3月27日、前財務省理財局長(国税庁長官に「栄転」するも辞任)の佐川宣寿氏の衆参両院での国会証人喚問が行われたが、おびただしい量に上る「森友文書」の改ざんが①誰の指示で②何故に③いつー行われたかの疑惑の中心は全く解明されなかった。証人自身が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは証言を拒むことができるという抜け穴があるためだ。佐川氏は40数回に渡る証言拒否を行い、真相を隠した。しかしながら「森友疑獄事件」の本質は、①国民の財産である国有地をタダ同然で森友学園に与えようとした「背任罪」②昨年2月に問題が発覚してから1年以上、国民を代表する国会議員に改ざんした「公文書」なるものでウソをついた偽計業務妨害罪③安倍晋三夫妻による政治権力の私物化の疑いーのある議会制民主主義の根幹を揺るがす重大事件である。事件の陰で暗躍したと見られる安倍昭恵首相夫人の証人喚問はもとより、真相が完全に救命されるまで、野党は本事案以外の全ての審議を拒否すべきである。

学校法人森友学園が右翼勢力養成学校である瑞穂の國記念少学院(小学校)の建設予定地として購入した国有地は、大阪府豊中市野田町にある。この土地は1974年、伊丹空港周辺の騒音対策区域に指定され、住民から土地を順次買収、大阪航空局の行政財産となった。2011年、別の学校法人大阪音楽大学が約7億円で売買交渉したが、入札価格7億円余りが同国有地の鑑定価格約9億円に満たず、近畿財務局と折り合わなかっため、同大学と近畿財務局の売買交渉は決裂した。

要するに、同国有地の鑑定価格は時価で9億円から10億円ある。しかし、時価が約10億円程度と見られるその国有地が、森友学園に対しては摩訶不思議なことに1億3400万円で払い下げられ た。 しかも、国は土壌改良費として1億3200万円を支払っている。つまり、  差し引き200万円で時価が約10億円程度と見られる国有地が払い下げられ たのである。これだけで、財務省(行政側)が国民に不利益を与える背任罪に問われることは明らかである。

さらに、この破格値での売却額は当初、明らかにされなかった。豊中市議の木村真氏が昨年2月、近畿財務局に売却額の情報開示請求を行ったことが問題が発覚した直接のきっかけだが同財務局は当初、公開を拒んでいた。木村氏が朝日新聞社に話を持ちかけたため、国有地の不正売却と学校法人森友学園に対する行政側(端的に言えば安倍晋三政権)の特別扱い(権力の私物化)が明るみに出た。

国有財産の管理は財務省理財局の管轄であるが当時の佐川局長は、国会に対してあたかも本当の文書であるかのように、偽の払い下げ関連の文書を示し、国民を代表して不正・疑惑を追宮した野党に対して、嘘の説明を行ってきた。その後、今年に入ってからの3月2日、朝日新聞が、理財局が国会に示してきた「公式文書」が、実際の売却交渉の詳細を記した当初の文書から改ざんされたものであることをスクープし、財務省もこれは隠しきれないと判断、最終的には佐川氏に全責任を負わせる意図で、国会に提示してきた「森友文書」が改ざん(いつも、書き換えという言葉を使う)されたものであり、廃棄したと説明してきた原本が存在すると公式に認めざるを得なかった。こうなると、内閣および財務省が、「公文書毀損罪」と、国民の代わりに森友疑惑を追及して来た国会議員の質疑を妨害してきたことは明らかで、懲役の実刑判決が言い渡される「偽計業務妨害罪」に問われることになる。

そして、政府が民主主義制度の根幹となる公式文書を改ざんしてはないないことは、「優等生」の財務官僚として知り尽くしているはずであるから、いくら「忖度」という言葉がはやっているとしても、自ら改ざんをするはずがないといとうのは理の当然であり、当初の公文書の改ざんを指示した者が、政治権力者であることは誰の目にも明らかになる。これに関連して日本共産党の機関紙「赤旗」は3月22日付で、「学校法人森友学園への国有地格安売却疑惑が発覚した昨年2月以降、財務省近畿財務局内で、この取引が、『安倍事案』と呼ばれていたことが21日、財務局関係者の話で分かりました。関係者は『当初から安倍晋三首相夫妻が関わっていた案件というのは常識で、特別な扱いがされた』と証言しています」と報道している。

要するに、当初の森友文書の改ざんの核心は安倍首相夫妻と推察されるのであり、改ざん前の当初の公文書では安倍首相の妻である「安倍昭恵」氏の名前が、近畿財務局と森友学園(実質的に森友学園側で、安倍昭恵夫人の力を背景に財務省・理財局と近畿財務局の交渉を指導したのは籠池泰典前理事長夫妻)が頓挫しそうになった事態で、「交渉の救い主」のように登場してくる。

不誠実な答弁に終止していることを自覚、天を仰ぐ佐川宣寿(のぶひさ)前財務省理財局長・前国税庁長官

今回の佐川喚問で、国民と国会議員は同氏がこれらの疑惑を日本国憲法に定められた公僕としての国家公務員(国家官僚)としての良心に基づいて虚心坦懐に述べることを期待していた。しかし、佐川氏(東大経済学部卒業、首相官邸の書記官であり、影の総理と言われる今井尚哉=いまいたかや=と同期。今回の森友疑獄の首相官邸側の処理は今井氏とと佐川氏が担当したと言われる。なお、安倍昭恵夫人付きの谷査恵子秘書官の上司は今井氏)は公僕としての良心に基づき罪を償う精神をもって証言する道よりも、権力にすりよって保身を前提に質疑に対応した。

なお、佐川氏は今回の国会喚問で衆院予算委員会で行われた証人喚問で、丸山穂高氏(日本維新の会)が最後の質問者として立ち、「国民が知りたい真相を解明できたと、自身は考えるか」と聞くと、佐川氏は「先ほどからおしかりを受けている。実際にどういう経緯で誰がやったのかはお答えできていないので、そこについてはできていないんだろう」と証言、国民の代表であり、国権の最高の機関である国会を冒涜し続けたままであることを明らかにした。なお、今回の国会喚問で佐川氏は、「権力者・政治家からは一切、森友当初文書改ざんの圧力は受けていない」と再三再四述べているが、これまでの経過からしてこの発言が偽証罪に問われるのは明らか。

いずれにしても、佐川氏は日本国憲法に定められた「公僕」としての良心に背いた。その報いは大きい。国会議員、なかんづく野党は真性野党たる限り、安倍昭恵夫人を国会証人喚問の場に引きずり出すべきだし、これを起点に森友疑獄事件に関する審議以外の審議はすべて拒否し、森友疑獄事件の真相を解明し、安倍政権に徹底的に抵抗すべきである。また、大阪地検特捜部とともに、安倍首相夫妻の持ち家が都内にあることから東京地検特捜部にも安倍夫妻の権力の私物化を告発し、強く働きかけるべきである。立法、司法、行政の三権の中でも、立法府は最も高い権威を有しており、国権の最高の権力を振るえるし、振るうべきであるからだ。

※補遺
佐川宣寿前財務省理財局長の国会証人喚問発言で、偽証罪に問われる箇所がある。森友学園への国有地売却で鑑定及び政治家の圧力は一切なかったと発言している点だ。森友学園に対して不当な廉売価格(実質的にタダ)で売却した当時の理財局長は迫田英典氏である。佐川氏は売却交渉時には関わっていないはずであるから、背任罪に相当する不当廉売に関わっているはずがない。それが何故、不当廉売から始まってをその過程を詳細に記録した原公文書の改ざんにいたるまで、首相官邸からの政治的圧力はなかったと断言できるのか。迫田英典氏から理財局長を引き継ぐに当たって、そのような申し送りがあったとするなら、原公文書の改ざん(公文書毀損罪に問われる)も必要がなかったはずである。これらのことを考慮すると、首相官邸と猿芝居した佐川前財務局長は証人喚問での偽証罪にも問われることになる。

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