戦争法案廃案のために⑨ー生活・小沢一郎代表、「対米隷属症候群」からの脱却が不可欠

2015年8月26日、国会議事堂近くの憲政記念会館で、「ぶっ壊せ!アベ安保法制」(主催・日本一新の会)と題して緊急集会が開かれ、「生活の党と山本太郎と(国民を愉快にする)なかまたち」の小沢一郎共同代表が持論を展開。その中で小沢代表は、今通常国会に安倍晋三政権が上程した「安保法制関連法案=戦争法案」について、日本国憲法違反であるばかりか憲法の根拠になった国際安全保障体制(集団安全保障体制)による世界平和実現のために設立された国際連合の理念・憲章違反であると断定。そのうえで、安倍政権がこのような法案を国会に上程した根本的な原因として同政権が「対米隷属症候群」に冒されていることにあると指摘し、与野党はもちろん日本国民自身が同症候群から脱却し、自立した個人を前提に日本が真の民主主義と米国からの独立を勝ち取ることが必要だと訴えた。

日本国の安全保障問題の権威である小沢氏は、日本一新の会代表の平野貞夫氏との質疑の中で、日本がポツダム宣言を受諾した後の戦後体制は、国際連合による国際安全保障体制(国連軍=地球連邦政府軍による紛争解決を基礎とする安全保障体制)による世界平和を目指したものだと指摘。そして、日本国憲法、および日米安全保障条約(例えば、第5条「前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない」)も、この国連の理念を基に策定、批准されたものであることをわかり易く説明した。

【タウンミーティングで来場者の質問に応える生活の党の小沢一郎共同代表】

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小沢氏は、今年4月に日米両国政府・官僚の手で定められた「日米新ガイドライン」が憲法に違反していることはもちろん、「日米安保条約」にも違反していることをいち早く指摘していたが、同日の緊急集会で今回の戦争法案がこの日米新ガイドラインを法制化したものに過ぎないことを明らかにした。平野氏の言葉を借りれば、今回の安保法制案は、安倍政権が「限定的な集団的自衛権」と強弁す以前に、実質的に「日米戦争協力法制」である。

このような現行憲法、現行日米安保条約違反の法案が国会に上程された根本的な原因として小沢氏は、戦後の政界、行政府、高級官僚の中に「対米隷属症候群」が蔓延していることを挙げ、真の民主主義の確立と日本国が独立国家としての体(てい)をなすためには、同症候群からの脱却が日本国民全体、特に政界、官界、産業界中枢に求められると指摘した。

小沢氏はさらに、「対米隷属症候群」の歴史的な原因として、聖徳太子が掲げた十七条憲法の中の「和をもって貴しとなす」を挙げ、日本の経済社会が安定している際には和を重んずる精神が大きな役割を果たすと評価しながらも、文明の転換期などの非常時、混乱時には弊害が生じるとし、その現象として、論理実証的な思考の欠如と長いものにまかれろ式の権力依存精神、無責任体制が現れることなどを紹介。

そのうえで、「対米隷属症候群」から脱却するためには、明確な理念を持ち、論理実証的な思考能力と実践力を兼ね備えた自立した個人による日本の政治経済社会の根本的な構造改革が必要であることを示唆した。

今後の安保法制案の見通しについて「安倍政権は長くない」としたうえで、①8月30日の日曜日に予定されている安保法制法案反対の国会周辺10万人デモ、全国100万人規模のデモを成功させること②野党議員があらゆる戦術を駆使して、会期末の9月29日までに衆議院で再可決させないことーなどを挙げた。

ただし、万一、野党と大多数の国民の条理を尽くした反対を無視して自公政権が衆議院で強行採決を行い、成立させた場合については、来年夏の参院議員選挙を皮切りに、安倍自公政権から政権を奪還して、成立した安保関連法=戦争法を廃棄し、国連による国際安全保障体制(集団安全保障体制)を基礎とした真の安全保障法を確立すれば良いと語った。

政権を奪還する方法としては、選挙のための政党(例えば「戦争と弱肉強食党」に対する「平和と共生の党」)を作り、野党議員が現在の党籍のまま同党にも入れば、参院選挙での選挙区ならびに比例区、そして、総選挙での小選挙区、比例区で国民の支持を得て必ず勝利し、政権を奪還できると確信しており、そのためにあらゆることを行うとの誓いを表明した。

※【参考】「集団安全保障=国際安全保障」と「集団的自衛権」の違いについて

shuudanteki-anzen-hoshou-jieiken■集団安全保障とは?
「集団安全保障」とは、国連による、国際的な安全保障の基本的な考え方のことを言う。

わかりやすく説明すると、ある国連加盟国が、他の加盟国やあるいはどこかの未加盟国から不法な攻撃を受けた場合には、その他の国連加盟国は一致団結して国連軍ないし多国籍軍を結成しその被害国を支援する、という考え方だ。ただし、救援物資や資金の援助にとどまることもある。いずれにせよ、国際連合の基本理念として、国連加盟国はどこの国も仲間であるとの考え方に基づいて、「集団安全保障」=「国際安全保障」という体制をとっている。

■「集団安全保障」と「集団的自衛権」
しかし、この「国際安全保障体制」という考え方には問題点もある。問題点の一つは、そのような事態が起こった場合に、その事態について国連が正確な状況を把握し、適切な措置を施すまでには時間がかかるという点である。不法な攻撃を仕掛けてきた国は、もちろんそんな時間的猶予を与えてはくれない。

このために設けられた暫定的措置が、国連憲章の第51条に記載された「個別的自衛権」と「集団的自衛権」である。もちろん、暫定的措置であるため、これらの権利に基づいて採られた軍事行動については直ちに国連安全保障理事会に通告する義務があるほか、正式に国連軍=地球連邦軍が投入された場合は、これらの自衛権の発動は停止され、当該国の軍あるいは自衛隊は、国連軍の指揮系統下に入り、武力紛争の解決にあたることになる。1960年に締結された日米安全保障条約もこの範囲内にある(日本においては「個別的自衛権」、米国は「集団的自衛権」)。

ただし、「集団的自衛権」はC国がA国に武力侵攻した場合、A国と同盟関係にあるB国も自国に対する侵攻とみなしてC国に反撃する権利であるが、これは乱用されやすく、かつまた、国連の国際安全保障体制の理念を無視して、国連の決議なしに集団的自衛権を行使してしまう場合がある(例えば、米国を中心とした多国籍軍によるイラク侵攻)。米国は1990年前後に東西冷戦体制が終了した後、国連に大政奉還し、国連の機能強化に乗り出すべきであったがむしろ逆に、国連を無視する傾向を強めた。これは、国連の国際安全保障体制が「平和な世界」を創出することを目標にしているのに対し、米国の集団的自衛権行使は同国の原子力産業を含む軍産複合体のためであるからだ。

それから、もう一つの問題点は、国連の安保理全体が「適切な措置」を必死に知恵を絞って考えだしたとしても、常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国)には拒否権があるので、この5カ国のうちの1カ国でも反対した場合には、その「適切な措置」は実行に移されないという問題である。その不法な攻撃を実行した国が、常任理事国5カ国のいずれかと親密な関係にあったような場合には、「適切な措置」が実行されないことは十分にあり得る。ただし、朝鮮動乱、湾岸戦争の際にはそれぞれソ連、ロシア・中国が欠席し、暗に容認したので、「国際安全保障体制」とは整合性はある。

この拒否権の問題については是正・解決されねばならないが、常任理事国および非常任理事国各国間の経済の相互依存性が深まってきている現状、真剣に「戦略的互恵関係」を考慮しなければならなくなっている。戦争等行なっている場合(時代)ではなくなっているのである。陰でつながっているのは、軍産複合体の世界的な軍事シンジケートであるから、国連はこれを一掃すべきであり、日本国もそのために最大限に協力すべきである。これが真の「積極的平和主義」である。

【文責・サイト管理者、2015年8月27日17時20分に一部の文言訂正】

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