バイデン現職大統領が認知症のため秋の大統領選挙から撤退し、カマラ・ハリス副大統領を推薦したことから、オバマ元大統領が政治家としての魅力・資質がないカマラ・ハリス副大統領以外の民主党候補者を探していた。しかし結局、断念し、ハリス氏支持を表明せざるを得なかった。このため、民主党の候補者は早ければ8月1日のオン・ライン投票(注:誰でも良いから民主党の正式候補を早く決めるため、党大会の前に繰り上げた)でハリス副大統領で決まることになった。しかし、ハリス氏は米国を中絶天国にするだけの能力しか持ちあ合わせおらず、政治家としての魅力・資質がない。このため、ハリス氏は大統領選挙で敗北し、トランプ前職大統領が返り咲くことになる。実際、国際情勢・国際政治はトランプ氏の返り咲きを前提として動いている。
本稿は、国際情勢解説者の田中宇氏が7月28日公開した「素考:ハリスの対抗馬は出てこない、など(https://tanakanews.com/240728soko.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htmで紹介=)」解説記事の素になる「素考」に基づくもの。このため、ハリス副大統領の対抗馬が現れ、民主党は大混乱に陥るとした前回の記事は修正しなければならない。
民主党の「重鎮」のうちで、ハリス氏支持の表明が最も遅れたのはオバマ元大統領。オバマ元大統領は現地時間の7月26日、やっと支持を表明した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240727/k10014525951000.html)。
アメリカ大統領選挙でバイデン大統領の後継候補となる見通しとなったハリス副大統領について、オバマ元大統領夫妻が支持を表明し、民主党の有力者からの支持が出そろった形となりました。
ハリス副大統領の選挙陣営は26日、オバマ元大統領と夫人のミシェル氏からの電話を受けているハリス氏の様子をインターネットの動画サイトに公開しました。この中でオバマ氏はハリス氏に対し「ミシェルと共にあなたを支持し、この選挙戦が大統領執務室に到達するまでできるかぎりのことをする」と述べて秋の大統領選挙に向けて民主党の候補者として支持することを明らかにしました。
田中氏は、論考で次のように分析している。
オバマのハリス支持表明は、オバマが対抗馬になってくれそうな党内の知事や議員らに声をかけたが誰も乗ってこないので、対抗馬づくりをあきらめざるを得なくなったことを示しているように見える。このまま誰も出てこず、ハリスだけが民主党の大統領候補で、8月の党大会でそれが追認される見通しになってきた(注:実際は8月1日にオン・ライン会議で民主党の候補者が確定する見通し)。バイデン支持を前提に、全米各州で8月の党大会の代議員に選ばれた人々の大半は、ハリス支持を表明している。党内には、上から決めたハリスがそのまま統一候補になるのは民主主義じゃないという声もあるが、対抗馬がいないのだから不戦勝であり、それも(注:最低限の)民主主義である。(AP survey shows Kamala Harris backed by enough delegates to become Democratic nominee)
米側陣営のメディアはほとんど民主党支持一色で、ハリス氏の大逆転が起きるとの報道が圧倒的に多い。しかし、ハリス氏は政治家としての魅力・資質がなく、「人工妊娠中絶は女性の根本的権利」と叫びながら、性道徳・性倫理を破壊し、米国を中絶天国に悪化させ、社会を混乱に陥れるるだけだ。このため、政治の実務家や専門家はメディアの洪水のような「ハリス氏、大統領選挙で大逆転」の報道は顧みず、国際情勢はトランプ前大統領の返り咲きを前提として動くと見ている。
ロイターは、トランプよりハリスの方が人気がある(44vs42%)と、サンプリングした世論調査を元に報道した。だが、調査の基盤になったサンプリング数が、民主党支持者426vs共和党支持者376で、民主党支持者の人数を多くすることでハリス支持を水増ししていることが判明した。マスコミは、優勢なはずのヒラリーが落選した2016年の選挙以来、毎回、同じやり方で民主党の優勢を捏造し続けてきた。(2020年には劣勢なバイデンが=注:郵便投票を柱とした=選挙不正で勝たせた)(Reuters ‘Shock Poll’ Finds Kamala Leading Trump, There’s Just One Catch…)
マスコミの歪曲報道を尻目に、世界各国の政府はすでにトランプが次期米大統領になることを前提に対策を採り始めている。ドイツなど西欧諸国やEUは、トランプが西欧に冷淡に接すると予測されるので、対策を練る組織を作った。イスラエルのネタニヤフは、事実上トランプと話し合うために渡米してきた。(German Foreign Ministry sets up ‘crisis group’ in case of Trump comeback)
など、世界の主要政治家はトランプ前大統領の返り咲きを前提として、自らの政治活動を展開している。なお、中東についてだが、中国は7月23日、パレスチナでガザを支配するイスラム組織ハマスとヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府を主導するPLO主流派ファタハを仲介、双方は統一政府を発足させることで合意した(https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_125318/)。中国が存在感のある外交を展開している。ただし、イスラエルによって破壊しつくされたガザの復興は有り得ない。
サウジアラビアがとイランを和解させた中国の仲介によるパレスチナ統一政府も、全体としてハマス系が主要勢力になり、ヨルダン川西岸も、ハマス系のパレスチナ自治政府によって運営されることになるだろうが、田中氏は「トランプは大統領に返り咲いたら、イスラエルに最小限のパレスチナ国家を認めさせる見返りに、サウジに頼んでイスラエルと国交正常化させる『アブラハム合意』を再び推進する」。と見ている。その後は、イスラエルとアラブ諸国の和解を前提として、「パレスチナ国家構想」は消滅、エジプトやヨルダンがハマスの属するムスリム同胞団の事実上の勢力圏(支配下)になる。トランプ次期大統領も、中東のこうした激変(和解と平和共存)に協力することになるだろう。
トランプ氏狙撃暗殺未遂事件、バイデン政権の意図的な保護体制のミスか
トランプ氏狙撃暗殺未遂事件は、バイデン政権の意図的な保護体制のミスによるものとの見方が強まっている。現代ビジネスは、「トランプ暗殺未遂事件、新事実続々発覚で『バイデン政権が意図的に警備を手薄にした疑い』は強まるばかり」と題する報道を行っている(https://news.yahoo.co.jp/articles/6a8ebb874e28e0217b09b9f3f7620fd7d31b4fdd)。
地元警察のスナイパーたちがいた2階と狙撃犯のクルックスがいたところは、わずか12メートルほどしか離れておらず、3人のスナイパーたちはクルックスの存在に十分に気づけていたはずだ。つまり、合理的に考えれば、炎天下の中、屋根の上で警備をしなければならない理由(注:シークレット・サービス(バイデン政権の国土安保局の傘下にある)辞任したチートル長官)はなかったと考えることもできる。だからその点はよいとして、ではなぜ、スナイパーたちはクルックスの行動を止めるような動きに出なかったのだろうか。この点に関する合理的な説明は成立しないのだ。
さらに、シークレットサービス側が、事件があった日の朝9時から開かれた地元警察機構との調整会議に出席していなかったことも分かっている。当日のセキュリティの無線のチャンネルが連絡先によってマチマチになっていたことはすでに明らかにしたが、当日朝の会議でチャンネルの問題を地元の警察機構側から提起されれば、当然、この問題は改められていただろう。実際、チャンネルがバラバラとなったことで、地元の警察当局はシークレットサービス側と頻繁には連絡が取れなくなっていたのである。つまり、十分な警備体制を構築できないようにするために、シークレットサービス側がわざと朝の会議に出席しなかった可能性も排除できないのだ。
そして事件発生の20分前、トランプ登壇の10分前には、屋根に上がっているクルックスの存在に警備側のスナイパーチームは気づいていたことが報じられた。銃を構えているクルックスを無力化する動きに出ないまま、シークレットサービスはなぜトランプを登壇させたのだろうか。
要するに、シークレット・サービスは地元警察と用意周到に連携体制を取っておれば、クルックス容疑者を生きたまま逮捕できたはずである。結局は、「死人に口なし」で、真相の救命は不可能だろう。まともな連携体制を確立しなかったバイデン政権は、ハリス副大統領を登場させることによって、全世界の諸国民の目をトランプ狙撃暗殺未遂事件からそらし、事件をうやむやにする恐れが強くなったと言えるだろう。ただし、大統領選前に議会に報告書が提出される予定で、それがハリス氏に不利に働くようになる可能性がある。