米側陣営諸国のメディアが喧伝している「温室効果ガス」による「地球温暖化」の「深刻な危険性」に対処するための「地球温暖化対策」のためのCOP27(第27回気候変動枠組条約締結国会議)が11月06から18日にかけてエジプトのリゾート地シャルムエルシェイクで開かれた。しかし、石油や天然ガス、石炭など化石燃料使用の道を閉ざされることで被害を受ける「発展途上国」(注:長い間「発展途上国」にされてきた)のために、新たな「基金」を創設することが合意されただけだ。しかも、同基金の内容は不明で、来年のCOP28で「決められる」といういささか「インチキ」な内容に終わった。もはや、米側陣営諸国の(マス・メディアの間で喧伝されている)「地球温暖化対策」は空洞化し、「地球温暖化対策」の主導権は中国に移って非米側陣営の結束のために使われているようだ。
地球温暖化対策のぎ慢性ー非米側陣営が国際情勢の主役に
本題に入る前に、日本時間で12月02日金曜日の午前4時から中東のカタールで開かれているサッカー・ワールドカップで、日本は2対1でスペインに快勝し、ベスト16位のチームで行われるリーグ戦にE組首位で進出できることになった。前半に「無敵艦隊」スペインに先制されたが、後半に堂安律(24)の見事な同点シュート、田中碧(24)の機転の効いた絶妙の勝ち越しゴールでドイツ戦に続く逆転勝利を飾った。両選手を含め日本代表の大健闘を祝福するとともに、リーグ戦では是非とも12月05日でのクロアチア戦で1勝を飾り、念願のベスト8入りを果たして欲しい。
さて、本題に入るが、化石燃料による「温室効果ガス=大気中の二酸化炭素やメタンなどのガスは太陽からの熱を地球に封じ込め、地表を暖める働きがあるとされる=」による「地球温暖化問題」は環境省が次のようにまとめている(https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r04/pdf/1_1.pdf)。
世界的にも平均気温の上昇、雪氷の融解、海面水位の上昇が観測されており、我が国においても、平均気温の上昇、大雨、台風等による被害、農作物や生態系への影響等が観測されています。2021年8月に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第Ⅰ作業部会報告書政策決定者向け要約」によると、極端な高温、海洋熱波、大雨の頻度と強度の増加などを含む気候システムの多くの変化は、地球温暖化の進行に直接関係して拡大すると報告され、地球温暖化を抑えることが極めて重要であることが確認されました。
パリ協定で示された産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をするという目標は、COP26のカバー決定にも盛り込まれました。IPCCの「1.5℃特別報告書」において、気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減することが必要という知見が示されたため、世界各国は様々な問題に立ち向かいつつ、できるだけ早く、できるだけ大きく排出量を減らす取組を加速的に進めています。
今回のCOP27では、ウクライナ戦争による大規模な対露経済制裁とOPEC+1(OPEC諸国とロシアで構成)による「世界経済の減速による需要の減退」を名目にした協調原油減産で世界各国、特に米側陣営諸国が深刻なエネルギー不足(と穀物不足)にコストプッシュ型インフレに見舞われており、世界各国とも原油(石油)や天然ガスは喉から手が出るほど「欲しい」状況で開催された。このため、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減するための具体策は何も決まらなかった。
代わりに、石油や天然ガス、石炭など化石燃料使用の道を閉ざされることで被害を受ける「発展途上国」のために、新たな「基金」を創設することが合意されただけで終わった。ただし、支援「基金」の概要は決まらず、来年のCOP28に先送りになった。NHKは次のように基金創設を賛美する報道記事をネットで公開している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221120/k10013897671000.html)。
エジプトで開かれている気候変動対策の国連の会議、「COP27」で気候変動による被害を支援するため途上国を対象に新たな基金を創設することが決まりました。国連の枠組みで各国が協調して被害への資金支援に取り組むことが合意されるのは初めてです。「COP27」は2週間にわたる交渉を経て会期を延長し、現地時間の20日早朝、成果文書を採択しました。
それによりますと最大の焦点となっていた気候変動による被害「損失と損害」に特化した資金支援について、特にぜい弱な途上国などを対象に新たな基金を創設することを決め、その具体的な内容は来年のCOP28で検討するとしています。
さて、まさかの2022サッカー・ワールドカップの一次リーグ戦で無残にもE組3位で敗退、予選落ちになった本来はサッカー強国のドイツでは国民が意気消沈し、ロシアに対する大規模経済制裁の反動として生じた天然ガス・石油不足によるエネルギー危機、コストプッシュ・インフレがかえって声高に叫ばれるようになるだろう。ドイツのショルツ首相率いるショルツ政権は「ロシアに対する大非難」や「ウクライナ戦争でロシアは軍事的に敗北する」といった声明を停止することが出来ず、ロシアと和解することはできないため、今後は自滅の道しか用意されておらず、危機的状況に陥るだろう。
これは、北大西洋条約機構(NATO)加盟の他の欧州諸国でも同じことだろう。こういう時期に、COPを開いて天然ガス・石油・石炭など化石燃料によるエネルギー生産を削減する道を議論することは、全くの的外れだ。さらに、「温室ガス効果」には怪しい面があることが多数の識者により指摘されている。植草一秀氏のメールマガジン第3370号「軍備増強・原発推進の原動力」で次のように指摘されている。
「地球温暖化仮説」論者は地球の表面温度変化がCO2排出によって引き起こされていると主張。CO2の排出を止めなければ人類は滅亡の危機に直面すると主張。CO2排出削減が最重要課題だとする。しかし、有力な反論が存在する。地球の気温変化は、宇宙を含む自然現象により、1億年、10万年、数千年、数百年の単位周期で大きく変動するというのが専門学者の見解。
世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は地球温暖化の支配的な原因は、人間活動による温室効果ガスの増加である可能性がきわめて高いとする。しかし、IPCCの主張には不自然な部分が多く存在し、有力な懐疑論が存在する。懐疑論派が温室効果ガスによる温度上昇全体を否定しているわけではない。温室効果ガスの一定の影響を認めるが、地球の気温変化の主因が温室効果ガスであるとの説が正しくないと主張する。
温室効果ガスが増加したにもかかわらず1940年~1975年には地球の気温が低下している。温暖化仮説懐疑派は、人為的温暖化ガス主因説では中世の温暖期、小氷期を説明できないことを指摘する。CO2以外に太陽活動、太陽活動に連動する宇宙線、あるいは水蒸気や雲の影響を総合して考えなければ地球の表面温度を説明できないとする。すべての情報を総合的に俯瞰すれば、温暖化仮説懐疑派の主張に説得力があることは明白だ。21世紀に入り、地球の表面温度は停滞している。温暖化仮説の延長線上に排出権取引が創設され、温暖化がビジネスの対象にされている。
「温室ガス効果説」の誤りついて、国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏は11月30日に公開した「温暖化対策で非米化」と題する論考(https://tanakanews.com/221130climate.php、有料記事:有料記事の紹介ページはこちら→https://tanakanews.com/intro.htm)で次のように指摘されている。
「温暖化問題」を喧伝するための話の一つに「南極の氷が溶け出して地球の海水面が上昇し、世界各地の沿岸部に人が住めなくなる」というのがある。年間に南極の氷が溶ける量は、1980年代の40ギガトンから2010年代の250ギガトンへと6倍に増えた。これは大変だ、石油の使用を減らさないと街が水没してしまう、と騒がれている。だが実のところ、250ギガトンの海水は地球の海面を0.6mm引き上げるだけだ。南極には全部で2650万ギガトンの氷があり、毎年大体その1万分の1にあたる2200ギガトンの氷が溶け、ほぼ同量の雪が降り積もって氷になる。近年は、溶ける量が少し多いが、いずれ氷になる量の方が多くなり、融解と氷結の傾向を繰り返す循環になっている。南極の氷の増減は、数十年かけて地球の海水面を数センチ引き上げたあと、その次の数十年で数センチ引き下げる。この循環の一部だけを切り取り、ギガトンという数字の大きさをトリックにすると「南極の氷が溶けて街が水没する」という話になる。実体は「闇夜の枯れすすき」である。 (Don’t Believe the Hype About Antarctica’s Melting Glaciers) (The Real Inconvenient Truth: Arctic Sea Ice Has Grown Since 2012)
米側陣営の政権とマス・メディアは「温室ガス効果」を徒(いたずら)に誇張しすぎている。平成9年(1997年)12月に「京都議定書」採択されたころから化石燃料を削減する「地球温暖化対策」(https://www.pref.kyoto.jp/tikyu/giteisyo.html)が活発になったが、田中氏によると新興諸国・非米諸国がしだいに政治力を増し、中国が途上諸国を率いて米欧に立ち向かって温暖化対策の主導権・決定権を奪取し、逆に新興諸国が先進諸国からピンハネする態勢に転換した
という。今回のCOP27の本当の意義は次のところにあると見られる。
今回のCOP27で示された新たな傾向は、少し前まで米国の傀儡だったサウジアラビアが、正式に中露と結託する非米側の国として活躍し始めたことだ。サウジはCOP27で、子分である議長国のエジプトを動かして、決議内容を決める最終段階の議論に介入し、決議文を大幅に後退させた。 (“We Are On A Highway To Climate Hell” But What Does Europe Really Want: Environmentalism Or Neoliberalism?)
サウジはOPECの盟主であり、サウジの非米化は産油国全体の非米化になる。サウジとOPECの非米化は、ウクライナ戦争によって、石油ガスなど資源類の世界的な利権の中心が米国側から露中・非米側に移転したこと(米側と非米側の分断により、以前からの利権移転の傾向が顕在化・不可逆化したこと)と連動している。サウジは数年前から隠然と非米化していた(目立たないように中露との親密性を増した)が、ウクライナ戦争によって資源利権の世界的な中心が非米側に移ったのを見て、自国の非米化も顕在化することにした。サウジ主導のOPECは、ウクライナ戦争前から、サウジと並ぶ大産油国であるロシアと結束を強め、OPECはロシアを入れて「OPEC+」になった。露サウジは人類にどんどん化石燃料を使ってほしいから、温暖化対策を換骨奪胎して無効にすることに力を注いでいる。そんな勢力が仕切っているのだから、COPは決議内容が後退し続けている。 (Climate-Policy Is A Much Greater Threat Than Climate-Change)
結局、COPは化石燃料が排出するとされる「温室効果ガス」説が極めて疑わしいものだから、悲惨な結果に陥る。地震大国の日本では無謀な原子力発電所の再稼働や新設の口実に利用されるている。これは、日本にとって自滅行為だ。同様に、非米陣営諸国にとっても自滅行為になるだろう。
私が考えたのは以下のことだ。温暖化対策として化石燃料利用の減少を欧米に続けさせると、欧米は経済が自滅して覇権を失う。これまで欧米に抑圧されてきた非米側は抑圧から解放され、経済成長や発展がやりやすくなる。覇権は多極化し、欧米支配・米単独覇権体制だった時よりも世界の政治体制は安定する(これまで米覇権を維持するために、冷戦やテロ戦争などの対立構造がでっち上げられ、世界が不安定化させられてきた)。だから中国などは、温暖化問題のウソの構図を維持したまま、欧米に化石燃料利用の削減を続けさせて経済自滅に導き、覇権転換することを優先した。その一方でCOPの決議内容を後退させ、欧米は自主的に温暖化対策(化石燃料の利用減)を続けて経済自滅の道を突き進む一方、非米諸国は引き続き化石燃料を好き放題に使えて経済成長を続けられるようにした。 (41% of Climate Scientists Don’t Believe ‘Climate Change’ Narrative)
「地球温暖化対策」、米国やNATOが仕掛けた「ウクライナ戦争(起源はNATOの東方不拡大の約束の反故。2014年2月のマイダン暴力革命によるウクライナの対米傀儡政権化で本格化する)」、それに「新型コロナウイルス対策」の政治利用などによって、国際情勢は非米側陣営諸国が有利な動きを展開している。本サイトの主旨は、現在は歴史の大転換期に来ていることをマックス・ウェーバー=大塚史学の立場から論証することだが、「地球温暖化対策」の欺瞞性もそのひとつだ。
まだ終わらない米国中間選挙ー米国の「偽装民主主義国家」の象徴
11月08日に行われた米国中間選挙の最終投票結果がまだ分からない。米国の「偽装民主主義国家」の象徴と言える。AP通信が日本時間り12月02日午前6時54分に示した下院の議席数は下図の状態のままだ。共和党が中間選挙後には上院よりも予算編成権を持つ下院の力が優位になるが、2議席が未確定になっている。
未確定の二議席はコロラド州の第3選挙区とカリフォルニア州の第13選挙区だ。コロラド州第3選挙区では開票率99%で共和党候補が16万3842票(得票率50.1%)、民主党候補が16万3292票(49.9%)の状態が続いてる。結果が不明な票数は3300票余りしかないが、この不明な状態が10日は続いている。カリフォルニア州の第13選挙区も同じような状況だ。まともな選挙制度を有している日本などでは実施されていない郵便投票の結果が判明するのに時間がかかっていると言われるが、それにしても遅すぎる。
公正で透明な選挙はいわゆる民主主義制度の根幹中の根幹だ。有権者本人の確認が極めて難しい郵便投票といった制度がある事自体が、民主主義国としてはあり得ない。ジョージア州で行われる上院議員の決選投票もどうなることだろうか。
【追記(12月03日午前08時23分)】国際情勢解説者の田中宇(さかい)氏は12月02日に公開された「ずっと続く米国の選挙不正」と題する論考(https://tanakanews.com/221202election.htm、無料記事)の中で、米国が選挙制度改革に失敗して郵送投票を中心とする期日前投票制度と、投票用紙でなく投票機(タブレット型コンピューター)を使った投票システムを使って以前から行っていた不正選挙が今後も続くとの見通しを示し、2024年大統領選挙で立候補を表明したトランプ前大統領が勝つ見込みはないと指摘した。ただし、次のようにも指摘されている。
共和党内では、トランプの対抗馬としてフロリダ州知事のロン・デサンティスが出てきている。トランプは、反エスタブ(注:生活に苦慮する市民勢力)な覇権放棄屋であることが確定しているが、デサンティスは未確定だ。エスタブ勢力(注:エリート、富裕層)は、毎回の選挙で不正をやり続けて民主党を連勝させるよりも、共和党をトランプ派から奪還してエスタブ政党に戻し、2大政党のどちらが勝ってもエスタブが米国と世界を支配する体制が続くトランプ以前の状態に戻す方が好都合だ。エスタブとしては、選挙不正をやれる態勢を残しつつ、選挙不正をやらなくてもすむ状態に戻したい。デサンティスがこれに協力するなら、エスタブはマスコミなどを総動員して「共和党内ではトランプの人気が下がり、デサンティスの人気が上昇している」という話を歪曲・捏造しつつ、2024年の大統領選の共和党の予備選挙(党内選挙)でデサンティスがトランプを打ち負かす流れを作るだろう。米エスタブは、国政選挙の結果をねじ曲げられるのだから、予備選挙の結果もねじ曲げられる。世論調査の結果も歪曲できる。 (DeSantis Leads Trump By Big Margins In Key Primary States) (Between Trump and DeSantis, the true Republican’s choice is clear)
しかし、もしこの流れになって2024年にデサンティスが予備選でトランプを破り、本選でバイデンを破って大統領になったとしても、就任後のデサンティスが本性をあらわしてトランプの路線を継承して覇権放棄をどんどん進める可能性はある。トランプ自身、2016年の選挙に勝って大統領になるまでは、エスタブの仲間のように振る舞っていた。エスタブは騙されて、トランプが大統領になるのを阻止しなかった。デサンティスは同様の演技をしうる。 (Democrats’ Mail-In Voting Strategy Outmaneuvered Republicans In Every Pennsylvania County)
さらに考察するなら、米国はすでに覇権放棄屋の大統領を必要としていない、とも言える。トランプが大統領になった2017年、米国はまだ隆々とした覇権国だった。だがそれから6年が過ぎた今、米国の覇権は大幅に低下した(前から起きていた覇権低下が顕在化した)。この6年間、トランプとバイデンの2政権による意図的な覇権放棄策と不慮の超愚策の連続により、米覇権低下と中露など非米側の台頭、多極化がかなり進んだ。これからの2年間で、米覇権低下と多極化がさらに進む。2024年の次期大統領選で米国の大統領が誰になろうが、大して違いがなくなる。トランプが返り咲いて覇権放棄を進めつつプーチンと仲良くするよりも、バイデンが続投して米国の信用を引き下げる間抜けな策を連発し続けた方が多極化が進むかもしれない。すでに人類にとって習近平やプーチンの方が米大統領よりも重要だ。 (好戦策のふりした覇権放棄戦略)
サイト管理者(筆者)としては、米国の共和党内でトランプ派が政治力を持てば情況は変わる可能性はあると思う。その場合は、共和党の支持基盤になっている保守系のキリスト教勢力が政治力を持つ必要があると思われる。ただし、米国の政治構造の変化にかかわらず、米側陣営の政治・経済力は低下し、中露を中心とした非米側陣営が国際政治・軍事情勢に与える政治・経済的な影響力は強まっていくだろう。