注目された8月の米雇用統計は失業率こそ前月から1%ポイント改善したものの、同月の農業分野以外の就業者の伸びは市場予想を下回り、7月と6月の就業者の増加数もこれまでの発表より下方修正された。資本市場では景気後退入り(リセッション入り)が予想されるようになり、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は前日比410.34ドル(1.01%)安の4万345ドル41セントと、400ドルを超える大幅な値下がりになった。米国の連邦準備制度理事会、連邦準備銀行は、連銀の簿外裏資金の注入でバブルを維持してきたが、米国民の大半を占める所得が中間層以下の市民は失業とインフレ=スタグフレーション=で苦しんでいる。米国(米欧)を支配するエスタブリッシュメント・金持ち達は、金融投資で儲け続けてきた。そうした構図はこの先、続かなくなるだろう。
米国でも掛け持ちでの雇用があるが、統計上、調整されているかは不明。米国時間で6日発表された8月の米雇用統計について、NHKは次のように報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240906/k10014575061000.html)。
8月の世界同時株安の要因となり、注目されていたアメリカの雇用統計が発表され、8月の農業分野以外の就業者の伸びは市場予想を下回りました。一方、失業率は4.2%となり、5か月ぶりに改善しました。アメリカ労働省が6日発表した先月の雇用統計によりますと、農業分野以外の就業者の伸びは前の月と比べて14万2000人で、市場予想の16万5000人程度を下回りました。7月と6月の就業者の増加数もこれまでの発表より下方修正されました。
一方、失業率は改善し、前の月から0.1ポイント低下して4.2%でした。改善は5か月ぶりとなります。また、インフレに結びつくデータとして注目される労働者の平均時給は▽前の年の同じ月と比べて3.8%、▽前の月と比べると0.4%、それぞれ上昇し、いずれも市場予想を上回りました。
賃金が市場の予測を上回ったのは、中間層以下の市民レベルでは「物価と賃金の悪循環」が続いていることを示している。つまり、インフレ圧力化の不況の図式は依然として続いていると見るべきだ。これを嫌気して、ダウ平均は大幅に値下がりした(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240906/k10014575101000.html)。
6日のニューヨーク株式市場、ダウ平均株価は400ドルを超える大幅な値下がりとなりました。この日発表された雇用統計の内容は景気の急激な悪化を示すものではありませんでしたが、先行きへの警戒感は根強く徐々に売り注文が広がりました。6日のニューヨーク株式市場では、この日発表された雇用統計で景気の急速な減速は避けられているという受け止めが広がり、ダウ平均株価は値上がりして始まりました。ただ、先行きへの警戒感は根強く幅広い銘柄で徐々に売り注文が広がり、ダウ平均株価の終値は前日と比べて410ドル34セント安い、4万345ドル41セントでした。(中略)
一方、ニューヨーク外国為替市場では、雇用統計の発表後のFRB=連邦準備制度理事会の理事の発言が今後の大幅な利下げに前向きだという受け止めから円高ドル安が進み、円相場は一時、1ドル=141円台後半まで値上がりしました。これは、およそ1か月ぶりの円高ドル安水準です。
以下は、ウォール・ストリート・ジャーナルによるダウ平均の一日の動きである(https://jp.wsj.com/market-data)。米国東部時間の午前中に一時反発したものの、その後は下落傾向が続いた。
米国経済の実態はやはり悪い。9月の17、18日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を0.25%から0.5%引き下げることが予想されているが、思い切って0.5%引き下げる可能性がある。しかし、米国経済の実態がスタグフレーションの状態にあるため、金融政策で経済状態を改善することは難しい。米国経済がスタグフレーションに陥った原因を考える必要がある。
米国では、バイデン大統領・ハリス副大統領が政権を掌握した2021年、地球温暖化説の妄想を信じて、国有地でのシェールガスの生産を禁止したことからインフレが始まった。これに、同政権が、ゼレンスキー大統領に対して、ウクライナ東部ののロシア系ウクライナ国民を弾圧させることによって、ロシアの「特別軍事作戦」誘導したことで、ウクライナ戦争に拡大、ロシアに対して米側陣営が強力な経済制裁を行うことによって、資源・エネルギー価格が大幅に上昇、インフレを加速させた。つまり、コストプッシュ・インフレが米国のスタグフレーションの始まりである。
このため、スタグフレーションを解決するためには、供給側の政策が重要になる。二酸化炭素による地球温暖化説の妄想から完全に決別して、石油・天然ガスの生産、米国では、シェールガスの生産を大々的に再開することが絶対に必要である。米国では大統領選が大詰めを迎えているが、前大統領のトランプ氏は地球温暖化説に騙されることなく、シェールガスによる天然ガスや石油の増産を経済政策の主力に置いている。
一方、副大統領のハリス氏は、従来、環境を破壊するとして絶対的に否定していたフラッキング法(泥質岩の一種である頁岩=けつがん、英語でシェール=の層から石油や天然ガスを抽出する技術で、水圧破砕法とも呼ばれる)を認めることにした。ロイター通信は、「ハリス氏、大統領になってもシェール開発でフラッキング禁止せず」と報道した。
米民主党の大統領候補ハリス副大統領は29日に放送されたCNNのインタビューで、フラッキング(水圧破砕法を使ったシェールガス・石油の開発)について、大統領に選出されても禁止しない意向を示した。
「2020年の討論会で私はフラッキングを禁止しないと明言した。副大統領として、フラッキングを禁止しなかった。大統領になっても禁止しない」と語った。
ただし、2020年の大統領選挙時と同様だが、民主党左派のハリス氏が二酸化炭素による地球温暖化説の妄想から完全に決別したということではない。大統領選での最大の焦点であるペンシルベニア州がシェールガスの生産で全米第二であり、相当規模の雇用を生んでいるからだ。単なる選挙対策でしかない。「もしハリ」になったら、生産を規制する恐れが強い。次に、ウクライナ戦争を終戦に持ち込み、ロシアを含むOPEC+に石油・天然ガスの生産の本格化について、交渉することだ。
しかし、トランプ氏は中国を敵視し、デ・カップリング政策(米側陣営と非米側陣営の経済の切り離し・分離)を進めようとしている。中露を盟主としたBRICSを中核とする非米側陣営も、「もしトラ」が実現した場合に、デ・カップリング政策に対抗できる準備を進めている。ロシアのプーチン大統領が 、ロシア極東のウラジオストクで3日に開幕した国際会議「東方経済フォーラム」に出席、「米国の大統領選ではカマラ・ハリス氏を支持する。しかし、米国民の選択を(最大限に)尊重する」とニヤッとしながら語ったのは、ウクライナ戦争を長引かせて、非米側陣営の国際決済システムを構築するための時間を稼ぎたいからだろう。
しかし、仏教の法華教に「相依相関性の絶対性(物事はすべて相互に関係しており、その関係性そのものが絶対性を持つとの教え)」という教えがあるように、デ・カップリングは地球全体の経済面での効率性を毀損する恐れが極めて強い。ケインズがブレトンウッズ会議で示したように、基軸通貨という概念にこだわらない国際経済決済システムもあり得る。なお、昨今、中国の不動産バブル崩壊による中国経済崩壊論がかまびすしい。しかし、中国の経済情勢の現状を見ると、同国は金融情勢に左右されない購買力平価で世界第一位の経済大国になっているし、引用される科学・技術論文数でも同じく世界第一位になっている科学・技術大国でもある。さらには、経済政策面で中間層を育成する「共同富裕政策」を採り、内需拡大政策に力を入れている。
なお、核保有国であることに加え、高性能な戦闘機や空母を保有し、高性能な中・長距離ミサイルを二千発以上保有するなど、世界最大の軍事大国である米国(ただし、経常赤字大国であるというアキレス腱がある)に急速にキャッチアップして行くだろう。外交面でも、ロシアと強力な中露同盟を結んでいる。こうしたことから、サイト管理者は、中国経済崩壊論自身が崩壊していると見ている。
第三に、金融産業に偏りすぎた経済構造を改め、競争力のある産業育成に取り組む必要がある。なお、財政政策(ケインズ政策)に頼りすぎることはできない。かつて、後に、ベトナム戦争の激化を嫌い、暗殺されたが、時のケネディ大統領に対して、ケインズ経済学の泰斗・トービン教授は、通貨の増刷による内需拡大はインフレ率2%が条件と語っている。インフレ率が2%を超えるようになると、過剰流動性が発生してヘリコプター・マネーになる。これに関して、トランプ氏が、軍産複合体にドルを注入しすぎた米国の財政構造の改革に、スペースX=偵察衛星を使って、ウクライナ戦争の状況などをリアルタイムで監視する企業=、テスラのCEO、X Corp.(旧:Twitter)の執行会長兼CTOを務めているイーロン・マスク氏(民主党支持者から共和党支持者に転換)を起用すると発表したことは意味のあることだろう。
また、米国のFRBと連邦準備銀行による簿外裏資金の注入は、いつまでも続けることはできない。要するに、簿外裏資金の注入というのは、ドル紙幣を密かに増刷して資本市場で株式、債券などの有価証券を購入するということだが、それはいつかはバレる。
話を産業政策に戻すと、これについては、経済的後進国が先進国にキャッチアップする過程を理論化する赤松要(かなめ)の「雁行形態論」を発展させた小島清の「合意的国際分業論」が基礎になる。合意的国際分業論とは、「逓減費用産業=生産すればするほど、生産コストが下がっていく産業=において『相互に市場を提供すること によって、相互に規模の経済を実現する国際分業』 であり、 『経済統合を基礎 付ける』」理論である。「合意は, 要素賦存比率が類似し, また要素賦存量の 大きさ,国内市場の大きさと構造が類似的な同一発展段階諸国間でなされる べきである」(同志社大学の「発展途上国地域経済統合と合意的国際分業」https://doshisha.repo.nii.ac.jp/record/15928/files/007000600007.pdf)。
なお、小島は1970年代に米国企業が多国籍企業化した際に、当時の先端産業から直接投資を行ったため、国内産業の空洞化(雇用の空洞化)をもたらしたと述べている。これに対して、日本では、旧来の産業からアジア諸国に直接投資したため、現地で産業が発展するとともに、日本はメカトロニクスなどの先端産業が発展し、雇用がそちらに移動したため、産業の空洞化は生じなかったと分析している。
サイト管理者はトランプ支持者であるが、極端な保護主義は百害あって一利なしと考える。現代の国際情勢が衰退が進行している米側陣営(欧米文明圏を中心とした旧西側諸国)とBRICSを核として興隆している非米側陣営に二分化していることをはっきりと認識し、それぞれの陣営の最高首脳が虚心坦懐の精神で意見交換・協力する場を設けることが大切だと思う。その延長線で、国際連合(国際情勢解説者の田中宇氏によると、世界を制覇した英国が第二次世界大戦後、米国に単独覇権主義を押し付けたのに対抗して現在の「隠れ多極派」が設立した機関)の正しい改革(第二次国際連合の創設)につなげれば良い。現在の民主党の主流派である過激極左派であり、単独覇権主義派の傘下にあると見られるカマラ・ハリス氏には、これらのことは実行できない。逆に、トランプ氏が警告するように、米国の崩壊を決定的にするだけだ。
ウィキペディアなどによると、国連本部の建設地買収の資金を提供したのはロックフェラー二世である。ロックフェラー家は、「隠れ多極派」のようだ。なお、日本時間9月7日の賭け市場(Polymarket)の状況は次の通りだ。賭博師も予測が割れているが、わずかながら、トランプ氏が返り咲くことに賭ける割合が多い。最大の激戦州であり、獲得できる選挙人(19人)が最も多いペンシルベニア州では、トランプ氏に賭ける賭博師がかなり多い。ただし、同8日時点では差が1%ポイント縮小している。激戦7州のうち6州ではトランプ氏の選挙獲得人数は52人、ハリス氏は25人。もうひとつの州はノースカロライナ州だ。選挙戦は、政策・実績のトランプ氏とムードのハリス氏という構図になっているようだ。これに、不正選挙も考慮に入れなければならない。
プーチン大統領、モンゴル訪問の狙いは中国への天然ガス供給のため
田中氏が4日投稿・公開した「モンゴルの地政学転換」(https://tanakanews.com/240904mongol.htm、無料記事)によると、国際刑事裁判所(ICC,International Criminal Court)に加盟しているモンゴルに、同裁判所から逮捕状(ウクライナの子どもたちを強制的にロシアに連れ出したという容疑。ただし、連れ出した子どもたちはロシア系のウクライナの子どもたちであって、その保護と教育のためだから、全くの冤罪)を出されているプーチン大統領が敢えて訪問したのは、「ロシア北極圏のヤマル半島のガス田から、天然ガスをモンゴル経由で中国に送るパイプライン『シベリアのちから2』を作る計画」を実行に移すためらしい(参考:独立行政法人資源・エネルギー機構のサイト:https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1008924/1008958.html)。
ロイター通信は、「ロシアのガスプロム、ガス輸送管『シベリアの力2(アルタイ・ガス・パイプライン)』設計に着手」と題して、次のように報道している(https://jp.reuters.com/markets/oil/LXJ6XJG6ANIZ3EX532GJNYWQ3M-2023-10-20/)。
ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロム(GAZP.MM), opens new tabは2023年10月19日、同国と中国を結ぶ天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の設計に着手したと発表した。稼働中の「シベリアの力」についても、中国石油天然ガス(CNPC、ペトロチャイナ)と追加供給契約を交わし、年内に供給を開始するという。ロシアと中国は2022年初め、「シベリアの力2」を新設し、中国向けにロシア産ガスを年間100億立方メートル供給することで合意した。
なお、中国経済が破綻・崩壊するなら、ロシアもパイプラインを敷設するなどの「愚挙」は行わないだろう。ユーラシア大陸のど真ん中に位置するモンゴルはこれまで、米側陣営に属していたが、フレルスフ大統領がウクライナ戦争後の国際情勢の激変を認知し、非米側陣営に移行する決意を固めたようだ。
ウクライナ戦争など、米国が欧州をけしかけてロシアを敵視・徹底制裁する構図は、今後もずっと続く(米大統領選挙前に、トランプが止められないよう、バルト三国とロシア・ベラルーシの戦争になるとか)。対立構造が長期化するほど、欧州(英欧)は没落し、米国は露中敵視から孤立主義(英国系に牛耳られてきた米国の自立)へと変質していく。米覇権が崩れ、世界は非米的な多極型になっていく。露中が優勢になる。昨年から今年にかけて、その転換が明確になってきた。この間、最初は米国にそそのかされて露中敵視をやろうとしたモンゴルは、最近のどこかの時点で世界の変化に気づき、再びプーチンと仲良くすることにしたのでないか。(Lithuania’s Base Construction Provocative Amid NATO Expansion)(Should the US abandon Europe?)
きたるべき非米多極型の世界の中心はBRICSだ。今年のBRICSサミットは、持ち回り議長国ロシアのカザンで10月に開かれる。プーチンは、モンゴルのフレルスフ大統領をBRICSサミットに招待した。ロシアと仲良くしてくれる見返りに、今後の世界の中心へどうぞ、というわけだ。最近は、NATO加盟国であるトルコまでがEU加盟を見限ってBRICSに加盟申請している(パレスチナ自治政府も!)。(Turkiye requests BRICS membership)(Putin invites Mongolian president to BRICS summit)
昨年のBRICSサミットは南アフリカで開いたが、南アはICCに気兼ねしてプーチンの現場出席を断った。その後、南アはICCにそそのかされてイスラエルのネタニヤフ首相をガザ戦争の人道犯罪で訴えた。よく見るとネタニヤフは、プーチンと逆の方向から、ICCが担ってきた英国系の人権外交戦略による覇権維持策をぶち壊している。ネタニヤフはガザで本物の人道犯罪を犯し続けても、世界から阻止・制裁されずに続けられる状況を作ることで、ICCと英系覇権を破壊している。プーチンは、やってない人道犯罪で世界(米国側)から制裁されても潰れず、むしろ強化され台頭することで、ICC英国系を破壊している。トランプら、米国を乗っ取りつつある孤立主義勢力も覇権破壊屋で、ネタニヤフを助けている。(ガザの次は西岸潰し)
本投稿で最後になるが、米国民が左派独裁リベラリズム(司法や選挙委員会を権力維持のために利用している)に汚染されたメディアの「報道」を軽信し、今後の国際情勢を左右する大統領選挙において、ムードで投票行動をしないように祈る。