金先物価格市場最高値更新、原油先物価格5カ月ぶり高値が象徴する国際情勢の激動期表面化ーウクライナは分割統治へ(追記:清和会潰し)

週明け4月1日のニューヨーク商品取引所では金先物価格が1トロイオンス=2286ドルまで上昇、原油の先物価格(指標となるWTI)も去年10月下旬以来およそ5か月ぶりに一時1バレル=84ドル台まで上昇した。これより先、連邦準備制度理事会(FRB)がもっとも注目している2月の個人消費支出=PCEの物価指数(食品とエネルギー含む)は、前年同月と比べて2.5%上昇、5か月ぶりに前の月より上昇率が拡大して、FRBが目指す2%の物価目標に対して足踏み状態が続いている。要するに、沈静化してきたかのように米側メディアで報道されていたインフレは全く終息の兆しを見せていない。今回の米側陣営の急激なインフレは、ウクライナ戦争を中心としたコストプッシュ・インフレだからだ。ウクライナ戦争はウクライナ側の敗北が確定しており、ロシアとポーランドによる分割統治という形で決着がつくだろう。この戦争は米国が起こしたもので、対米従属の欧州が道連れになり、米側陣営の危機が露呈する。非米側陣営のほうがはるかに好調だが、非米側陣営はタルコット・パーソンズの指摘したように「中間帝国」にとどまり、近代社会に到達しなかったため、基本的人権意識に難点があるのは否めない。このため、欧米近代文明を創造したアタナシウス系のキリスト教の革新による統一文明創出の時代圏に突入している。

金相場が国際金融を含む国際情勢を反映している

コストプッシュ・インフレが支配的な現状で最も注目スべきなのはやはり金価格(金相場)だろう。米側陣営では利下げ局面では金価格は上昇し、利上げ局面では金価格は下落するというのが定説である。しかし、2022年2月24日に米国の誘導でロシアのプーチン政権が行った「特別軍事作戦」以降、FRBが金融を引き締めても緩めても金相場は上昇を続けている。三菱マテリアルによると次の通りだ(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)。

金価格はこれまで米側陣営の中央銀行の中央銀行と言われる国際決済銀行(BIS)の金相場操作(金先物の売り)で1オンス=2000ドルを突破しなかったが、現在ではBISも金相場の価格操作ができないようで、現物価格で1オンス=2200ドルを目前に金価格は上昇を続けている。金は利子を生まない実物資産でしかないが、金融情勢に加えて国際情勢の異変に敏感に反応する。FRBが利上げ(フェデラルファンド・レート=FF金利=の引き上げ、もしくは、QT(Quantitative Tigtening=量的金融引き締め、中央銀行保有証券を売却して市場から資金を引き揚げること=)などの金融引き締め策やFF金利の引き下げ、もしくは、QE(Quantitative Easing=量的金融緩和政策、市場から有価証券を買い取り、市場に資金を供給すること=)などの金融緩和に踏み切ろうが踏み切るまいが、定説とは無関係に金価格は上昇してきた。

これはやはり、ロシアの「特別軍事作戦」以降のコストプッシュ・インフレや国際情勢の激変(米側陣営の没落と非米側陣営の台頭)によるものだろう。最近は、FRBのバーナンキ議長が、「今後の利下げについて『利下げを急ぐ必要はなく、物価上昇率が持続的に2%まで下がることを、より確信できるまで待つことができる』と述べ、インフレの収束が確信できるまで利下げを急ぐ必要はない」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240329/k10014407531000.html)としたため、金融市場で支配的だった利下げ予測が覆された。米側陣営のインフレはまだ収束していないのである。

それどころか、イスラエルとハマスの戦闘にイエメンのフーシー派(イスラム教シーア派でイランの支配下にある)による紅海での米側陣営の貨物船襲撃で、同陣営の大動脈の供給網が寸断されるという状態に陥っており、これがコストプッシュ・インフレをホディー・ブローのように加速し始めている。コストプッシュ・インフレが終息する、つまり、ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス(ムスリム教壇パレスチナ支部)の闘争に決着がつかない限り、コストプッシュ・インフレは収束しないだろう。

それどころが、米国ではオフィス空室率 3か月間で19.8%まで上昇して過去最高(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014410051000.html)になっており、実体経済は不況に陥っている。また、米国の所得格差は中国以上との見方も出ている(孫崎享氏、東アジア共同体のUIチャンネルでの発言)。3月の米ISM製造業指数、18カ月ぶりの50超えで景況改善の見方広がるとの観測もあるが、米側陣営はインフレ下の不況、つまり、全体としてスタグフレーションに陥った状況が続いていると見られる。米国がウクライナのゼレンスキー政権を樹立させ、ウクライナ東部のロシア系ウクライナ人を大弾圧させるなどの非道徳的なことを行えば、同国とて無傷でいることなどできない。「天網恢恢疎にして漏らさず」とはよく言ったものだ。

この状況が続けば、ドルが価値を失って米側陣営の金融・資本市場が大崩壊するという最悪の事態が早まる。このことを、米側陣営の諸国民はメディアの報道内容を軽信せずに、よく理解するべきだ。もともと、米国は財政赤字、経常赤字、体外累積債務残高で世界最悪であり、同国一国での覇権体制を維持することは不可能であった。国際情勢の多極化は、著名な識者であればあるほど時代の趨勢だと考えているが、米側陣営と非米側陣営が対立・分離したままでは人類社会の発展には好ましくないだろう。欧米文明の基礎になったアタナシウス系の「正統キリスト教界」を刷新して、イエス・キリストの「教え」を正しく理解する(旧・新約聖書の奥義を解明する)ことが、ものごとのスタートである。

問題の発端となったウクライナ戦争の現状であるが、ロシアはこれまでウクライナの軍事施設しか攻撃してこなかったが(注:プチャで起こったとされる虐殺事件などウクライナ国民の虐殺報道は要するにでっち上げ)、最近ではウクライナの発電所などエネルギー生産システムを余裕をもって攻撃しており、ウクライナの軍事産業や民事産業の破壊に乗り出している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240331/k10014408741000.html)。

ウクライナでは、エネルギー施設を標的にしたロシア軍の攻撃が相次ぎ、31日には南部オデーサ市や、その周辺地域で一時、停電になるなど深刻な電力不足に陥りかねない事態となっています。

公式発表とは正反対に死亡者または戦闘不可能な負傷者44万人を出しているウクライナの戦局について、国際情勢解説者の田中宇氏は3月31日に発表した「欧露冷戦の再開」(https://tanakanews.com/240331europ.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)で、ウクライナがロシアによるノボロシア構想の実現とポーランドの「ウクライナ国民保護」の目的でウクライナ入りしているポーランドとの間で、分割支配されることを伝えている。ポーランドには当時のソ連から「カチンの森」事件の大虐殺を被ったという苦い経験があるから、ロシアに対する反発は尋常ではない。

「カチンの森」事件とは、第二次世界大戦中にソビエト連邦のスモレンスク近郊に位置するカチンの森などで約22,000人[または25,000人のポーランド軍将校、国境警備隊隊員、警官、一般官吏、聖職者が、スターリン時代のソビエト内務人民委員部(NKVD)によって虐殺された事件のことを指す。

EKSHUMOWANE CIALA POLSKICH OFICEROW
W KATYNIU.
KATYN, 1943.
ADM

なお、ポーランドは、バルト三国の南に位置し、ドイツやチェコ、スロバキア、ウクライナ等と国境を接する国。 面積は日本の五分の四ほど。 人口の97%が西スラブ系のポーランド人で、主にカトリックを信仰している。ウクライナ西部のウクライナ人もカトリックを信奉しており、文化的なつながりは深い。田中氏はそのウクライナのロシアとポーランドの分割支配について、次のように主張しておられる。

これらの動き(注:フィンランドやスウェーデンのNATO加盟。ただし、ポーランドなどはNATO第五条=加盟国が1国でも攻撃を受けた場合、これを加盟国全体への攻撃とみなして反撃などの対応をとる集団的自衛権の行使が規定されていて、軍事同盟であるNATOの根幹をなす条項=とは無関係に勝手にウクライナに進出している)などを見ると、ロシアとの戦争がウクライナから、バルト三国やポーランド、モルドバ(沿ドニエストル)に拡大しそうな感じもする。だが、バルトやポーランドはNATO加盟国だ。ロシアがこれらの国々を攻撃すると、NATOは5条発動の回避が難しくなる。

ロシアと欧州との戦争がどんどん拡大されそうな幻影が席巻するものの、それは意図的な幻影に過ぎず、実際の戦場はウクライナだけに限定されるのでないか。欧州とロシアは今後ずっと対立し続けるが、それは「戦争」でなく、かつての「冷戦」に近いものになる。ウクライナは、朝鮮半島のように分割が固定化される。露軍は近いうちにオデッサ(注:ウクライナ南部、ドニエストル河口から北に約30km、黒海に面したウクライナの主要港湾都市)を取り、沿ドニエストル(モルドバ)との国境までを占領する(注:ノボロシア構想の実現)。ウクライナは黒海岸を奪われて内陸国になる。イーロン・マスクもそれを予測している。

Republic of Moldova:ウクライナとモルドバの間をドニエストル川が流れており、モルドバ寄りに、国際的な承認は受けていないが、ロシア系住民の多い沿ドニエストル共和国が存在する。

残されたゼレンスキーの政府やウクライナ西部は、ポーランドの影響下で存続する。ゼレンスキーはポーランドを嫌っており、いやいやながら了承する。‘Odessa will fall’, Musk warns Ukraine沿ドニエストルへの回廊

独仏英の欧州三国は対米従属国であり、いやいやながらバイデン政権の指示を受け入れざるを得ず、ドイツは。、バイデン政権によってメルケル政権時代に建設したロシアとの間の海底天然ガスパイプラインを破壊され、原子力発電所を法律で廃止したこともあり、エネルギー危機に陥っている。フランスのマクロン大統領はロスチャイルド家の系統であり、対米従属化にある程度は抵抗する発言を行っている。英国は総選挙で現在の保守党が歴史にない敗北を遂げると予想されている(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-31/SB8GN6T1UM0W00)。

2025年1月までに行われる英国の次期総選挙で、スターマー党首率いる最大野党・労働党が70%余りの議席を獲得し、与党保守党は歴史的敗北を喫する見通しだ。(注:大衆紙だがよく引用される)英日曜紙サンデー・タイムズに掲載された世論調査の結果で明らかになった。「ベスト・フォー・ブリテン」のためにサーベーションが1万5000人を対象に実施した世論調査の結果によれば、次期下院選挙で労働党が468議席を獲得する一方、保守党は98議席にとどまり、スコットランドとウェールズで1議席も得られない見込みだ。1997年に政権を奪還した際のトニー・ブレア氏率いる労働党の獲得議席数は418、メージャー首相の保守党は165だったが、さらに深刻な過去最悪の惨敗になりそうだ。

保守党政権が政権運営に失敗して、英国民が激しいインフレで経済的に非常にまずしくなったためであるが、その重大な要素のひとつにスナク現政権のウクライナ戦争でのウクライナへの支援があることは間違いない。ウクライナのゼレンスキー政権を支援すればするほど、欧州諸国は貧しくなるが、「独仏EUは、クリミアとドンバスの露による領土化を公式に認知し、対露和解して資源輸入を再開するのが最も国益になるが、その道はふさがれている」(田中氏)。

田中氏は、「米金融界は、金相場の抑止をやめた感じだ。ドルは衰退の道をたどっている。だが、債券や株の急落にはならない」としている。ただし、これからの金融・資本市場が大荒れの展開にはならないということは断言はできないのではないか。警戒が必要だ。

トランプ氏、裁判所に減額ながら懲罰的保証金支払い、連邦高裁に控訴可能に

共和党の大統領候補者になった前大統領のトランプ氏(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-13/SA9NITT0G1KW00)は4月1日、連邦地裁に減額ながら懲罰的保証金を支払った。1億7500万ドル(約265億円)に減額されたが、懲罰的保証金を課したことに変わりはない。選挙妨害の一種だろう。また、バイデン政権はメキシコからの不法移民に市民権を与え、11月5日に大統領選挙を行える有権者登録ができるように画策しているという。フォーブスが「陰謀論」として「報道」したが、それだけ「もしトラ」を警戒しているということだろう(https://news.yahoo.co.jp/articles/d50e30862dafada3967090c46d18c00b739cb51d)。

イーロン・マスクは2月21日のX(旧ツイッター)の投稿で、またもや保守派の陰謀論を持ち出して、バイデン大統領と米民主党が今年の大統領選挙で移民からの票を確保するために、大量の不法移民を受け入れて彼らに市民権を与えようとしていると主張した。この主張は、以前から根拠のないものとして否定されているが、トランプ前大統領も同様の発言を行っている。

イーロン・マスク

マスクは、あるユーザーからの問いかけに答えるかたちでバイデン政権が「少なくとも一部の不法移民を今年の選挙までに合法化し、次の選挙までに全員を合法化する」と投稿した。

「陰謀論」として片付けようとすること事態、「もしトラ」の実現を恐れているということではないのか。

政治資金パーティの問題で清和会は事実上、消滅

政治資金パーティの問題でNHKは次のように伝えている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014409791000.html)。

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で自民党執行部は安倍派と二階派の39人を処分する方針です。安倍派幹部の塩谷・元文部科学大臣と世耕・前参議院幹事長を今回最も重い離党勧告とする方向で調整しています。今回の問題で自民党執行部は安倍派でキックバックの扱いを協議した幹部4人と、おととしまでの5年間で収支報告書の不記載などが500万円以上あった安倍派と二階派の議員らあわせて39人を党紀委員会で処分する方針です。

これが実施されれば、安倍派=清和会は息の根を断たれる。岸田文雄首相は「派閥解散」と言明していたが結局、安倍派=清和会を解体することになった。(二階派は、二階俊博氏は次期総選挙に出馬しないことを表明したことで処分は免れたが、二階派の黒海議員は。処罰の対象になった。結局、中露との友好関係を結ぶことを中心とした多極化外交を推進してきた安倍・二階氏を領袖とする安倍・二階派、特に、岸信介ー福田赳夫ー安倍晋三と引き継がれてきた清和会の歴史を終えることになる。

今回の政治資金パーティの問題は、大学教授が赤旗の「スクープ」に基づいて疑惑の自民党黒海議員の収支報告を丹念に調べ、東京地検に刑事告訴したことが事件の発端だと言われている。ただ、今回の処分(清和会弾圧)は、「政治とカネ」の古くて新しい問題を根本から解決するものではない。この問題に決着をつけるためには、「企業・業界団体の政治献金」を認めない法律を作成する必要がある。しかし、岸田文雄政権はそうした意識は全く無い。

今回の処分について、岸田派の元会計責任者は有罪が確定しており、公正を帰するなら岸田派も処分の対象にするべきだった(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240215/k10014359041000.html

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、政治資金規正法違反の罪で罰金と公民権停止の略式命令を受けた谷川弥一元衆議院議員や岸田派の元会計責任者の有罪が確定しました。一連の事件で有罪が確定したのは初めてです。

有罪が確定したのは、安倍派「清和政策研究会」に所属し先月、自民党を離党して議員辞職した谷川弥一元衆議院議員(82)と、秘書だった娘、それに、岸田派「宏池政策研究会」の佐々木和男 元会計責任者(80)です。

清和会つぶしの今回の処分に、自民党内部で異論もある(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240404/k10014412171000.html)。

党紀委員会委員 金美齢氏「処罰だけが先行 納得いかない」

自民党の党紀委員会の委員で評論家の金美齢氏は記者団に対し「物事はすべて納得するということにはならず、いろいろな人がいろいろな意見を言ったが、厳しすぎるというのが私の感想だ。国のためにたくさん頑張った人たちがいるので、少しのことで処罰だけが先行することには納得いかない」と述べました。

宏池会と清和会は自民党の二大潮流派閥であり、自民党の「活力」の原動力になってきた。何故、清和会だけ潰すのか、サイト管理者(筆者)としては正直なところ、よく分からないが。清和会をつぶして、中露とも友好関係を結ぼうとする多極化外交政策を完全に否定することが、もともとの狙いのような気がする。そうだとすれば、今回の清和会と二階派弾圧に、米国のバイデン政権が関わっている可能性を考慮しておかなければならない。

もし、ロシアの「特別軍事作戦」に理解を示していた(注:中露との友好関係を深める多極化外交を推進していた)安倍晋三元首相(当時)が狙撃テロで殺害されていなければ、こうはならなかっただろう。安倍氏の殺害が山上徹夜被告が狙撃した銃弾ではなかったことは、様々なサイトで紹介されている。清和会のメンバーである国会議員は、そのことの意味をよく理解し、安倍狙撃暗殺事件を根本から見直す必要がある。

 

 

 

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