トランプ氏、米中央銀行システム・金融界を支持勢力にー「確トラ」動かず、市場の大乱高下は日米協調による円キャリ潰し狙いか

今週は日本で金融・資本・為替市場が大荒れの展開になった。これについて、国際情勢解説者の田中宇氏は8月9日金曜日午後11時ころ投稿・公開した「日米協調で円キャリー取引を潰した理由、https://tanakanews.com/240810yen.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=」で、「民主党に味方する筋が、キャリー取引(注:円キャリー取引=金利が超低金利の日本で円資金を調達し、見かけ上、金融引き締めを行っている欧米の株式市場に投資して、有価証券の値上がり益と為替差益の一石二鳥を狙う手法=)の再燃と株価の反騰を目論んだ。それを阻止するため、FRB総裁を続投したいのでトランプの味方になった(注:連邦準備制度理事会=FRB=議長)パウエルの連銀が、日銀を動かして利上げと円キャリー巻き戻し(注:異常な投資手法を正常化する)の加速と暴落を引き起こした。徹底的に暴落させてしまうと選挙後に反騰できなくなるので、暴落翌日に暴騰させ、キャリー取引を半分だけ巻き戻した」と分析している。サイト管理者としては、「さもありなん」という認識だ。

世界的な金融・資本・為替市場の大乱高下はトランプ傘下の米金融システム制度・機関による

黒田東彦前日銀総裁がデフレ不況を脱却し、インフレ率を2%程度に引き上げるため、「黒田バズーカ砲」と称して、市中金融機関から有価証券を大量に買い上げる量的金融緩和政策を2期10年間も行ってきた。結局、実質実効為替レートで1970年ころの超円安に戻り、輸出大企業は大儲けしたが、内需を振興させて中間層の厚みを増すという本来の目的は大失敗した。日銀法はその第二条で「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」と定めており、物価の安定=円の価値の安定に務めなければならない。黒田前総裁はこれに失敗したまま退任し、2024年には瑞宝大綬章を受章した。まったくもっておかしな話だ。

日銀の量的金融緩和政策は円の価値を大幅に下落させ、米国を中心とした海外諸国の金融投資家が日本で安い円資金を調達し、この円資金でドルなど自国通貨を買い、自国の有価証券を購入して資本市場を沸かせた。海外の投資家は、根上がり益と為替差益の獲得で、多大な利益を得た。しかし、著しい円安・ドル高を招き、ウクライナ戦争に伴うバイデン政権を中心とした米側陣営の退路経済制裁に伴う資源・エネルギー価格の高騰によるコストプッシュ・インフレと相まって、日本に重篤なインフレをもたらし、国民の生活を圧迫・破壊した。

しかし、米側陣営諸国はコストプッシュ・インフレに対して重要を抑制するデマンド・キルをとったため、オーバーキルになり、投資家は別として国民の生活は苦しくなっている。米国のインフレ率は需要をオーバー・キルしたことで(見かけ上の)インフレ率は一時高騰したものの、このところは下がってきている。しかし、まだ3%程度のインフレ率は続いており、最適なインフレ率とされる2%達成は困難だと思われる。仮に、2%台前半になったとしても、実態経済を成長路線へと転換しない限り、物価そのものは高く、米側陣営の諸国民の生活は苦しい。

米国のバイデン政権がもたらしたものは、事実上のスタグフレーション(不況下の物価高)だろう。このことが、米側陣営に造反が起こさせ、イタリアで右派・ナショナリズムのメローニ政権が成立したほか、米国2024年大統領選挙で「米国第一主義=ナショナリズム」のトランプ陣営が台頭し、フランスでも民衆生活最優先のナショナリズム政党である国民連合が事実上躍進・マクロン大統領は組閣ができず政治的機能が麻痺するなど、各国で右派政党が次第に頭角を現している理由だ。なお、マリーヌ・ルペン氏は弁護士で経済には弱いが、若手がフランス財界の重鎮を集め国民連合の経済政策について説明ている(https://www.youtube.com/watch?v=KF1ebXFM0mU&t=2s)。

金融・資本・株価市場でもこうしたスタグフレーションの問題は表面化している。世界最大の株式市場であるニュヨーク株式市場の株価の動向は次のように推移している(グーグル検索による)。

ニュヨーク株式市場は2024年7月17日には3日連続で最高値を更新した後、4万1198.08ドルの最高値をつけたが、その後は趨勢的に反転下落している。これは、NHKによると次のような指標が相次いだためだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240809/k10014542031000.html、3年間の任期を終えてまもなく帰国するアメリカ総局記者・江崎大輔氏による)。

 

このため、カマラ・ハリス陣営は再び、円キャリー取引を使って株式相場を吊り上げ、大統領選を有利に運ぼうとしたようだ。

田中宇氏によると、これを阻止したのが、今週の激しい相場の乱高下だ。田中氏は次のように分析している。

結局のところ、今回の乱高下は何なのか。日銀に乱高下を起こす意図があったのなら、その理由は何か。円キャリー取引は再開されたのか。このまま再び株高になっていくのか??。
米国も日本も、7月初め以来、株価はゆるやかな下落傾向にあった。これまで隠蔽してきた景気の悪化が顕在化して米国株が下がり、円キャリー取引の旨味が減って巻き戻しが始まり、円安から円高に転じ、円キャリーで作られた資金の一部が注入されて上がっていた日本株も下落に転じた。そこに、7月31日の日銀の利上げと、8月2日の米雇用統計での失業増発表が加わり、株価暴落・円高急進・キャリー巻き戻しの加速になった。7月初め以来、円キャリーで作られた資金の50-70%が巻き戻った(注:投機的投資が正常化した)と米金融界が概算している。Unwind of massive yen-funded carry has room to go, analysts say)(中略)

さらにうがって考えると、米国側は日銀に利上げさせただけでなく、7月2日の雇用統計を悪い数字にして、7月5日の株価の暴落を引き起こした。日米協調で株価を引き下げた。米当局は近年、雇用統計などの指標を計算する際に前提条件を恣意的に変えるトリックなどで粉飾しており、悪い数字を出す時も恣意性が疑われる。また、いったん暴落した直後に日銀が強硬姿勢を後退させ、株価の急反発を引き起こしたのも、事前のシナリオに沿ったものだった可能性がある。キャリー取引の巻き戻り(株安、円高)は7月初めから始まっており、日銀が利上げしなくても巻き戻しの傾向が続いたはず。なぜ日銀は、利上げの持ち玉が少ない中で、今回のタイミングで、やらなくても良かったと思える利上げを挙行したのか。なぜ米国は、日銀に利上げをやらせたのか。Recession Triggered: Payrolls Miss Huge, Up Just 114K As Soaring Unemployment Rate Activates “Sahm Rule” RecessionApocalypse now or later? What the stock market collapse means and what the Fed fears most

日米ともに、経済は以前から(コロナ以来ずっと)不況だが、当局や権威筋はそれを隠し、連銀の裏金や円キャリー取引、米財政赤字の急拡大などで株価や債券価格をつり上げてきた。つり上げた株価は最近、下落し始めている。これは「弾切れ」の要素があるかもしれないが、今回の日銀の利上げなどを見ると、理由は弾切れでなく、キャリー取引潰しによる意図的な株価引き下げ(と、直後の半値戻し)である。これは何なのか??Futures Soar, Yields And Oil Jump After BOJ Capitulation Nukes Yen, Restarts Carry Trade

私が疑っているのは、米大統領選の絡みだ。トランプが勝って返り咲きそうだが、トランプは米金融界や連銀を取り込んで味方につけている。トランプは、連銀のパウエル総裁に対し、選挙前に利下げなど株価テコ入れ策をしないでくれたら任期満了(2026年)まで続投させてあげるよと提案した。トランプはまた、米金融界を代表するJPモルガンのジェームズ・ダイモン会長を財務長官として起用する案を流布している。Trump Reveals Key Pillars Of “Trumponomics”: Low Taxes, Sky High Tariffs, Powell Not Fired, Treasury Secretary Dimon And Much More

トランプは、連銀や金融界が近年やってきた、不況やインフレを隠蔽した金融相場のつり上げ策をそのまま継続、もしくは加速させ、2029年に自分の政権が終わるまで粉飾的な株高債券高を維持しようとしている。トランプは、国際政治や米覇権・地政学的な大転換・多極化を進めたいが、自分の人気保持のため、任期中は米金融覇権やドル・米国債の崩壊を起こしたくない。そして、トランプが連銀や金融界を味方につける際にまず要求していることが「民主党を有利にするな。オレの当選に協力しろ」だ。US probably in recession – ex-Fed insider

大統領選の投票日まであと3か月。金融界の中で民主党に味方する筋が株価をテコ入れするなら今だ。キャリー取引を再燃させれば、不況を無視して株価がつり上がる。共和党の候補がトランプに決まったころから、キャリー取引が巻き戻り始め、株価が下がり出している。これは、トランプに味方する筋が、選挙前のバイデン政権下で株価を引き下げ、トランプ当選から就任後にかけて再び株価をつり上げようとするシナリオに見える。Why Did the Global Stock Market Crash And Who is to Blame?

要するに、田中氏は今週の日米料国での金融・資本・為替市場の乱高下は、民主党のハリス陣営による円キャリー取引を潰したことが原因だと分析している。併せて言えば、米国の中央銀行システムと金融・資本業界(併せて、日本の日銀と傘下の金融業界)はトランプ氏の返り咲きに加担しているということだ。円キャリー取引の取り潰しは、日本の金融・為替・資本業界を大混乱に陥れた。

ただし、田中氏は「こんな推測(妄想?)が、今後の現実の流れと合致するのかどうか、大いに疑問ではある。今後もずっとキャリー取引の巻き戻しが続き、トランプが返り咲いても株価が戻らないかもしれない。米国では、商業不動産バブルの崩壊も進んでいる。しかし、すべての悪い状況を全く無視して、最近まで株価が上り続けて史上最高値を更新した。多くの人が、不況を好況と歪曲するマスコミ権威筋の大ウソを軽信しているのも事実だ。トランプは、政治に関する大ウソ構造を破壊する気だが、経済に関する大ウソの構造は(任期末まで)維持する」としている。トランプ次期大統領が、金融・資本・為替市場の崩壊(注:ドルの崩壊)を防げるかどうかは未知数だ。

本サイトでは、トランプ氏の政策の主眼は「経済再建」にあると見ている。トランプ氏は共和党を白人富裕層だけでなく、産業転換構造の波に乗れない白人層や元来、保守的なスパニッシュや黒人層にも支持を広げている。米国を支える福音派のキリスト教信徒を大切にし、自身もキリスト教徒と述べている。多民族国家・米国を統合する理念はやはり、キリスト教だろう。ただし、キリスト教界も現実に目を向ける宗教改革が必要だ。

ただし、ライ・チントー総統は台湾独立を進めているようだが、米国が同総統と一緒になって、中国からの輸入関税を60%したり、台湾に高度な軍事兵器を供与するなど、過度の経済的・軍事的な中国敵視策を採ることは自制する必要がある。外務省で国際情報局長、イラン大使、防衛大学教授を歴任された孫崎享氏によると、ペンタゴンのウォー・シミュレーションでは、中国が中距離核ミサイル全廃条約(INF)に加盟しなかった結果、同国は超高度な中距離核ミサイルを保有しており(例えば、在日米軍基地の滑走路を破壊できる)、台湾有事の際のシミュレーションを行った結果、米側陣営は全戦全敗するとの結果が出ている。

カマラ・ハリス副大統領(民主党候補)は超無能ながら極左勢力に属するーカリフォルニア州で実践

米側陣営のほとんどのメディアは、民主党の正式候補に決まったカマラ・ハリス副大統領を異常なまでに持ち上げているが、世界の諸国民は軽信しないことが必要だ。ハリス氏の無能さの例としてよく引き合いに出されるのは、ハリス氏が米国とメキシコの国境からの不法侵入の抜本対策を命じられたのに、ハリス氏は一度も国境に視察に行かなかったことだ。これについて、メディアから詰問されると、「私は欧州にも行きませせでした。アハハハ」と意味不明な言動を行ったこと。ハリス氏は窮地に陥ると、笑ってごまかす習癖がある。

バイデン大統領が後継候補にハリス副大統領を指名したのは、①認知症で正常な判断が出来なかった②バイデン政権を傘下に置くディープステート(諜報界、ディープステート=かつては軍産複合体と呼ばれた米国単独支配体制維持勢力のことで、バイデン政権を支配している過激なネオコン勢力のことと思われる=に属さない初めての大統領であるトランプ氏は、ディープステートの解体を公約にしている)がハリス氏を後継候補にさせたーのいずれかだろう。ただし、田中氏は今や諜報界は隠れ多極主義者に支配されているとのことで、隠れ多極主義者は裏でトランプ氏を支援しているとも言われている。

ハリス氏は、カリフォルニア州で同州の極左化を展開しているが、国際的な政治・経済・軍事・思想情勢には無知だ。今後のトランプ氏との対決討論会で明確になるだろう。極左のハリス氏の思想が全米に広がれば米国は分断され、崩壊する。カマラ・ハリス氏の危険性については動画も出ているが、櫻井よしこ氏のYoutubeの動画が面白くて、的を射ていてる。

ただし、動画の最後の部分でタカ派=好戦的であり、清和政策研究会(安倍派、現在は暫定的に森喜朗氏が仕切っているようだ)を離脱した無派閥の高市早苗氏(森氏が嫌っている)を次期自民党総裁・首相にという提言はいただけない。

金融・資本・為替市場大乱高下時の金地金相場の推移

金融・資本・為替市場大乱高下時の金地金相場は、日銀の植田和男総裁が勇ましく政策金利のさらなる上昇を公然と語る時期もあり、多少の上下があったが、基本的にはこれまでの1トロイオンス=2000ドルという天井を大きく突き抜けて、2500ドルを超えてさらに上昇する方向に動いている(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)。

米側陣営の基軸通貨であるドルには常に、「ドル基軸通貨体制崩壊の危機」がつきまとっているが、次期大統領がトランプ氏になったとしても、国際金融情勢についての正しい認識を持って対処しない限り、米側陣営はどうにもならなくなる。「もしハリ」が実現すれば、米国はすぐ終わる。共和党が実質的にトランプ党になった現在、米国の大統領選挙は、人気投票ではない。グーグルの検索トップ画面に表示される記事を見れば、同社がカマラ・ハリス氏に加担していることは明らかだ。

まずは、①プーチン大統領の終戦提案を土台にして、ウクライナ戦争を終結させ、ネオ・ナチ政権になっており、任期が切れた後も大統領の座に居座り続けているぜレンスキー大統領政権は交代していただく(注:ウクライナは戦争のため、出生率の低下と戦闘による死亡者の激増で人口が減少しており、国家的危機を迎えている)②台湾独立派が巣食う民進党党首のライ・チントー台湾総統の無意味な台湾独立活動は止めていただく③イスラエルの手によってハマスの最高指導者が殺害されたことから、レバノンのヒズボラを通してイランとイスラエルの対立が先鋭化しているが、ムスリム同胞団勢力の国家を創出し、イスラエルとイランの和解の道を探るーことが必要と思われる。「ハリス政権」では実現不可能なことばかりだ。

【追記】誤字を修正しました(7月11日午前8時)。

 

 

 

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