世界諸国民に支持される統一文明のための新たな世界的な宗教理念が現代史に登場する必要がある。
米国大統領選挙の動向ートランプ氏が優位な展開に
上記の内容からすれば、来週の米国での大統領選挙は極めて重要だ。金融・資本・為替・株式・暗号資産のマーケットはトランプ氏勝利を先取りして動いているようだが、NHKは次のように報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241029/k10014622321000.html)。
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと、全米を対象にした各種世論調査の平均では、今月27日時点で、支持率は民主党のハリス副大統領が48.4%、共和党のトランプ前大統領が48.5%と、トランプ氏が0.1ポイント上回っています。また選挙の行方を左右する7つの激戦州では、ハリス氏が複数の州でリードした時期もありましたが、現在はトランプ氏がすべての州でハリス氏を上回っています。ただ、その差は0.1ポイントから最大で2.3ポイントとわずかで、激しい競り合いが続いています。
米側陣営のほとんどのメディアは反トランプだから、トランプ氏が優勢でも上記のような「大接戦」ということになる。しかし、賭け市場では様相が異なる。ブルームバーグによると、最大手の賭け市場であるPolymarketで不正な売買操作が行われたとの報道に対して、Polymarketは「ユーザー(市場参加者)は、市場操作は行っていない」ということだ(https://www-bloomberg-com.translate.goog/news/articles/2024-10-24/polymarket-says-trump-whale-identified-as-french-trader?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc&_x_tr_hist=true)。反トランプのブルームバーグ自身はそうは見ていないようだが、実際の予想の推移を見てみると市場操作の様相は感じられない。日本時間で午後19時の状況は次のようになっている。
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Polymarketの予測では、①トランプ氏の返り咲き予測がハリスの初当選予測を30ポイントも上回っている②激戦7州でも全ての州でトランプ氏が相当優位に立っている(ノースカロライナ州は75対24でトランプ氏が優位)③国民的な人気投票でもハリス氏とトランプ氏の差がかなり縮まってきている④議会下院は接戦だが、共和党が若干優位。上院は共和党の優位性が動かない④選挙人の獲得人数はトランプ氏312人に対して、ハリス氏は226人にとどまる(1980年大統領選挙の際は、レーガン氏が現職のカーター大統領にランド・スライドで大勝利したが、そこまでいかないにしても、トランプ氏の返り咲きが圧倒的優位に立っている)ーことが分かる。
米側陣営の左派メディアでは、ニューヨーク市にあるマジソン・スクエア・ガーデン(2万人収容可能)での選挙集会で、招待を受けて演説したコメディアンが「プエルトリコはゴミの島」と口を滑らせたことに対して、この発言が10月サプライズになってプエルトリコ出身の米国有権者の反発を買い、激戦州でのトランプ氏の優位性が崩れると「鬼の首」を取ったかのような報道をしている。しかし、バイデン大統領も共和党員トランプ氏の支持者をゴミだと大統領としては、あるまじき発言をしたため、トランプ氏はSNSに「バイデン氏はわれわれの支持者たちをゴミと呼んでいる。国民を愛していなければ、アメリカを導くことはできない。ハリス氏もバイデン氏もいずれも大統領にふさわしくないことを示した」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241030/k10014623471000.html)と応酬した。
プエルトリコ出身の有権者でトランプ支持者も、コメディアンの発言は遺憾だが、この発言よってトランプ氏に対する支持は変わらないと発言しているとの報道も伝えられている。また、この発言がなされた後も、Polymarketではトランプ氏とハリス氏との差が縮まるとか、逆転するとかの現象は起きていない。ただし、本件報道の後、トランプ氏の返り咲き予測が下落し、ハリス氏初当選予測は上昇したため、その差は25ポイント程度に縮小している。10月31日午後15時時点では次のキャプチャ図のようになっている。
リアルタイムでの状況はこちら
米側陣営のメディアの報道は、米国単独覇権派のディープステートの指示によるものだろう。なお、外務省出身でイラン大使も勤めた孫崎享氏は、28日の鳩山由紀夫氏との対談で、賭け市場の重要性を指摘し、トランプ氏とハリス氏との差が大きく開いていることを紹介するとともに、ハリス氏がカリフォルニア州の司法長官を経て上院議員になった経緯について、米国民なら誰でも知っている忌むべき事実があると発言している(https://www.youtube.com/watch?v=YPiLIGXGm4g、50分以降)を付け加えておきたい。